概要
オランダ語は、インド・ヨーロッパ語族(印欧語族)のゲルマン語派の西ゲルマン語群に属する言語である。オランダ王国、ベルギー王国およびスリナムの公用語であることに加え、欧州連合(EU)の公用語の一つでもある。ただし、ベルギーのフランデレン地方で使われるのは「フラマン語」と呼ばれるオランダ語の亜種(方言)である。また、スリナムは南米でオランダ語のみが公用語となっている非常に珍しい国である(もとはオランダ領スリナムであった)。
同じ西ゲルマン語群に属している英語やドイツ語と比較的近い。単語・文法もかなり似ている(後述)。また、発音は一定の法則を守れば、ドイツ語同様に初心者でも発音できるが、割愛する(発音について誰か編集希望)。
アルファベット
a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x ij y z
基本的に英語と同じ26文字を用いる(発音は異なる)が、これにオランダ語独自の文字「IJ」(エイ)が加わる。これは、オランダ語では2文字ではなく1文字として扱われる。
例:IJssel(エイセル)…オランダの地名。
他にも発音の補助のためトレマ(ä ë ï ö ü)を使うケースがある。
基本的な文法
名詞の性
名詞の性に関しては通性・中性の二種類である。
元々はドイツ語と同じく男性・女性・中性の三種類だったようだが
長い年月を経て、男性名詞・女性名詞が統合され通性名詞となり
中性名詞はそのまま残されて今に至る。
冠詞
不定冠詞(英語のaに該当)は共通してeen(アン)である(「エーン」と発音すれば「1つの」を意味してしまうので注意)。
een boek (エーン ブク) 「一冊の本」
これらを区別するため、「一つの」を意味するeenは、éénと表記されることもある
またeenを含む文章を否定するときはeenの部分を
否定冠詞であるgeen(ヘーン)に変える。
定冠詞
前述したとおり、オランダ語には両性と中性という名詞の性が存在する。
定冠詞(英語のthe)においては両性はde(デ)、中性はhet(エト)を用いる。
昔の文章などでは男性・中性・女性の三変化が存在し記述されているが
今日のオランダ語では一般的に使われない。
また冠詞と名詞に格変化は存在しない。
人称代名詞
なお二人称には親称(家族や友人など親しい相手に使う。“君”と表記)と
敬称(親しくない相手、礼儀をわきまえる部分で使う。“あなた”と表記)の
2種類が存在する。ビジネスなど初対面の相手には普通は敬称を使う。
三人称の場合においては“人間”相手に使う場合と
“物事”相手に使う場合の二種類が存在する。
人間の場合は男女の二通りに分かれ、物事の場合はその名詞の性別によって
二通りに分かれる。
以下は主格の場合のみ述べる。詳細を知りたい場合はwikipediaへ。
主格
一人称単数(私は):ik(イク)
一人称複数(私たちは):wij(ヴェイ)
二人称敬称単数・複数(あなたは、あなた方は):u(ユー)
二人称親称単数(君は):jij(イェイ)
二人称親称複数(君たちは):jullie(ユリ)
三人称男性単数(彼は):hij(ヘイ)
三人称女性単数(彼女は):zij(ゼイ)
三人称人間複数(彼らは、彼女らは):zij(ゼイ)
三人称両性単数(それは):hij(ヘイ)
三人称中性単数(それは):het(エト)
三人称物事複数(それらは):ze(ゼ)
他の言語との類似性
英語・ドイツ語とは同じ西ゲルマン語派に属する言語である。
特に高地ドイツ語(ドイツ語(オランダ国境付近)の方言)とは
「言葉を習ってなくとも大体、意思疎通ができる」といわれるほど類似している。
例:ヨハン(英:ジョン)はミネラルウォーターを飲む
オランダ語:Johan drinkt mineraalwater.(ヨハン ドリンクト ミネラールヴァーテル)
英語:John drinks mineral water.(ジョン ドリンクス ミネラルウォーター)
ドイツ語:Johann trinkt Mineralwasser(ヨハン トリンクト ミネラルヴァッサー)
感覚で言ったら英語+ドイツ語÷2の様なものである。
もちろん、英語よりは難しいがドイツ語とは同程度あるいはそれ以下の難易度である。
なお、オランダではフリースラント州において
オランダ国内第二の公用語、フリジア語が日常的に使われている。
こちらは同じ西ゲルマン語群に属する言語で類似性はあるが
どちらかというとオランダ語よりデンマーク語に近い言語である。
ドイツ語とオランダ語に関する逸話
かつて江戸時代末期にドイツ人医師フィリップ・フォン・シーボルトが
東洋の植物、民俗などを研究するために長崎に来航した時、
通詞から「この者の蘭語は相当訛っていて怪しい」と報告を受け
長崎奉行がシーボルトに聞くと「私はオランダの高地出身なので」と
返答し、ドイツ人であることがばれずに済んだという逸話も残っている。
無論、低地であるオランダに高地地帯など存在しない。
しかし通詞は語学以外、そんなに教養は無かったので通った。
ちなみにシーボルトはドイツ南部(彼の出世時は神聖ローマ帝国ヴュルツブルク大公国)出身である。
主な会話表現
- Goedenmorgen! (フーデ・モルヘン) おはよう
- Goedemiddag! (フーデ・ミダハ) こんにちは
- Goedenavond! (フーデ・アーヴォント) こんばんは
- Hallo! (ハロー) やぁ、ハロー
- Welterusten! (ウェルテルステン) おやすみなさい
- Dag! (ダハ) こんにちは、さようなら、ごめん下さいetc...
- 時間を関係なく使える。日本語の「どうも」的なもの。
- 行ってらっしゃい、行ってきます、お帰り、いらっしゃいませなど何でも使える
- Hoi(ホイ):やぁ→仲間など親しい間柄で使う言葉
- Hoe heet u?(フー・ヘーテュ?) あなたの名前は何ですか?
- Ik heet...(イク・ヘート) 私の名前は~です
- Mijin naam is...(メイン・ナーム・イス) 私の名前は~です
- ja (ヤー) はい
- nee (ネー) いいえ
- Dank u (ダンキュー) ありがとう
→Dank u well (ダンキュ・ウェル) どうもありがとう - Leuk je te zien! (レーク・イェ・テ・ズィーン) よろしくお願いします
→Prettig met u kennis te maken. (プレタハ・メト・ユー・ケニス・テ・マーケン)
初めまして(改まった言い方。厳格に訳すと“貴方と知り合いとなれて嬉しい”) - Dut is... (ディト・イス) これは~です。
主な単語
家族
ouder(アウデル):親
ouders(アウデルス):両親
vader(ヴァデル):父親
moeder(ムデル):母親
kind(キント):子供
zoon(ゾーン):息子
dochter(ドホテル):娘
broer(ブルール):兄弟
zus(ズュス):姉妹
grootvater(フロートヴァデル):祖父
opa(オーパ):おじいちゃん
grootmoeder(フロートムデル):祖母
oma(オーマ):おばあちゃん
kleinkind(クレインキント):孫
oom(オーム):おじ
tante(タンテ):おば
国家・国民
Japan(ヤーパン):日本
→Japans(ヤパンス):日本語、日本の…
→Japanner(ヤパーネル):日本人(男性)
→Japanse(ヤパンセ):日本人女性
Nederland(ネーデルラント):オランダ
→ネーデルラントとはもともと「低地」という意味である。
そのためドイツ語やロマンス語系の言語では「ザ・低地」呼ばわりである。
→Nederlander(ネーデルランデル):オランダ人(男性)
→Nederlandse(ネーデルランセ):オランダ人女性
→Nederlands(ネーデルランツ):オランダ語、オランダの…
Verenigde Staten(ヴェレニヒデュ スタータン):合衆国
→Vereinigten Staaten van Amerika(- ファン アメリカ):アメリカ合衆国
→Amerikaans(アメリカーンス):アメリカ人
China(シーナ):中国
→ドイツ国境付近だとドイツ語読みの“ヒーナ”と聞こえる場合もある。
→Chinees(シネース):中国語、中国の…、中国人男性
→Chinese(シネーセ):中国人女性
日本におけるオランダ語
江戸時代においてオランダは日本と外交関係を持つ唯一の欧州国であった。
そのため欧州の学問はオランダ限定だったために
ペリー提督による開国に至るまでこの当時の欧州の学問・文化の総称は「蘭学」と呼ばれた。
そして今現在に至るまでオランダ語由来の日本語が幅広く使われている。
150年ほど前は学者の間でもてはやされたオランダ語であるが
今現在、オランダ語を一科目として学べる大学は日本には存在しない。
オランダ語由来の日本語
- お転婆…“飼い慣らせない”を意味する“ontembaar”(オンテンバール)
- (博多)どんたく、半ドン…“日曜日”を意味する“zontag”(ゾンターク)
- やんちゃ…オランダ人の男性名“Jantje”(ヤンチェ)
- リュックサック…元の綴りは“rugzag”(リュッフザック)
- ピンセット…元の綴りは“pincet”(ピンセット)
- メス…“ナイフ”を意味する“mes”(メス)
- ピストル…元の綴りは“pistool”(ピストール)
- ブリキ…元の綴りは“blik”(ブリク)
- ランドセル…“(兵士用)背嚢”を意味する“ransel”(ランセル)
- ビール…元の綴りは“bier”(ビール)
- ラーフル…元の綴りは“rafel”(ラーフル)
関連動画
関連項目
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