概要
中国では死んだ人を埋葬せず室内に置いていると、夜中に動き出して人を驚かせるとされた。この死後硬直により死体が動く現象を、「死んだ人間が蘇った」と恐れた結果生まれたのがキョンシーである。
キョンシーは死んでいるにも関わらず腐敗せず、人間を襲って血を吸うとされた。更に長く生きた(死んでるけど)キョンシーはより強い妖怪「飛僵」となり、名の通り空を飛び神通力を振るうという。
中国湖南省では、出稼ぎ先で死んだ労働者の遺体を故郷に運ぶため、道士が呪術を用いて歩かせたという伝承がある。これは「趕屍(かんし)」と呼ばれ、昼は死んでいるが夜になると起き上がり、先導する道士についていくのだという。
死後硬直し、両手を前に突き出してぴょんぴょんと跳ねるように前に進む姿は、後世の創作においてインパクトあるビジュアルとなっている。
なお、この死後硬直は時間が経過していくとともに解けていき、やがては歩いたり走れるようになる。生前に武術を心得ていたキョンシーは、技を繰り出して攻撃してくるようになるという。
清代に書かれた怪奇小説集『聊斎志異』『子不語』『閲微草堂筆記』にもキョンシーの話があり、広く人口に膾炙していたと思われる。
また『西遊記』に登場する白骨夫人(白骨精)は強力なキョンシーで、白虎嶺において三度に渡り三蔵法師一行に襲いかかった。二度までは偽の死体を残して逃げたが最終的に孫悟空により打ち殺され、本性である人骨の姿を露わにした。ところが三蔵法師は悟空が人を殺めたと思い込み破門を言い渡し、怒った悟空が一行から離脱する事態になってしまう。
特徴
- 夜行性で、夜になると生き血を吸うために人を襲う。吸わ(噛ま)れたものもキョンシーになる。
- 西洋のゾンビ同様、日光に当たると溶ける。
- 死体のくせに爪は伸び、生きているときより鼻が敏感。ただし、目は見えない。
- 「バイオハザード」のゾンビとは異なり、銃弾はあまり利かない。
- 子供(童貞)の小便、黒い犬や黒い雌鶏の血、もち米(蒸す前のもの)をかけると効果は抜群。
- 桃の木や清めた銭でつくった剣でもダメージを与えられる。
- ある程度の修行を積んだ道士であれば、額に護符を貼ればある程度は操作ができる。
- 自分の額に札を貼れば同士(キョンシー)と思われる。
キョンシーブーム
1980年代後半に作られた映画「霊幻道士」(香港制作)および亜流である「幽幻道士」(台湾制作)が大ヒットする。
恐ろしいが何処かコミカルなキョンシーを主軸に据えたアクションあり笑いありの内容は日本でもおおいに受け、キョンシーブームが沸き起こった。
「ひらけ!ポンキッキ」(フジテレビ)ではこの人気に便乗した「うわさのキョンシーたいそう」(通称:キョンシーダンス)が歌われ、キョンシー人気に目をつけたTBSが「幽幻道士」シリーズのキャラクターや設定を流用して日本向けのみに作らせたテレビドラマ「来来!キョンシーズ」を製作させた。
「幽幻道士」シリーズのヒロイン・テンテン(シャドウ・リュウ)はその愛らしさから人気を集め、本来はこの作品の中での役名であった「テンテン」を芸名として日本でも活動するきっかけとなった。途中休業期間もあるものの、現在でもシャドウ・リュウ名義で活動している。
2013年、映画「キョンシー/Rigor Mortis」(原題:殭屍)が公開。監督をジュノ・マックがつとめ、プロデューサーに『呪怨』シリーズの清水崇を迎え、コメディの趣が強かった『霊幻道士』を一転、ダークホラーとしてリブート(監督曰く「リビジット(再訪)」)している。
サンコー役のチン・シュウホウを始めとしてシリーズに登場した俳優が多く登場。『霊幻道士』の挿入歌『鬼新娘』が主題歌になるなど、原作へのオマージュとリスペクトが随所に見られている。
なおモンチョイ役をつとめたリッキー・ホイにもオファーがあったが、撮影前に心臓発作で急逝、実現はかなわなかった。
その他の創作
日本において知られるキョンシーと言えば『ヴァンパイア』シリーズに登場するレイレイがいる。
元は人間で、強力な道術を使う道士だったが、命と引き換えに魔物を倒した母をよみがえらせる為、姉のリンリンと協力して禁術「異形転身の術」を使用。自らをキョンシーに変えて戦う。
『東方Project』第13弾『東方神霊廟』に登場する宮古芳香もキョンシーである。
Stage3のボスとして登場。邪仙の霍青娥によって蘇らされた元人間だが、脳が腐っている為にだいぶあーぱーな性格となっている。
熊倉隆敏の『ネクログ』は近代中国を舞台にした、キョンシー道術バトルアクション漫画である。
大の妖怪好きで知られる作者の趣味と知識全開となっており、正統派の妖怪ものとして評価が高い。
『女神転生』シリーズに登場する妖鬼トケビ(独脚鬼/トッケビ)は、韓服を身に纏ったキョンシー風のデザインである。これは元は朝鮮半島に伝来する妖怪で、本来はイタズラ好きの鬼として伝わっていた。
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関連項目
外部リンク
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