ユダヤ教から派生したキリスト教やイスラム教などの各宗教(いわゆる「アブラハムの宗教」)でも、変わらず天使として扱われている。
概要
ヘブライ語で書かれたユダヤ教の聖典「タナハ」の一編、「ダニエル書」に登場する天使。
「ダニエル書」において預言者ダニエルがエルサレムの未来に関する幻視を得たときに、その幻視の意味をダニエルに説くために神から遣わされた存在として現れる。
要はメッセンジャー役と言うだけなのであまり容姿や能力の描写は多くないが、「人のように見える者」とだけ記載されている。また、「飛んできた」と記載されているので飛行能力があるようだ。
「大天使」などとして重要な天使を並べ立てる際には、ミカエルに次いで名前が挙げられることが多い。二大天使といえばミカエルと彼を、三大天使と言えばミカエルと彼とラファエルを、四大天使となるとミカエルと彼とラファエルとあと一人(ウリエルが多いが、死海文書などではサリエルが入っていたりする)を指していることが多い。
トビト記などの外典にも登場しており、そこでは「神の左側に坐している」と記載されているとのこと。
性別については、旧約・新約問わず聖書の中では男性形で記述されている。しかし後述のようにキリスト教美術での「清らかな天使」としての描写の影響を受け、創作作品などでは女性の姿で描かれる場合もある。
後世の推察としてユダヤ教成立以前に信仰されていた古代の女神がルーツにあるのでは?という説があり、その中で原型の候補として挙げられるのはシュメールの大地や運命の女神ニンフルサグである。(ユダヤ教の天使として取り込まれるにあたり、周辺地域の神々は男神も女神も取り込んでいるようなので「これだ!」と断言こそできないが)
名前
ヘブライ語表記では「גבריאל」と書く。ちなみに2文字目の「ב」(ヘブライ語は右から左に書く)はbでもvでも発音されるが、この場合はvで発音されるそうで、正しくカタカナ表記するならば「ガヴリエル」かもしれない。
「人」や「男」を現す「גבר」、「神」を現す「אל」の合成語であり、その名は「神の人」と言った意味となる。ただし「אל(エル)」は天使の名前によくつく接尾語なので、「人を司る天使」「人のような天使」と言った程度の意味かもしれない。
派生宗教において
キリスト教
キリスト教においても、ユダヤ教の「タナハ」は聖典「旧約聖書」として受け入れられているので、「ダニエル書」に登場するガブリエルはそのまま天使として扱われる。
また、ユダヤ教に無いキリスト教独自の聖典「新約聖書」でも「ダニエル書」と同じくメッセンジャー役として登場しており、特に「ルカによる福音書」で「聖母マリア」に「イエス・キリスト」の受胎を告げた(「受胎告知」と言い、様々な宗教絵画の題材となっている)ことが有名である。
イエス・キリストはキリスト教の教祖であり神の子であり神そのもの(三位一体説)でもある。そのイエスの受胎を告げた天使であるため、キリスト教でも大変重要視される。
「聖母マリアに受胎を告げる」という役目から、絵画などでは清らかなイメージの姿で描かれる事も多く、また聖母マリアの純潔性を現すシンボル「白百合」と併せて描かれることも多い。そのせいか時代が下るにつれて徐々に女性的・中性的なイメージを持たれることも多くなり、近年では女性の姿で描かれる例すらある。
なお、同じく「ルカによる福音書」で「洗礼者ヨハネ」の父ザカリアの元にも現れており、ザカリアの妻がヨハネを身籠ったことを伝える。しかしザカリアは自分と妻の老齢を理由にこれを信じなかったため、罰として口がきけなくされてしまう。
イスラム教
イスラム教はユダヤ教、キリスト教の教えの多くの部分を受け継いでいる。そのためイスラム教においても重要な天使の一人である。詳しくは該当記事「ジブリール」を参照。
人名として
聖書に登場するその他の名前と同じく、西欧諸国での人名の由来になっている。
ガブリエルは多くの場合男性名だが、女性名としても使われる。末尾を変化させたガブリエラは専ら女性名として使われる。また、ガブリエルという苗字の家系も存在している。
ニコニコ大百科に記事がある実在の人物としては、「ガブリエル・ユルバン・フォーレ」「ガブリエル・バティストゥータ」「マルクス・ガブリエル」「ガブリエル・アプリン」など。
創作作品において
有名な天使であるため、様々な創作作品において名前が登場する。そのまま「天使」として登場する場合もあれば、上記のように人名としても広く使われる言葉なので単なる登場人物の名前として使われている場合もある。
ニコニコ大百科に記事がある作品では、
- El Shaddai - エルシャダイ
- ガブリエラ戦記
- コンスタンティン
- 失楽園
- 真・女神転生シリーズ
- スターオーシャン : ガブリエ・セレスタ
- スタンザ・ガブリエル
- 聖☆おにいさん
- とある魔術の禁書目録 : 神の力(ガブリエル)
- BASTARD!! -暗黒の破壊神-
- はたらく魔王さま!
- ペルソナシリーズ
- ベン・トー
- マジック:ザ・ギャザリング : 天使の炎ガブリエル
- 魔神転生
などが例として挙げられる。
関連項目
- 旧約聖書
- ジブリール
- 天使 / 堕天使
- 四大天使
- セラフィム
- ドミニオン
- アークエンジェル
- 神話上の関連用語一覧
- Y・H・V・H・
- ヘブライ語
- キリスト教
- イスラム教
- セフィロト(「イェソド」の守護天使とされることがある。)
- 失楽園(ミカエルとともに大天使として登場し、神に叛逆した大天使「サタン」らの軍勢に対抗する。)
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