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クマムシ
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クマムシとは、緩歩動物門に属する動物である。というよりも元々何門に属する生物なのか分からず紆余曲折を経て緩歩動物門という門が新設された。名前に「ムシ」とつくが、昆虫ではない。

あったかいんだからぁ♪の人については、"クマムシ(お笑いコンビ)"を参照。

概要

体長は0.5mm~1mm程度。陸上からの中まで様々な環境に生息しており、身近な所ではなどによく見られる。

非常に高い耐久が有名であり、よく「不死身生物」、「最強生物」などと話題にされるが、これはメディアが過剰にネタとして取り上げて結果おきた誤解が半分程度混じっている。

現在少なくとも700種程度が確認されているが、今後も増え続けると予想される。

先述の通り緩歩動物門に属し、その名の通り移動はものすごく遅い。さらに、クマムシ、間クマムシ、異クマムシの3種に分かれる。

クマムシはをまとうことによる浸透圧で呼吸しており、以下に記述する眠状態においては呼吸はしていないものと考えられている。

乾眠状態における驚異的な耐久性

クマムシの最大の特徴はその耐久性にあるとされるが、眠状態のクマムシは以下のような性質を示すことがわかっている。

まるで化け物のようなスペックであり、このことから「不死身生物」と言われるが、この高い耐久性眠状態でのみ発揮される動いているクマムシにお湯をかけたりすると普通に死んでしまうし熱には強くても「」眠状態に入れない湿熱には弱く、オートクレーブ内のような高温高圧の蒸気にされると普通に茹で上がって死ぬし、よしんば眠時であっても物理的には弱く、で潰せば死ぬので決して不死身というわけではない。

また、眠中に極限状態におかれたクマムシが、眠から蘇生した際どのようなを受けているかについてはあまり言及されていないという点にも注意していただきたい。様々なクマムシがいるため一概には言えないが、蘇生後しばらくして死んでしまう可性もある。このことについてはあまり研究されてはいない。

なお、に生息しているクマムシなどは眠することができず、燥すると死んでしまうため、全てのクマムシがこのような耐久性を有している訳ではない。一方で、クマムシほどではないにせよ極限状態に耐性のある微生物は他にも多々存在する。

クマムシ脅威のメカニズム・トレハロース万能説

クマムシが眠している時の姿はっぽい形であり、「」と呼ばれる。になるためにはゆっくり燥する必要があり、急燥させると死んでしまう。では、そのプロセスを説明しよう。

クマムシは生命の危機に陥ると遺伝子スイッチが入り、生命維持に向けた一大作業が開始される。まず胴体を縮めて八本の脚を体の中に引っ込めることでの形になる。こうすることで体表面積を小さくして過度の燥を抑える。こうしてから細胞の中を燥に耐えられるように作り変えるのだ。

遺伝子スイッチが入ったクマムシの細胞は、大量の酵素を作り出して内部に蓄えられた糖分をすべてトレハロースに変換する。このトレハロースこそクマムシの驚異的な耐久の最大の秘密だ。

一般にタンパク質DNAなどの生体分子は一旦燥してしまうとその立体構造が崩れてしまい、あとでを与えても元には戻らない。生物学的に言えば「死んだ」ということになる。ところがトレハロースで固められることでこの立体構造が保護されるというのだ。

トレハロースは常温で燥した状態では固体だ。だが、固体ではあるが結晶にはならない。実はナノメートルサイズ世界ではトレハロースは生体分子の立体構造を維持するだけの性を持った「液体」として振る舞うのだ。こうしていわば「固い水飴」の中のアンズのように閉じ込められた生体分子は、その活性状態を維持したまま長期に渡る保存が可になるというわけだ。

こうして燥が進みクマムシの身体から分が全に抜けきる頃には、細胞液は全にトレハロースに置き換わり、代謝が停止、眠状態は完成する。燥したトレハロースは極めて安定した物質で、その保護は200℃まで維持され。また氷のように低温で膨して組織を破壊することもない。こうして生物学的には全に「死んだ」状態でクマムシは長い眠りにつく。

DNA化(広義的には分子から電子が奪われること)に非常に弱い化学物質である。それが空気に直接される燥下ならなおさらだ。この化による攻撃はトレハロースでも防ぎきれない。クマムシのDNAにはDsup (Damage Suppressor)というタンパク質が大量にまとわりついている(DNAの巻きついたヒストンを包み込んで保護する)。これがいわば錆止めの働きをしてDNA化から守っている。実は放射線によるダメージ燥と同じ化によるものだ。一般に燥に強い生物放射線にも高い耐性を持つことが解っている。

やがて再びを与えられると、保性の高いトレハロースは分を素く吸収。クマムシの代謝機は再び動き始める。眠から覚めたクマムシの細胞DNA修復酵素を大量に作り出して自らのDNAをすみやかに修復する。

トレハロースはその高い組織保護から、移植用の臓器保護液に使われている。またその保から化粧品としても多く使われている。

なお、このような眠状態を一般にクリトビオシスと呼び、クマムシの他に有名なものではアルテミアシーモンキー飼育キットとして売られていることで有名)のがこの状態をとる。

系統・分類について

当初は分類不能としか言いようのなかったクマムシであるが、昨今の分子系統学その他の発展により、クマムシの系統関係はかなり明らかになっている。

上門レベルではクマムシの分類はほぼ確定しており、脱皮動物上門に属する。脱皮動物ミミズのような見た寄生虫が多く属する線と、カンブリア紀に繁栄した葉足動物、あのハルキゲニアなどを含む生物群を合わせたものである。現在まで生き残っている葉足動物の子孫は、有動物カギムシ)、そして昆虫を含む節足動物がまず確実とされ、これにクマムシを含むかどうかが一大問題となっている[1]。葉足動物の形態を色濃く残し、生きている化石と言われる事もあるカギムシとべると、葉足動物の中でクマムシと似た生物は見つかっておらず、最近では線の方に近いとする説も有である。

これらを踏まえて考えると、クマムシと昆虫との類縁関係は、近くはないものの遠くもない、といえる。昆虫から見るとクマムシはクモムカデより遠縁[2]だが、でんでんサナダムシゾウリムシ[3]などよりは近い間柄である。

関連動画

 

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関連項目

脚注

  1. *これらの系統を節足動物と葉足動物に緩歩動物合わせたものを汎節足動物と呼ぶ
  2. *余談だが、クモムカデよりもエビミジンコなどの甲殻類の方が昆虫に近いとする説(汎甲殻類仮説)が現在では有である。
  3. *ゾウリムシべれば々人類の方が昆虫に近縁である。

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72 ななしのよっしん
2021/06/09(水) 13:46:38 ID: 7zTNykNUzJ
>>65
思考なんて生状態の細胞構造が必要でエネルギー浪費もしい駄な行動は最初に止めてるはずなのが困りモノだな
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73 ななしのよっしん
2021/12/17(金) 08:15:18 ID: NSM7TsQb2x
https://arxiv.org/abs/2112.07978exit
クマムシ量子コンピュータの基本素子である極低温の量子ビットに閉じ込め、後に元通り再生させたとのこと。

クマムシシュレーディンガーの猫を見るか?」
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74 ななしのよっしん
2022/01/14(金) 16:19:27 ID: VdC4APfXq+
米国の年間電の1割を20年間使って高速の30まで加速させたクマムシ太陽系外惑星に衝突させる計画が発覚していよいよ某宇宙開発シムのみどり君みたいになってきた
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75 ななしのよっしん
2022/01/15(土) 20:33:29 ID: 0BfGaiLOZi
潰されたら死ぬのにそんなんして大丈夫なん
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76 ななしのよっしん
2023/01/14(土) 19:37:25 ID: FDyDMBLOlX
Anus
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77 ななしのよっしん
2023/01/14(土) 23:00:20 ID: MZNbnQ0cf4
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78 ななしのよっしん
2023/04/07(金) 18:23:26 ID: tXyr+A8NyN
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79 ななしのよっしん
2023/05/23(火) 00:28:41 ID: jMEFdDmf4q
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80 ななしのよっしん
2023/08/08(火) 23:55:32 ID: 3T2IKiXTQQ
世界最強生物クマムシは、どのくらいの速度の衝突に耐えられるのか
https://www.businessinsider.jp/post-272869exit
>>速900m(時速およそ3240km)をえる速度実験装置から袋に向けて射出されると、クマムシでも生き延びられないことがわかった。
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81 ななしのよっさん
2023/08/18(金) 00:11:24 ID: 8XelJIGEzU
タンパク質って加熱すると凝固して元に戻らないらしいけど、クマムシの場合はどうなってるんだろう
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