キャプテン翼5とは、1994年に発売されたスーパーファミコン用ソフトである。
正式名称は「キャプテン翼V 覇者の称号カンピオーネ」。
カンピオーネとはゲームのラスボスとして翼たちの前に立ちはだかる最強チームのこと。
概要
テクモ版キャプテン翼シリーズで培ってきたゲームシステムを一新、「テクモ式」とまで呼ばれるほどになった独自のサッカーシミュレーションゲームから普通のサッカーアクションゲームに近いゲーム内容になり、一部のスター選手やゴールキーパーの行動で従来のコマンド選択が現れるという折衷型のような形になった。
必殺技のモーションも簡略化された感じになり、これは前作『キャプテン翼4』があまりに冗長すぎて非難されたためにゲームのテンポ重視で作り直したためと思われる。
大空翼、日向小次郎など一部の選手に声優を起用。スーパーファミコンながら、選手が試合中にしゃべる演出が追加された。声優は原作アニメと同じ人が担当しているのだが、作中ではすでに二十歳を超えた青年になった翼たちが中学生当時そのまんまの声でしゃべるのは逆に「声が幼すぎる」という違和感が生じてしまった……。
作品開発時期に、漫画の原作者が停止していた作品展開を再開。このためかカルロス・サンターナの呼び名がカルロスからサンターナに変更、オランダの若手選手たちがテクモ版で活躍してきたイスラスから漫画続編の選手たちに変更、テクモ版のオリジナルキャラクターの多数が消え、必殺技もテクモ版で追加された新技の多数が削除されるという世界観の大きな変更が行われた。ただ、原作JY編までに使用していたのにゲームに採用されてこなかった必殺技が多数追加されており、原作寄りに穴埋めは行われている。
この措置はシリーズ最終編において大きな波紋を呼び、ゲームシステムの根本的な変化と相まってテクモ版のファンからは受け入れられないという評価も根強い。
ストーリー
本作では翼以外選手たちにも視点が当てられ、数試合のサブシナリオを通して多くの選手たちの戦いを体験できる。世界中のどこのチームでも早苗ちゃんがマネージャーをやっている事は深く考えないでおこう。
ストーリーの流れを追うため、いくつかの章をまとめて紹介する。
オープニングストーリー
作中より10年ほど前のこと……。
貧しい家の出身ながらサッカーの才能をジョアン監督に見出された日系三世のサッカー選手・ロベルト本郷は、その恩に報いるために激しいプレーを行い、試合中の激突で再起不能の重傷を負ってしまう。
一時は自殺も考えたロベルトだったが、日本人の船長・大空広大に救われ、彼の手引きで治療のために日本に渡る。結局回復はならなかったが、そこで広大の息子・大空翼と巡り会う。翼は「日本のサッカーを世界一にする」という夢を抱いて数多くのライバルたちと戦い、ブラジルでプロサッカー選手となる。監督となっていたロベルトと共に戦いを続け、ブラジルからヨーロッパへの挑戦のためイタリアへ渡る事になった。
新田の章
最初にプレイする章。翼が退団したサンパウロFCでは、前年入団した新田瞬がキング・オブ・ゴールポストと言われた頃とは見違えるような活躍を見せていた。謎の成長と共に、登場初期のでかい態度まで復活させている新田。その変貌に戸惑う三杉に、新田を指導したジョアン監督が不穏な伝言を告げる。
翼・日向・若島津の章
翼はイタリアのサッカーリーグ「セリエA」でプレーするため、その中のチームASローマ「USレッチェ」に入団した。当初は異国の地でチームに受け入れてもらえず苦労するが、戦ううちにチームメイトとも馴染み、不慣れなゲームシステム、頼りにならん味方、シリーズ最悪のクソGKブルノに足を引っ張られながら翼一人で孤軍奮闘チームワークで「カルチョフェスタ94」を勝ち進む。
一方、同じセリエAに移籍していた日向はなかなか活躍できないでいた。ジョアン監督の弟子の一人、シニョーリの天才的なプレーに翻弄され、自信喪失してしまう。
翼は大会の決勝戦でシニョーリと戦い、スタンドプレーに頼るシニョーリを制して優勝を飾る。
岬・ピエール・松山の章
フランスでは岬とピエールがリーグ優勝をかけて戦っていた。
試合後ピエールはドイツのサッカーリーグ「ブンデスリーガ」への移籍を岬に打ち明ける。そして電車で旅の途中、ジョアン監督のスカウトを受ける。
岬がフランスを制していた時、イギリスでは松山が優勝を飾っていた。
二人は英仏対決の場で再会し、松山は来年からイタリアのナポリでプレーする事を伝える。岬は日本に帰国する意思を固める。
その後、松山はセリエAのプレーを観戦してレベルの高さに驚き、そこで翼と出会う。
翼がレッチェに合流前と語っている事から、このパートは翼の章よりも前の時系列にあたる。
ナポレオンの章
日本ではプロサッカーリーグが始まっていた。(現実のJリーグが開幕したのが前年の1993年)
プロ野球に続く第2のプロスポーツリーグとして動き出したばかりの日本はまだまだリーグとしてのレベルは低く、助っ人外人として南葛SCに来ていたナポレオンは無敵の活躍。報道陣の前ではいい態度を見せるものの、本音はチームの面々を馬鹿にしており、裏では殴り合いの内紛が絶えなかった。
事態が解決しないままドタバタで終わってしまうのだが、翌年から岬が帰ってきて収まるのだろうか?
ヘルナンデス・シュナイダー・若林の章
ドイツではヘルナンデスがシュナイダーにやられて懊悩していた。暗い部屋の中で体操座りで落ち込み、たまたまつけていたテレビでインタビューに答えていたゴールキーパー(誰なのかは語られない)の言葉で気持ちを取り直し、再戦ではシュナイダーのシュートを止めて驚かせる。シュナイダーはその試合で殺人タックルを喰らい長期療養を余儀なくされてしまう。シュナイダーは療養中にドイツ代表監督フランツからの手紙を受け、復帰後は彼の指導を受けてさらにパワーアップする。
ドイツのリーグでライバルがいなくなってしまった若林は移籍を考えるようになり、様々な球団からオファーを受ける。いったんセリエAのチームに移籍しようと考えた若林だったが、後にシュナイダーが復帰したのを見て翌年もドイツでのプレーを決める。
ミューラーの章
ミューラーはオランダの新戦力、クリスマン、カイザー、レンセンブリンクらの連係攻撃に惨敗してしまう。失意のミューラーは師匠に再度の指導を請うが、師匠はもはやこれ以上教えるものは無いとして、他の指導者を紹介する。師匠に教えられた場所に向かったミューラーは、そこでフランツ監督に鍛えられるシュナイダーと再会するのだった。
サンターナの章
コインブラが試合中に重傷を負い、再起不能もささやかれる事態となってしまった。その事にショックを受けたサンターナは自身のプレーも精彩を欠き、南米選手権「コパ・アメリカ」を戦うチームメイトからも非難を浴びせられる。とうとう主力選手が試合をボイコットするという異例の事態の中、唯一出場してくれたゲルティスと共に決勝アルゼンチン戦に挑む。見事復活を果たしたサンターナに、試合を欠場したベテラン選手たちも賛辞を送った。
アジアカップ編
事実上の「三杉の章」にあたる。今回の森崎パートである。なお、やたら長い。
本編の三ヶ月前。国内選手のレベルアップのために、アジアカップでは翼など海外で活躍する選手たち抜きで戦おうという事になった。新田は戦力として期待していたのだが、サンパウロで活躍中の新田はアジアカップ参加を拒否。日向はもともと呼んでいなかったため、日本はフォワード不足に陥る。(反町と佐野がスタメン)
ここで三杉が全試合フル出場を決断。途中で一度倒れながらも戦い抜き、優勝を飾る。
当初の計画では「それなら反町と佐野の奮起と成長に期待しよう」となるはずなのだが、結局有力選手に頼ってしまう日本のチーム体質は改善しなかった。
実は佐野のオーバーヘッドキックがかなり使えるので、「アジア相手なら佐野で十分行ける。三杉が無理をする必要は無かった」という説も……。
ワールドトーナメント編
国の代表とクラブチームが同時に参加し、一発勝負のトーナメント戦を行う異常なルールの大会「ワールドトーナメント」が行われることになり、翼は日本代表として参加する。レッチェから出るとか言い出さなくて本当に良かったよ
だが、ここでも新田は「自分と翼のどちらが上か勝負したい」と言いだし、日本代表への合流を拒否。決勝で相まみえるジョアン監督が結成した最強チーム「カンピオーネ」の一員として翼たちの前に現れる。
芸術的なまでの個人技をもって日本に襲いかかるカンピオーネのエース・アルシオンは、個々の実力では日本を上回りながらもチームワークによって逆に圧倒される試合展開に疑問を感じ、ジョアン監督の指示に逆らいチームプレーでの対決を提案。チーム全員での超高速芸術的パスワーク「ラ・オルケスタ」で日本陣内に切り込み、新田との連携シュート「シャドウストライク」で最後の勝負を懸ける。そして……新田のシュートはゴールポスト直撃。最高の感動の場面に驚愕の落ちを付けてキング・オブ・ゴールポスト伝説はここに幕を閉じた。ゲーム作品一本まるまる使ってこの落ちは無いだろう……。
終幕
ワールドトーナメントに勝利した日本は世界のサッカーの頂点に立つ。アルシオンは敗北を認めながらも、再度の対決を心に誓った。次は新田じゃなくシニョーリを入れてな!
ジョアンはロベルトに真意を語る。それはロベルトの負傷・引退に責任を感じて、芸術品のように完成された選手達を育て、最強のサッカーチームを作ることで償いをする事だった。しかし、彼は「優秀な選手を育てる事はできたが、優秀なチームを育てる事はできなかった」と語るのだった。
まだワールドカップに優勝していないという点だけが画竜点睛を欠く事になったが、前年のジャイロカップが規模としてはワールドカップと同等で世界最強のオランダを倒している、別ルートではワールドクラブカップでクラブチームの世界大会も制している、そしてワールドトーナメントでワールドカップ以上の規模の大会で優勝した、だからワールドカップ優勝と同等以上の戦績は残したからもういいだろうと言うこともできる。
ゲームに「ワールドカップ」の名を使う事は版権料が発生したりして難しい問題にもなり、ストーリー上の目標ではあったが現実問題としてワールドカップ編のゲームは作れなかったのかも知れない。
作品内の1994年(カルチョフェスタ94という大会名からまず間違いない)はワールドカップが行われている年であり、この年のサッカー大会を描くのにワールドカップで無い方がおかしいのである。つまり、作品内では何らかの事情でワールドカップが開催されず、その代替としてワールドトーナメントが行われたのかも知れない。そう考えれば、ワールドトーナメント優勝をもってワールドカップ優勝の代替としてストーリーを終えるのは一応の完結として収まりが付く形になったのかも知れない。
そして、なにより、漫画の連載が再開された以上「こちらの翼は漫画版より先にワールドカップに優勝して物語が完結しました」という事にはできなかったのだろう。
スペシャルマッチ
シナリオをクリアすると遊べるおまけモード。
新田入り全日本で、引退したブラジルの名選手達のオールスターチーム「カナリアスターズ」と対戦、
全日本vs全日本の同キャラ戦、
制作者たちの名を付けた「イチガヤキングダム」と対戦(弱い)、
自作のエディットキャラ達+森崎で全日本に挑む、
という4つの試合を遊べる。
関連動画
BGM兼ストーリー紹介動画。全編のストーリーを37分で把握できる。
ゲームを改造したもの。
もしもコインブラが5のシステムで動かせたら……これは出場禁止措置も納得!?
関連項目
- 2
- 0pt