ギルバート・クリス・フォン・ミューアとは、ゲーム『ファイナルファンタジーIV』に登場する吟遊詩人である。
概要
商業国家ダムシアンの王子。ゲーム中での呼称は「ギルバート」だが、海外版では Edward(後述)。
SFCではジョブが「おうぞく」と表示されるが、FF3とFF5に登場する吟遊詩人の系譜に属する。DS版ではジョブが正式に「ぎんゆうしじん」となった。彼が奏でる劇中曲「ギルバートのリュート」が彼のテーマ曲でもある。
登場シーンは自分の国を滅ぼされ、目の前で恋人に死なれ、老人にタコ殴りにされ、幼女に「弱虫」と罵倒され、主人公にぶん殴られるという悲惨極まりないものだった。その後も彼がいいところを見せる場面は少なく、普通にプレイしていると戦闘能力も弱いので、「ヘタレ」「最弱キャラ」という評価が定着してしまっている。
能力
使う武器は基本的に竪琴だが、これが見た目に反して後列からだと命中率が落ちてしまう(DS版除く)。さらには攻撃力が低く、従って頼るべきは追加効果(眠りや誘惑など)なのだがボスには効かない。防具も紙同然。ステータスも低く、特にHPはリディアより低い。悲惨。
しかし、彼には秘めたる力がある。Lv70を超えるとHP上昇量が改善するに、各種ステータスも吟味すれば急増する(減ってしまうパターンもある)ので、理論上では力・素早さ・体力・知性・精神を全て99まで上げることもできてしまう。こんなことが可能なのは彼の他にリディアしかいない(っていうかよりによってこの2人かよ)。GBA版では終盤に彼をパーティに加えることもでき、強力な専用武器も追加されているので十分すぎるほど戦力になっている。
- うたう
- 敵になんらかの状態異常を与えるのだが、何を歌うのかはランダムである上、成功率も低い。そして竪琴を装備しないと発動しないのだが、だったら竪琴で攻撃して追加効果を狙う方がマシなのではということになってしまう。唯一、確実に狙って歌えるのが「かえるのうた」なのだが、そのためにはギルバート自身が蛙にならなければいけない……
- DS版ではレパートリーが増え、歌う曲を選択できるようになり、実用的になった。味方にバフをかける歌もある。
- くすり
- ポーションを1つだけ消費して味方全体に使う。一人当たりの回復量が少なすぎて何とも微妙。
- DS版ではポーションだけでなくあらゆる消耗品を、人数分消費して一度に全員に使うコマンドとなった。補給が万全であれば強い。
- かくれる
- 一度「かくれる」と、「あらわれる」を使うまでダメージは受けないが攻撃に参加することもできない。ギルバートが瀕死になるとこの「かくれる」が自動的に発動する。彼がヘタレと言われてしまうのはこれに拠るところも大きい。
ストーリーでの活躍
この項目は、ネタバレ成分を多く含んでいます。 ここから下は自己責任で突っ走ってください。 |
見聞を広めるために身分を隠して吟遊詩人として旅していたところ、カイポの村でテラの娘アンナと出会う。テラには猛反対されるが、ギルバートはアンナを連れてダムシアン城に帰り結ばれる……はずだった。
クリスタルを奪いに来たバロン王国の赤い翼によって城は徹底的に破壊され、アンナはギルバートを庇い被弾してしまう。ちょうどそこへ、彼を追いかけてきたテラたちがやってくる(これがプレイヤー視点から見たギルバートの初登場シーン)。
ギルバートのせいでアンナが殺されたと誤解したテラは逆上して彼に殴りかかる。まだ生きていたアンナは二人を止めて、ギルバートに愛を告げて息絶えた。ここでテラはアンナの仇をとるためにパーティを離脱するが、残されたギルバートはアンナの死に嘆いた。リディアに「弱虫!あなたは大人でしょ!なのに、あたしだって!」と叱られたにも関わらず、「君の言う通り僕は弱虫さ。もう何もかもどうでもいいんだ!」と弱音を吐き続けるギルバートだったが、彼に怒ったセシルに殴られ「悲しいのは君だけじゃない。今の僕たちには君の助けがいる」と言われてようやく戦いに身を投じる決意をする。
その後はセシルの当初の目的であった解熱剤「砂漠の光」を入手するために訪れたアントリオンの巣で凶暴化したアントリオンに襲われ「うわあ!」と叫び、帰ってきたカイポの村で夜に一人寂しく竪琴を奏でていたら魔物に襲われて「うわあ!」と叫び[1]、さらなる被害を防ぐために向かったファブールでのクリスタル攻防戦で盛大にこけて「うわあ!」と叫び、バロンに向かう船上でリバイアサンと遭遇し「うわあ!」と叫び、海に落ちてセシルと別れる。
……という感じで終始ヘタレな印象しかないギルバートだが、彼の最大の見せ場はパーティ離脱後にやってくる。
土のクリスタルを手に入れるためにセシルたち一行がトロイア国にやってくると、そこには漂着して看病されているギルバートがいた。弱っているギルバートは戦うことができないが、再びローザを取り戻そうとしているセシルの力になるべく自分の代わりとなるアイテム「ひそひそう」を託す。
磁力の洞窟でセシルたちがダークエルフに敗れると、危機を感じ取ったギルバートは立ち上がり、看護士の制止も振り切ってふらつきながら竪琴を手に取る。ひそひそうを通して流れてきた竪琴の音色はダークエルフを苦しめて磁力の束縛を打ち消し、パーティに勝利をもたらした。
帰ってきた一同はギルバートに感謝するが、ギルバートはただ謙遜するばかり。するとテラが力強く彼の勇敢さを称え、アンナも幸せだったと述べる。二人のわだかまりは完全に解け、テラはアンナだけでなくギルバートの分も仇を取ると宣言した(結果的にこれが死亡フラグとなるが……)。そしてギルバートは勇気の何たるかを悟ったようである。
以後、ギルバートは病床に伏せったままだが、最終決戦を前にしてトロイアの神官たちとともにミシディアに駆けつけ、セシルたちのために祈る(GBA版だと彼を連れて行くことも可能)。そしてテラの幻影と共に一同の前に姿を現し「みんな! ゆうきを!」と力を送った。
ジ・アフター
ダムシアン王として民に慕われており、新たな危機に際しては知略のあるところも見せる。さらにはパーティのまとめ役となる期間もある。もうヘタレ王子とは呼ばせない!
戦闘面でもそれなりに強い。「かくれる」コマンドも仕様はそのままに「うかがう」と名を変えて、瀕死になっても自動発動せず、たくましく成長したことをうかがわせてくれる。
海外版での扱い
ファイナルファンタジーIVの英語版(名称は「Final Fantasy II」)では、図らずもギルバートにまつわる新たなネタが生まれてしまった。
まずその名前だが、ギルバート(Gilbert または Gilbart)ではなく Edward となっている。エッジの本名もエドワード・ジェラルダインなので、同じゲームに同じ名前のプレイヤブルキャラクターが二人いるという珍現象が発生している。まあエッジは普段は Edge で通しているからいいのだが、DS版だと全員登場時にフルネームが表示されるので混乱を招きそうだ。
そしてギルバート(ややこしいのでEdwardでなくギルバートで通したい)を一躍有名にしてしまったのが、彼に向けてテラが浴びせた台詞である。ダムシアン城でテラがギルバートに殴りかかるとき、「きさま よくも むすめを‥…」「ちがいます!」「なにが ちがうと いうのだ!」というやり取りがあるのだが、この最後の台詞が英語版では
となっている。Bard は吟遊詩人なので、「この spoony な吟遊詩人め!」と言っているわけだが、この spoony がネイティブでも滅多に使わない単語なのだそうだ。かなり古い言葉で、くだけた感じで「馬鹿な、デレデレした」を意味するそうなので、日本語にすると
この ひょうろくだま ぎんゆうしじんめ!
とか
と言ったところだろうか。シリアスなはずの場面でなんちゅー言葉使ってるんだということになる。翻訳を担当したのはスクウェア(当時)の日本人スタッフだったそうだが、一体どこからこんな単語が出てきたのだろうか。
海外ではこの You spoony bard! がFF4で一番有名なセリフなのだそうだ。つまるところ日本でいう「いいですとも!」のポジションである。"All your base are belong to us" の仲間でもある。
あまりに有名になってしまったので、以降のFFシリーズ海外版を含むさまざまなゲームや漫画にこのセリフが改変されて登場した。英語の Final Fantasy Wiki にはこのセリフを解説したページがあり、そこには逆転裁判3の英語版でサイバンチョが「ワシは spoony bard ではないぞ!」と発言している画像まで……
そして翻訳が全面的に見直されたDS版でも、この You spoony bard! だけはしっかり残されたのだった。
関連動画
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関連項目
- ファイナルファンタジーの関連項目一覧
- ファイナルファンタジーIV
- ファイナルファンタジーIV ジ・アフター -月の帰還-
- リュート
- テラ(FF4)
- ベジータ(CV:堀川りょうのヘタレ愛すべき王子)
- Engrish
脚注
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