オーストラリアGP(MotoGP)単語

MotoGPのメインイベントである最大排気量クラス決勝の開始時刻は変遷している。レース開始時刻が確認できる1998年から2019年までの間、14時台開始が1回、15時台開始が11回、16時台開始が10回となっている。

こうした決勝開始時刻を決めるときは、MotoGPのテレビ視聴者が最も多い中央ヨーロッパ時間諸国（スペイン、イタリア、フランス、ドイツなど）が何時になるかということを考慮するのが常である。

最大排気量クラスの決勝開始時刻の変遷をまとめた表は、次の通りになる。中央ヨーロッパ諸国の決勝開始時刻によって色分けした。また、決勝開始時刻の1の位は切り捨てた。たとえば15時07分なら15時と表記している。
　

	開催日	現地決勝時刻	中央欧州時刻		開催日	現地決勝時刻	中央欧州時刻
1998年	10月4日	15時◇	6時◇	2009年	10月18日	16時◇	7時◇
1999年	10月3日	15時◇	6時◇	2010年	10月17日	16時◇	7時◇
2000年	10月29日	15時◇	5時◆	2011年	10月16日	16時◇	7時◇
2001年	10月14日	15時◇	6時◇	2012年	10月28日	16時◇	6時◆
2002年	10月20日	15時◇	6時◇	2013年	10月20日	16時◇	7時◇
2003年	10月19日	15時◇	6時◇	2014年	10月19日	16時◇	7時◇
2004年	10月17日	15時◇	6時◇	2015年	10月18日	16時◇	7時◇
2005年	10月16日	14時30分◇	5時30分◇	2016年	10月23日	16時◇	7時◇
2006年	9月17日	15時10分◆	7時10分◇	2017年	10月22日	16時◇	7時◇
2007年	10月14日	15時◇	6時◇	2018年	10月28日	16時◇	6時◆
2008年	10月5日	15時◇	6時◇	2019年	10月27日	15時◇	5時◆

※現地決勝時刻の横に◆があるものはオーストラリア・ヴィクトリア州においてサマータイムに入っていないことを示し、現地決勝時刻の横に◇があるものはオーストラリア・ヴィクトリア州においてサマータイムに入っていることを示す。

※中央欧州時刻の横に◆があるものは中央欧州においてサマータイムに入っていないことを示し、中央欧州時刻の横に◇があるものは中央欧州においてサマータイムに入っていることを示す。

フィリップアイランドサーキットがあるオーストラリア・ヴィクトリア州とヨーロッパ諸国には、サマータイムがある。

オーストラリア・ヴィクトリア州のサマータイムは、10月第1日曜日午前2時になったら時刻を1時間進め、翌年4月第1日曜日午前3時になったら時刻を1時間遅くして元に戻す制度である。

ヨーロッパ諸国のサマータイムは、3月最終日曜日午前1時になったら時刻を1時間進め、10月最終日曜日午前2時になったら時刻を1時間遅くして元に戻す制度である。

そのことを踏まえると、ヴィクトリア州と中央ヨーロッパ諸国の時差は次のようになる。
　

	ヴィクトリア州	中央ヨーロッパ諸国	時差
3月最終日曜日午前1時（ヨーロッパ）から 4月第1日曜日午前3時（ヴィクトリア州）まで	サマータイム	サマータイム	9時間
4月第1日曜日午前3時（ヴィクトリア州）から 10月第1日曜日午前2時（ヴィクトリア州）まで	サマータイムなし	サマータイム	8時間
10月第1日曜日午前2時（ヴィクトリア州）から 10月最終日曜日午前2時（ヨーロッパ）まで	サマータイム	サマータイム	9時間
10月最終日曜日午前2時（ヨーロッパ）から 3月最終日曜日午前1時（ヨーロッパ）まで	サマータイム	サマータイムなし	10時間

レース決勝の開始時間が遅いので、マシンの走行に悪影響がある

MotoGPを運営するドルナとしては、メインイベントである最大排気量クラス決勝の開始時刻をできるだけ遅らせて、中央欧州でのテレビ視聴率を稼ぎたい。

そういう事情があってレース開始時刻が遅い時間帯になった場合、ライダーにとっては厳しい。

16時00分という夕方の時刻だとかなり日が傾いており、日照量が少ない。日照量が少ないため、路面温度が上がりにくく、転倒者が増えてしまう。

軽排気量クラスの車重が軽いマシンならタイヤも細くてタイヤのグリップが走行に与える影響は少ないが、最大排気量クラスの車重が重いマシンはタイヤが太くてタイヤのグリップが走行に与える影響が大きい。路面温度が低くてタイヤがグリップしないというのが最大排気量クラスでは大問題になりやすい。
　

開催時期の検討

10月は寒い

1997年からフィリップアイランドサーキットでMotoGPが開催されるようになったが、開催時期は10月で定着している。これは現地において春の初めといったところで、結構寒い。

10月の平均最高気温は17.9度であり、東京の4月と同じぐらいで、寒い（資料1、資料2）。そのうえ、サーキット南のバス海峡から吹き付ける強風でさらに冷える。気温が低く路面温度が低くなりがちで、タイヤがグリップしづらく、転倒が多くて危険な開催である。

観客がことごとく分厚いジャケットを着込んでおり（画像1、画像2）、いかにも寒そう。

2016年は気温12度にまで下がり、ピットの中でニット帽を被る人が多かった（画像1、画像2、画像3）。人間の体は気温15度を切ると暖房がほしくなり、気温12度を切ると耳や手が凍り付く感覚になる。ニット帽、イヤマフ、手袋といった防寒対策を考えなければならない。

日差しが差し込めば路面温度が上がるが、雲がやってきたり夕方になったりすると路面温度も低くなる。先述のように運営のドルナは夕方16時に最大排気量クラスの決勝を開始したがっており、その時刻になると日照量が減って寒い。
　

3月は暖かいが、F1が開催される

フィリップアイランドサーキットの開催時期を3月に移行してはどうかという提案が、毎年のようにあげられている。3月は現地において夏の終わりにあたり、平均最高気温が22.3度で、東京の5月下旬と同じぐらいでだいぶ暖かい（資料1、資料2）。

しかし、1つの障壁がある。3月はフィリップアイランドサーキット近くのアルバートパークでF1を開催することが恒例となっている。アルバートパークでのF1開催は1996年から始まっており、ほとんどが3月開催となっている（記事）。

メルボルンのアルバートパークでのF1開催と、メルボルン近郊のフィリップアイランドサーキットでのMotoGP開催は、どちらもオーストラリアグランプリコーポレーション（AGPC）^[1]という団体が取り仕切っている（記事）。そのCEOのアンドリュー・ウェスタコットが、3月にF1とMotoGPの開催を集中させることを拒んでいる。3月と10月にビッグイベントを分散させたほうがメルボルンのホテル業界などの売り上げにとって好ましいからである。

「MotoGPを3月に開催してほしい」という要望は、ずっと昔からMotoGP ライダーたちから出されていた。しかし、そういう要望は拒否され続けていた。
　

2019年の悪天候とF1・MotoGP交換案

2019年のMotoGP開催は、寒さと強風による状況の悪化で予選が土曜日から日曜日朝に延期されるほどだった（記事）。

2019年の悪天候が運営側に響いたのか、2021年 2月頃にはアンドリュー・ウェスタコットCEOが「3月にMotoGP、11月にF1を開催する体制を検討している」と言い出すようになった（記事）。
　

開催国紹介

開催地紹介ビデオ

2012年以前にドルナが作成した開催地紹介ビデオはこちらである。メルボルンやフィリップ島の観光名所を映したものとなっている。
　

プレイベント

フィリップ島から北東に25kmほど離れたこの場所にマルー動物公園がある。ここでプレイベントをすることがあり、ライダーたちがコアラや蛇と触れ合う（動画）。

フィリップ島の東にはチャーチル島があり、「Heritage Farm（伝統的な農場）」があって、19世紀の農場を再現している。2018年にはMotoGP ライダーたちを招いた（動画、画像）

メルボルンはテニスの全豪オープンを開催する都市である。2018年にはテニス選手のレイトン・ヒューイットを招いてプレイベントを行った（動画1、動画2、動画3）。

メルボルンの真ん中にはヤラ川が流れていて、いつも茶色に濁っている。そのヤラ川沿いにバイクを走らせたり、ヤラ川でボートを漕いだりするプレイベントが開催された（動画1、動画2）

メルボルンの西のこの場所に、グレートオーシャンロードの12使徒と呼ばれる岩がある。2019年にジャック・ミラーとファビオ・クアルタラロがここまでツーリングした（動画、画像）

オーストラリアは英語圏の一員なので、クリケットが普及している。スペイン語圏のマルク・マルケスにクリケットを教えるプレイベントが開催されたことがある（動画）。

メルボルンの中のこの場所に、旧メルボルン監獄がある。ジャック・ミラーとアレックス・リンスがここの囚人になりきって小芝居動画を作ったことがある（動画）。ここに投獄された人物の中にはネッド・ケリーという盗賊がいて、イギリスの植民地主義者に抵抗した人物とされてオーストラリアの人気者となっている。2019年はジャック・ミラーが「鎧を着て戦いに臨んだネッド・ケリー」のような銀色のレーシングスーツを着てレースに臨み、見事に表彰台を獲得している（動画1、動画2、動画3）。ただし、ジャック・ミラーのレーシングスーツを作るダイネーゼはジャックの要望を上手く理解し切れていなかったらしく、ジャックがぼやいている（記事）。
　

オーストラリア人ライダーの出身地

オーストラリアはダートトラック（平坦な土の路面を走る競技）のバイクレースが盛んであり、マシンコントロールに長けたライダーを多く輩出する。

ケーシー・ストーナーが13歳のころのレース動画がある。最初から独走しているのがケーシー。

オーストラリア人のMotoGP ライダーの出身地は以下の通りである。太字のライダーは世界選手権でチャンピオンを獲得したことがあるライダーとなっている。
　

	生年月日	出身州	出身地
ジャック・ミラー	1995年 1月18日	クイーンズランド州	タウンズビル
アンソニー・ウェスト	1981年 7月17日		メアリーバラ
クリス・バーミューレン	1982年 6月19日		ブリスベン
ミック・ドゥーハン	1965年 6月4日		ブリスベン
ケーシー・ストーナー	1985年 10月16日		サウスポート
アンドリュー・ピット	1976年 2月19日	ニューサウスウェールズ州	ケンプシー
トロイ・ベイリス	1969年 3月30日		タリー
ギャリー・マッコイ	1972年 4月18日		シドニー
ワイン・ガードナー	1959年 10月11日		ウロンゴン
レミー・ガードナー	1998年 2月24日		シドニー
ケヴィン・マギー	1962年 7月16日	ヴィクトリア州	ホーシャム
アーサー・シッシス	1995年 6月15日	南オーストラリア州	トゥーウェルズ