医学記事 医療や健康に関する相談は各医療機関へ |
クエン酸(Citric acid)とは、レモンや梅干しなどに含まれる有機化合物である。
概要
クエン酸は、食品添加物(酸味料)、洗剤、臨床検査における抗凝固薬、医薬品として利用されているヒドロキシ酸である。生体内にもともと存在する物質であり、サプリメントとしても利用されている。クエン酸サプリメントの経口摂取において、期待される効能を下に記す。
一般に、疲労回復などを期待して摂取されているが、その作用機序が適切に説明されているとは言えない。たとえば、いくつかのウェブサイトでは、体液をアルカリ性に傾けることや乳酸を減らすことが疲労回復につながると説明されている[1]。しかし、乳酸が疲労物質という説は過去のものであり、アシドーシスや乳酸はむしろ疲労を回復させることが報告されている。
また、クエン酸のサプリメントや、クエン酸の入った清涼飲料水などを日常的に摂取すると、酸蝕症をきたすおそれがある。酸蝕症とは、生活習慣病の一つで、酸性の物質によって歯の組織、とくにエナメル質が溶けてしまうこと。クエン酸を過剰に摂取しても尿中に排泄されるため、重篤な副作用を発現することはないとされるものの、サプリメントは様々な成分を含んでいるため、クエン酸以外の成分の過剰摂取には注意するべきである。
医薬品
クエン酸は、医薬品としても利用されている。たとえば、クエン酸ナトリウムとクエン酸カリウムを配合した散剤や錠剤(ウラリット®など)は、痛風および高尿酸血症における酸性尿の改善、アシドーシスの改善に適応。さらに、尿路結石の再発予防に適応外使用される。
クエン酸回路
生体内においてはクエン酸回路(TCAサイクル)の構成成分である。クエン酸回路とは、生体内の重要なエネルギー生産経路。1937年、ドイツの生化学者ハンス・クレブスにより、アセチルCoAとオキサロ酢酸がクエン酸シンターゼによって触媒され、クエン酸を生成することが示された。クエン酸はその後、アコニターゼによって触媒されイソクエン酸に変換される。イソクエン酸は不斉炭素を有するため、クエン酸はプロキラルな分子と言える。また、クエン酸は解糖系の第3反応に関わるホスホフルクトキナーゼ(PFK)を阻害し、糖の分解を抑える働きをもつ。
関連項目
脚注
- *一例として“疲労が溜まると、普段弱アルカリ性の人間の体は酸性に傾きます。これは、体内のクエン酸回路がうまくまわらなかったことにより、ブドウ糖が分解されたあとの残りカスのようなものである焦性ブドウ糖や乳酸が体内に多く溜まっている状態といえます。クエン酸回路を活性化させることで、それらの有害物質が減少されると考えられており、疲労回復に効果的だといわれています。”(クエン酸 | 成分情報 | わかさの秘密)。
- 1
- 0pt