エミール・フォン・ゼッレ(Emil von Selle)とは、「銀河英雄伝説」の登場人物。
石黒監督版OVAにおける担当声優は信じがたいことに置鮎龍太郎。
エミール・ゼッレと呼ばれることも多いが、「フォン」がつくのがフルネームである。
概要
”神々の黄昏”作戦の際、ラインハルト・フォン・ローエングラムの旗艦<ブリュンヒルト>に乗り組んでおり、ラインハルト・フォン・ローエングラムをランテマリオで勝たせたのちラインハルトの側に仕えた。ラインハルトの皇帝即位後も近侍として付き従っている。
キルヒアイス含め近しい者でもファミリーネームで呼び、皇后ヒルデガルドをすら普段から「カイザーリン」と立場で呼称するラインハルトが、唯一ファーストネームで「エミール」と呼ぶ人物である。
経歴
アムリッツァ会戦で戦死した父は帝国軍の巡航艦で軍医の任にあり、エミール本人も同じ道を目指す医者の卵。軍医学校を目指して勉強に励んでおり、その前段階である軍幼年学校在学中に何らかの形でブリュンヒルトに乗艦していたものと思われる。
当時13歳前後だったランテマリオ星域会戦の直前、作戦会議直後のラインハルトに廊下で声をかけ、
閣下、ご無礼をお許しください。でも、どうしても申しあげたかったのです。どうかお勝ちください。そして、宇宙を統一なさいますよう……
と願ったのがラインハルトに目をかけられるきっかけとなった。ラインハルトはエミールの名を聞いたのち、秀麗な笑顔を向け、こう返した。
勝利を願ってくれたお前のために、私は勝とう。だから、お前は生きて帰って、家族に伝えるのだ。ラインハルト・フォン・ローエングラムをランテマリオで勝たせたのは自分だ、とな
この時原作では、ラインハルトは「エミールの瞳の中の憧憬に幼少期の自身を見出した」ということになっているが、石黒監督版OVAでは鳶色の髪にデザインされたエミールに亡き友キルヒアイスの姿を重ねるという演出を行っている。
その後、初対面時に同行していたヒルダの指示によってラインハルトの従卒につけられ、ラインハルト登極後も近侍として、食事を運ぶ、コーヒーを淹れるといった身の回りの世話を担当するようになった。
人柄
そういうわけでラインハルトの従卒となったエミールだが、それを鼻にかけるようなこともなく、素直で純真なままであったためにその弟のように可愛がられ、ラインハルトの死まで近侍として仕えることとなった。「主治医になってもらいたいから軍医の資格をとれ」と命じたほどで、その激励に感激したエミールは努力を誓ったという。ラインハルトも、「たとえ技術が完璧ではなかったとしても、患者が進んで命を預けたくなるような医者になるだろう」とその人柄を評している。
バーミリオン会戦に先立っては、あの壮大な紙資源の無駄遣い縦深戦術を解説する会議でワインと紙束を用意した際、優しげに「エミール」と呼びかけられており、命じるどころか頼んでいるかのような柔らかい口調だったことで諸将を驚かせている。ラインハルトが幼少期に姉アンネローゼから掛けられた言葉を引用し、「子供には寝る時間が必要だ」と声をかけることもあった。
ラインハルトの即位後も<ブリュンヒルト>で数々の戦役に同行。ハイネセン大火による危難ではパジャマ姿のままラインハルトの元に駆けつけ、夜の寒さを凌ぐためにラインハルトから彼のガウンをかけられている。ウルヴァシー事件の際は、左手に負った火傷にラインハルト自らが薬を塗るという、「故ジークフリード・キルヒアイス元帥が幼少のころたまわって以来の栄誉」を受けた。
また、エミールはラインハルトが私情を明らかにする数少ない相手でもあり、彼が朝食をきちんと摂るよう諫言した際には直接に怒りを発してしまうなど感情を露骨にぶつけたり、医者を目指すエミールについ無意味に「私に学ぶのは無理だがヤン・ウェンリーに学べば愚将にはならぬ」などと諭してしまうといったこともあった。
余談
彼は<ブリュンヒルト>におけるラインハルト・フォン・ローエングラムとヤン・ウェンリーの会談、そしてハイネセンにおける皇帝ラインハルトとユリアン・ミンツの会談という二大会見に居合わせ、コーヒーを給仕している。これは一例だが、エミールは歴史の流れに直接関わることはないとはいえ、物語後半以降の歴史的重大イベントをもっとも多く見てきた人間の一人でもあるといえよう。
また、「銀河英雄伝説」の新アニメ化が決まった際の置鮎氏のツイートによれば、「今でもあの時の声は出せる。需要がないだけ」とのことである。当該ツイートはこちらを参照。
関連動画
関連項目
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