カルストンライトオとは、1998年生まれのJRA(日本中央競馬会)所属の元競走馬。「韋駄天」「直線番長」「直線競馬の申し子」などの異名を持つ。
(2024年現在)「日本競馬史上最速の馬」である。何をもって「最速」なのかは後述。
主な勝ち鞍
2002年:アイビスサマーダッシュ(GIII)
2004年:スプリンターズステークス(GI)、アイビスサマーダッシュ(GIII)
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この記事では実在の競走馬について記述しています。 この馬を元にした『ウマ娘 プリティーダービー』に登場するウマ娘については 「カルストンライトオ(ウマ娘)」を参照して下さい。 |
概要
父:ウォーニング
母:オオシマルチア
母父:クリスタルグリッターズ
1998年5月3日に大島牧場にて生を受ける。日本国内では数少ないサラブレッド三大始祖の一頭「ゴドルフィンアラビアン」の直系でマッチェム系に属する珍しい血統。
1999年のサマーセール※にて、清水貞光氏に1890万円で落札される。
※サマーセール・・・HBA日高軽種馬農業協同組合が主催する、競走馬のセリ市のひとつ。サマーセール出身の有名馬としてはモーリス、ダンツフレーム、マイネルホウオウ、マイネルレコルト、ラブミーチャン、ヒガシウィルウィンなどが名を連ねている。
馬名について
馬名についてであるが、なんとなく最後の「オ」が気になる方もいるかもしれない。馬名の英語表記は「Calstone Light O」であり、意味的な文節は「カルストン + ライト + オ」である。馬名の由来は、
カルストン | 馬主・清水貞光の所有馬の冠名。清水氏の本業が「軽石」を扱っていることから、軽石⇒軽いストーン⇒「カルストン」 |
ライト | 馬主・清水貞光の名前から、「光(ライト)」 |
オ | 「王(オー)」 |
という事で、本来は「カルストンライトオー」というニュアンスであるが、日本の競走馬の馬名には「カタカナ9文字」という制限があるため、それに対応して最後の伸ばし棒を省略して「カルストンライトオ」となった。
ちなみに同様の経緯で、清水氏所有の競走馬には末尾に「オ」が付いているウマが多数いる。(カルストントップオ、カルストンペースオ、カルストンヒットオ、カルストンソロンオ 、カルストングラスオ 、カルストンキングオ、カルストンダイナオ、 カルストンオースオ、カルストンテイクオ、 カルストンハードオ、etc...)
デビューから4歳まで
2000年11月デビュー。2歳秋のデビューから逃げのスタイルを貫き、芝1200mの新馬戦を6馬身差、そしてかえで賞を6馬身差と、圧倒的な速さで2連勝を飾る。
続いて挑戦したのは朝日杯3歳ステークス(GI。現・朝日杯フューチュリティステークス)。持ち前のスピードで先手を奪うも直線坂下でメジロベイリーをはじめとした後続に捕まり、10着に敗退した。
翌2001年では、葵ステークス(OP)や北九州短距離S(OP)では逃げ切りが上手くハマり勝利する。しかし重賞レースではファルコンステークス(GIII)、アイビスサマーダッシュ(GIII)、セントウルステークス(GIII)と毎回1番人気に推されるも、惜敗が続く状態が続いていた。
2002年は春競馬を休養し、再始動は6月から。復帰2戦目のTUF杯を勝利すると、オープン2戦を挟んでアイビスサマーダッシュ(GIII)へ再挑戦する。
駆け抜ける史上最速の閃光 2002年アイビスサマーダッシュ(GIII)
舞台は、2002年に開催された第2回アイビスサマーダッシュ(GIII)。
※
先に「アイビスサマーダッシュ」について説明しておくと、新潟競馬場・芝1000m(いわゆる「新潟千直」)の重賞競走である。2001年に創設された。特筆すべきはJRA重賞レースでは最も距離が短く、かつ日本国内唯一の直線コースのみで行われる重賞競走であるということ。コーナーを回る等のスピードのロスがほとんどないため、まさに競走馬たちの純粋な走力がものをいう電撃の短距離戦である。
・・・とは言いつつも、実際はこのレースにおいても枠番による有利不利が存在しており、おおむね「外枠絶対有利」というのが定説である。内枠に比べて外枠は使用頻度が少なく芝の傷みが小さいため、走りやすいとされている。ただし、このような定説が広まったのも「新潟千直」のレースが回を重ねることで判明していったに過ぎず、今回の舞台となる「2002年 アイビスサマーダッシュ」はまだ開催2回目であったため、攻略法については参加者全員が手探りの状態であったことは補足しておく。
さてカルストンライトオであるが、今回は外枠8枠12番と好位置でレースを進める。もともと彼は右にモタれる癖があったが、枠番が功を奏して外ラチぴったりを爆走。抜群の加速力を生かし、飛ばしに飛ばしまくる。
残り400の標識を通過! 外ラチいっぱい ファンの近いところをカルストンライトオ抜け出した! カルストンライトオ!そしてブレイクタイムが馬場の中央から上がってくる! そしてタイキメビウス 残り200! タイムは43秒くらいをすでに通過している! さあ外ラチいっぱいカルストンライトオ! ブレイクタイムちょっと離れた!
カルストンライトオ2馬身ほどのリード!
カルストンライトオです!!去年の雪辱を果たしました カルストンライトオ!
そしてブレイクタイムが2番手の入線!そしてタイムをご注目ください!
タイム1000m「53秒7」!
レコードの赤い文字が上がりました!実況・鈴木秀喜アナウンサー(NST新潟総合テレビ)
見事に1位入線。直線1000mのタイムはなんと「53.7」。文句なしのレコードタイムでアイビスサマーダッシュを制覇する。2002年に記録されたこのレコードであるが、20年以上たった現在でもこの記録を超えた馬は出ていない(2024年現在)。
そしてラップタイムは[12.0-9.8-10.2-9.6-12.1]。なんと9秒台を2回もマークしており、まさに「2段階加速」ともいえるようなダッシュを見せたことが数字上でも確認できる。本レース史上でも、9秒台のラップが2回もマークされたのはこの時のみである。またこの時の200〜800m間の3ハロンタイムは29.6秒(9.8-10.2-9.6)と言う驚異的な数字であり、さらに4ハロン目でマークしたラップ「9.6」は時速に換算すると75km/h出ていたことになる。(競走馬はだいたい時速60〜70kmで走るとされている。)
このいまだ破られていない直線1000mの記録もあり、カルストンライトオは「時速75キロで走ったサラブレッド」として日本競馬史上最速の馬とも評されている。
その光は影を落とし
これで勢いに乗るかと思われたカルストンライトオだったが、毎日放送賞スワンS(GII)、セントウルS(GIII)に挑戦するも惜敗。また脚部不安もあり、休養に入ることになる。
復帰は2003年9月。そのため8月開催のアイビスサマーダッシュへの出走はかなわなかった。休養明け後も調子を取り戻すことはできず、結局2003年はオープン特別のアンドロメダステークス1勝のみにとどまり、12月のCBC賞(GII)のレース後から再び休養に入る。
再度きらめく閃光 2004年アイビスサマーダッシュ(GIII)
2004年夏に復帰。函館スプリントステークス(GIII)を3着とすると、2年ぶりにアイビスサマーダッシュ(GIII)に出走。前々年度の王者として1番人気を背負い、レースが始まる。
前回と違い5枠5番のスタートだったが、スタート直後から抜群のダッシュでハナを奪うと、外ラチ沿いへと馬を寄せることに成功する。そこからは前回の走りを彷彿とさせるように、外ラチ沿いを走り抜ける。残り400mから追い出されると、後続との差を開き3馬身差の圧勝を収めた。
3馬身差の勝利は、2006年のサチノスイーティーと並び、レース史上最大着差記録となっている。
余談であるが、当時現場にいたある競馬記者は、カルストンライトオのベストレースにこのレースを挙げている。カルストンライトオがスタート直後に飛び出して外ラチを沿いを確保した後、それに引っ張られるように他の馬群が外ラチ沿いに移動した結果、最前列の観客はわずか数メートルという至近距離をトップスピードで駆け抜けるサラブレッドたちを目の当たりにでき、場内の盛り上がりは相当だったとのことである。
行ってしまうぞ!行ってしまうぞ!スプリンターズステークス(GI)
アイビスサマーダッシュを制したカルストンライトオであったが、当時管理していた大根田裕之調教師は次の目標レースとして、スプリンターズステークスへの出走は消極的であった。前年の15頭立て13着という惨敗が頭にあったためで、大根田氏はむしろ直線コースの国際GIレース・香港スプリント(GI)※に魅力を感じていた。
※2004年当時の香港スプリント(GI)は直線・芝1000m。2006年に距離が1200mに延長され、コーナーありのコースに変更された。
しかし、カルストンライトオがアイビスSDで見せた強さに方針を変更し、そのままスプリンターズステークス(GI)へ直行を決断する。春の高松宮記念を制したサニングデール、前年覇者のデュランダルなど短距離の猛者が顔を揃える中、カルストンライトオは単勝8.5倍の5番人気にとどまっていた。また、この年のスプリンターズSは雨が降り続いた影響で不良馬場となっていた。
スタート直後から猛烈な加速力でハナを奪うと、不良馬場にもかかわらず前半3ハロンを33秒6で飛ばしていった。4角に入って後続を引き離すと、直線に向いても逃げ脚は衰えず、最終直線でもグングンと全速力で駆け抜けていく。
さあ逃げ体勢だカルストンライトオ、どこまで逃げられるかと言うところ。新潟2度のチャンピオン、さあカルストンライトオ逃げで400通過。不良馬場最後の直線、スプリンターズステークス。
むしろリードを開いている!
さあラチ沿いに、大西直宏ダービージョッキー!
カルストンライトオ 逃がす逃がす!カルストンライトオ 逃がす!
さあ問題は2番手!2番手外からデュランダル 白い帽子がやってきた!
シーイズトウショウもやって来ている!2番手は横一線 大混戦!しかしこれは!
行ってしまうぞ!行ってしまうぞ!
カルストンライトオが逃げるぞ!!2番手外からデュランダルだが!!
前とは離された!!カルストンライトオー!!!
2着のデュランダルに4馬身差をつける圧勝劇を見せつけて勝利する。4馬身差の勝利は、スプリンターズSがGIに昇格した90年以降に限ると1991年のダイイチルビー、1994年のサクラバクシンオーと並び、またもレース史上最大となった。
またアイビスサマーダッシュの勝ち馬がGIレースに勝利するのも、カルストンライトオが唯一となっている。(2024年現在)
同年、香港スプリント(GI)に挑戦するが、14着に敗れている。
引退まで
2005年は阪急杯2着、高松宮記念4着の後、4回目のアイビスサマーダッシュ出走、単勝1.8倍と断然の人気となるが、59kgの斤量と内枠が響いて4着。出走機会3連勝とはならなかった。次走のスプリンターズSでは、直線で一旦抜け出すも飲み込まれて10着。
その後、右前脚球節炎を発症。2005年11月2日付けで競走馬登録を抹消、現役を引退することになった。通算成績36戦9勝(重賞3勝)。
引退後
競走馬引退後は2006年から北海道・静内町レックススタッドにて種牡馬となり、その後2010年11月に安平町の橋本牧場へ移動。種牡馬としては、地方重賞勝ち馬を3頭出すもJRAではオープン馬が出せず、また2021年になってメイショウテンセイ(2014年生・牡7歳)が3勝クラスを勝ち上がり期待されたもののオープンでは勝てないまま引退。大きな結果は残せなかった。
2021年以降は種付けを行わないままとなり、2023年をもって種牡馬を引退。日西牧場にて繋養されていたが、2024年2月7日に老衰により死亡したと牧場より発表された。享年26歳。
ポストを読み込み中です
https://twitter.com/3iZczUtbYRZlVS8/status/1755054975036911962
このため、2021年生まれの産駒(該当はカチヌキマリコの1頭のみ)がラストクロップとなった。また、現役の牡馬がカサマツノライトオ(母ピアッジーネ、母父サクラバクシンオー、兵庫所属)のみなので、父系の存続は厳しいか。
また、サニングデールも2021年の種付けをもって種牡馬を引退していることから、日本におけるマッチェム系は、ここから急きょ引退馬から種牡馬入りする馬が出る、カサマツノライトオが種牡馬入りする、もしくは外国から輸入するなどのいずれかがない限り途絶えることになるだろう。(一応、現役馬としてクリノアドバンス(父Al Wukair、母サクラゼンセン、母父Planteurの持込馬)がおり、2024年5月時点で6戦1勝。3歳なので今後に期待か。)
レーススタイル
1000mでは圧倒的な記録を残しながら、その他のレースでは果敢に逃げながらも直線で沈んでいくそのスタイルは、ファンからは「1200mでも長い」と揶揄されるように語られている。実際、管理していた大根田裕之調教師は後年になって当馬について、「息継ぎなしで一気に走るタイプだった。スプリンターズSを勝ったけど、1000mがベストだった」とコメントしている。
スプリンターズS優勝はあるが、基本的には平坦コースで圧倒的なスピードを見せ付けるタイプの馬だった。スタートしてからの驚異的な加速力、そして同じく驚異的なゴール前での粘り込みでファンの支持を得ていた。大根田氏は「一歩目はそれほど速くないけど、二歩目からの加速がすごい。ゲート練習ではちょっと沈んだ構えから、あっという間に見えなくなった。ホームで通過する特急電車を見ている感じだった」と振り返る。
時は流れ、日本競馬界のレベルは日に日に上昇し続け、昔のレコードもどんどんと更新されている中、この馬が記録した新潟直線1000mのレコードはいまだに破られていない。それは、この馬が(語弊はあるかもしれないが)日本で一番速い馬ということの証明といっても、差し支えはないだろう。
余談
カルストンライトオが勝利した重賞(アイビスSD 2回、スプリンターズS 1回)すべてに騎乗していた大西直宏(2006年引退)は、2024年のインタビューで新潟千直のレコードがいまだ破られていない件について、「当時、アイビスSDが行なわれたのは8週開催時の6週目で、馬場が荒れてきた開催終盤だった。その時にマークしたレコードが現在も破られずに残っているのは、非常に価値があると思う。今のアイビスSDは夏の開幕週での開催。時計が出やすい条件なので、いつレコードが塗り替えられてもおかしくない。」と語っている。また、「カルストンライトオの記録を破られるのは寂しいですが、新たなスピードスターの登場を期待している自分もいます。」ともコメントしている。
また、大西直宏は2024年のインタビューで、なんとスマホの待ち受け画面を『ウマ娘』のキャラクター「カルストンライトオ」にしていると明かしている。大西は『ウマ娘』のことは周囲から聞いていて、興味を持つようになったとのこと。キャラクター「カルストンライトオ」については、「右後肢が白いという特徴もしっかり反映されているのがうれしいですね」とコメントしている。
血統表
*ウォーニング 1985 青鹿毛 |
Known Fact 1977 黒鹿毛 |
In Reality | Intentionally |
My Dear Girl | |||
Tamerett | Tim Tam | ||
Mixed Marriage | |||
Slightly Dangerous 1979 鹿毛 |
Roberto | Hail to Reason | |
Bramalea | |||
Where You Lead | Raise a Native | ||
Noblesse | |||
オオシマルチア 1990 黒鹿毛 FNo.10-b |
*クリスタルグリッターズ 1980 鹿毛 |
Blushing Groom | Red God |
Runaway Bride | |||
Tales to Tell | Donut King | ||
Fleeting Doll | |||
オオシマスズラン 1978 鹿毛 |
*カウアイキング | Native Dancer | |
Sweep In | |||
ネバージョオー | *ネヴァービート | ||
グンシン | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Native Dancer 4×5(9.38%)
父ウォーニングはイギリスを本拠地としてマイルを中心に走り14戦8勝(うちGI2勝)。産駒には短距離で活躍したカルストンライトオやサニングデールの他に、ヨーロッパで残した産駒としてカドラン賞(仏GI・4000m)を勝利したGive Noticeもいる。
母オオシマルチアは日本の中央で18戦4勝。勝ち星はすべて1600m~1800mである。
母父クリスタルグリッターズはフランスを本拠地としてイスパーン賞(仏GI・1850m)連覇など17戦5勝。産駒は菊花賞馬マチカネフクキタルなど。
本文中でサラッと流したが、この馬はマッチェム系である。7代父がMan o'Warである。
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