オオウミガラスとは、チドリ目・ウミスズメ科に分類される、海鳥である。絶滅種であり、元祖ペンギンとして知られる。
概要
生態
かつて北極周辺に生息していた、ペンギンに良く似た鳥。
飛べない、泳ぎが得意、よちよち歩くなど、北極版のペンギンと言える存在。
ただし、現在南極に生息するペンギン達とはあくまで別種で、関連性はあまりいない。
「北極にはなんでペンギンがいないのか?」と思っていた人もいるだろうが、実は昔は似たような鳥がいたのである。
普段は北大西洋の各地に生息し、魚を獲って暮らしているが、産卵期になると一つの島に定住し、雛を孵す作業を行う。1年に1回しか卵を産まず、オスとメスはその卵を交互に暖めていたという。
卵はそれぞれ模様が違い、これは他の卵と間違えないようにするためのものだったとされている。
雛については文献が少なく、その容姿や生態などはあまりわかっていないが、卵の大きさからして体重は240g程度だと推測されている。
目撃談から、親子は仲睦まじく行動していたといい、親が背中に雛を乗せて獲物のいる場所まで運んでいたこともあったらしい。
流石は鳥というべきか、時として4メートルの高さから海に飛び込んでハンティングをしていたとも言われている。
天敵はほとんどおらず、警戒心は皆無だったという。人間を見ると普通の野生動物なら危険を感じて逃げるところだが、好奇心の強いオオウミガラスはむしろ寄ってきたと言われている。
しかし、その警戒心の無さが、オオウミガラスの存在を脅かしていくことになった。
発見から乱獲へ
1534年、フランスの探検家J. カルチェが、ニューファンドランド島に上陸、その時に発見されたのがこのオオウミガラスである。
オオウミガラスを見つけたカルチェは、仲間達とともにオオウミガラスを1000羽以上狩り、2隻の大型ボートの中をオオウミガラスの屍で一杯にしたという伝説すら残っている。
発見事は何百万羽といたため、当時の人々はハトやカラスと同じくらい、無尽蔵にいる生き物と考えていたそうだ。
人間からその存在を認識されるまで天敵がほとんどおらず、安定して繁殖できたから故の個体数だったのであろう。
その後のオオウミガラスは、食料、羽毛、卵目当てで次々と殺された。警戒心がなかったため、殴り殺して船まで運ぶ作業は相当楽だったことだろう。
特にオオウミガラスの卵は美味であり、しかも1年に1回しか産まない貴重な卵だったので、恐らく特に値打ちがあったと思われ、実際オオウミガラスの卵はよく狙われていた。
1年に1羽しか新たな生命が誕生しない、ということは、それすなわち繁殖力の低さを意味する。
だが、あまりにも数が多すぎたオオウミガラスという生き物自体は、学者の探究心をくすぐることが出来なかった。
よって長い間、この生き物の本格的な研究はされず、繁殖力の低さに気づいたのも、恐らくかなり後のことだったのだろう。
それでも当時の人々は「こいつらなんていくらでもいるんだから、殺しても全然問題ないっすよ」と、次々にオオウミガラスを狩っていった。
だが、そのツケがついに回ってくることになる。
ある時、オオウミガラスの生息地が噴火と地震のダブル災害によって海に沈んでしまう。
これがまずオオウミガラスの繁殖に大きな打撃を与え、ただでさえ個体数を大きく減らしていた彼等は、こうしてわずか50羽にまで追い詰められてしまった。
目に見えて数が減ったオオウミガラス、これを見て慌てたのは、博物館やコレクターであった。
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/ o゚((●)) ((●))゚o \ やばいお、気づいたらオオウミガラスほとんどいなくなってるお……
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/ o゚⌒ ⌒゚o \ このままじゃオオウミガラスが一羽も残らなくなっちゃうお……大変だお
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今の時代であれば、保護しようという考えがすぐに浮かんでくるだろうが、当時は一味違った。
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/::::::⌒(__人__)⌒::::: \ だから今のうちに捕まえて剥製にして保存するお!
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こうして高い報奨金を確約されたオオウミガラス。これにハンターが食いつかないわけがなかった。
オオウミガラスはさらに狩猟が進み、どんどん数を減らしていった。
1844年6月3日。
ジグダー・イスレフソン、ヨン・ブランソン、ケティル・ケンティルソン、の3名の男達が、狩猟に訪れる。
そして、抱卵中の1組のオオウミガラス夫婦を発見し、まずオスを叩き殺した。残ったメスは卵を守ろうと籠城の構えをとったので、絞め殺した。
この殺された2羽こそ、最後に生き残ったオオウミガラスの夫婦だったと言われている。少なくともその後、まともな目撃談はない。
夫婦を殺した彼等は最後に卵を確認するが、騒動の中で割れてしまっていた。ガッカリした彼等は、割れた卵を岩礁の上に投げ捨てて帰ったと言われている。
最後のつがいは、コペンハーゲンで剥製にされた。値段は10クローネだったという。
余談
後世において、最後のオオウミガラスを殺した上記の三名は、悪人として語り継がれているという。
しかし何より、博物館やコレクターが保護より前に自分の物にしようとした欲深さが絶滅を加速させた最大の引き金であって、今では彼等の当時の行動も非難の対象となっている。
リョコウバトと同じく、学者の興味の対象外だったことから、繁殖力が低いことに気づけなかったこと。
また絶滅したのは1844年で、人間がより進歩に対して貪欲だった時代だったことが、その悲劇を生んだといえよう。
しかし、博物館などが躍起になって剥製づくりに取り組んでいたため、剥製として未だにその姿は残されている。
その剥製すら管理がずさんなせいで捨てられたドードーと比べれば、若干マシな最期だったのかもしれない。
リョコウバトと並んで「例えどんなに数がいても無闇に殺せばあっけなく絶滅する」という例として、有名な鳥である。
元祖ペンギン
先に「北極版のペンギン」と記したが、元々地元のブリタニア人に、この海鳥は「ペン・グウィン」と呼ばれていた。
語源には諸説あるが主に「白い頭」という意味で付けられていたなどと言われている。
しかし学名がつけられる段階においてペンギンの表記が用いられ、このオオウミガラスが元祖ペンギンとして定着したのである。
こちらは「脂肪」という意味で、太った体型のオオウミガラスに付けられるにあたってズレたものではなかった。
今のペンギンは、このオオウミガラスと姿が似ていることから付けられたとされている。種類としては近縁ではないのにも関わらず外見が似ていたのは収斂進化のためである。
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関連項目
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