- 遺体を長期保存するために防腐処理を施すこと。日本語では「遺体衛生保全」「死体防腐処理」など。
- 雨宮早希による小説『EM(エンバーミング)』およびそれを原作とした映画『エンバーミング 遺体処置』。
- 和月伸宏による漫画作品『エンバーミング -THE ANOTHER TALE OF FRANKENSTEIN-』。
本記事では3.について解説する。
エンバーミングとは、和月伸宏による漫画である。正式名称は『エンバーミング -THE ANOTHER TALE OF FRANKENSTEIN-』。『るろうに剣心 -キネマ版-』執筆のための休載などを挟みつつ、『ジャンプスクエア』誌上で創刊号である2007年12月号から2015年5月号まで連載されていた。
概要
19世紀末の欧州を舞台とした、若き異能の天才・ヴィクトル=フランケンシュタインが物語の150年ほど前に創造法を編み出した、人間の死体を元に造りだされる人造人間(フランケンシュタイン)にまつわる物語。
『ジャンプスクエア』2007年12月号(創刊号)から連載が開始され、同号の表紙を飾った。なお『ジャンプスクエア』における連載より前にプロトタイプといえる読切作品が2つ発表されている(次項)。
連載時および単行本掲載時の両方において、本編の後に「エンバーミング博物誌」というコラムが設けられている。作中の登場人物が19世紀末当時における文物・慣習などの時代背景について会話するという形式の解説コーナーで、文章は小説家で和月の妻・黒崎薫、監修はフリーライターの村上リコ。
作中における人造人間(フランケンシュタイン)は単一の死体から造られるもの、複数の死体を組み合わせて造られるもの、動物の死体を用いたキメラタイプなど様々なものが存在し、その能力も人間の枠を超え多様である。唯一の共通点は身体のどこかに起動用の電極があること。ただし人造人間は死者蘇生の手段でも永遠の命の法でもなく、決して人間に戻ることはない。たとえ姿かたちが生前のままであっても記憶崩壊や人格異常など、精神に何らかの異常をきたしたものとして描かれている。
読切版エンバーミング
エンバーミング -DEAD BODY and BRIDE-
週刊少年ジャンプ特別増刊『ジャンプ the REVOLUTION!2005』(2005年9月発売)に掲載。『武装錬金』10巻に収録された。
人造人間ジョン=ドゥとその相棒を務める娘リトル=ロゼ、人造人間専門の壊し屋をしながら旅をする二人を描く短編読切作品。
のちの連載を意識して描かれたパイロット作品。また作者の和月伸宏にとって初めて「少年漫画」の枠を敢えて外して描いた作品で、それまでの和月作品と比べるとやや異色な設定・描写が見られる。このあたりは次の読切、および連載作品にも継承されている。
主な登場人物であるジョン=ドゥおよびリトル=ロゼは連載版には未登場だが、いずれ登場の予定。ジョン=ドゥのみ登場、リトル=ロゼは登場しない。
エンバーミングII -DEAD BODY and LOVER-
週刊少年ジャンプ特別増刊『ジャンプ the REVOLUTION!2006』(2006年9月発売)に掲載。単行本には未収録。
連載版の登場人物であるエルムとアシュヒトが登場。副題の「-DEAD BODY and LOVER-」はそのまま彼らが登場する連載第2エピソードの副題としても使われており、連載版のプレストーリーとしての位置づけである。
登場人物
※本項は内容についての若干のネタバレを含みます。 →次項(関連動画)まで飛ぶ
主要登場人物
- ヒューリー=フラットライナー
- 本作の主人公の一人。ボサボサの髪に吊り目、長身と、見た目はいかついうえ言動も荒いが、その実子供好きで面倒見のいい田舎の兄ちゃん。
5年前に両親を惨殺した仇を討とうとして相討ちになり、通りがかったDr.ピーベリーによって「人造人間を斃すための人造人間」へと改造された。ヒューリー本人も人造人間への強い怒りを抱え、全ての人造人間を破壊することを目的とするようになった。ある事件の後はDr.ピーベリーと行動をともにし、倫敦へと向かう。 - Dr.ピーベリー
- ポニーテールにくわえタバコが特徴の女医。人造人間の研究者で、ヒューリーを人造人間に改造し、人造人間について教えた。ヒューリーとはまた違った形で人造人間を憎んでおり、ある目的のためにヒューリーを改造した。
- エルム=L=レネゲイド
- 本作の主人公の一人。人造人間の少女。没年齢は13歳。人造人間になって10年経つので年齢は23歳と本人は主張しているが、その言動はまんまアホの子で、まわりを振り回すこともしばしば。好きなものはアシュヒトと甘いお菓子とぬいぐるみ。ある目的のために、アシュヒトとともに旅をしている。
- アシュヒト=リヒター
- 人造人間の調整を専門とする男性。長身痩躯、端正な顔立ちに眼鏡をかけ、スーツをきっちり着こなしている。人造人間研究の名門リヒター家の子息でありながら、人造人間の整備・解体を請け負いながらエルムとともに欧州各地を回っている。
- レイス=アレン
- ヒューリーの相棒。容姿は茶髪の優男といったてい。ヒューリーと同じく5年前に両親を惨殺されるが、その両親からは虐待を受けていた。当初は自ら死を選ぼうとするがヒューリーに説得され、ともにワイス卿に保護される。その後は事件の犯人の正体を知ることを目的とし、ヒューリーの復讐をサポート。ついに犯人とまみえるも返り討ちにあい死亡したとみられたが、人造人間として復活。生前の記憶を残しながらも性格は変貌しており、一種のヤンデレともいえる。
サブキャラクター
DEAD BODY and REVENGER(単行本1巻)
- エーデル=ワイス
- 翠色の瞳をした少女。ヒューリー、レイスとともに5年前の惨殺事件の場に居合わせ、ワイス卿に娘として引き取られた。ただし本人はそのときの高熱が原因でそれまでの記憶をなくしている。
- シェイド=ジェイソン
- ワイス卿の使用人で、ヒューリーとレイスの上司。元猟場番で、現在はエーデルのボディガード。
- ロバート=ワイス
- 英国ハイランドに屋敷を構える子爵で、元大学教授。惨殺事件の生き残りであるヒューリー、レイス、エーデルを引き取った。離婚暦あり。
DEAD BODY and LOVER(単行本2巻)
- フィリップ=ウィルキンソン
- リバプールの海運商のお坊ちゃん。長身痩躯、端正な顔立ちに眼鏡をかけた温和な青年。アザレアとともに駆け落ちし、身分違いでも合法に結婚できるグレトナ・グリーンを目指す。
- アザレア=ミレー
- 元リバプールにある大衆酒場の女給。フィリップに求婚され、駆け落ちしてともに身分違いでも合法に結婚できるグレトナ・グリーンを目指す。
- カタヴェリック=スパスム
- 皮膚強化型の人造人間。創造された際に創造主が死亡した野良人造人間である。
DEADBODIES in LONDON(単行本3巻~)
- マイク=ロフト
- 英国政府の高官で、「さる高貴な女性」に仕える壮年の男性。本職は会計監査。常にパイプを持っている。「さる高貴な女性」の命によりアシュヒトに仕事を依頼する。モデルはシャーロック・ホームズの兄、マイクロフト・ホームズ。
- フレデリック=アバーライン
- 元英国スコットランドヤードの警部で、切り裂きジャック事件の捜査責任者。真面目だがどこか愛嬌のある性格。モデルは同名の実在の人物で、風貌・経歴等ほぼそのまま。
- エーデル=ヴァイオレット=ケリー
- 倫敦の貧民街イーストエンドで泥ひばりをして仲間達とともに暮らす少女。母親を切り裂きジャックに殺害され、母親の借金のカタに娼館で働かされていたが脱走した。
- メアリ=ジェーン=ケリー
- ヴァイオレットの母親。切り裂きジャックに殺されたのち、証言を得るために人造人間にされるが創造主を殺害して逃亡した。生前は娼婦。
- タイガーリリィ=コフィン
- フランケンシュタインの怪物の魂と意志を継ぐ夜会「稲妻の兄弟(ブリッツ・ブルーダー)」に所属する人造人間の少女。感覚機能特化型。真ん中分けの黒い長髪に吊り目というなんかきっちりしてそうな容姿。額に第三の目を持つほか最大24個の遠隔操作型の目玉で離れた場所の景色を見ることが出来る。
- リッパー=ホッパー
- ブリッツ・ブルーダーに所属する呼吸機能特化型の人造人間。切り裂きジャックの正体であり、その性格は相当狂っている。
読切版「DEAD BODY and BRIDE」登場人物
- ジョン=ドゥ
- 読切版「DEAD BODY and BRIDE」の主人公。胸部に大きな十字型の腑分け傷を持つ人造人間。リトル=ロゼとともに人造人間専門の壊し屋をしながら旅をしている。報酬として若く美しい女の体の部位を集めて回り、それにより自分の花嫁を作るのが目的。
- リトル=ロゼ
- ジョン=ドゥの相棒。援護と整備を担当する自称「博士の卵」。和装のボクっ娘で、その容姿と一人称から掲載時は多くの読者が女性だと気づかなかったとか。
関連動画
関連商品
関連項目
- 6
- 0pt