概要
カシパン目に属する、不正形類という「ウニらしくない」ウニの一員。とても平たい姿をしており、世界中の主に浅い海の砂や泥の中に生息している。特徴的な名前は明治以降にその姿を菓子パンなどの甘食に見立てて付けられたと言われている。カシパンウニとも。
同じ不正形類のブンブクの仲間とは違い、海底に浅く潜り生活している(ブンブクは深く潜る)。反口側(表)の短い棘を「ふるい」のように使って周囲の有機物を濾し取り、それを全身に生えた管足で裏側中央にある口まで運んで食べるという独特な餌の取り方をする。時には海底を埋め尽くすほど高密度で分布することもある。
他のウニと同じく、カシパンの仲間の殻も海岸などで拾うことができ、アクセサリーに加工されたりと人気がある。
英名は平たい体を1ドル硬貨に例えて「sand dollar(サンドダラー)」。「sand cake(砂地のケーキ)」「cake urchin(ケーキのウニ)」という呼び名もある。また、ニュージーランドでは「sea cookie(海のクッキー)」「snapper biscuit(フエダイのビスケット)」、南アフリカでは「pansy shell(パンジーの貝)」とも呼ばれている。それほど平らでない種は「sea biscuit(海のビスケット)」とも。
こんな名前だが、可食部が少なく色も食欲をそそらない、種によっては異臭がするなどの理由で食用には向かない。
不正形類について
不正形類には他にもタマゴウニ、上述のブンブクなどがいる。
生態や姿形がよく似たタコノマクラやセンベイウニの仲間(タコノマクラ目)も不正形類で、以前はカシパンの仲間もタコノマクラ目に分類されていたが、現在は系統が違うと判明したため別の目になっている。
カシパン目には殻長1cm以下の小さなウニであるボタンウニやマメウニの仲間も分類されている。
不正形類はジュラ紀頃に出現したウニの中では比較的新しいグループで、砂や泥に潜ることに特化している。ウニを含む棘皮動物の特徴である五放射相称を歪ませ、疑似的に左右相称の体をしているが、カシパンの仲間だと生体を一見しただけでは分かり辛い種もいる。肛門が殻の頂上ではなく後ろ(進行方向の反対)にあるのも特徴。殻には呼吸に使う五放射の花や星のような模様(花紋)がある。
カシパンの仲間は新生代以降に出現したと考えられている。
カシパンの仲間たち
- Scaphechinus mirabilis ハスノハカシパン
ヨウミャクカシパン科。殻長6cm。潮間帯~水深125mに生息。生きている時は紫色をしている。名前の由来は口側の殻の模様(溝)から。この種を含むヨウミャクカシパン下目の多くの種の幼体は、磁鉄鉱を体内に溜めこむという何気にすごい生態を持っており、磁石に付く。波で流されないための重りにしていると考えられている。かつて早川いくを・著『またまたへんないきもの』で取り上げられたナミベリハスノハカシパンはハスノハカシパンと同じ種だということが判明している。 - Astriclypeus manni スカシカシパン
スカシカシパン科。殻長12cm。潮間帯~水深35mに生息。殻を貫通する「透かし穴」が5つ開いているのが特徴。生きている時は粘液を分泌しており、ぬめぬめしている。日本固有種。タレントの中川翔子が好きだと言っており、スカシカシパンマンというキモいキャラクターが生まれている。ゲーム化もされた。 - Laganum fudsiyama フジヤマカシパン
カシパン科。殻長4cm。水深50~645mとやや深い場所に生息。他のカシパンより反口側(表)の中央が盛り上がっているのが特徴で、和名はこれを富士山に例えたもの。/^o^\フッジッサーン - Peronella japonica ヨツアナカシパン
カシパン科。殻長6.5cm。水深5~50mに生息。和名は生殖孔が4つ開くことが由来で、スカシカシパンのように透かし穴が開いている訳ではない。日本近海にのみ生息している。
ここに挙げた種はごく一部であり、他にも様々な種がいる。カシパンの仲間は姿が似た種が多く、同定が難しい。
西アフリカの海岸には、ハグルマカシパン(Rotula deciesdigitatus)やHeliophora orbicularisといった殻の後方に歯車のような切れ込みが入った珍種が生息していることで知られている。ハグルマカシパンは海洋生物の国際的なデータベースWoRMS(World Register of Marine Species)のロゴマークに採用されている。
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