キラーアビリティとは、2019年生まれの競走馬である。牡の青鹿毛。
馬名の意味は「素晴らしい能力、才能。母名、一族名より連想」。馬主はエフフォーリア、レイパパレなどのGI馬を所有する(有)キャロットファーム。
主な勝ち鞍
2021年:ホープフルステークス(GⅠ)
2022年:中日新聞杯(GⅢ)
能力者の概要
父ディープインパクト、母*キラーグレイシス、母父Congareeという血統。
父ディープインパクトは説明不要の競走馬にして大種牡馬。2019年に途中で体調不良で種付けを取りやめその年に死亡したので、ほぼラストクロップになる(正確には6頭が2020年生まれ世代として血統登録されデビュー予定になるが)。
母キラーグレイシスはアメリカGIのハリウッドスターレットS優勝馬。母父Congareeはシガーマイル連覇などGI5勝でアメリカのダートマイル戦線で活躍した名馬。まぎれもない超良血である。
ちなみに直訳すると「殺しの能力」になってしまう一見中二病物騒な馬名だが、英語の「killer」には「素晴らしい」「衝撃的な」「イカした」といった意味のスラング用法があり、記事冒頭文のとおりこちらが名前の由来。同じキラーグレイシス産駒に2014年生まれのキラービューティ、2016年生まれのキラープレゼンスがおり、母から「キラー」の名を受け継いだ馬としては3頭目である。
日本最大最強の競走馬生産牧場ノーザンファームで生産され、キャロットファームの1口25万円×400口の計1億円で募集された。
若駒のころは品かあってバネがあるが、真面目過ぎるところがあったという。訓知のあとクロノジェネシスやラウダシオンを管理した栗東の斉藤崇史調教師に預けられた。
仕留める馬の戦歴
2021年(2歳時)
6月27日のメイクデビュー阪神(芝1800m・11頭立て)では鞍上クリストフ・ルメールでデビューしたが、馬場入場のときになんとテーオーコンドル(牡)に絡まれた(明確に影響を受けて後ろに乗られたのはローマンネイチャー(牡)だが)。新馬にして貞操の危機に遭いつつも無事に落ち着き発走したように見えたが、やはり動揺したのか5着に敗れた。その後テーオーコンドルは去勢。2歳にして騸馬である。
8月28日の小倉未勝利戦(芝2000m・9頭立て)では岩田望来に乗り換わり。道中7番手の後方から直線で一気に伸び、さらに後続に7馬身をつけてゴールした。勝ちタイムは1分59秒5とこれまでの小倉2歳2000mレコードを1秒7も更新する驚異のコースレコードとなった。
10月30日の萩ステークス(OP・阪神芝1800m・6頭立て)では若い岩田が上手く制御することができずクビ差2着に敗れた。岩田は「道中ずっと力みしかなくて抑えることができず途中から動いていったが勝ち馬にマークされてクビ差負けてしまった」と悔やんだ。
12月28日のホープフルステークス(GI・中山芝2000m・15頭立て)、ここでは一昨日に有馬記念を優勝したばかりの横山武史に乗り替わりとなった。戦前のオッズはサウジアラビアRCを勝ったコマンドラインが3.0倍で、同馬はそれに続く4.3倍の2番人気となる。
レースの道中では3番手と好位置につけ、直線では伸びると2着から1馬身半つけGI勝利を飾った。2021年のGI戦線を5勝で終えた武史は「1、2コーナーでハミを噛んだけど、向こう正面で力が抜けてくれて勝てるの思った。まだ気持ちで走っている馬なのでオン・オフがはっきりしてくれればもっと良くなる」と期待を寄せた。なお武史はこの日の最終レース、立志Sも勝利。ルメールの年間200勝を阻止し、通算300勝の節目で2021年を締めくくった。
2022年(3歳時)
3歳となりクラシック戦線へと駒を進め、トライアルを挟まずに皐月賞へ直行。出走馬には2022年は朝日杯FSを勝ったドウデュース、2歳GIを使わずにクラシックに挑むイクイノックスやジャスティンロック、同じく直行を明言した京成杯馬のオニャンコポンら重賞馬がいた。そして迎えたレース本番。キラーアビリティはなんとスタート直後に少し立ち上がってしまったため出遅れ中団に構えることに。インをとることはできたものの直線で伸びることなく13着と大敗を喫してしまった。
次走の日本ダービーでは道中中団後ろの位置を取り、大外から直線に入るも後方の位置に。それでもなんとか脚を伸ばすも6着に終わった。
次走はクラシック三冠の最後の一つ菊花賞には向かわず、アルゼンチン共和国杯に駒を進め、鞍上は横山武史からクリストフ・ルメールに乗り替わった。クラシック路線で連敗したもののG1馬ということもあってなのか2番人気に推されたが、スタート直後左に動き隣にいたテーオーロイヤルと接触、その後道中は中団後方に位置を取り直線で外を回り8着と三度掲示板外となった。
3歳戦ラストは中日新聞杯、鞍上は団野大成。レース道中は中団のインコースを取り直線に入る。馬群に囲まれるも徐々に順位を上げ前が開いた隙を逃さず末脚を発揮、マテンロウレオをクビ差で差し切り久しぶりの勝利をあげた。2歳戦の栄光とは打って変わり大きく躓いた3歳戦であったが、最後は2歳中距離王者の意地を見せつけ3歳戦の幕を下ろした。
2023年(4歳時)
明けて4歳の始動戦は京都記念、鞍上はB.ムルザバエフ。前走の勝利もあってか同期のダービー馬ドウデュースや3歳で圧倒的強さを見せつけるもその後不調が続いていたエフフォーリアに次ぐ3番人気に推された。レース序盤は中団前に位置を取り4番手で追走、道中プラダリアに交わされ第3コーナーカーブで他馬が殺到し、直線を向いたときには前が塞がってしまった。前が開き鞭が入るも結果は5着、なんとか掲示板は確保した。
次走は大阪杯。イクイノックス、ドウデュースら多くの日本馬がドバイワールドカップミーティングに向かったものの、力はあるものの昨年の大阪杯を始めGⅠ戦線で勝てずにいた逃げ馬ジャックドール、惜しくも三冠を逃した休養明けの二冠牝馬スターズオンアース、屈腱炎を患い一年と五か月の休養を経て昨年の鳴尾記念を制し前走の日経新春杯では59kgの斤量を背負い勝利したヴェルトライゼンデ、三冠馬の遺伝子を継ぐ昨年のエリザベス女王杯馬ジェラルディーナ、熱中症を患い命の危機に瀕したものの回復し、前走の中山記念で勝利をあげたヒシイグアス、GⅠ戦線で度々好走するも気性の荒さもあってか中々勝ちきれずにいるダノンザキッド、昨年の大阪杯馬で同じディープインパクト産駒のポタジェなど、有力な競走馬が出走していた。キラーアビリティは11番人気で出走し、レースではスタート後スターズオンアースと並ぶ形で中団後方に位置し、そのまま後方に位置しながら直線を迎えるが、ジャックドールとその鞍上武豊が作り出したペースの前に多くの馬がスタミナ削られる中では後方から末脚を伸ばしても通用しなかった。1着はジャックドール、隣にいたスターズオンアースは異次元の末脚を発揮して後方にいたにも拘わらず僅差の2着に持ち込めたが、キラーアビリティにはその力は無く、13着という結果に終わった。
次走は新潟大賞典に出走。不良馬場の中行われたこのレースでは後方待機から長い直線でしぶとく脚を伸ばしたが、前でマッチレースを繰り広げたカラテ・セイウンハーデスには遠く及ばず5着。とはいえトップハンデを背負い掲示板に入るだけの実力は示した形となった。
秋初戦は初の1600m戦となる富士ステークス。「気持ちの面で距離短縮すると戻れない」という心配があったが歳を重ねた今なら、という経緯で選択。しかしゲートに入った瞬間潜ろうとして暴れ、何とかスタートを切ったものの、終始最後方からの競馬となり見せ場なく最下位12着。
年内最終戦は連覇のかかる中日新聞杯。ムルザバエフ騎手は中団を追走し、直線でもしっかりと脚を伸ばすが、やはり斤量59kgは重すぎたようで4着。2023年は掲示板こそ確保するものの馬券内には入れず歯がゆい1年となった。
2024年(5歳時)
サウジカップデーにネオムターフカップへの登録を行い、無事招待が届き陣営はこれを受諾。2024年の初戦は海外初遠征となった。このレースはG1・3勝、2着3回の強豪・Luxembourgの始動戦であり、他に抜けたメンバーはいないと見たブックメーカーはこの馬を2.25倍の圧倒的1番人気に支持。さらに「Luxembourgは2馬身差以上を付けて勝利するか」の賭けを開催するくらいの推しようであった。続いて8.00倍の2番人気にThe Foxes、キラーアビリティは9.00倍の3番人気となった。
5番ゲートから五分のスタートを切ったキラーアビリティは5,6番手の中団を追走。前はJack Darcyが逃げ、2番手にLuxembourg。キラーアビリティは最内を追走し、横にはThe Foxesが並ぶ形の隊列で位置取りが決まった。直線に入るとC.デムーロ騎手が上手く外に出し、先頭を走るLuxembourg目掛けてしぶとく前を捉えにかかる。外から勢いよく追い込んできた伏兵・Spilit Dancerにこそ抜け出されたがLuxembourgを退け、12番人気のCalifも振り切って久しぶりの馬券内となる2着に食い込んだ。1年以上スランプに陥っていた馬の能力の片鱗が開花したのは遠い遠いサウジアラビアの地だった。
次戦は大阪杯を目標としており、現在は検疫中。この後は阪神競馬場にて着地検疫を受けながら調整を進める方針としている。
血統表
ディープインパクト 2002 鹿毛 |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
Cosmah | |||
Wishing Well | Understanding | ||
Mountain Flower | |||
*ウインドインハーヘア 1991 鹿毛 |
Alzao | Lyphard | |
Lady Rebecca | |||
Burghclere | Busted | ||
Highclere | |||
*キラーグレイシス 2009 栗毛 FNo.1-s(x) |
Congaree 1998 栗毛 |
*アラジ | Blushing Groom |
*ダンスールファビュルー | |||
Mari's Sheba | Mari's Book | ||
Sheba Little | |||
Heatherdoesntbluff 2003黒 鹿毛 |
Old Trieste | A.P. Indy | |
Lovlier Linda | |||
Michigan Bluff | Skywalker | ||
*ミドルフォークラビッツ |
クロス:Northern Dancer 5×5×5(9.38%)
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関連項目
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