キングコング対ゴジラとは、1962年8月11日に東宝創立30周年を記念して創られた
日米夢の怪獣対決映画である。通称『キンゴジ』。
オリジナル版は97分。東宝スコープ、イーストマンカラー。
下記のとおり、本作ではアメリカの怪獣キングコングが登場するが、当時正式に東宝からRKOに使用許可を申請して登場させたものである。
概要にもういいはないっ!!
監督は第一作と同じ本多猪四郎。音楽も伊福部昭で、前作とは異なり第1作に近いスタッフ構成。
日本怪獣映画の横綱『ゴジラ』とアメリカRKOが誇る古典大怪獣のチャンピオン『キングコング』。
本映画では、その両方がタイトル通りにスクリーン狭しと大暴れし、対決するということで大いに話題となった大作で、ゴジラ映画史上最大のヒットを記録、実写映画としての観客動員数としては2014年現在においても『東京オリンピック』『明治天皇と日露大戦争』『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』に次ぐ1255万人を数える。
RKOからのキングコング使用のために要求した版権料は8000万円(参考までに、当時の一般的な日本映画1本製作で2000万円ほど、54年版ゴジラ製作費が7000万円)だったといわれるが、この大ヒットで東宝はその恩恵を十分すぎるほどに受けたと言えるだろう。
また、この映画は外国でのウケも当時はそれなりによかったらしく、海を越えて大ヒットして多額の外貨を国内にもたらした。こうして1963年と1970年を除いて1975年まで矢継ぎ早にゴジラ映画が作られ、昭和ゴジラシリーズが本格的にスタートした。
前作でもアンギラス対ゴジラという形で怪獣同士の対決映画は撮られていたが、本作はよりゴジラとの互角バトルを前面に押し出し、日本の怪獣映画における対決ものという路線を決定付けた。
脚本を担当したのは関沢新一で、関沢らしいコメディチックなストーリーに本多監督が得意とするヒューマニズムあふれる描写が加わったことで、どことなく当時の社長シリーズを彷彿とさせるものとなり、ゴジラシリーズ史上最も作劇が明るい作風となっている。
かといって、ギャグ映画としていい加減に作られているわけではなく、序盤の高島忠夫演じるドラマーに扮する主人公が実は後半部分のコング攻略の伏線となっていたり、単なるタイアップに終わらない東京製綱の「鋼よりも強く、絹糸よりしなやか」なワイヤー、 後に007シリーズ初の日本人ボンドガールとなる浜美枝の2度にわたる怪獣との遭遇と逃亡劇などで男女模様を描くなど、本編自体もなかなか充実している。
後に、東宝はもう一本キングコング映画として『キングコングの逆襲』を製作しているが、本作の続編ではなく、本家「キングコング」のリブート作品のような仕上がりとなっている。なお、本作の続編企画として「続キングコング対ゴジラ」なる企画もあったらしいが、これは未製作に終わった。
本作を最後に昭和ゴジラシリーズはストーリー上時系列的にも第1作から完全な地続きの世界観、というものが崩れはじめ、次回作『モスラ対ゴジラ』でも一応は本作の後の事件であることが示唆されるが、特に『三大怪獣 地球最大の決戦』以降は娯楽性を重要視して、あまりストーリーの連続性に拘った作劇ではなくなっている。
なお、本作はゴジラシリーズ随一のフィルム管理の悪さも有名で、後年東宝チャンピオンまつりでの再上映のためにオリジナルネガに本多監督には無断で鋏が入れられ、無残にもバトルシーン含む数ヶ所が勝手に改編されてしまった。
これは、当時「同じ映画の再上映はしてはならない」という暗黙のルールがあり、「ちょっとでも違えば別の作品」と看做していた妙な慣例に起因する(そのため、人気があって何度も再上映された作品ほどオリジナルネガが短くなっている)。このネガはフィルム缶に無造作に入れられて倉庫に劣悪な状態で保管されており、なかなか全長版のビデオソフトが出なかった。
後に無事(?)ボロボロな状態でカット箇所が発見されているが、カット箇所とそうでない箇所では画質や色調が大きくオリジナルから損なわれてしまっていることが一目でわかるほどになっている。
今であれば、著作権の問題として大変な事態となりかねないものの、当時の日本映画監督は黒澤明などの一部を除いて、ほとんどが「会社に雇われている」監督であり、監督自体が昇進制でもあったため、あまり会社に対して大きい事を起こせなかったという事情もある。
そして本多監督自身、どんな無茶な予算や納期であっても「会社がこういう指示で映画を撮りなさいと言われたらそれをきっちり守る」という人柄であり、当時の慣例に対して特に文句を言うということも無かった。これは本作のヒューマニズム描写や本多映画に多用される「怪獣が街を破壊する中道案内をする警察官や自衛官がいる」という描写からも伺える(本作でも恋人を助けようと強行突破する男をみて「バカたれ!バカたれ~!!」と自分より他人を心配する自衛官がいる)。
黒澤からそれに対して突っ込まれたらしいが、「警官や自衛隊なら怪獣ごときで職務放棄はしない」ということでああいった描写を意図的に入れているらしい。戦争体験があった本多とそれがない黒澤との思想の違いを示しているといえるだろう(このことが後年黒澤が『トラ・トラ・トラ!』を降板する遠因でもあるのだが、それはまた別の話)。
キンゴジの特撮
当時、ゴジラシリーズは『ゴジラの逆襲』でストーリー的にも一旦の完結となっており、本作は7年ぶりのスクリーン復帰作であると共に、初のカラー作品となった。リアルタイムで昭和ゴジラを経験した世代の場合、本映画で初めてゴジラの身体や熱線の色を知った者も多い(当たり前だって)。
この7年の休止期間にも、東宝怪獣映画が途絶えたわけではなく、『獣人雪男』『空の大怪獣ラドン』『地球防衛軍』『大怪獣バラン』がゴジラシリーズのスタッフで製作されているほか、『ガス人間第一号』『美女と液体人間』といった実験要素の強い変身人間シリーズもこの間に作られていた。
既に東宝側としてキャラクターの完成していたゴジラよりも、特技監督の円谷英二は自身の憧れでもあり、今回はゴジラの対戦相手として登場する新怪獣のコングを如何に面白く魅せるか?について徹底的に拘ったという。
このことから、コングの造型はオリジナルとは大きく異なり、どちらかというとニホンザル系統の体形や顔つきで、アメリカのコングファンからはあまり評判がよくないらしい。
しかし、広瀬正一演じるコングとゴジラのバトルは帯電能力を差し引いても非常にパワフルで、特にゴジラを柔道の背負い投げで投げ飛ばすシーンや熱海城を挟んで殴りあうシーンなどは有名。コングが時折行うドラミングが本物のゴリラと同じ「パー」である点からも、広瀬がかなり演技を研究していたことが伺える。RKOからは「コングの顔立ちはオリジナルと変えてほしい」などの細かい注文もあったというが、そのような注文以前に「同じにしてはつまらないので意図的に変えよう」という動きがあった。また、体毛の表現には貴重なヤクの毛を茶色く染めて1本1本手で着ぐるみに植えていった。
本家のキングコングはエンパイヤーステートビルが小さくなるぐらいの大きさ(大体7m前後)だったのに対して、本作ではゴジラと互角に戦わせるために45mに巨大化させている。
では、ゴジラ自身も変化が無かったかというとそうでもなく、最も異なるのは鳴き声で、前2作では低めのドスの効いたいかにも野獣を思わせる動物的な咆哮だったのに対し、本作から『メカゴジラの逆襲』までは甲高い鳴き声となり、今日ではこちらのバージョンが「ゴジラの鳴き声」として一般に知られている。
このほか、造型も未使用に終わったジャイガンティス・ゴジラをベースに大幅にボリュームアップしており、オールタイムゴジラの中でもモスゴジと並んでトップクラスの人気を誇る。ちなみに、このキンゴジスーツは後に『モスラ対ゴジラ』でも糸まみれになって海に落下するシーンで使われている。
また、ゴジラを演じた中島春雄によると、キングコング役の広瀬正一とは、事前の打ち合わせでバトルシーンの立ち回りを大まかに決めて、後はぶっつけ本番でまさに「キングコングとゴジラの決闘」を演じたという。
コングがゴジラを一本背負いして投げ飛ばすカットなども円谷監督から指示があったわけではなく、黙って二人の演技に一任していたという。
また、途中登場する大ダコは生きた蛸をそのまま使って合成するという手法を使ったことでとてもリアルになっている(しかも、そのタコは撮影後にスタッフがおいしく頂きました)。海外では肝心のゴジラとの対決シーン以上にタコのシーンが好評で、後年フランケンシュタイン2部作でタコが登場するのはこのためだという(特に『フランケンシュタイン対地底怪獣』では音楽まで同じだったりする)。
鉄道面での考察はかなり間違っており、ヒロインが北海道に向かうために乗車した急行「つがる」は60年代当時は10系客車で運転される夜行寝台列車で、劇中のように151系電車で運転された実績は無い。しかも特急型車両で運転されている割には食堂車も連結されておらず、かなり編成が短い(ちなみに、車内セットは当時の151系をかなり正確に再現してはいる)。
約60年ぶりのリマッチ
時は流れて2015年10月16日、アメリカのレジェンダリーピクチャーズとワーナーブラザーズより、前年の2014年に公開されたレジェンダリー版『GODZILLA』と、それから約3年後の2017年に公開予定とした『キングコング: 髑髏島の巨神』の両作を世界観が共有されているという設定の“モンスターバース”として総括し、その中でゴジラとコングの対決を主軸とする新作映画の製作を決定したと発表[1]、まさかのゴジラ対コングの再戦が実現する事となった。
監督はハリウッド版『DEATH NOTE』を手がけたアダム・ウィンガードに決まり、曰くこのアメリカ版キンゴジでは両者の明確な決着が付けるつもりとの事で、同作には日本人俳優の小栗旬も出演予定である事も公表された。
そして本作公開から約59年目となる2021年[2]にそのゴジラとコングの2度目の対決が描かれるモンスターバースシリーズ第4弾『GODZILLA VS. KONG』が公開され、コロナ後としては2作品目となる北米興行収入が1億ドルと突破する特大ヒットを記録。日本でも興収18億円を超え、全世界でも500億円以上を稼ぐ大ヒットとなった。この好調ぶりから、当初vsコングで完結予定だったモンスターバースは継続が決定し、2023年にvsコングの続編やテレビシリーズの制作もアナウンスされている。
4K完全版
なんと本作のフィルムが全編再発見に至り、4Kのフルデジタルレストア版として蘇る、というニュースが発表されたのである。
上記の通り、本作はシリーズ最大のヒット作でありながら、再上映の度にフィルムを短くされたために随所にコマ飛び、スライス跡、明るさや色調の狂いが絶えない作品であり、コアなマニアであれば「フィルム傷やコマが飛ぶ部分を正確に覚えている」とまで言われるほどだった。
しかし、日本映画専門チャンネル、スカパー、東宝、東京現像所の合同チームは本作の全長復元を諦めてはいなかった。
所在不明のロール1フィルムを探し出すため、数年にわたるローラー作戦が施され、ついにロール1を含む全10巻のオリジナルフィルムが全て発見に至った。
このオリジナルネガは、スライスこそされてしまっていたものの、これまで擦られる(映写機にかけられる)ことがあまりなかったこともあって、すこぶる良好な状態で再発見に至ったという。
これにより、米国への輸出フィルムを用いない純粋な国産フィルムにおけるキングコング対ゴジラの再生が可能になった。このフィルムを全て4Kでスキャン。スキャニングには、ドイツのARRI社製ARRISCAN(アリスキャン)が使われた。
さらに、劣化して亀裂が生じた部分に関しては最新のデジタル技術で傷を修復、そしてコマ飛びした部分には前後のシーンから新規にコマを追加するなどして約3ヶ月の全編リマスターを敢行。
グレーディング工程では「初号試写の映像を再現する」というコンセプトで色を補正。この過程で、これまでわからなかったキンゴジスーツにおけるゴジラの白眼部分の色が実は「薄い黄色」であったという新発見もあった。
音響効果に関しても全体的にやり直され、以前復刻された日本映画専門チャンネルによる「高画質版」がモノラル音源で本作を復元したのに対し、このレストアでは現存する最も高音質かつ多チャンネルな音源素材である多元磁気立体音響4chステレオ音源(35mmシネテープ)を使用。
正しい長さの全長版音源であることを確認後、一部録音が逆相となってしまっていた箇所は、当時最新の技術を用いてトラックを分けて正位置に補正し、製作者が本来意図したサラウンド音響も復刻することに成功。
かくして完成した4K完全版は7月14日21時に新宿の招待上映会で久しぶりにスクリーンに完全なキンゴジが蘇り、日本映画専門チャンネル、スカパー!4Kでも同時放送が行われた。上映会では当時のスタッフ中野昭慶や最近になって消息が明らかとなったチキロ少年役の俳優によるトークショーも行われた。
また、この放映は全国でも大いに話題となり、有料放送か劇場のみのその日1度限りの上映だったにも関わらず、Twitterのトレンドワードに「キングコング対ゴジラ」が当日放送されていた「ケンミンショー」と同格でトレンド入りするなど、ネット上における関心の高さを伺わせた。
なお、この4K版は後に川北紘一の追悼上映という形で、大阪においてもイベント上映がなされ、本作が初めて観たゴジラ映画だった大森一樹をゲストに交えての上映会が行われた。
その場で大森は「綺麗になりすぎることで見えてはいけない部分が見える(アラビアのロレンスの付け鼻のように綺麗すぎて逆におかしくなる)んではないかと危惧していたが、全くそのような事は無く当時の技術力の高さを再認識した」と4K版を賞賛し、「ゆくゆくは自分のvsビオランテもこのクオリティで」と意欲を示していた。後に、ビオランテの4K版は2021年の日本映画専門チャンネルの企画で現実のものとなった。
どうやらストーリーらしいよ、この慌て者さんっ!
流行らない番組「世界驚異シリーズ」の視聴率不振に悩むスポンサー企業のパシフィック製薬。
そこに南海の孤島ファロ島に「巨大なる魔神」が目覚めたという噂を聞きつけ、これを話題に視聴率アップのテコ入れにしようと目論む。
一方、北極海では前作で氷山に封印されたゴジラが7年ぶりに目覚め、再び日本を目指していた。
同じ頃、ファロ島で巨大な蛸が出現し、住民を大混乱に陥れたが、直後に魔神、即ちキングコングが現れ蛸を追い払う。そしてコングは住民の用意した赤い汁を飲み干し、島に伝わる舞踊と音楽を聴くとたちまちその巨体を横たえて眠りに付いてしまった。
これ幸いと、眠りについたコングを日本に持ち帰ることを思いつき、さらに次なるアイディアが出る。
こうして、日本へ海運されることとなったコングだが、洋上で眠りから覚めてしまい、コングはそのまま日本本土に上陸、そして同じく日本に上陸していたゴジラに戦いを挑む。
だが、放射熱線という武器を持つゴジラに対してコングは何の武器も持たず、この第1ラウンドはしぶしぶと引き下がるのみであった。
しかし、ゴジラ対策へと準備されていた自衛隊の『1000万ボルト作戦』がこの両者の戦いを思わぬ方向へと導くことなり・・・
果たしてキングコングは水爆の申し子ゴジラに勝利できるのか?
そして、ゴジラは南海の魔神相手に如何に闘うのか?
さぁ、いよいよ世紀の関連動画だぞ!
関連項目が南方海上に逃れます。どうします?
脚注
- *当時としては2019年公開の『GODZILLA: king of the Monsters』と2016年公開の約12年ぶりとも言える国産ゴジラ映画『シン・ゴジラ』の制作告知と合わせて3つ目の新作発表であった
- *当初は2020年公開を目処としていたが、途中での作り直しや新型病原体の世界的流行などの諸事情により翌年にずれ込んだ
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