オフグリッド(off-the-grid; OTG)とは、家屋などで電力会社が提供する送電網(ユーティリティ・グリッド)を引き込んでいない状態を表し、またその代わりに自家発電などで電力消費を賄っている事を指す言葉である。オングリッドの対義語。独立電源。
グリッドという言葉は電力以外にも水道・ガスなどの各種リソースを供給するパイプライン・敷設網を表しているため、それらから独立している状態をも指すが、特に送電網について独立したインフラ系統が整備されている事をオフグリッドと称している。またその定義上、電力会社への売電を行っていた場合は世帯内の電力需要を100%自家発電で賄っていたとしてもオフグリッドとは呼ばない。
オフグリッドを実現するには自家発電設備などのインフラ一式を用意する必要があるため、公益事業に依存するよりも割高で、また初期投資額が多くコスト回収に長期を要する事が一般的である。そういった意味でオフグリッド化のメリットは現状、コスト削減よりもLOHASなど環境重視型のライフスタイルに近づく事や、停電時も独立電源を確保する事で家屋や属する地域コミュニティの耐災害性を向上させられるという点にある。
僻地や過疎地域など公益事業に与る事が厳しい地理的条件下にある施設などではオフグリッドにせざるを得ない。
太陽光発電導入によるオフグリッド化
現在一般家庭においてオフグリッド化を実現するほぼ唯一の手段がソーラーパネル敷設による自家発電の導入である。自然エネルギーを利用した自家発電装置としては他に小型風力発電や太陽熱発電があるが、敷地面積や土地条件、コストなどの問題から導入可能な世帯は限られている。
かつてはソーラーパネルの電力変換効率が低く多大な敷設面積を要した事や、パネル自体も高コストなのに加えて蓄電設備の実用性が著しく低かった事が障壁となって導入を難しくしていたが、近年では技術発展による発電効率の向上や世界的な需要の拡大による低コスト化、蓄電設備の大容量化などによって導入が比較的容易となった。また家屋自体も無暖房住宅(パッシブハウス※)のように冷暖房コストを大幅に抑制可能なものが増加して来たため、それらと合わせて導入することでより実用性の高いオフグリッド環境を生み出すことが出来るようになっている。
※正確にはパッシブハウスは冷暖房が僅少で過ごせる住宅を指し、所謂無暖房住宅とは異なる。
ワッテージの低い電化製品のみを使用するような場合オフグリッドは比較的容易に実現可能だが現実的にはそのような製品のみで生活を送る事は難しく、ヘアードライヤーや加熱調理器など消費電力の高い製品を多用する事を想定すると一気に敷居が高くなる。特に冷暖房機能の付いた空調設備や給湯システムなどはコンスタントに高い電量を必要とし、また太陽光発電が行えない夜間にその需要が集中する。このため相応の蓄電装置を併せて導入しなければならない。
半オフグリッド化
ソーラーパネルを敷設するための面積や、蓄電装置などがまだ高価である事が仇となり完全なオフグリッド化には高い壁がある事は先述の通りである。そこで現実的な妥協策として半オフグリッド(semi off-the-grid)が提唱されている。
半オフグリッドでは電力会社の送電網と家屋の配電を切り離すのではなく、自家発電をメインの供給源としグリッドからの電力を補助利用(またはその逆)する事で快適な電気利用を保つという方針である。また契約次第で売電も可能なため投資額の償却も早める事が期待できる。反面配線系統が複雑化し、更に電力会社の主導する方針に沿った設計が必要となるためDIYの観点からは自由度が損なわれるというデメリットがある。
また特定の電力消費のみをカバーする目的で部分的なオフグリッド化を行うという選択肢も存在する。照明器具はLEDの登場により消費電力が大幅に低下しており、また12Vや24Vといった無資格で扱える低圧電源でも十分な光量を得られるためDIYでも手が出しやすい。照明のみであれば小型風力発電装置一基程度の発電量でも賄えるためそちらを採用する手もある。
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