クニマス(国鱒・Local Salmon)とは、サケ目・サケ科に分類される淡水魚の一つである。
別名、キノシリマス・ノスリマス・ウキキノウオ・クロマス。
学名はOncorhynchus nerka kawamurae。ベニザケOncorhynchus nerkaの亜種または近縁種。
2012年9月、環境省レッドリストにて「絶滅」→「野生絶滅」と分類が変更された。
概要
由来は、江戸時代に田沢湖を訪れた秋田藩主がクニマスを食べ、お国産の鱒から転じて「国鱒」となった。
かつては秋田県の田沢湖に生息しており、高級魚とされていた。似たような魚としてヒメマスがあり、こちらも高級魚であるが、クニマスはその上位にあったらしい。
1940年頃(第二次世界大戦中)に鉱山の開発を目的として建設された発電所から強酸性水が田沢湖に流れこみ、田沢湖が酸性化したため他の個体群と同じように絶滅した。
後に1990年代になって、1935年に山梨県・富士五湖の西湖や本栖湖などへ受精卵が放流されたことが判明した。
このため、田沢湖町(現・仙北市)は1995年に懸賞金100万円(1997年に500万円に引き上げ)を懸けてクニマスを探し、全国から14尾が届けられたが全て「クニマス」とは認定されず、結局発見されなかった。
ところが、2010年になって、クニマスが西湖で発見されることになる。
再発見の経歴
3月に京都大学の中坊徹次教授が、東京海洋大学客員准教授のさかなクンにクニマスのイラスト執筆を依頼。
しかし、ホルマリン漬けでは全てを描ききることは出来ず、中坊教授に助言を受け、クニマスによく似たヒメマスを各地から調達した。
ところが、そのうち西湖から送られたものに通常のヒメマスとは異なる個体が混じっていたため、中坊教授のもとに持ち込まれ、解剖や遺伝子解析を行った結果、クニマスであることが判明。70年ぶりに生存が確認された。
西湖の漁師の間では、「黒いヒメマス」、略して「クロマス」と呼ばれていたが、ヒメマスの変種程度と認識されていた。
また、「黒いヒメマス」は不味いとされていて、釣れても湖に帰す者が多かったが、これを食した者もおり、とても美味だったらしい。
仙北市と田沢湖観光協会では、田沢湖の水質改善を進めた上で、将来的にクニマスを田沢湖に戻すことが検討されている。
12月21日には秋田県が「クニマス里帰りプロジェクト」を正式に発足させ、県内の他の場所でも養殖できないか山梨県と検討中である。
この再発見のため環境省ではレッドリストの改定が検討され、2012年9月には「絶滅」から「野生絶滅」(本来の生息地では絶滅したが、これ以外の場所で種が存続している)に扱いを変更する方針が固まった。
また、西湖では一部区域で禁漁とすることが検討されている。
平成23年2月22日付けの日本魚類学会英文誌(電子版)に中坊徹次教授・さかなクン(本名)の連名でクニマスの発見の論文が発表された。
その他
- 秋田県立博物館や仙北市田沢湖郷土史料館所蔵のホルマリン漬けされた標本が2008年に国の登録記念物に指定されている。
- 『平成版・釣りキチ三平』には、三平の祖父である一平が密かに地図に載っていない山中の湖に移植し、そこで繁殖されたものが再発見されると言うエピソードがある。あくまでも、これはフィクションなのだが、現実に同じような経歴で再発見されている。また、作者の矢口高雄は、この再発見の吉報をとても喜び、関係者やファンから多くの祝福を受けた。矢口は、田沢湖のある秋田県出身であり、田沢湖にクニマスを里帰りさせるのを強く望んでいるようである。
- 1995年に懸賞金100万円がかけられた際、西湖のクロマスが山梨県水産技術センター忍野支所に持ち込まれたが、クニマスとは判定されなかったため幻の再発見となった(山梨日日新聞の記事
)。
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関連項目
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