ガンダム・シュバルゼッテとは、TVアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』に登場するモビルスーツ(MS)である。
概要
ガンダム・シュバルゼッテ GUNDAM SCHVARZETTE |
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開発・製造 | ジェターク・ベビー・マシーナリー |
型式番号 | MDX-0003 |
操縦系統 | GUNDフォーマット |
頭頂高 | 18.7m |
重量 | 73.3t |
固定武装 | 腕部リボルビングランチャー×2 |
オプション武装 | 多機能攻防プラットフォーム「ガーディアン」 |
パイロット | ラウダ・ニール |
ジェターク・ヘビー・マシーナリー社の「次世代コンセプトモデル」として開発されたMS。開発はジェターク社CEOヴィム・ジェタークが主導し、極秘で行われた。
元々はダリルバルデに搭載された拡張認識AI技術の発展機として開発されていたが、操縦系統の技術的課題がクリアできず、企画凍結状態となっていた。そこに、シン・セー開発公社社長プロスペラ・マーキュリーとの裏取引によって同社から提供されたGUNDフォーマットデータを取り入れ、GUND-ARMとして生まれ変わった経緯を持つ。
なお、ヴィムがプロスペラからデータを提供されたのは第3話。完成したのが19話であることから考えると、GUND-ARM化は大体4~5か月程度で行われたことになる。
同じく実験機であるガンダム・ルブリスLF-03と同じく、機体カラーはややグレーがかかった白。カメラアイは赤色。上腕部、肩、頭部にシェルユニットが確認できるが、パーメットは赤と紫のグラデーションに発光する。
各部のデザインはダリルバルデと似通っており、特に頭部の円状アンテナや下半身がよく似ている。その一方でスラスター形状はガンダム・エアリアルのそれに類似しているなど、シン・セー社の技術が入っていることも匂わされている。
なお、データストームによるパイロットへのダメージは従来のGUND-ARMと同じく発生する。
ガンプラ新商品としての情報公開はシーズン2開始前と速かったが、初登場は第18話とやや遅め、しかも未完成の状態であった。プラント・クェタのテロ事件に端を発したゴタゴタによって開発や情報共有が遅れていたようで、ヴィムの後釜である彼の息子達、グエル・ジェタークとラウダ・ニールも存在を知らなかった(特にラウダはグエルの新CEO就任まで代理を務めていたのだが、開発計画の存在すら知らなかった)。
当時のジェターク社は立て直しを急務としており、ベネリットグループ新総裁を目指すミオリネ・レンブラン(株式会社ガンダム社長)と提携していた。ミオリネに入れ知恵するプロスペラはシュバルゼッテを「ジェターク社とガンダム社の共同開発」として発表し、総裁選挙向けの実績とすることを進言するが、ミオリネが「兵器開発はガンダム社の理念に反する」と拒否。プロスペラは「理念に合う機体として開発すればよい」と訂正するが、これ以降のグエル、ミオリネ、プロスペラの3者全員が、それぞれの事情でシュバルゼッテに関わっているどころではなくなってしまう。シュバルゼッテは結局、当初の想定通りに艤装が行われた。
そのままお蔵入りかと思われたが……ミオリネへの怒りとグエルへの失望に憑りつかれたラウダが搭乗し、2人を粛正するために出撃する。殺してやるぞミオリネ・レンブラン
この時のラウダは「突然湧いて出たシュバルゼッテ」「父の死の真相」「恋人が下半身潰されて危篤」というショッキングな事実を一度にお出しされ、メンタルがボロボロの状態だった。グエル、ミオリネ、プロスペラのそれぞれの事情も分からず、疑心暗鬼を拗らせた果てに「全ては、ミオリネが自身の成功のために周囲の人間を顧みなかったためだ」と判断してしまったのである。
かくして哀れなラウダとシュバルゼッテは、クワイエット・ゼロへの突入を試みるミオリネ達を単機で襲撃し、グエルのディランザと対峙する。データストーム汚染によってメンタルにとどめを刺されたラウダは、グエルの説得にも耳を貸さずに攻撃を加え続け、遂にディランザの胴体を貫いてしまう。取り返しのつかないことをしてしまったと慟哭するラウダだったが……。
「二人ともバカなんすか!! 兄弟喧嘩で死ぬなんて、マジ笑えないっすから!!」
ラウダ先輩グエル先輩! この下、お話の結末が書かれてるみたいっす! 『水星の魔女』本編観た後に読む方がいいと思うっす! |
フェルシー・ロロの介入により、致命的な破局を免れることができたジェターク兄弟。ラウダとシュバルゼッテは地球寮学園艦に収容され、事態の収束までそこで待機することになった。
もっと戦闘シーンを描いてほしかった……と残念がる視聴者は多かったと思われる。展開的に仕方ないところではあるのだが。
その後、スレッタ・マーキュリーが触媒となって極限まで上昇したエアリアルのデータストームを介して、シュバルゼッテ(と、3つ隣のハンガーに収まっていたガンダム・ファラクト)は無人で起動。そのまま学園艦を飛び出した2機は、エアリアル及びガンダム・キャリバーンと合流し、データストームの拡大に貢献する。
全てが終わった後、エアリアル、ファラクト、シュバルゼッテ、キャリバーンの4機は、粒子レベルにまで崩壊し、消失していった。
武装
超高機能ガンビット「ガーディアン」を駆使して遠近を問わない攻防一体の戦闘を行う。ガーディアンを組み替えることで機体のシルエットも大きく変わり、シェルユニットの発光も合わせて、これまでにないスタイルのMSとして異彩を放つ。
過剰な量のビーム砲、長時間照射できるレーザー、クラスター実体弾と、とにかく広範囲を薙ぎ払う武装が多いのも特徴。息子がエアリアルのガンビットに手も足も出ずやられたことが、ヴィムには余程悔しかったのだろうか?
- リボルビングランチャー(正式名称不明)
両前腕部に内蔵された単装砲。6連シリンダーに実体弾を装填する。
劇中では右腕砲からクラスター弾を3連射していた。 - 多目的攻防プラットフォーム「ガーディアン」
エアリアルの「エスカッシャン」を参考に開発された、シュバルゼッテの中核を成すガンビット。
ビームブレイド1本・ビームガンを搭載した攻撃型ビットステイヴ4基・電磁バリアを搭載した防御型ビットステイヴ2基によって構成される攻撃システムである。
ビームブレイドはダリルバルデのビーム・カタナと同様、長いビーム発振機の周囲にビーム刃を形成する、実剣とビーム剣の複合型。
- ガーディアン・シース(鞘)
ビームブレイドを覆うようにビットステイヴを集結させた基本モード。エアリアルのコンポジットガンビットシールドと同じ要領だが、防御特化のあちらに対し、シュバルゼッテは攻撃型となる。
ビーム・ガンが先端部に集結し、4連ビーム・ガトリングガンを形成。更に攻撃型ビットの各部から自在にレーザーを拡散/収束照射する全方位砲撃「オムニ・アジマス・レーザー」を使用可能。防御型ビットの電磁バリアも併用できる。ちなみに、防御型ビットの中央には射撃補助用のフォアグリップが折りたたまれている。 - ガーディアン・ドロウ(抜剣)
全ビットステイヴを展開し、群体遠隔操作(スウォーム)兵器とするオールレンジ戦闘モード。 - ガーディアン・マリオネット(糸繰人形)
ビットステイヴをシュバルゼッテ本体に接続したモード。エアリアルのビットオンフォームに該当する状態で、各ビットへの電力・推進剤補給を行う。もちろん各ビットのビームガン・バリア、そしてオムニ・アジマス・レーザーの拡散照射も使用可能。
全ビットをバックパック左側に接続して片翼の天使風のスタイルになったり、腰部にX字型に接続して斬撃の邪魔になりづらくしたりと、多彩な戦術が実行できる。
- ガーディアン・シース(鞘)
余談
長かった展開予想
先述した通り、2022年末にデミバーディングや「新商品A(ガンヴォルヴァ)」などと共に新作ガンプラとして情報公開された。その形部イズム溢れるデザインから「ジェタークの新型機」と予想するファンは多かったが、シナリオ中でどのような役割を果たすのか、的中させたファンは少なかったのではないだろうか。
色合いが似ているガンヴォルヴァとの関係を考察する向きもあったが、デザインが明らかに形部氏じゃないジェターク社の物ではないことで、両機は別勢力の機体だろう、という予想も多かった。ガンヴォルヴァは後に別のGUND-ARMの随伴機と判明し、余計にシュバルゼッテの謎は深まる。
- そもそもジェターク社はGUNDを否定し、AIドローンを採用していたはずではなかったのか(ダリルバルデのガンプラ説明書から)
- 学園決闘ではなく、実戦をメインとしたMSが多く登場しそうな状況にも関わらず、実戦に不向きそうな大剣を装備しているのはなぜか
- 2話でプロスペラからヴィムは何かのデータを受け取っていたが、それと関係はあるのか
- 誰が乗るのか?
などなど、お話が進むほどに考察はヒートアップしていった。結果としては兄弟喧嘩用グエルとラウダ、ジェターク家の物語に決着をつけるための役割が与えられていたわけである。
頭部デザインについて
第18話の未完成状態では、シュバルゼッテの目はジェタークMS特有のバイザーアイであった。第19話での完成形ではツインアイのガンダムフェイスになっていたが、アイカメラをまるまる差し替えたのか、それともバイザーの上にツインアイゴーグルをかぶせただけなのかは不明。
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名前の由来
ドイツ語で解釈してみると、「Schwarz」は『黒』『不幸』『災厄』等、「ette」は女性形を表す語尾で『紛い』『代用品』の意。
文法を無視して意訳すると『黒き紛い』『不幸な代用品』『黒い女』『不幸な女』等となり、本作のガンダム特有の『魔女』の意味が刻まれた名と解釈できる。
他にはフランス語で「雄馬」の『シュヴァル』、「騎士」の『シュヴァリエ』を合わせた機体の色に黒以外にも白が使用されている事から、モチーフが『白馬の騎士』の説もある。
また、同社製ダリルバルデの武装名と関係性を見出すことも出来なくない。同機はインド神話から名を取った武装を多々持っていることから、一本の剣を武器とする殺戮の女神『カーリー』(ヒンドゥー語で黒の女性形)が元になっている、とする考察である。
いずれにせよ、全ては憶測にすぎないので「これが元ネタだ!」と大声で触れ回るのはやめておこう。
関連項目
- 機動戦士ガンダム 水星の魔女
- ラウダ・ニール - パイロット
- ヴィム・ジェターク - 開発者
- プロスペラ・マーキュリー - データ提供者
- GUND-ARM
- ガンダム・エアリアル - 武装面の参考元
- ダリルバルデ - 原型機のルーツ
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