カウンターステアとは、コーナー走行中の自動車(四輪・二輪の両方を含む)の後輪が滑っているとき、その滑りを抑制するために、進行方向とは逆方向へハンドルを切ることをいう。
漢字で表すと「逆操舵」となる。「カウンターを当てる」「逆ハン(逆ハンドル)を切る」とも言う。
カウンターは英語のcounterで、「逆」という意味。
四輪自動車のカウンターステア
概要
モータースポーツのドライバーから雪国でトラックを運転するおじちゃんおばちゃんまで、様々なレベルの人が使う走行テクニックである。
コーナーを旋回している最中の四輪車両の後輪が滑ることを「テール(tail・・・尻尾、車両後部という意味)が滑る」というが、テールが滑ったときに、何もせず放置しているとそのクルマがスピンしてしまう。
左コーナー旋回中にテールが流れたとしてそのまま左へハンドルを切りっぱなしにすると、マシン全体が左回転にぐるっと回ってスピンしてしまうのである。
スピンしたらいけないので、左コーナー旋回中にテールが流れたら右にグッとハンドルを切り、テールの滑りを防いでスピンを止める。これがカウンターステアである。
滑りやすい路面のモータースポーツで頻出する
四輪車両のモータースポーツの中には、露出した土の路面を走行する競技がある。ラリー、ラリークロス、ダートトライアルなどである。
そういう競技においてコーナーを走るとき、マシンを故意に滑らせてドリフトさせながらコーナーを抜けていくことが多い。ドリフト走行する際にカウンターステアは必須の技能であるので、カウンターステアの様子がしばしば見られる。
こちらやこちらの画像が典型的なカウンターステアの瞬間。左コーナーを旋回しているのに、前輪は右を向いている。
カウンターステアをしたら、適切なタイミングでハンドルを戻す
左コーナー旋回中にテールが流れたら右にグッとハンドルを切り、カウンターステアを当てて、テールの滑りを防いでスピンを止める。
ところがカウンターステアをしっぱなしにするのはダメで、テールの滑りが収まったらスッとハンドルを左に戻さねばならない。ハンドルを戻すのが遅れてハンドルを右に切るカウンターステアの時間が長くなると、今度はテールが逆方向に流れ、マシンが右に行こうとしてしまう。これを「お釣りを貰う」だとか「タコ踊り」「大タコ踊り」などと言う。
「お釣りを貰う」ことを防ぐため、カウンターステアをしたあとに適切なタイミングでハンドルを戻すことができるよう、練習を積み重ねる必要がある。
テレビゲームの中に登場する
四輪レースのテレビゲームで、しばしばカウンターステアの操作を要求されることがある。
有名なのが「インド人を右に」で、左コーナーを旋回中のマシンのテールが滑っている写真を載せつつ「ハンドルを右に切ってカウンターステアにしてテールの滑りを止めよう」と解説するゲーム雑誌記事が元ネタである。
バイクのカウンターステア
概要
四輪の場合とほぼ同じ。
左コーナー旋回中にリアタイヤが流れたとしてそのまま左へハンドルを切りっぱなしにすると、マシン全体がフロントタイヤを軸にして左回転にぐるっと回る感じになり、それを放置すると切れ込んで転倒してしまう。転倒するのは嫌なので、ライダーは無意識のうちにハンドルを右に切り、マシンの回転を止めようとする。これがカウンターステアとなる。
滑りやすい路面のモータースポーツで頻出する
バイクのモータースポーツの中には、滑りやすい路面で実施されるものがある。
起伏のある土の路面を走行するモトクロス、平坦な土の路面を走行するダートトラック、平坦な氷の路面を走行するアイスレース、などがそれに当たる。こうした競技ではカウンターステアが頻出する。
こちらやこちらがダートトラックにおけるカウンターステアの瞬間。こちらがアイスレースにおけるカウンターステアの瞬間。いずれも、左コーナーなのにフロントタイヤが右の方向を向いている。
MotoGPで頻出する
MotoGPはアスファルトで舗装した路面で行われるので、比較的にリアタイヤが滑りにくいはずなのだが、しかしそれでもカウンターステアが発生するシーンは多い。
2010年から2018年までのMoto2クラスでは、カウンターステアのシーンがよく見られた。こちらの動画やこちらの動画のようなシーンが多くのライダーによって作り出されてきた。リアタイヤをズルッと滑らせつつ、カウンターステアをしながらコーナーに飛び込んでいる。
MotoGPクラスにおいてもカウンターステアは頻繁に見られる。レース中継だとスーパースローカメラでバイクがゆっくり動いている映像が流れるが、そのときフロントタイヤの向きをよく見てみるとコーナーの向きと逆の方向に向いていることがしばしばある。スーパースローカメラの画像が流れたらフロントタイヤの向きを確認してみよう。
最軽量級のMoto3クラスではあまりカウンターステアのシーンが見られない。
フルカウンター
自転車のハンドルは、直進方向を0度とすると、90~100度程度まで曲げることができる。
オートバイのハンドルは自転車ほど曲がらない。教習所に出てくるようなネイキッド型の400ccバイクだと、だいたい30度ぐらいの舵角である。
MotoGPに出てくるようなレース専用バイクともなると舵角はさらに小さく、ほんのちょっとしかハンドルを切ることができない。そういう車両でカウンターステアをすると、すぐにカツンと限界まで当たってしまう。限界までカウンターステアをすることを「フルカウンター」と呼ぶ。
こちらの動画は、ツインリンクもてぎの1コーナーをMoto2クラスのマシンが走行している動画である。これがまさに「フルカウンター」の状態で、これ以上ハンドルを左に切ることができない。
関連動画
関連項目
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