カタールとは、
- (Qatar) 中東にある国家。この記事で解説。
- (katar, kutar) インドで古来から使われている短剣。 → カタール(武器)
- (katal) 触媒の活性を示す単位。モル毎秒(mol/s)で定義される。
基本データ | |
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正式名称 | カタール国 دولة قطر |
国旗 | |
国歌 | カタール国歌 |
公用語 | アラビア語 |
首都 | ドーハ(Doha) |
国家元首 | タミーム首長殿下 |
面積 | 11,427km²(世界第158位) |
人口 | 約170万人(世界第148位) |
通貨 | カタール・リヤル(QAR) |
カタール(Qatar)とは、中東にある国である。湾岸諸国の1つ。
概要
日本国の外務省が定めている正式名称は「カタール国」。漢字では華太瑠など。国連加盟国の中でQで始まる国名をもつのはカタールだけである。
首都はドーハで、様々な高層建築物が林立している。日本ではサッカーの「ドーハの悲劇」で主に知られる。
アラビア半島北岸、ペルシア湾に面したカタール半島のほぼ全域を占める(地図)。国土の大部分は平坦な砂漠で、最も標高が高い場所でも103mしかない。また耕地面積は国土の0.6%と非常に少ない。
面積は秋田県よりやや狭く、人口は鹿児島県と同じくらい。居住者の約8割がドーハとその周辺に住んでいる。また南アジアやフィリピン、北アフリカなどからの外国人労働者が居住者の4分の3ほどを占め、カタール国籍をもつカタール人は30万人程度に過ぎない。
公用語はアラビア語だが、かつてイギリスの保護下にあった影響で英語も広く使われている。
国土全域が砂漠気候に属し、5月~10月は平均気温が約35℃、最高気温は50℃近くまで上昇することもある。ただし室内はクーラーがガンガンに効いていることが多い。一方11月~4月は平均20℃前後と比較的過ごしやすくなる。年間雨量は数十mm程度で、まったく雨が降らない年も。なお首都ドーハは海沿いなので、昼間は乾燥するが夜間において湿度が非常に高くなり、夜間に外出すると眼鏡が曇るほどである。
天然ガスと石油によって経済は潤っており、電気・水道・ガスなどの公共料金や診療費がタダなほか、車の購入時に8割を国が負担(但し男性に限る)、挙げ句には成人すると一定面積の土地が国から貸与され、10年後に自分のものになるという制度まである。
2013年6月以降の国家元首はシェイク・タミーム・ビン・ハマド・アール・サーニー首長殿下である。2018年現在において世界中で最も若い君主として知られる。
国旗
縦横比が11:28と世界一横に細長い国旗(記事冒頭の基本データ参照)。9つのギザギザは独立当時の行政区を表す。このギザギザが省略され、直線で表されることもある。
右側の赤茶色の部分は元々戦争で流された血を表す赤色だったが、強い日差しの下で赤茶色に褪せてしまい、そのまま現在の赤茶色に変更された。バーレーン国旗が非常によく似ているため、これと差別化する意図もあった。
宗教
カタール人の殆どはスンニ派のイスラム教徒で、イスラム法と一般法が併用されている。これにより豚肉類、酒類、猥褻な写真・映像などの持込が禁止されており、外国人でも許可証を購入した上で国が定めた場所でのみしか飲酒することが出来ない。
イスラム法に基づく一夫多妻制が認められていて3人まで妻を娶る(めとる)ことができるが、それを実現するのは相当に経済力を持つごく一部の人に限られる。また、妻Aと妻Bの扱いをまったく平等にしなければならないといった厳しい制約が存在する。
社会問題
居住者の多くを占める外国人労働者への扱いが悪く、多数の死者を出していることで知られている。英国のガーディアン紙が2021年2月に「10年間で6500人の外国人労働者が死亡している」と報じ[1]、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが2021年8月26日に調査を要求した[2]。
経済
1人当たりのGDPは約9万ドル(2008年、IMF調べ)で、日本の3倍弱。これを支えているのは政府主導で行われている天然ガスと石油の採掘である。
原油埋蔵量は150~250億バレル、天然ガスの埋蔵量は25兆立方メートルにも及び、特に天然ガスは世界のLNG(液化天然ガス)生産能力の3割のシェアを占める。生産された天然ガスは主に日本・韓国・シンガポールなどアジア諸国に輸出され、日本では天然ガス輸入先の第4位がカタールになっている。
前述の通り労働力の殆どを外国人労働者に依存しているため、人口増加に伴う若年層の雇用確保問題もあって政府はホワイトカラーの自国民化を目標に掲げている。
企業
- アルジャジーラ
1996年にカタール首長が設立した衛星テレビ局。24時間アラビア語と英語でニュースを流し続けており、「中東のCNN」とも形容される。2001年の米国同時多発テロ及びアフガニスタン紛争以降、アラブ系メディアとして注目を集めている。 - カタール航空
ドーハ国際空港をハブ空港とし、世界85都市に就航する国営航空会社。日本へはドーハ-関空-成田の路線が週7便運行されている。
外交
湾岸諸国の一角であり、サウジアラビアを盟主とするGCCの一員である。
しかし、ペルシャ湾のガス田開発を巡ってイランと関係を良好に保たねばならないという事情もあり、サウジアラビアとイランの間で板挟みとなっている。
2017年6月にはサウジアラビアがカタールとの断交を発表し、カタールは窮地に立たされた。しかし、2021年1月になってサウジアラビアとの断交状態は解消された。詳細は湾岸諸国の記事を参照のこと。
カタールが独立したのは1971年9月3日であるが、それ以前はイギリスの保護国だった。21世紀になっても英国との関係は良好であり、首長を輩出するサーニー家がイギリスの名門大学に留学するなどしている。
文化
食文化は肉料理中心であるが、イスラムの教義により豚肉を食すことは禁じられている。主な肉料理としてはケバブやシャウルマ(チキンやラム肉と生野菜をマヨネーズやヨーグルトソースなどで味付けして薄いパンで巻いた料理)が挙げられる。
男性はトーブと呼ばれる白く長いシャツドレスと白い布のかぶりものを、女性はアバヤという黒いロングドレスとヒジャブという黒いスカーフを身に纏っていることが多い。
鷹狩りが現地人にとって憧れの趣味であるらしく、上流階級の間で好まれている。
ラクダが乗り物としていまだに現役である。首都ドーハにはラクダ市場があり、購入されたラクダがクレーンで吊り上げられて購入者に引き渡される。
スポーツ
スポ―ツ愛好家である前首長シェイク・ハマド・ビン・ハリーファ・アール・サーニーの意向もあって、国内の運動競技発展に力が入れられている。サッカーのカタール・スターズリーグは潤沢なオイルマネーで欧州や中南米から有力選手をかき集め、色々な意味で注目を浴びた。
現首長のシェイク・タミーム・ビン・ハマド・アール・サーニーもスポーツ振興に力を入れている。競馬の凱旋門賞への出資や、フランスの強豪サッカークラブであるパリ・サンジェルマンの買収も彼が設立した財団によって行われた。
近年は大規模なスポーツ大会も数多く開催され、カタール国際ユーストーナメント(サッカー)、カタール・トータル・オープン(テニス)、カタールGP(MotoGP)、ツアー・オブ・カタール(自転車ロードレース)が毎年開かれているほか、2006年にはアジア競技大会も開催された。2022年にはFIFAワールドカップの開催が決定している。
サッカーカタール代表はアフリカからの帰化選手の存在もあって強豪となっている。2019年アジアカップでは決勝でサッカー日本代表を破って初優勝を遂げた(動画)。
著名なカタール国籍保有者
※姓五十音順
- モハマド・アル=モディアーキ(チェス選手)
- 諸宸(チェス選手) ※元中国人
- シェイク・タミーム・ビン・ハマド・アール・サーニー(現首長)
- モハメド・ビン・ハマム(アジアサッカー連盟会長、FIFA理事)
- シェイク・ハマド・ビン・ハリーファ・アール・サーニー(前首長)
関連動画
関連商品
関連項目
- 国の一覧
- 湾岸諸国
- 中東
- アラビア半島
- ルサイル (2022 FIFAワールドカップの決勝戦用スタジアムが建設中)
- ドーハの悲劇
- 2022 FIFAワールドカップ
- カタールGP(MotoGP)
脚注
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