オルタナティブ・ロック /オルタナティヴ・ロック(Alternative Rock)とは、ロックのジャンルでありヘヴィロックの一種である。
パンクとハードロック、ヘヴィメタルがミクスチャーされたようなロックである。
概要
1990年代にパンクロックムーブメントやレッド・ツェッペリン、ブラック・サバスなどのオーソドックスなハードロックを精神的支柱と音楽性の核とし、それまで主流であったHR/HMのまるでテンプレート的な様式、鋲の付いたレザーファッションやタイツなどの衣装、あたかも振付師に指導されたかのようなステージアクション、大手レコード会社主導のメジャーなロックの産業化を激しく嫌い、アンダーグラウンドシーンで起こった一群のインディーズ・ロックに冠された名である。
豪快ヘヴィでポップな轟音ロックではあるが陰鬱で退廃的、気怠い哲学な歌詞や曲調はプログレッシブ・ロックにも通じ革新的な音楽ムーブメントであった。
当初シアトルやカリフォルニアのウィスキー・ア・ゴーゴーなどを中心に活動していた、それら新興勢力の多くには、ステージを派手な衣装ではなくカジュアルな普段着で行うので、音楽メディアからはグランジ(薄汚れた)という形容がされたが、このレッテルを貼られたアーティストたちは憤慨し、グランジを名乗る者は皆無である。
オルタナティヴには、「もうひとつの選択、代わりとなる、代替手段」という意味があり、80年代末期から90年代初期、音楽メディアからは主流から外れていると判断されていた、アンダーグラウンドシーンの新興のアーティストたちの音楽性は、ヒップホップを取り入れていたり、ワールド・ミュージックを取り入れていたりと雑多で、なんでもありの状態であった。日本ではミクスチャーと呼ばれるバンドやラウドロックとされるバンド、パワーメタルやハードコア・パンクなどでも少しでもクラシック・ロック的な形態を持つ新興のアーティストなら、総じてこのカテゴリーの中に放り込まれていた。パンクとHR/HM的ヘヴィロックを混合したような音楽性であったグランジも、やがてこのなんでもありであったオルタナティブ・ムーブメントと呼ばれた、これまでのメジャーなロックではなく非主流とされていた新興の勢力と同一視され、オルタナティブ・ロックの名を冠されるようになる。
オルタナティブ・ロック最大のブームの立役者はニルヴァーナ(Nirvana)であった。彼らの登場は旧態然としたロックに新鮮な空気を呼び込み、またロックの原初的な暴力性を想い起こすものであった。また皮肉なことに、かつてのパンクロックムーブメントとは異なり、聴衆の巨大な支持を集め、ニルヴァーナを含めたオルタナティブ・ロックや、マスコミからは非主流とみなされていたミクスチャーはスタジアム・ロックと化し、80年代に隆盛を誇った綺羅びやかなHR/HMを一気にメジャーシーンから駆逐していった。
メジャーであったHR/HMの中にはヘヴィメタル的な衣装を廃しメタル的様式を弱めて古典的なハードロックよりの音楽性に戻り、オルタナティブ・ロックに迎合して生き残りをはかる動きもあったが、多くのヘヴィメタルバンドはよりヘヴィメタル的特徴を保守、先鋭化させマニアックな愛好者を確保することによって現在でも根強い人気を維持している。
オルタナティブ・ロックの代表格は上記のニルヴァーナ、パール・ジャム、ダイナソー・Jr、サウンドガーデン、フー・ファイターズなどがあり、現在(本記事作成時点、2019年)でも同種の音楽はロックの主流的位置を占めている。
またオルタナティブ・ロックの人気を支えたニルヴァーナのカート・コーバン、サウンドガーデンのクリス・コーネルらオルタナのアイコン的スターは共に自殺している。
最後にオルタナ、グランジ、ハードロック、ヘヴィメタルなどのジャンル名は、そう分類しておけば便利な場合もあるというだけで、実体を正しく表わす形容ではなく、必ずしもアーティスト側からそう称されることを好まれるものではないことは留意するべきであろう。
関連動画
関連項目
- 4
- 0pt