ギランボとは、特撮ドラマ『ウルトラマンティガ』に登場するウルトラ怪獣の1体である。CV:梛野素子
概要
第8話「ハロウィンの夜に」にて初登場した怪獣。モチーフはハーメルンの笛吹き男。
異次元空間に潜む生命体で、純粋な子供の夢を食糧にしている事から子供だけを付け狙う。一方で大人の夢は本人曰く「腐った欲望」らしく食べるとお腹を壊すとして忌み嫌っている。子供の夢はまさに未来を作る人類の宝であり、ギランボは「子供の夢」と「人類の未来」を同時に盗んでいく脅威の存在。子供の夢以外にもワインを愛飲している様子。魔女らしく箒にまたがっての飛行が可能、手にしたオルゴールの音色で催眠ロリポップを食べた者を操る能力を持ち、GUTSハイパーの直撃にも耐えられる耐久力を持つが、戦闘の際は怪獣形態であるギランボ(後述)に変身して対処する。また異次元人という現実世界においてはありえざる存在のためか鏡に映らない特徴を持つ。かなり頭が回る切れ者でもあり、自身が怪しまれないよう様々な計略を張り巡す策略家。
普段は現実世界に姿を現さず異次元に潜んでいるが、年に一度のハロウィンの日になると行動を起こし、魔女の姿に化けて出現。『ティガ』の世界ではハロウィンの習慣がより根付いている設定であり、この日は人々が仮装をするため魔女の姿を疑う者はおらず、あたかも催しに参加しているように装って子供たちに無料でロリポップを配る。ここだけ見ると善いおばあさんだが、このロリポップこそ魔女の罠。食べた子供は悪夢を見せられ、魔女に操られるまま攫われてしまい、夢を吸い取られてしまう訳である。また操られている女性は不気味な笑みを浮かべる演出があり恐怖を煽る。夢を吸い取られた子供は生気を全く感じさせない廃人と化し、「抜け殻」の体は夢の墓場と呼ばれる公園に捨てられてしまう。毎年ハロウィンになると世界各国で子供の蒸発事件が多発していたが、異次元に潜んでいる間はGUTSの探査にも引っかからず、攫い方も実に巧妙だったためか怪獣の仕業だと分からず、単なる失踪事件として片付けられていた。つまり知らず知らずのうちに無数の子供が魔女の犠牲となっていたのだ。
異次元と現実世界を自由自在に行き来できる巨大パンプキンを本拠地としている。高度な技術もしくは魔法が使用されているのか現実世界に進出した時は怪しまれないよう古い屋敷に偽装し、更に出現する場所を人気の無い丘の上にするなど用意周到。巨大パンプキン内には魔女の居室や先述の夢の墓場に繋がる扉がある。
ウルトラ怪獣擬人化計画でまさかの美少女化。ハル犬氏がデザインを担当した。
異次元人ギランボ
異次元魔女が変身した戦闘形態。身長56m、体重4万9000トン。
左手が鋭利な剣の形状をしており、軽快な動きから繰り出される緩急一体の攻撃はウルトラマンティガを翻弄・幻惑する。巨体ながらティガに気付かれないレベルの忍び足を行えたり、ティガの回し蹴りを90度直角に体を折り曲げて回避するなど、魔女らしからぬ高い身体能力が特徴。一方で「瞬間移動」「分身」の特殊能力をも有し、全くの予兆無しに繰り出される瞬間移動にティガは全く対処できず、分身を使った攻撃ではティガを四方八方からタコ殴りにして一方的にダメージを与えている。他にも空間への干渉能力もあるのか満月がカボチャの顔になっていた。
身体能力と特殊能力を駆使してティガを後一歩の所まで追い詰めるギランボ。しかし満身創痍のティガがタイマーフラッシュを放ち、分身をかき消された事で形勢逆転を許す。本体を見破られたのがよっぽどショックだったのか落ち着きを失い、これまでのお返しと言わんばかりにティガからの猛攻を喰らい続け、ウルトラホイッパーで上空へと投げ飛ばされる。空中で異次元への逃走を図るも、その直前にウルトラフィックスで行動不能にさせられた挙句、トドメのゼペリオン光線を受けて撃破された。
主を失った巨大パンプキンも悪夢から覚めるように消え去っていった。
劇中の活躍
10月31日の夜――ハロウィンの日に不気味な魔女の笑い声が響く。
メトロポリスの一角にあるKM209地区にて異常な磁場が探知された。早速GUTSが調査に乗り出し、磁場の発生源をスキャンしてみるも視覚的にも数値的にも異常が見られなかった。一方、地区内の住宅街ではハロウィンの仮装をした子供たちが各家庭を回ってお菓子を貰っていた。毎年ハロウィンの日になると世界各国で子供の蒸発事件が相次いでいたため、ダイゴとレナが仮装をした上で警備にあたっていた。そこへ異次元魔女が姿を現し、子供たちを集めて催眠ロリポップを配る。ある程度配ったところでダイゴに鏡に映っていない事を見抜かれ、魔女は店じまいと称して退却を図るが、その後をダイゴに追跡される。だが魔女は上手くダイゴを本拠の屋敷へ誘導。夢の墓場まで誘導した後、ギランボ形態で不意打ちを仕掛けて彼の捕縛に成功した。彼が着ていたカボチャの仮装は魔女に回収・操作され、レナのもとに差し向けた事でダイゴの不在を巧みに誤魔化している。魔女の罠にかかって捕まってしまったダイゴは身ぐるみを剥がされた上でカプセル内に閉じ込められ有毒ガスによって人知れず苦しめられる。
磁場の発生源には何ら異常が無く、子供たちも無事帰宅した事でGUTSは引き揚げた。この状況こそ魔女が望んだものだった。街が寝静まった頃、どこからともなくオルゴールの音色が鳴り響き、催眠ロリポップを食べた子供たちはその音色に操られて家を抜け出す。魔女は大人が油断した隙を突いて子供を攫う気だったのだ。
だがここで予想外の事態が発生。子供にだけ配ったはずの催眠ロリポップが、どういう訳かレナの手にまで渡っており、意図せず彼女まで操ってしまった事でGUTSに異変を知られる事となる。そうとは知らずに魔女は操った子供を収容するべく巨大パンプキンを異次元から現実世界へ移動させるが、その時の磁場変動をGUTSに探知されて位置まで特定され、これが原因でGUTSの出動を招いた。子供たちは列を作りながら巨大パンプキンの中へと消えてゆく。魔女はパンプキンの上から子供を扇動するが、現場に到着したGUTSの妨害を受け、シンジョウが放ったGUTSハイパーがオルゴールを破壊。催眠が解けて子供が正気に戻ってしまった。やむなく収容に成功した一部の子供だけでも連れ去ろうと異次元への渡航を試みるが、すんでのところでダイゴが変身、ウルトラマンティガになった事でそれさえも阻止される。逃げ道を防がれて怒りに震える魔女は戦闘形態のギランボに変身。夜空と満月を背景にティガと格闘戦を演じるが最後は撃破され、魔女が奪った夢は全て持ち主の子供に返されるのだった。
計略を以って事を進める策士であったが、拘束したダイゴから取り上げたスパークレンスを処分せずに眼前の机の上に置くという、とんでもない詰めの甘さが身を滅ぼす結果となった。
余談
「ハロウィンの夜に」では、21世紀の日本にハロウィンの風習が定着しているという設定となっている。今でこそ大規模な仮装が行われるハロウィンだが、1996年当時は現在ほどの規模はなく、時代を先取りしていたと言える。そのハロウィンを題材に分かりやすいストーリーを据えたと製作陣は語る。
脚本を担当した右田昌万氏曰く当初高齢化社会を題材にする予定だったという。攫われた子供たちが200歳や300歳の者しかいない世界でコキ使われる話になっていたのだが、岡田寧監督から「コレ見た子供たちが、お年寄りを大切にすると思います?」とダメ出しを受けて作り直しに。作り直すにあたって高野専務から「夢をテーマにしたらどうか」とアドバイスを受けて現在の「ハロウィンの夜に」が製作された。『ウルトラマンティガ』の最初期からあったプロットのようで、岡田監督曰く西洋の不思議な行事(ハロウィン)と、ファンタジーに外せない定番である「人さらい」や「神隠し」を組み合わせた低年齢の子供向けのエピソードとの事。うまく仕上がった作品だと監督は評価している。
小話
- 「ハロウィンの夜に」はその名の通り全編の大半が夜となっている。日中のシーンはギランボが倒された後のエピローグのみと大変珍しい構成。
- 魔女がキャンディを配るシーンや、子供たちが階段を降りるシーンは東京都多摩市にあるパルテノン多摩に内包された「きらめきの広場」という場所で撮影されている。ここは特撮のロケ地として比較的よく使われている模様。
- 実は声優として活躍する入野自由が子役として登場。レナ隊員にキャンディーを渡した子供が当人で、弟がいる設定。何気に彼の行動がギランボの暗躍を露呈させるきっかけとなった。
- モブ役の子供が複数登場するが、どうも数が足りなかったらしく、一度パンプキンの中に入っていった子供が後のシーンでは外にいるという不自然な点が見られる。
- 異次元に住む事から「ヤプール人と関連性があるのでは」と考える人もいる。
- レナの寝間着であるタンクトップ姿が見られる数少ない回。他に見られるのは第35話「眠りの乙女」くらい。
関連項目
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