クイックチャージ(Quick Charge)は、アメリカ・カリフォルニア州サンディエゴにある半導体メーカー「クアルコム」が提唱している、モバイル機器の急速充電規格。
QCとも略される。
概要
直訳すると急速充電。そのまま。
近年のモバイル機器はバッテリー容量が日進月歩で増加し、旧来のUSB充電規格(電圧5ボルト×電流0.5アンペア=電力2.5ワット)ではチンタラとしか充電出来ず、利便性を大きく損なう。
そこでクアルコムが提唱したのがクイックチャージである。
基本的にはアップル社製品を除く端末に準拠している。
1.0
最初の規格。電圧5ボルトでUSB標準規格そのままであるのは変わらないが、供給電流を2アンペアまで増やし、最大電力を10ワットに迄上げたのがこの規格。
これまでのUSB充電と比べ40パーセント以上も充電速度を上げた画期的規格だった。
USB端子の両端2線が電力線、中央2線がデータ通信線(D線)であるが、そのデータ通信線の状態が、『D+に0.5~0.7ボルトの電圧をかけた際、D-が0.4ボルト以上の電圧がかかっている』状態であると、
デバイス側は繋がっているケーブルは充電器だと判断し、デバイス自身の抵抗値が下がり、急速充電を行うようになる。
一番簡単な方法は、D線をショート(短絡)してやること。ただし、この方法だとアップル製品(iPodやiPhone,iPad等)の急速充電が行えない。
そこで、D線を単にショートさせるのではなく、ショート回路の途中に200Ωの抵抗器を組むことでアップル社製品およびAndroid端末も急速充電が可能になる。
(アップルの場合、D+に3ボルトの電圧をかけた際、D-が1.2ボルトになっていると充電器だと判定する)
そのため、両方対応している充電器の場合、既に内部でデバイス側が200Ωの抵抗ありと判定するように仕組んであるし、もし専用ケーブルでないと充電できない機器(初代Xperia等ではあるあるだった)がどんなUSB電源からも充電出来るように予めD線をショートさせた充電専用ケーブルもサードパーティー製品として販売されている。中には、D線のショートをオン・オフしパソコンとの通信・充電専用どちらも使えるスイッチ付きケーブルも存在する。
近年では自動判定タイプのUSB充電器が発売されており、そういう充電器ではどんなデバイスも最高の状態で急速充電が行える。迷ったら自動判定付きを選べば損をしない。
2.0
2014年に提唱された規格。もし5ボルトのまま電流値を上げた場合発熱・発火・溶断のリスクが大きくなる。
そこで抵抗値を下げて安全に大電力を供給し高速充電が可能なように、電圧を上げてしまおうと考えられたのがこの規格。
従来のクイックチャージ1.0と比べ、25パーセント以上も充電速度を上げた。
NTTドコモでは、クイックチャージ2.0のことを『急速充電2』と称している。
クラスAとクラスBの2種類があるが、現在出回っている製品はクラスAのみ対応。
電圧は従前の5ボルトに加え、9ボルト・12ボルトが追加された。クラスBは更に20ボルトも設定している。最大電流値は3アンペア。
同社のモバイル機器向けCPUの『スナップドラゴン』で、810,808,805,801,800,615,610,425,415,410,400,212,210,208,200はこれを標準サポートしているが、デバイス製造メーカーではこれを使うかどうかは自由。安価なデバイスの場合、CPU側が標準サポートしていても対応しない例がある(例:Nexus5はスナップドラゴン800を搭載しているが、クイックチャージ2.0は非対応)。
スナップドラゴン以外のCPU搭載機でも対応している機種もある(例:サムスン・ギャラクシーS6は自社製CPUの『エクシノス7420』であるが、スナップドラゴン810と完全互換品であり、クイックチャージ2.0も完全サポートしている。
もしクイックチャージ2.0非対応機器をクイックチャージ2.0充電器で充電しても故障しないようになっている。
充電開始時は機器が故障しないように5ボルトモードで充電を開始。D線で充電器とデバイスが情報交換し、お互いがクイックチャージ2.0対応機器だと判定した場合のみ9ボルト・12ボルトで充電が行える。
そのため、旧来のD線をショートさせたケーブルでは情報交換が行えず、従来の5ボルト充電しか行えない。
3.0
2015年に提唱された規格。クイックチャージ2.0のクラスA・クラスBを統合したような規格で、電圧設定が3.6ボルト~20ボルト迄、0.2ボルト単位で緻密な制御が行えるようになった。最大電流値は3アンペアと従来と変わらず。
従来のクイックチャージ2.0と比べ27パーセント以上も充電速度を上げた。
同社のモバイル機器向けCPUの『スナップドラゴン』で、820,652,650,617,430はこれを標準サポート。中級~高級CPUのみが対応しているので搭載しているにもかかわらず非対応の例は今のところ少ない(例外としては、サムスン・ギャラクシーS7エッジはスナップドラゴン820搭載ではあるがコストの関係で充電はクイックチャージ2.0迄対応)。
2016年11月時点で対応している機種(日本国内で正規販売しているものに限る)は、HTC 10、HP Elite X3、ASUS Zenfone3Deluxe/Ultra、NuAns Neo、ソニー Xperia XZ/XZ Compact、LG V20 PROとかなり少ない。
これもクイックチャージ2.0の時と同様にD線で充電器とデバイスが情報交換し、モード切替を行っている。
下位互換性があり、充電規格に差異があった場合自動的に低いほうに合わせられる。
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