クアラルンプール(Kuala Lumpur)とは、マレーシアの首都である。頭文字を取ったKLが略称。
東南アジア有数の国際都市として知られる。
地名の由来
泥(lumpur)が合流する場所(kuala)という意味。
この場所で2つの川が合流していてここをクアラルンプールと呼んでいた。それが都市名になった。
気候と気温
赤道直下に位置し、一番気温が下がる1月も平均最高気温が31.5度で、年間平均最高気温も32.4度。
典型的な熱帯雨林気候で、年間を通して降水量が多い常夏の気候で、植物がよく生い茂る土地である。
しばしばスコール(豪雨)が起こる。特に夕方に起きやすい。
とんでもない量の土砂降りの雨が30分から2時間程度かけて降り、ぴたっと雨が止む。
マレーシアに限らず熱帯の国に共通することだが、冷房を効かせることが富の象徴と考える風潮がある。
空港などの施設の中は冷房が効きまくっていて寒い。旅行の際にはジャケットを持っていきたい。
市街地の観光名所
ペトロナスツインタワー
この場所に、ペトロナスツインタワー
がある。
高さ452mの88階建て高層ビルが2つ並んでいる。
マレーシアの国営石油企業ペトロナスが資金を出し、1992年から建設を始め1998年に完成した。
片方のTower1は日本の建設企業ハザマ、もう片方のTower2は韓国の建設企業サムスン物産が建てた。
41階と42階の所に2つのタワーを結ぶスカイブリッジという通路がある。
スカイブリッジには片方の塔に火災が起きたとき、人々をもう片方の塔へ避難させる役割がある。
Tower1はペトロナスとその関連企業が占めている。
Tower2は他の企業に貸し出していて、多くの企業が入居している。景気が悪くなると空き部屋が増える。
夜は綺麗にライトアップされる。ツインタワーの前の噴水も虹色にライトアップされる
。
クアラルンプールタワー
この場所に、クアラルンプールタワー
がある。現地人はKLタワーと呼ぶ。1996年完成。
421mの通信塔で、地上276mの所に展望台がある。
この塔があるところは標高94mの小高い丘なので近くのペトロナスツインタワーよりも高く見える。
このタワーがある丘はブキッナナスと言い、マレー語で「パイナップルの丘」という意味。
もともとはパイナップルが生えていた熱帯雨林だった。現在も周囲には緑が残っている。
展望台には屋内のものとスカイデッキという屋外のものがある。
スカイデッキは柵が低くて結構危ない。このためスカイデッキのチケット購入の際、
「事故があってもKLタワーに責任を問いません」という同意書にサインさせられる。
スカイデッキには全面透明なケースであるスカイボックスというものがあり、風が弱いときに限り、
スカイデッキから突き出すことができる。高所恐怖症の人は腰が抜けるようなアトラクション。
スカイボックスを傷つけると危ないので靴を脱ぐことを要求される。
ちなみにスカイボックスは2ヶ所にある。ペトロナスツインタワー方面と、その反対方面。
夜は綺麗にライトアップされる。
チャイナタウンのペタリン通り
このあたり一帯がチャイナタウンになっている。
チャイナタウンのメインストリートはペタリン通りで、このように屋根が付いている。
ペタリン通りの北の端には茨廠門と書かれた門
がある。「トゲのある木が絡みついた(茨)、
壁のない建物の(廠)、門」という意味。
チャイナタウンらしく、この場所に關帝廟がある。商売の神である関羽を祭る場所。
三国志の関羽は信義に厚く裏切らない事で有名だが、そのことを商売人に気に入られ、商売の神になった。
パヴィリオンモールの噴水
この場所に、パヴィリオンモール
がある。
とにかく広いショッピングモールで、高級店も建ち並び、クアラルンプールの銀座といった感がある。
表にはお椀を3つ重ねたようなモニュメントの噴水がある。夜は綺麗にライトアップされる
。
マスジッド・ジャメ
この場所に、マスジッド・ジャメ
がある。
「クアラルンプール」の都市名の由来となった2つの川の合流地点に位置する市内最古のモスク。
1909年に完成した。
目前がチャイナタウンなので「下町のモスク」と称される。夜は綺麗にライトアップされる。
このモスクに限らず市内のモスクは、イスラム教徒がお祈りしている時は異教徒立ち入り禁止となる。
市内最古のモスクが1909年完成なのだから、この都市がかなり若い都市であることが分かる。
世界の中には色々と古い都市があり、京都は794年以来、奈良は710年以来、中東のダマスカスは
紀元前1万年以来の都市なのだが、クアラルンプールは非常に若々しい都市。
マスジッド・ネガラ
この場所に、マスジッド・ネガラ
がある。
1965年に国家予算を投じて建設された近代的モスク。ちょうどこの頃独立したのでその記念となった。
8000人を収容できるクアラルンプール最大のモスクである。
チャイナタウンとは川と線路で隔たっていて、先述の「下町モスク」とは別の雰囲気がある。
「喧噪から離れた落ち着いた雰囲気」と表現される。
水色の傘のような屋根で、モスクらしくない外見をしている。73mの高いミナレット(尖塔)がある。
夜は綺麗にライトアップされる。
セントマリー聖堂
この場所に、セントマリー聖堂
がある。
1895年建造の英国国教会系の教会。英国国教会の頂点にある英国女王が訪問したこともある。
白い壁に茶色い屋根のイギリス風建築。毎週日曜日はクアラルンプール在住英国人が集まる。
内装は地味で質素であり、プロテスタントの一系統である英国国教会の気風が感じられる。
大雑把に言って、南ヨーロッパのローマカトリックは豪華絢爛な内装の教会を好み、
北ヨーロッパのプロテスタントは簡素で質実剛健な内装の教会を好む。
ロイヤル・セランゴール・クラブ
この場所に、ロイヤル・セランゴール・クラブ(クリケット場)がある。
セントマリー聖堂からは道を隔てた隣にあり、白い壁に茶色い屋根という点でよく似ている。
3つの三角形が目印のクリケット場で、英国発祥のスポーツであるクリケットが行われる。
3つの三角形に数字が掲げられることもある。
建物の前はだだっ広く緑色の芝生が広がっている。いつも綺麗に手入れされている。
クアラルンプール上流階級の社交場であり、会員制なので簡単に立ち入ることができない。
英国統治時代に作られた建物が未だに残って機能している。
余談ながら英国は植民地統治が他の欧米各国に比べて上手であり、独立を許して退去するときも
(比較的に)穏健な形で退去している例が多い。
現在も旧英国植民地同士で同窓会(英連邦首脳会議)を定期的に行っている。
対照的なのがフランスで、植民地が独立するときはたいていどこも凄まじい大喧嘩となった。
インドシナやアルジェリアでは戦争が起こった。そして旧フランス領の多くはソ連の影響を受け、
「人民民主共和国」といった、いかにもという国名になり、東側に組み込まれた。
スルタン・アブドゥル・サマド・ビル
この場所に、スルタン・アブドゥル・サマド・ビル
(時計台が目印の元最高裁判所)がある。
英国植民地時代の1897年に完成し、英国支配の官公庁だった。
1957年のマレーシア独立後はセランゴール州政府や連邦政府の建物として使われた。
1974年にセランゴール州政府が他の場所に引っ越して連邦政府の機能も移転したとき、
セランゴール州の有力者のアブドゥル・サマドの名前に改名された。
1978年からは最高裁判所が置かれたが、2000年頃に郊外のプトラジャヤへ移転した。
現在は連邦政府情報通信文化省のオフィスと博物館があるだけである。
3つの丸いドームが印象的。中央には時計台がある。長らくドームの色は黒だったが、2012年に赤銅色に
塗り直された。黒いドームの写真と赤いドームの写真が画像検索でヒットする。
夜は綺麗にライトアップされる。
クアラルンプールは川(上流はゴンパック側、剛流地点を過ぎてからクラン川)が境目になっていて、
川の西側が上流階級の社交場、川の東側が庶民の雑踏となっている。この建物も川の西側にある。
ロイヤル・セランゴール・クラブとは広大な緑色の芝生を挟んで隣同士である。
ムルデカ広場
この場所に、ムルデカ広場がある。
1957年8月31日にマレーシアが英国からの独立を宣言した場所。
北西はロイヤル・セランゴール・クラブ、北東にはスルタン・アブドゥル・サマド・ビル(官公庁)があり
英国を象徴する2つの建物に対して独立を高らかに宣言した格好になった。
ムルデカはマレー語で独立の意味。現在でも国家的な行事がこの場所で行われる。
国旗掲揚塔は100mの高さで、世界一であるとのこと。高すぎて下から国旗がよく見えない。
クアラルンプール記念図書館
この場所に、クアラルンプール記念図書館
がある。
左右にモスク風の黒い塔が2つあり、その間の建物は弓なりに曲がっている。
内部は普通の図書館で、学生が勉強している姿が見られる。
天后宮
市街地から南に離れたこの場所に、天后宮
がある。
華やかで赤く鮮やかな仏教寺院で、線香の香りが立ちこめる。1987年に完成した新しい寺院。
3体の仏像はいずれも女性の像になっている。池には大量の亀がいる。
デワン・バンダラヤ
この場所に、デワン・バンダラヤ
(クアラルンプール市庁舎)がある。
マレーシア連邦政府や裁判所はことごとく郊外のプトラジャヤに引っ越した。
クアラルンプール市内にある行政府というとこの市庁舎が真っ先に挙がる。
1972年2月1日に完成した。30階以上の白い色の無骨な外見のビル。
赤・青・黄色の長い旗をビルの壁面に垂らすことがある。
マレーシア国立博物館
この場所に、マレーシア国立博物館
がある。
川の西側にあり、周囲は閑静である。マレーシアの歴史が石器時代から現在に至るまで紹介されている。
最初は石器時代の人骨が出てくる。大航海時代や英国統治時代、旧日本軍統治時代、
1957年のマレーシア独立までわりと駆け足で学習できる。リアルなロウ人形が多い。
伝統的なマレー様式の建築で、屋根は赤茶色で、三角形に尖った屋根になっている。
壁面にはマレーシアの歴史を描いた壁画がある。
ロイヤルミュージアム(旧王宮)
この場所に、ロイヤルミュージアム(旧王宮)
がある。
市街地からも旧官公庁のスルタン・アブドゥル・サマド・ビルからも離れた閑静な南の郊外に位置する。
マレーシアの国家元首である国王(アゴン)が2011年まで王宮として住んでいたところ。
黄色いドーム状の屋根が印象的。黄色はマレーシアの王室シンボルカラーである。
現在は博物館になっていて、歴代国王や王妃の服や装飾品やお風呂場など色々と見せてもらえる。
郊外の観光名所
バトゥ洞窟のムルガン神像
市街地から北に10km離れたこの場所に、バトゥ洞窟
がある。
入口にはムルガン神像(ヒンドゥー教の神様の金色像。高さ43mでビル14階分)が立っている。
バドゥ洞窟はヒンドゥー教の聖地で、272段の長く急な階段を上がってやっと洞窟に入ることができる。
階段にはサルが多く出没し、観光客が面白がって餌を与えている。
5階建てビルが入るほどの高くて広い鍾乳洞の中で神々が祭られている。
最深部は天井に穴が空いて空が見える場所で、ご本堂がある。
行政都市プトラジャヤ
クアラルンプール市街地から南に20km程度離れたこの場所に、行政都市プトラジャヤがある。
putraはマレー語で「王子」を意味し、jayaは「勝利」を意味する。
交通渋滞が深刻なクアラルンプールから脱出するため1990年代中盤から建設され、1999年に完成。
首相官邸などの行政機能はことごとくここに移転し、最高裁判所もこちらに移った。
マレーシア国会だけはクアラルンプールに残っている。
緑色のモスク風屋根を持つ建物はペルダナ・プトラという首相官邸で、この場所
にある。
現在の住民は8万人程度でほとんどは政府職員とその家族である。その住民のためにモスクもしっかりと
建てられて、この場所にプトラモスクというピンク色のモスク
がある。内部もしっかりピンク色
。
ペルダナ・プトラとプトラモスクは近くにあるので、緑の建物とピンクの建物が同時に収まる
良い写真が多く撮れる。
ここをMotoGPライダーが疾走するイベントを行ったことがある。動画はこちら
。
イスタナ・ネガラ(王宮)
クアラルンプール市街地からかなり西に離れたこの場所に、イスタナ・ネガラ(王宮)
がある。
この新王宮は2011年に移転したばかりの新築であり、王宮らしく黄色い屋根になっている。
王宮には赤い制服を着て馬に乗った衛兵と、白い服を着て門の日影に立っている衛兵がいる。
白い服の衛兵は暑苦しいなかガッチリとした制服を着ているのに直立不動の姿勢を常に保っている。
観光客が横に並んで記念撮影しても一切姿勢を崩さない。
1時間ごとに衛兵の交代式が行われる。Youtubeにも交代式の動画がある。
セパン・インターナショナルサーキット
クアラルンプールから南に40km離れたこの場所に、セパン・インターナショナルサーキットがある。
モータースポーツ受け入れによる経済振興を狙って1998年に着工、1999年に開場した。
二輪レースの最高峰であるMotoGPが開催されている。F1は1999年から2017年まで開催された。
マレーシアの玄関口であるクアラルンプール国際空港のすぐ隣に位置していて、
周囲には乗り継ぎ客向けのトランジットホテルが多く、宿泊場所に困らない。
日本人にとって非常に遠征しやすいサーキットである。
近年のマレーシアは二輪レース人気が沸騰しており、MotoGPには10万人近い観客が入る。
マレーシア政府もMotoGPを重視しており、2017年のマレーシアGP(MotoGP)には
アフマド・ザヒド・ハミディ副首相兼内務大臣がサーキットに来場していた。
この人は副首相なので政府トップクラスの人物であり、マレーシア政府の姿勢がうかがえる。
ゲンティンハイランド
市街地から北東へ約30km離れたこの場所に、ゲンティンハイランド
がある。
標高1700mの高原にあるリゾート地で、中国語では雲頂高原と表記される。
気温は年中14度から25度で非常に涼しい。山の頂上なので天気が変わりやすく、雨が降ることも多い。
マレーシア唯一の国営カジノや遊園地がある。
クアラルンプールのみならず、海外からも多くの観光客を受け入れている。
ファーストワールドホテルというカラフルな色彩の大型ホテルがあり、客室が7351室で、
ギネス記録に認定されている。2006年から2013年までは客室6118室でギネス記録、
2013年に他のホテルに抜かれたが、2015年にアネックス2Aという部分を追加工事して首位奪還した。
ゲンティンスカイウェイという長大なロープウェイがあり、雲の中を移動していく。
マレーシア唯一の国営カジノに行くにはクアラルンプールから時間を掛けて行かねばならない。
しかもカジノは山の中に閉じ込めて隔離しているかのような位置にある。
マレーシアの賭博や娯楽に対するお堅い姿勢がうかがわれる。
マレーシアはクアラルンプール市内にもハチャメチャな歓楽街がなく、南国の大騒ぎを期待すると
拍子抜けすることになる。そのため一部の旅行者に「マレーシアは退屈」と言われてしまいがちである。
娯楽施設を作り上げるノウハウも今ひとつ蓄積しておらず、ゲンティンハイランドの遊園地は
日本のディズニーランドやUSJに比べると今ひとつという感想が多く見られる。
その他のクアラルンプール情報
クアラルンプール市内にはオレンジ色の僧衣を身につけた仏教徒が出てきて、托鉢している。
日本ではなかなか見られないような派手なオレンジ色。
クアラルンプールは交通渋滞が深刻で、そのため官公庁を郊外のプトラジャヤに移転させた。
関連項目
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