伝説をこえてゆけ
オグリローマンとは、1991年生まれの日本の元競走馬・繁殖牝馬である。
名馬オグリキャップの半妹で、兄が立てなかった舞台を制した名牝。
主な勝ち鞍
1993年:ジュニアクラウン(地方重賞)、サラ・プリンセス特別(地方重賞)、ゴールドウイング賞(地方重賞)、ジュニアグランプリ(地方重賞)
1994年:桜花賞(GI)
概要
血統
父ブレイヴェストローマン、母ホワイトナルビー、母父シルバーシャークという血統。
父は米国からの輸入馬で、産駒にはダート馬が多かったが、二冠牝馬マックスビューティやオークス馬トウカイローマンなど芝GI馬も複数輩出した馬。
ホワイトナルビーはオグリキャップの母として有名だが、実はオグリキャップも含め15頭の産駒が地方競馬ながら全馬勝ち上がり、うち6頭が10勝以上を挙げた名繁殖牝馬。産駒の通算勝利数は驚異の133を数え、NARから特別表彰も受けた地方競馬界のビッグマザーであった。なおオグリキャップは6番目の子、オグリローマンは12番目の子にあたる。
デビュー~中央移籍
兄オグリキャップと同じく小栗孝一が所有、笠松の鷲見昌勇厩舎からデビューし、安藤勝己が騎乗。3戦目で2着に敗れたほかは全勝という競馬で、3歳(現2歳)は7戦6勝。翌年に兄と同じ中央競馬の瀬戸口勉厩舎に移籍する。なお、オグリキャップは移籍に際し、中央の馬主資格を持っていなかった小栗から佐橋五十雄に売却されたが、その後小栗が中央の馬主資格を取得していたためオグリローマンは小栗所有のまま中央馬となった。
中央初戦はOPエルフィンS。オグリキャップの妹の中央挑戦、しかも兄の背を知る武豊の騎乗とあって1番人気に推されたが最下位9着に惨敗。実はオグリローマンはどっしりと落ち着いていた兄オグリキャップとは真逆の臆病で敏感な馬で、他馬を極度に怖がるという難点を抱えていた。武豊も「初物づくしだけにこの一戦だけでは」とかばったものの、内心「どう乗ったらいいのか」と頭を抱えたという。
しかしファンは見捨てず、この年重賞に昇格した桜花賞トライアルのチューリップ賞は2番人気。武豊の関東遠征のため田原成貴が代打騎乗したこのレースでは、先行した前走から一転して後方から末脚に賭ける競馬で半馬身差の2着に善戦。陣営は手応えをつかんで桜花賞に出走する。
運命の桜花賞
武豊に手が戻った桜花賞は、外国産馬でクラシックに出られない3歳女王ヒシアマゾンが不在。阪神3歳Sでヒシアマゾンの2着したのちエルフィンSを勝ったローブモンタントがやや抜けた1番人気となり、2~5番人気は団子状態の混戦模様。オグリローマンは3番人気に支持された。
しかし困ったことに、オグリローマンはよりによって1枠1番を引き当ててしまう。通常なら内枠は有利(というより当時の阪神マイルは外枠が断然不利)なのだが、他馬を怖がるこの馬にとっては包まれたら全てが終わりかねない危険な枠であった。
本番、ゲートを決めたオグリローマンだが武豊はスッと中団に下げる。武自身は道中外に出すチャンスがなく半ば諦めていたというが、大物の血が騒いだのかこの日だけは他馬を怖がらなかったという。なおも内でじっと待たされながら4コーナーを通過したが、直線に入って馬群がばらけた一瞬の隙を突いて武豊が動き、オグリローマンは一気に大外に持ち出される。前では4,5頭が激しく競り合っていたが、残り1ハロンあまりで一気に加速したオグリローマンは一瞬で馬群を斬って捨て、内から抜け出していた12番人気の伏兵ツィンクルブライドを寸前でかわしたところがゴール板だった。
オグリローマンはハナ差で優勝。兄オグリキャップが立つことさえ出来なかったクラシック制覇を成し遂げ、阪神競馬場は兄の引退レースさながらのオグリコールに包まれた。地方出身馬の桜花賞制覇は史上初(クラシック全体では6頭目)で、以後も2002年の桜花賞を勝った公営門別出身のアローキャリーがいるのみ。また、芦毛の桜花賞馬は2021年現在ただ1頭である。
なお、鞍上の武豊は前年のベガに続く桜花賞連覇となったが、後年まで「完璧な騎乗」と自賛する前年に対し、オグリローマンの桜花賞については「なんで勝てたのか今でもわからない」といい、「これがオグリキャップの血なのかな」と振り返っている。
その後
その後は燃え尽きたように凡走を繰り返し、翌1995年1月に骨折したため現役を引退、故郷の稲葉牧場で繁殖入りした。繁殖牝馬としては10頭の産駒を送り出したが、地方重賞を勝ったオグリホットがいるものの中央で活躍するような子は残せなかった。しかし産駒のうち5頭の牝馬が繁殖入りしており、母オグリローマンや祖母ホワイトナルビー譲りの子出しのよさも相まってファミリーは拡大し、地方競馬で大きな勢力となっている。近年は2019年秋華賞6着のローズテソーロなど中央重賞に出走する子孫も出てきており、いつか再びオグリの血が中央で躍動する日が来るかもしれない。
オグリローマン自身は2011年に繁殖牝馬を引退。2015年に心不全のため24歳で眠るように世を去った。翌年には生前の功績が称えられ、母や兄と同じ「NAR特別表彰馬」に選出された。
血統表
*ブレイヴェストローマン Bravest Roman 1972 鹿毛 |
Never Bend 1960 鹿毛 |
Nasrullah | Nearco |
Mumtaz Begum | |||
Lalun | Djeddah | ||
Be Faithful | |||
Roman Song 1955 鹿毛 |
Roman | Sir Gallahad III | |
Buckup | |||
Quiz Song | Sun Again | ||
Clever Song | |||
ホワイトナルビー 1974 芦毛 FNo.7-d |
*シルバーシャーク 1963 芦毛 |
Buisson Ardent | Relic |
Rose O'Lynn | |||
Palsaka | Palestine | ||
Masaka | |||
ネヴァーナルビー 1969 黒鹿毛 |
*ネヴァービート | Never Say Die | |
Bride Elect | |||
センジユウ | *ガーサント | ||
スターナルビー | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Nasrullah 3×5(15.63%)、Nearco 4×5(9.38%)
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関連項目
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