「僕は人を好きになったりしないよ。――絶対に」
「変わったよ。君が変えたんだ」
「そう言うなよ。お前にもご褒美は用意したろ?」
エラン・ケレスとは、テレビアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』の登場人物である。
概要
アスティカシア高等専門学園のパイロット科3年。学籍番号KP002。ペイル寮の筆頭。
灰色の髪に整った顔立ち、黄緑色の瞳に若干色白の肌を持つ少年で、常に無表情なのが特徴。二重袖の部分が少し短く、黒色に変色させた改造制服と手袋を着用している。
ベネリットグループ御三家企業が一つ、ペイル・テクノロジーズが擁立するパイロットだが、他の御三家が擁立するパイロットがCEOの縁者であるのに対し、エランは特にそうした関係性は明かされていない。独力で現在の地位を勝ち取ったのか、社の関係者との繋がりがあるのか、不明である。
乗機はザウォートとガンダム・ファラクト。本編ではスレッタ・マーキュリーに続く2人目のGUND-ARMパイロットになる。
キャラクターのデザインコンセプトは「人形のような儚げな王子」とのこと。また、「ケレス」性は火星と木星の間に位置する小惑星から取られた名前と思われる。同じく天体由来の性を持つスレッタとの関係を意識したのであろうか?
人物
基本的に無表情で、他者とも最低必要減のやり取りしか行わない。そのため学園内では「氷の君」と呼ばれていた。口の悪い者からは「マネキン王子」と揶揄されている。
グループ総裁候補の地位をかけた争奪対象になっているミオリネ・レンブランに対しても、はっきりと「僕は君に興味ないよ」と言い放っている。流石にミオリネもムカついて「んなっ!?」となった。かわいいね。
しかし、ガンダム・エアリアルが『GUND-ARM』であると見抜いてからは、そのパイロットであるスレッタ・マーキュリーに対しては特別な興味を抱いている様子。魔女と疑われ拘禁された彼女に差し入れをしたり、寝床が決まらない彼女をペイル寮に誘うなど、何かと気を利かせるようになる。エラン本人はシャディク・ゼネリから「惚れたのか」と茶化された際には「僕は人を好きになったりしないよ、絶対に」と倒置法で返答してはいるが……。
映像ソフト版付属のドラマCD内では、文化祭の演劇『シンデレラ』で王子役を担当。シンデレラ役のスレッタと共演する。演出家(リリッケ)のアドリブ指示で口づけしそうになったが、ミオリネと横恋慕さん(グエル)によって阻止された。
決闘を受けるのは稀とのことだが、第5話時点の戦績は7戦7勝で、ダイゴウ寮との1vs3の決闘(しかもザウォート搭乗)にも危なげなく勝利しているなど、パイロットとしての技量自体はかなり高いことが示唆されている。
何かと血の気の多いミオリネやチュチュに翻弄されるスレッタの前に、専用BGMと共に絶妙なタイミングで表れては助け舟を出そうとするエランは、作品序盤の清涼剤として高い人気を博した。一方、スレッタとの関わり方やその雰囲気は、どこか歴代のガンダムヒロイン(それも悲惨な末路を辿りやすい強化人間系の)のそれを連想させるところが多く、ガノタからは早速行く末が心配されている。
エランの内情
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以降の記述は、『水星の魔女』シーズン1鑑賞後の閲覧を推奨します。 |
「よぉぅ。久しぶりだねぇ。『俺』」
「どうも」
「相変わらず暗いねぇ~。俺の代わりなんだからさぁ、
もうちょっと明るくふるまってくれよ」
強化人士4号
彼女の顔「も」別人だったりして
第6話において、現在学園に在籍する「エラン・ケレス」は偽物であり、本物の「エラン・ケレス」は別に存在していることが明らかとなった。……情報開示早い! 早いよ!?
学園のエランは、ペイル社がGUNDフォーマットのデータストーム汚染に耐えられるように拡張神経の移植処置を施した被検体「強化人士(きょうかじんし)」の一人(第4号)である。ただ、この処置をもってしてもデータストーム汚染を根絶することはできず、GUND-ARMを起動するたびに「脳に手を突っ込まれるような」強い不快感に襲われるとの事。おまけに、高いパーメットスコアを発現するたびに強化人士の寿命は縮まっていく。
元々、強化人士はガンダム・ファラクト用の生体パーツ程度の存在でしかないが、デリング・レンブランが「アスティカシア学園の決闘ホルダーを娘の婚約者とする」決まりをぶちあげたため、強化人士4号はオリジナル・エランの影武者として、整形手術を施されて学園に送り込まれた。4号の本当の出自は不明だが、おぼろげな回想や、市民ナンバーの用意を条件に被検体となったところからすると、かなりの貧困生活を強いられていたようだ。過去と決別したのか、強化処置で記憶が混乱しているのか、4号自身は「自分には誕生日も親も無い(要約)」と語っている。
鬱陶しいよ君は。モビルスーツが家族?
あんなモノ僕には呪いでしかない
スレッタに接触していたのは、社命によるエアリアルの素性の確認のためだったが、4号はスレッタ個人についても「自分と同じようにGUND-DAMの呪いに苦しむ同類」とシンパシーを抱いていた。しかしエアリアルを調べた結果、エアリアル自体がデータストーム汚染を無力化しており、スレッタはそもそも呪いなんか知らないただの少女である事実を突きつけられる。この瞬間、スレッタとエアリアルは強化人士の存在意義を全否定する存在となり、反転アンチと化した4号はスレッタに憎悪を向けるのであった。
「エアリアルを奪え」というペイル社の指示を受け、4号はデータストーム汚染で限界を迎えつつある体に鞭打ち、最後の決闘に臨む。エアリアルの未知の機能を前に敗北するも、4号はその後のスレッタとの触れ合いで、自分の誕生日を祝う母の姿を思い出し、スレッタからの親愛も受け入れることができた。
「そんなのおかしい……おかしい、です。
誕生日を祝ってくれる人、います。私もいます。
エランさんに「何もない」なんてこと、絶対にないです!」
「……そうだね。可笑しいね」
だが、成果を出せず、これ以上の運用にも耐えられなくなった4号は解任され、スレッタとの再会の約束も果たせぬまま、人知れず学園を去ることになった。
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この節は、『水星の魔女』本編を 鑑賞後に閲覧することを推奨します。 |
どこかの施設。四肢を拘束された病衣姿の4号。誕生日の歌を口ずさむ彼に与えられたのは滅却処理用の熱線であった。正体を開示した話の次話で処刑、しかもスレッタら学園関係者は誰もそのことを知らないという惨い展開に、学園モノということでガンダムを観始めた新規勢は阿鼻叫喚。「死ぬんじゃないかなコイツ…」と余裕こいて観ていた歴代ガノタも、予想を遥かに上回る早期退場に戦慄した。
一応、4号が死亡した決定的な描写はなく、シーズン2のオープニング映像では4号らしき「エラン」が目を覚ますカットが挿入されていたため、万が一の生存説に望みを託す4号ファンも少なくはなかった。だが、第22話において強化人士5号の口から4号の死亡が明言され、とどめが刺された。
しかし、彼の生体コード情報(オルガノイド・アーカイブ)は残され、クワイエット・ゼロ要塞のシステムに組み込まれていた(恐らくベルメリア・ウィンストンがシステム構築に加わった関係)。最終話ではデータストームの拡大を試みるスレッタの前に出現し、決闘後の失踪を詫びた後、彼女のサポートを行ったのであった。
――また、困ってる?
始めよう。スレッタ・マーキュリー……
エラン・ケレス
「今度の新しい強化人士、決め手は何だったのさ?」
「貴方と同じ性格の悪さですよ」
第6話から登場するオリジナル・エラン。視聴者からは強化人士たちとの区別として略して「オラン」だのチャラ男だから「チャラン」だの散々なあだ名で呼ばれていたが、最終的に劇中呼称の「エラン様」、場合によってはもっと縮めて「様」とあだ名される。
16話で明らかになることだが、彼の正体はペイル社の意思決定を行うAI「ペイルグレード」によって選出されたペイル社の次期リーダー候補である。ニューゲンCEO達からも敬語を使われているが、付き合い方は結構フランク。
一人称は「俺」。性格は尊大かつ饒舌で、いちいち煽るような喋り方をする。強化人士たちが使い捨ての部品であることは認識しているが、特に罪悪感を抱いているわけでもない(一応、本人なりに激励の言葉をかけてはいる)。4号とは全く異なるキャラ造形にショックを受けた視聴者も多かったが、後の強化人士5号の演技を見るに「4号が全く似せようとしていなかっただけ」と判明し、かえってネタ人気が出た。
一方、その能力は次期リーダー候補に相応しく、ペイルグレードからの評価はほぼ全ての分野で最大の「SS」ランク。しかし、唯一MS操縦技能については「C」ランクと並かそれ以下。そこにデリングが例のルールを作ってしまい、MS決闘での勝利が求められるようになったため、急遽影武者として強化人士をアスティカシア学園に送り込んだわけである。
基本的にあんまり出番はない人(ぶっちゃけストーリーの本筋に関係ない存在)だが、出てくるたびに椅子にふんぞり返ってえらそーな放言を繰り返すことで、次第にネタ人気を博していった。エラン様当人は特に悪事やヘイトスピーチを行うわけでもなく、ヘイトを稼ぐ描写がなかったのも大きい。
第7話では、他の検体がまだ準備中だったこともあって嫌々ながら自らスレッタの前に姿を現し、4号に近づけた迫真の演技によってスレッタをステージへと誘い出し、CEOたちによる「魔女裁判」に一役買っている。影武者の演技をする本物とは一体
最終局面では宇宙議会連合と手を組んだCEO四人衆と共に、月の連合本部に赴くが、一人だけ椅子を与えられず立ちっぱなしにされて不満そうな勝利を確信したCEO達の行動には胡乱な表情を見せていた。
もともとペイルグレードの下で飼い殺しにされることに飽き飽きしていたエラン様は、水面下で別会社のヘッドハンティングに応じ、ミオリネが起死回生の一手を繰り出すと同時に辞表を提出。CEO達が自社資産の消滅に唖然とする中、ペイル社から無傷で一抜けを果たした。
Thanks for everything.
I'm sick of all of you and I'm quitting Peil.
Best Wishes.今までお世話になりました。
私は皆様にほとほとうんざりしたので、ペイルを辞めさせていただきます。
ご多幸をお祈り申し上げます。―第24話の辞表メール本文
その後はブリオン社に移ったらしく、3年後にはセセリア・ドートを相棒として引き連れ、ジェターク社へ売った恩を引き合いに出して新規事業への参加(利益分配は不平等)を要求し、社の再建に躍起になるグエルCEOをぐぬぬとさせるのであった。
アスティカシアの存続も助けてやったろ?
従業員の再就職だって面倒見てやったんだ
素直に聞・い・と・け・よっ
強化人士5号
孤独だった僕を変えたのは君だよ。僕のことを知りたいと言ったのも君だ。
だから。今度こそ、君からの好意の証を、頂戴……
(以上、花江夏樹渾身の超絶キモ声)
強化人士4号の後釜として投入された「新たなるエラン・ケレス」。天使のような笑顔を持っているが、採用された理由は「オリジナルと同じ性格の悪さ」。エラン様以上にチャラい言動から、登場初期には視聴者から「チャラン」と呼ばれていた。
あくまで表面上ではあるが、4号とは対照的にコミュニケーション能力が高く、決闘委員会や、ペイル社からの出向先となった株式会社ガンダム=地球寮にもしれっと溶け込んでいた(流石にキャラ代わりすぎじゃね? とは思われていたようだが)。
一方、ペイル社からの指示に従いエアリアルを手に入れる=スレッタを篭絡しようとしていたが、アプローチの方法が「チャラい」を通り越してあまりにもキモい。初対面で「顎クイからキス」まで持っていこうとした(流石に拒絶された)り、耳元でねっとり囁くなど、いくら何でもスレッタを軽視し過ぎな強引さであった。
5号の行動の根底には常に「生への執着心」がある。5号の来歴は4号以上に不明瞭だが「この顔に変えてまで生き延びたんだ」という発言や、拳銃の扱いにも長けている様子からすると、4号と同じくらいのっぴきならない環境で生きてきた模様。軽薄な振る舞いは、彼なりにペイル社の要求に応えようとする故の演技に過ぎず、素の5号自身は楽観的ではあるものの、常に現実を見据えたクレバーな対応が出来る男である(恋愛沙汰除く)。
「頼むぜ~エラン! 株式会社ガンダムのアピールチャンスだ!全力で行けよ!」
(通信を切ってせせら笑いながら)「全力出したら死ぬんだよこっちは」
パイロットとしては、作中でも屈指の腕前を持っているのではないか、という描写が行われている。データストーム汚染を避けるため、パーメットスコアを1から一切上げずにファラクトを乗りこなし、あまつさえ敵機を撃墜しているのである。体格で勝るグエルには抑え込まれたものの、身のこなしも素早く、個人戦闘力も高い。
登場初期の、これまで4号が積み重ねたスレッタとの絆を一方的に利用・ぶち壊していく5号の振る舞いは、4号ファンの視聴者から大バッシングを浴びることになった。しかし、その後の学園生活を満喫するはっちゃけた姿や、垣間見える素の性格、そして同じく使い捨ての駒としてGUND-ARMに搭乗するノレア・デュノクとの交流から、一転して高い人気を得るに至る。グエルと並ぶ本作の出世キャラである。
僕と来い!!
生き方がわからないなら一緒に探してやる。怖いなら隣にいてやる。
逃げるのが嫌なら、僕をあの絵の場所へ連れていけ!
その先のことなんて後でいい!
「生きていいんだ」って、証明させろよ!!
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この節は、『水星の魔女』本編を 鑑賞後に閲覧することを推奨します。 |
「いろいろちょっかい出して済まなかった。謝るよ」
「教えてもらえますか。『私の知っているエランさん』のこと」
「……僕が知ってる範囲なら」
ノレアの死を止められず、逃亡を装って学園に潜伏した5号は、彼女が遺したスケッチ帳の風景を探すために地球に赴くことを決意。事が終われば見逃すことを条件にクワイエット・ゼロ停止作戦に参加し、株式会社ガンダムの面々と共に突入チームに加わる。
なお、5号はGUND-ARMへの搭乗は断固拒否したため、ファラクトは地球寮学園艦の格納庫でお留守番状態だった。カワイソス
クワイエット・ゼロ内部ではプロスペラ・マーキュリーの動きを止めるべく奮戦。スレッタとエリクトが極限まで広げたデータストームの中で、5号はノレアの残留思念を目撃し、穏やかな笑みを浮かべるのであった。
3年後、地球に降りた5号は独り旅を続けていた。というのもノレアのスケッチ帳には場所の名前が記載されていなかったのである。探索がまたもや空振りに終わり、ぼやきながら踵を返す5号の後ろ姿で(厳密にはエラン様のジェタークいじりがあるけど)「エラン・ケレスたち」の物語は幕を閉じる。
場所くらい書いとけよな……
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関連リンク
関連項目
- 花江夏樹 - 花江氏は『鉄血のオルフェンズ』のビスケット・グリフォン役以来のガンダム出演となる
- ガンダムシリーズの登場人物一覧
- 機動戦士ガンダム 水星の魔女
- ペイル・テクノロジーズ
- アスティカシア高等専門学園
- ザウォート / ガンダム・ファラクト - 乗機
- ガンダム・ルブリス・ウル - 一時的に拝借
- ベルメリア・ウィンストン - 同僚
- スレッタ・マーキュリー - 交流者
- ノレア・デュノク - 交流者
- 決闘委員会
- Happy Birthday to You
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