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ギョウチュウとは、線形動物門双腺綱旋尾線虫亜綱蟯虫目蟯虫科に属する、動物に寄生する寄生虫である。小学校などで夏前にギョウチュウ検査と称してお尻にセロハンテープを貼ったのを覚えている人も居るのではないだろうか。
漢字では「蟯虫」と書き、これの読みが「ギョウチュウ」である。ただし「ジョウチュウ」という読み方もある。「蟯」の字が一般的でないため、「ぎょう虫」と書くこともある。
ここでは人に寄生するヒトギョウチュウについて記載する。
ヒトギョウチュウの特徴
その名前の通り人間に寄生するギョウチュウ。オスとメスで体長が異なり、メスは8mmから13mmに達するのに対してオスは2mmから5mm程度までしか大きくならない。
通常の室内環境でも数週間は生きられる強さがあり、感染性がある。
体内に入ると主に盲腸に住み着き、産卵時には肛門付近へ移動する。肛門括約筋が緩む睡眠中に産卵し、その時に分泌される粘着性物質やギョウチュウの活動によってかゆみが発生し、夜中に無意識に掻きむしることがある。この時手に付着したギョウチュウの虫卵が撒き散らされることによって感染源や自己再感染の原因となる。
虫卵が体内に入ると十二指腸で孵化し、盲腸で数週間ののち成虫となる。
ギョウチュウは人から人へ感染するため、現在も広く感染が見られる。
ちなみにヒトギョウチュウは人間に感染してもよほど栄養状態が劣悪でない限り、生命活動に支障をきたすレベルの問題を発生させることはないが、これがチンパンジーに感染すると移行症による著しい障害から死に至らしめる事がある。
蟯虫卵検査
蟯虫に感染しているかどうかの検査は主に粘着テープを用いて行われる。蟯虫は人間の睡眠中に産卵のために肛門付近へやってくる習性を利用し、起床時に肛門周辺に粘着テープを押し付け、これを試料として顕微鏡でギョウチュウの卵を探す。
日本では昭和33年から小学3年生以下の児童を対象にぎょう虫を含む寄生虫卵検査を義務化していた。しかし衛生環境の向上によって九州の一部地域を除いて寄生虫卵検査は平成27年度をもって廃止された。検査が実施されていた頃、検査で寄生虫卵が発見されると水泳の授業に参加できないことがあった。
肛門のかゆみなどの思い当たる症状があって検査を希望する場合はどうすればよいのか?病院に行くのもいいだろうが検査キットを常備していない病院も多いようだ。
最近では、インターネット上の注文で検査キットを自宅に配達してくれ、それを返送すれば検査して結果を伝えてくれる検査機関が存在している(本記事下部の「関連リンク」参照)。価格もさほど高額でもないので、こちらを利用してみるのもよいかもしれない。
治療と予防
治療法としては体内にいる蟯虫を駆除する、つまり駆虫が基本である。駆虫剤と呼ばれる薬剤を服用し、体内の蟯虫を駆除する。
2020年現在の日本においては、蟯虫の駆除に使用できる駆虫薬は数種類ある。まず医療用医薬品として「ピランテルパモ酸塩」(商品名「コンバントリン錠」「コンバントリンドライシロップ」)を佐藤製薬が販売しており、医師の診断・処方の元に治療に使用される。また「パモ酸ピルビニウム」(商品名パモキサン錠)が佐藤製薬から一般販売されており、薬剤師または登録販売者がいる薬局・ドラッグストアで購入することができる。他の駆虫薬メベンダゾールやアルベンダゾールも有効であり諸外国では使用されているが、この2種は日本では蟯虫症に対する適応が記載されていないためこれら2種を用いて治療する場合は保険適用外使用となる。
ただしこれらの駆虫剤は卵の駆除はできないとされ、卵が孵化する周期を見計らって反復的に薬剤の服用が必要となる。
また一旦お腹から蟯虫が居なくなっても、虫卵が再侵入してきて感染を繰り返すようでは意味が無い。家族にも蟯虫を疑う症状の人がいるなら、同時に治療することが必要。室内に残る蟯虫の駆除は日光照射や掃除機による清掃などが有効。また清掃後はきちんと手を洗うことが重要となる。
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関連項目
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