ここは中東…
作戦地区名 エリア88…
命知らずの外人部隊!!
エリア88とは、1979年~1986年に『少年ビッグコミック』で連載されていた新谷かおる作の戦記漫画の名前、または作品に登場する基地の名前である。通称「エリパチ」。
概要
航空会社のパイロット候補生であった主人公・風間 真は親友・神崎悟に裏切られ、内乱が続く中東・アスラン王国の傭兵部隊へと編入されてしまった。
真は最前線の激戦区であるアスラン軍の空軍基地・エリア88にて、戦闘機に乗り敵軍の兵器を撃破することで賞金を得る血なまぐさい傭兵稼業に身を染めていく(傭兵部隊から除隊するためには3年の任期を終えるか、150万ドルの莫大な違約金を支払う必要がある)。
元アメリカ海軍のミッキー、ヨーロッパで亡命の手引きをしていたグレッグ、傭兵部隊を束ねるエリア88の司令官サキ、武器商人のマッコイ爺さん、そしてその他一癖も二癖もある外人傭兵部隊の面々とともに、真は反政府軍との地獄のような激戦を戦い抜く。
生きて、再び日本へと戻るために。
アスランという架空の国を舞台に、戦闘機乗りの傭兵たちの生き様を描いた作品。
戦闘機の綿密な描写や現実味を帯びた世界観やストーリー設定、傭兵たちの魅力あるドライなキャラクター性や台詞などが好評を呼び、後にアニメ化やゲーム化されるに至る。
戦記物の漫画では人気が高く、後々の漫画やフライトシミュレーションゲームなどで影響を受けていると思しき作品がいくつか見られる。
作品に登場する兵器はF-14・トムキャットやA-10・サンダーボルトIIなど、実在する航空兵器が多数を占める。試作機が3機生産されたのみというF-20・タイガーシャークの認知度を上げるのに、真の搭乗機としてF-20が使われたこの作品が、多大に貢献しているとか。
上記のような現実の兵器が扱われる中、トンデモ兵器や施設も登場する。
物語前半の山場でエリア88の傭兵たちと戦う地上空母は砂漠を海に見立てて、クローラー(キャタピラ)で移動する空母で、場合によっては砂の中に隠れてしまうというトンデモ兵器だった。搭載されているF/A-18(当時はまだF-18と呼ばれていたが)は、無人機という当時の技術では無理目なシロモノであった。[1]
また地中をドリルで掘削しながら進むグランド・スラムミサイルなど、一気にこの地上空母編の話だけ物語が突拍子もないものになってしまう(実は作者がこのままリアル路線だと、まるで本当に中東で起こりそうな展開であったため、こういう路線に振った)。
とは言っても、あちこちの基地に分散して退避していた傭兵たちが地上空母攻撃のために再結集した後の激闘は前半の山場であり、燃えるシーンなのだが…。
また地上空母戦のあと初代エリア88基地は放射能汚染のため放棄されるが、その後の新エリア88基地はなんと山岳地帯の山をくり貫いた要塞というブッ飛んだ施設である。っていうか横風対策とかどうするのさ?タッチ・アンド・ゴーも出来ない滑走路なんて恐ろしくて…とは思うが、まぁ、そんな小難しいことを考えるようなものでもないような。
ただ、時代を先取りしているネタも多く、たとえば後半、エリア88の敵として立ちふさがるプロジェクト4は軍産複合体の走りともいえるし、そういった意味ではその後の漫画などの作品に与えた影響は大きいだろう。
主な登場人物について
- 風間真(シン・カザマ)
- 大和航空のパイロット候補生だったが、親友の神崎に騙されてエリア88へ。
最初は一匹狼の様子だったがミッキーと知り合ううちに角が取れたような。その後、エリア88でトップのパイロットに。地上空母との戦いで戦力再編されたエリア88において中隊を率いるリーダーへ。
パーソナルマークは炎のたてがみを持つユニコーン。何気に被撃墜率高め(だが、しぶとく生き残る)。
その後紆余曲折を経てエリア88を離脱するものの、ある目的のためにまた戻ることになる。 - サキ・ヴァシュタール
- アスラン国王子にしてエリア88の指揮官。
もともと壮大(かつはた迷惑)な父と叔父の兄弟ゲンカの末のアスラン内戦において、父と弟とを敵(反政府ゲリラ)に回して戦うハメになるという不幸な生い立ち。額の傷は己の過ちを忘れぬためのもの。
戦闘機パイロットの能力も高く、エリア88がピンチの場合は自ら操縦桿を握る。 - ミッキー・サイモン
- 元アメリカ海軍の艦載機乗り。
陽気で典型的なアメリカ人的ノリの持ち主。そのノリで真の頑な壁を取り払い、よき戦友となる。
エリア88でも真に次いでナンバー2。戦力再編後、真と同様に中隊指揮官へ。
散々金を貯めた後、ようやく手に入れた曰く付きのF-14を地上空母戦序盤で失った後、色々な機体に乗るが、山岳要塞のエリア88に移った後、再びF-14を手に入れることに。この2代目F-14が彼の運命を左右する破目になるのだが…。 - グレッグ・ゲイツ
- 元デンマーク空軍出身。
ソ連からの亡命者を手引きする運び屋を相棒のバクシーと共にやっていたが、さる事件が元でエリア88へ。
髭だるまのような容貌で荒くれっぷりとボケっぷり(不時着した時に反政府ゲリラ要人の残した重要機密書類を焚き火にくべてしまう)でも有名か。しかし、物語の中で果たした役割は非常に大きく、アスラン再建のきっかけであるといってもいい。
エリア88トップ3。戦力再編後は中隊指揮官で、かつA-10で戦い続けた。 - キム・アバ
- 戦力再編を図るためギリシャに移動したエリア88に新たに加わった新米パイロット。
真に鍛え上げられ、いっぱしの戦闘機パイロットに。その後ハリアーに乗り換え、要所要所で重要な役割を果たすことに。
その度胸はミッキーも認めるほど。セラと相棒となって物語後半、アレコレと動くことに。実はアフリカの新興国ルンガの第三王子。 - セイレーン・バルナック(セラ)
- 元プロジェクト4の戦闘機隊パイロット。父親は戦闘機隊リーダーだが、アスラン占領時に自決。
真を篭絡しようとするが失敗。その後、いろいろあってエリア88に参加することに。キムとまるで姉弟ゲンカのようなことを繰り返す関係になる。ブラシアの戦闘機隊の面々から「姐さん」と呼ばれるほどの気風のよさと度胸を見せる(腕前も中々のものだが)。 - ウォーレン・コールドマン / ケン・シュニッツ
- ウォーレンは真の中隊副官。ケンはミッキーの中隊副官。それぞれエリア88トップレベルの技量の持ち主。
ウォーレンのギターを奏でながらの歌はまさしくエリア88の魅力の一つのはず。ケンはウォーレンに比べると地味だが、なぜかA-10にも乗ったことがある(作中ではA-10は最新鋭機で、グレッグしか使っていないはずだが……シンと同じようにグレッグの中隊の誰かから代替機でも借りてたのだろうか)。 - ラウンデル
- サキの教育を行ったこともある参謀役。サキの台詞から察するに元イギリス海軍出身と思われる。
訓練基地のあるギリシアで外人部隊パイロットの教育を行っていたが、戦力再編後、エリア88に加わることに。乗機はバッカニア。
物語終盤の「サキが信頼する七人の戦士」の食い違いは、サキが尋ねた相手がミッキーだったため(サキにとってラウンデルは信頼できる戦士だが、ミッキーにとっては対等の戦士というよりは上官であるため)と考えられる。 - マッコイじいさん
- エリア88の兵站、機種調達を一手に引き受けていたと思われる武器商人。
有名な「金さえ出すならクレムリン宮殿だって引っ張ってきてやる」の台詞は嘘でもなんでもなく、イラン革命のドタバタ騒ぎで宙に浮いていたF-14を書類をちょろまかして横流しさせたり、あちこちから部品をかき集めて書類を捏造して真のためにニコイチならぬサンコイチのサーブJ35ドラケンを用意したり、NATOの高官を強請ってF-18のスペアエンジン(なお元エンジンはブービートラップによりマッコイ本人をうっかり爆死させかけている)を手に入れたりと、まぁなんでもやった。サキ曰く「貧乏人が戦争したけりゃマッコイにいえ」とのこと。
なにしろ果ては(膨大な資金があったとはいえ)エンタープライズ級原子力空母を手に入れるのだからハンパではない。
とはいえ、物語中盤以降は損得勘定抜きでエリア88のメンバーと付き合っていたようなもので、真やセラに対する発言からそのことがうかがい知れるし、「一番損もしたが一番長く続いた商売」と最後には話してもいる。 - 神崎悟(サトル・ファリーナ)
- 真の親友にして、彼を外人部隊エリア88へ送り込んだ張本人。
もともと同じ孤児院の出身で、パイロット候補生として大和航空に進むなど、まず親友といっていい付き合いがあった。友人を外人部隊に送り、裏取引で大和航空の社長の座に就き、武器商人ジュゼッペ・ファリーナの養子となって養父を謀殺、養父の財力を手にした後は武器商人による商売のためのコントロールされた戦争計画「プロジェクト4」を立ち上げる。一種のラスボス。
映像化
1985年にOVAが製作され、OVA版の編集版として映画も作られた。
長い原作をアニメ化するにあたって物語は原作の要所要所を取り入れたオリジナル・ストーリーとなっている。
2004年にTVシリーズ全12話が放送されたが、無かったことにされているような、ないような…。20年前のOVA版のほうが出来がいいってどういうことさ?
ゲーム版エリア88
カプコンから1989年にアーケード用シューティングゲームとして発売された。
プレイヤーはそれぞれ性能の異なる真、ミッキー、グレッグの3名のうち1人(2人同時プレイも可能)を選び、サキから下される全部で10個あるミッションを戦い抜く。
「グラディウス」などと同じような一般的な横スクロールタイプのシューティングゲームで、ステージの合間にマッコイ爺さんから対地爆弾などのサブウェポンなどを購入することが可能である。また、シューティングゲームでは珍しく残機制度ではなくライフ制度が採られている。
後に「エリア88」と同じシステムで「U.S.NAVY」というゲームが開発されている。
1991年にはスーパーファミコンでも発売されたが、アーケード版と違い1人用限定でステージ選択型となっており、サブウェポンの他に戦闘機を購入して(戦闘機によってショットや積めるサブウェポンが異なる)ステージに応じて乗り換えることが可能になった。
ライフ制度も引き継がれているが、被弾すると数秒の間(キャラによって異なる)危険状態になり、その間に再び被弾するとライフが残っていても撃墜されてしまう仕様に変更されている(そのため残機制度も追加されている)。
登場するボス敵は原作に登場した傭兵部隊ウルフパック(SFC版のみ)や地上空母が出てくるが、殆どは原作に登場しないオリジナルの兵器である。
その他、1995年にファミリーソフトというメーカーからPC98のゲームとしてフライトシミュレーション、シミュレーションゲームのエリア88が発売されている。
エリア88と外泊証明書
「おい…真、起きろよ!起きてこれにサインしろ!外泊証明だから!!」
上記は真の親友・神崎悟のセリフから。
第3話の回想シーンで、神崎が真をアスラン王国傭兵外人部隊へ追いやるために外泊証明書と偽り、酒に酔いつぶれた真に傭兵契約書にサインを書かせるエピソードがあり、このことからファンの間では「外泊証明書=傭兵契約書」という方程式が出来上がっている。
むしろ「エリア88=外泊証明書」といっても過言ではなく、外泊証明書という言葉からエリパチの話題にシフトするケースも見られる。
傭兵部隊に連れて行かれるかもしれないので、海外で(国内でも)書類の内容を確かめずに不用意なサインをするのは控えよう。
戦場記録 撮影者:六木剛
ところで関連商品の安いのが手に入ったんだ。買わんかね!? 50個で1000ドル!!
関連項目
脚注
- *F/A-18ホーネットはACLS(自動着艦システム)を備えており、ACLSは飛行機の操縦で最も困難な技術の一つ、空母への着艦が自動で出来るシステムで、F/A-18は当時最も自動化が進んだ戦闘機であった。故に無人機の母体と成る機体としてはF/A-18は最も相応しいと言え、作者新谷かおるの航空機に対する造詣の深さが伺える。
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