エレクトーンとは、ヤマハの製造・販売する電子オルガンの登録商標である。
だがメーカーを問わず電子オルガンを指す普通名詞として用いられることも多い。
概要
上鍵盤、下鍵盤、ペダル鍵盤という3つの鍵盤と、エクスプレッション(表現)ペダルによって構成されている。最新機種では500を超えるプリセット音色を持ち、それぞれ各鍵盤に割り当てる事が可能となっている。
その他詳細は、ヤマハ公式やWikipedia等を参照のこと。
有志による簡易説明
近況
電子オルガンの代名詞となったエレクトーンであるが、最近では出荷台数が大幅に落ち込んでいる。
1980年代初頭ごろからの家電量販店での安価な電子キーボード・電子ピアノの取り扱いは、新規ユーザーやライトユーザー層にとって敷居の低い、エレクトーン以外の選択肢となった。高価な上に子会社の楽器店や資本関係のない特約店のみの販路では太刀打ちできず、またニーズに合った高額なりの機能・プレミアを見出すこともできなかった。その後90年代前後からのシーケンサーの発展で、ライトシーンでの電子音楽の演奏は次第に電子オルガンからシーケンサー+音源モジュールの自動演奏に取って代わられてしまう。エレクトーンは次第に家庭の電子オルガンという役割から音楽教室用の備品という立場へと移っていったといえる。
2000年代に入ってエレクトーンの需要拡大を図るものの、国内楽器市場の縮小により未達に終わる。現在は (国内の) エレクトーン/キーボード事業には力をいれずにいる。 (参考 [1] [2] [3])
現行機種 STAGEA(ステージア)
現在はSTAGEA(ステージア)と呼ばれる機種が発売されている(型番ELS-NN(A) )。
分解・組立が可能であり、搬入等が容易となった。6.5インチTFTフルカラー液晶を搭載し、インターネット接続や、譜面表示などといったことも可能である。液晶はタッチパネル式であり、柔軟な操作が可能。演奏時はリボンコントローラのような操作も可能である(ロータリエンコーダも併せて搭載している)。インターネット接続では、ヤマハよりエレクトーン専用のサイトが開設されており、演奏用の音色データや譜面データをを購入したり、プロの演奏した録音データを直接購入したりとい ったことが出来るようになっている。また、不定期に公開されるアップデータをダウンロードし、機能改善や機能追加をすることも出来る。
音色は、AWM音源4レイヤー(ELB-01/01K・DDK-7は2レイヤー)で構成されており、従来機種に搭載されていたFM音源は廃止となった。同社のDTM音源より流用した高品位なエフェクトを搭載しており、各音色に対し2系統使用することが可能。また、同社製キーボード等で採用されているSFFに対応しており、強い互換性を持つ。
当初、データ記憶媒体には、一世代前のELシリーズから引き継いだフロッピーディスクに加え、同社のシンセサイザー等で用いられているスマートメディア及び、USBメモリを新たに採用 していた。しかし、スマートメディアを生産していた東芝が2005年春に撤退を表明したことにより、後にスマートメディア非対応のSTAGEA typeUとして、仕様変更された。
主な欠点としては、楽器としては起動に時間がかかりすぎること、値段が高いこと、内蔵シーケンサの完成度が不十分であるということである。
スタンダード → カスタム → プロフェッショナル、とグレードアップすることが可能となっている。
ELS-01(スタンダードモデル)
FS鍵盤搭載。ホリゾンタルタッチ非対応であり、カスタムモデルより諸々の機能が省かれている。
ELシリーズでの、EL-50/70・EL-500/700の位置付け。税込み定価693,000円
ELS-01C(カスタムモデル)
スタンダードモデルに加え、FSV鍵盤(ホリゾンタルタッチ対応)、VL-70m相当のVA音源、オルガンフルート、足鍵盤のアフタータッチ、セカンドエクスプレッションペダルなどが搭載される。
ELシリーズでの、EL-90・EL-900の位置付け。税込み定価1,081,500円
ELS-01X(プロフェッショナルモデル)
カスタムモデルに加え、上下鍵盤が5オクターブ61鍵、足鍵盤が2オクターブ25鍵化される。ELシリーズ以前のステージ向けモデルとは異なり、鍵盤数以外の機能や音色数などはカスタムモデルと同一である。ステージ上での演奏に特化(もちろん自宅用として購入できる)しており、PA接続に適したキャノン端子を備えている。また、スピーカーは別売りである。
ELシリーズでの、ELX-1・ELX-1mの位置付け。税込み定価1,680,000円
その他の現行機種
ELB-01/01K(STAGEA mini)
STAGEAシリーズの入門者モデル。末尾Kは音楽教室用。SFF対応など、STAGEAとして最低限度の機能は備えているが、グレードアップはできないため要注意。STAGEAのシリーズ共通の240レジストレーションメニューに加え、ELB-01/01K専用のメニューが90種類追加されている。パーカッションに、動物のなき声、日常の音など子供向け音色を追加した“ワンダーランドキット”を搭載。
ELシリーズでの、EL-17~37・EL-100~400の位置付け。税込み定価218,400円
DDK-7(D-DECK)
ライブ用キーボード型モデル。厳密にはエレクトーンではないが、STAGEAスタンダードモデルと一定の互換性がある。STAGEAのシリーズ共通の240レジストレーションメニューに加え、プロのキーボーディストによる作成の、D-DECK限定レジストレーションメニューが48種類追加されている。
オプションで足鍵盤を接続することが可能。足鍵盤付で税込み定価509,250円
過去の主要機種
EL-900(m /B )
EL三桁シリーズの家庭向けモデル最上位機種。
FSV鍵盤搭載(ホリゾンタルタッチ対応)。音色は、AWM音源2系統・4オペレータFM音源2系統・VL-70m相当のVA音源より構成される。MU50相当のXG音源を備え、演奏のバックにMIDIファイルを流すことも可能。VL-XGにも対応しているため、DTM音源としてはMU50+VL-70m相当のスペックを持つ(但し無印以降では規制されているため利用不可)。
無印の他、さらに機能を拡充したEL-900m、廉価版のEL-900Bが発売される。無印とmの違いはプリセット音色数や足鍵盤の複音対応など、Bとの違いはアンプ出力などである(EL-900mのアンプ出力は、STAGEAよりも70Wも高いという、非常に高品位なものであった)。新たにmが発表された際、既に無印を所有していたユーザーのためにグレードアップキットが発売された。内蔵基板の交換等により、mと同一のものとなる。このキットはBにも取り付けられるため、新品で最も安くmを手に入れる方法がBにキットを適用することであった。なお、mにグレードアップすることにより、マイクロチューニング・リードプライオリティ等の設定を除き、内部的にはステージモデルであるELX-1mと差異が無くなる。
EL-90
FS鍵盤搭載。音色は、AWM音源2系統・4オペレータFM音源1系統より構成される。EL3桁機より廃止となったD.R.E(ダイナミックレンジエンハンサー)という機能が搭載されていた。これはタッチトーンに関わる機能で、強く打鍵した際に高音域の伸びがより際立つようになる。ドラム音色の最大発音数が少なかったため、シンバルの発音が途切れるといったようなことが多発していた。
HS-8
FM音源搭載、一部音色のみAWM音色対応になった。記憶メディアにはRAMパックを使用しているが、外付けのFDDを使用することによりフロッピーディスクにも対応する。また、この頃より、E-Seqと呼ばれるヤマハ独自のMIDIフォーマットに対応し、演奏などを記録することが出来るようになった。このE-Seq形式には、現行機種のSTAGEAでも対応している(なお、エレクトーンで用いられるE-Seq形式はエレクトーン独自のものであり、同社のシーケンサであるQYシリーズなどのものとは互換性が無い)。
1992年に製造を終了するが、2000年頃まで曲集付属のFDで対応するものがあったほどの人気機種。
ELシリーズで廃止となったがSTAGEAで復活した機能として、シーケンス内にレジストチェンジを組み込む機能やアカンパニメント(当時はアルペジオ)の音色を変える機能などがHS-8に存在した。
メーカー非公式情報
テストモード
開発者向けの動作チェックモード。LEDや鍵盤等の動作不良をチェック出来る。下鍵盤2オクターブ目の、C#・F・A♭を同時に押さえながら電源を入れると起動する。
ELシリーズの音色エディット
EL機種においては、純粋なサインウェーブ等パネル上から扱えない波形が数個存在する。また、AWM音色のエレメント単位での編集(2系統を備える機種のみ)やFM音源の編集、スプリットやアフターピッチといった機能もパラメータとしては存在するが2色表示の液晶画面における編集が困難であるため、ADSR操作を除き、ユーザーによる編集機能は省かれている(現行機種であるSTAGEAでは、廃止となったFM音源を除きこれら全てがエディット可能である)。
DTM音源互換の内蔵音源について
STAGEA及び、EL-900(m /B )はMU50相当、EL-700以下のEL3桁機はMU20相当のXG音源をそれぞれ搭載している。但しSTAGEAについては、MU50相当ではあるものの、一部においてMU100以降のハイエンド機種用の波形やエフェクトを持っており、実際にはELシリーズのものに比べ、かなり高品位な音源へとグレードアップしている。また一部のハイエンド機種が搭載するVA音源に関しては、音源スペックはVL-70mと同等である。但し、入力端末がVL-70mとは異なる(ホリゾンタルタッチ等、ウィンドシンセには存在しないパラメータで演奏をする)ため、VL-70mと互換性が確保されているわけではない(MIDI 端子を経由しての外部からの利用は不可)。
音色編集に関して、楽器の物理モデル単位でのエディットは、編集に高度な物理知識を必要とするという理由から、VL-70m同様に本体では一切行えなくなっている(新規に物理モデルを構成するには、1枚の金属板からトランペットを作るのと同じだけの知識が必要となり、一般のユーザが編集すると音そのものが鳴らなくなってしまう)。
EL3桁機に存在するバグ
EL3桁機の一部機種に於いて、複数のアカンパニメントパターンを連続して利用した際に前のパターンの音量やパンポット等の設定を引き継いでしまうというバグが存在する。これらはヤマハに基板交換してもらうことにより修理を受けることが可能(但し一般への告知はされていない)。
なお、EL2桁機種や、現行機種であるSTAGEAではこの問題は再現しない。
エレクトーン用データ(ELシリーズ)
- MDR_xx.EVT
- E-Seqファイル。演奏データやレジストレーションチェンジなどが記録されている。分解能は384(但し再生が保障されるのはRPP同様の24まで)。SMF Format0と近似しているが、MIDIクロックやリアルタイムメッセージがファイル中に埋め込まれていたり、冒頭にカレントレジストと呼ばれるバルクダンプ情報が埋め込まれていたりと、エレクトーン独自の部分が多く見られる。ファイル名に関して、xxはMDRでの番号-1の値であり、拡張子EVTを小文字にするとリード分離情報の入ったデータとして認識される。
- MDR_xx.B00
- バルクダンプファイル。音色データが入っている。自作音色や自作ドラムパターンも全てここに含まれる。上位互換・下位互換ともにある。分割することもでき、その場合は拡張子が.B46や.B47といったふうになる。
- MDR_xx.V00
- VAカスタムボイスの情報が含まれる。VL-70mのバルクダンプファイルに加え、AWMやFMのパラメータ(エレクトーンはVA単体で1音色のものはないため)が含まれる。
- SONG.NAM
- ネームファイル。エレクトーンは上記のようにファイルを数値連番にて管理しているため、視認性が悪い。それを解消するため、EL3桁機以降で採用された。1行=半角18文字である必要がある(空きはスペースで埋め尽くされる)。
- AUTO.RUN
- 一定の書式で記される自動再生用ファイル。これを記述することにより、フロッピーを挿入しただけで自動的に全ファイルを連続演奏したり‥といったことが出来るようになる。主に店頭展示用途。
EL3桁機における動画再生
EL3桁機に於いて、端末内のRAMに画像データを保存する領域があり、これを呼び出し液晶に表示することが出来る機種が存在する(単色モノクロ、ELX-1m・EL-900(m /B )は480x160ドット、EL-700・EL-500は320x80ドット)。この仕組みにより、動画表示をすることが出来る(但し0.5fps程度という非常に低いスペックとなる)。
このデータをEL3桁機で再生すると、「YAMAHA Electone EL-Series...」という文字がアニメーション表示される。
この機能を利用し、組曲などに於いて、楽章ごとに説明や表題等を表示したりといった使い方も出来る。
その他諸々
ニコ動においては「maru」、「mai」、「2段階右折の人」、「電鳥」、「ミコ(☆miko☆)」、「HAL」、「踊る大捜査線の人」、「黒糖」等が主に演奏者として活躍。豊富な音色と 多彩な表現を可能とする楽器ゆえ、かなり原曲に近い音楽を生み出している。
プロのプレイヤーも存在する。財団法人ヤマハ音楽振興会に所属しているプレイヤー、もしくはヤマハ株式会社の支援を受けている独立系のプレイヤーなどがいる。また、楽器店など で演奏・解説などを行う「デモンストレーター」も存在する。
ヤマハによる検定制度も存在し、13級から1級までのグレードがある(但し1級については本人からの申し込みにより取得することはできず、演奏活動状況による財団法人ヤマハ音楽振興会からの認定に限る)。
13~11級はエレクトーン初心者向け、 10~6級は学習者(初心者、中級者)向け、 5~3級はヤマハ講師またはヤマハ講師を目指す人向け、2、1級は演奏者(プロ)、または演奏者を目指す人向けのものとなっている。
しかし、この資格を取得して役に立つのはヤマハ講師になるときぐらいで、就職や進学などには一切役立たない。
6級までは大きなミスをしない限り基本的に受かるが、5級からは急に評価がシビアになる。
また、ピアノでも同等の制度が設けられている。
同じく財団法人ヤマハ音楽振興会より、エレクトーン演奏表示プログラム「etool」という、コンピュータ用の 高性能演奏解析ソフトウェアが研究開発されている。
関連動画
関連項目
関連リンク
- エレクトーンステーション
http://electone.jp/ - エレクトーンプレイヤー・オフィシャルウェブサイト
http://www.yamaha-mf.or.jp/el-player/ - ヤマハ音楽能力検定制度
http://www.yamaha-mf.or.jp/grade/index.html - バードくんのあんおふぃしゃるエレクトーン
開発に携わっている「バードくん」による、情報提供サイト
http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Kouen/8544/ - フリーソフト・ダウンロード・ガイド
有志によるエレクトーン用フリーウェア配信サイト
http://homepage2.nifty.com/el_freesoft/ - Big Black Box
ユーザによる、エレクトーンの仕様や裏技をまとめたサイト
http://www.hayasoft.com/guri/el3b/index.php
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