クレーム(英:claim)とは、主張・要求・請求・申立することである。
また日本では、以下のような主張に対してこの言葉が使われやすい。
この記事では、上記2つのクレームに付いて解説する。
概要
提供されたサービスや商品に納得いかなかった消費者は、商品の製造者に向けて不満を発し、代替品や代替行為、あるいは返金を求める。これが日本での一般的なクレームである。
消費者からのクレームは企業側にとっては本来はありがたいものである。なぜならばクレームによって自分たちの商品の欠点やサービスの弱点を知ることができ、それを克服することでより品質の高い商品が次の消費者に提供できるからである。
お客様は最初こそヒートアップしているかもしれないが、正当なクレームに限っては反論せず話を聞く、要点・要望をその都度確認していくだけでも徐々に冷静さを取り戻してくれる場合もある。
クレーマーと呼ばれる人たち
しかし、中には商品やサービスに問題がないのにクレームを言い立ててくる人々がいる。その人たちを指してクレーマーということがある。近年では一般的なクレームを出した人のこともクレーマーと呼ぶが、ここでは過剰な要求をする人のことを指してこの言葉を使う。「カスタマーハラスメント」とも。
説明書や注意書きに見やすく大きな文字で強調して書いてあるにも関わらず、「俺は大丈夫」と読まずに酷い目に遭っている自業自得なものや、「俺が分かるようにしてないのが悪い」「俺の好みではないから変えろ」と、販売店ではどうしようもないクレームまであり、遠回しに指摘しても逆ギレを起こすため質が悪い。
時には恐喝や恫喝まがいの要求をする場合もあり、常習的にクレームをつけては利益・金品を得る、元より対話する気などなく、最初からそれが目的という悪質な事例も存在している。
あるいは、クレームをつけることで企業の担当者から謝られることに優越感を感じるのが目的となっている場合もあり、これらの悪質なクレーマーに対しては企業・販売者側で出来る有効な対策はあまりない。十分な知識や教育がされていない場合は特に相手の言いなりになってしまいがちである。
正当なクレームをつける顧客と区別するため、悪質クレーマーと呼ばれる場合もある。
事例
架空のクレーム・確認不足
2015年9月、兵庫県で当時45歳の女が洋菓子店3200店にクレーム1万2000回、購入してもいない商品に難癖をつけ、店の責任者らが商品をもって頻繁に謝罪訪れるといった異様な光景が見られた(→ダイヤモンドオンライン該当記事)。また電話番号案内(104)で5000回以上、手当たり次第にターゲットを物色していた。
女は「これまでに500回くらい(詐取に)成功した。現金や商品で60万円以上をだまし取った」と供述、また「2013年の秋、大阪市内のケーキ店で商品を購入した際、『髪の毛が入っている』とクレームをつけたら、レシートや現物を見せなくてもお詫びの商品をもらえた」と、常習化のきっかけを明かしている。(もちろん逮捕済だが、女は裁判中に「聞こえませ~ん」と発言するなど全く反省していない。)
真偽が分からないもの、自分の担当でないものはクレームを受けた時点で担当者は「こちらが悪い」と即謝罪せず、レシートや現物、真偽の確認や録音といったワンクッション置いた対応も必ず念頭に入れておきたい。あらかじめ通話/会話を録音しているという伝えるのも有効。
マナー違反と責任転嫁
2021年12月12日、千葉県内のサバイバルゲームフィールドにて男女20人の外国人グループ(日本語が分かるのは1人=通訳)がルール違反を繰り返したため、再三に渡る注意(5回/通訳経由)をするも違反が相次ぎ、出入り禁止処分の最終警告、ルールを守ってほしい旨をを言い渡したところ、「なぜそうしようとする」「人種差別するのか?」「鼻で笑っている」「こっちは客だぞ」「態度が悪い」「二度と来るもんか」と騒ぎ立てたため、二度とこないよう言い渡したところ、「なんなんだ、その言い方は」と男性らに突き飛ばされ負傷。Googleレビューには「人種差別主義者」のコメントと低評価が積まれることとなった。(幸い犯人らの顔が見える写真も投稿されており、店のツイートを受けて、他のサバイバルゲームの店が次々にこのグループを出入り禁止にする措置を取った)(→J-castニュース該当記事)
サバイバルゲームのルール等は割愛するが、ゲーム進行上で必須な自己申告もせず安全地帯での発砲や違法な威力となるガス圧の使用といった、単なるマナー違反では済まされないトラブルを持ち込み、すべて棚に上げ「人種差別」といった主張で押し通そうとしている点が極めて悪質なため、再三に渡る警告の上での出禁処分は問題なく、むしろ大正解。国籍・人種・年齢に関わらず、暴力や暴言、人数で黙らせる・サービスや金品を脅し取れると考える人間は一定数存在するため、悪質な相手に対しては容易に屈せず堂々と対応する姿勢も必要となる。
水分補給
真夏においては、絶え間ない通報や激務に対して熱中症を予防しつつ円滑な活動が必要となる。
警察・消防隊・救急隊が水分補給していたり、コンビニや自販機に立ち寄ることを「サボっている!」とクレームを入れる事例もある。熱中症で倒れ現場へ急行できない、熱中症で救護活動に十分なパフォーマンスが発揮できなければ本末転倒であり、無意味な根性論は必要ない。
食事
「高速バスの運転手が昼休憩にサービスエリアでカレーライスを食べていた」といったクレームが入れられた事例もあるが、自動運転ではなく人間であるため空腹や体調不良状態で運転されては危険であり、また休憩を取らせないのは労働基準法違反(犯罪)である。
- 「運転手がカレーを食べている」目撃者がバス会社にクレーム→運転手憤慨「食べてはいけない理由を教えて」|まいどなニュース
- バスの運転手は休憩時間にカレーを食べてはいけないのか?|ルビー・ミッドナイト|coconalaブログ
クマの駆除
猟師がクマを駆除したことで県外からのクレームが殺到した事例も珍しくなく、クレームをつけたからといって、人的・経済的被害に対しての保証などは一切行わない。(※厳密にはクマに限った話ではない)
秋田県のクマ3頭「なぜ殺したのか」 県外から苦情殺到、「住民の命守るためご理解を」 | ニコニコニュース (nicovideo.jp)
要約すればクマ・猛獣の生息していない安全圏から現地の状況を知らない人間が業務を妨害してくるものが多いが、もちろん野生のクマは可愛らしいテディベアやくまのプーさんとは訳が違い、人肉の味を覚えてしまうと、人間が容易に狩れる獲物として認識してしまう。またクマ自体が攻撃力・防御力・機動力・索敵能力に優れ、人間をズタズタのボロ雑巾にするのは容易である。(→三毛別羆事件)
店舗・企業側の対策について
店側・企業側のミスや発言、無知・無理解・不備といった隙を突いてくる悪質なクレーマーに対し…
- 対策(対応、言動、録音、記録、通報)の教育。
- あらかじめ向こう側の手口を知っておく。
- 容易に妥協しない。
- 防犯カメラ等を設置し、原因・対応・調査・評価を容易にする。
- 防犯カメラ等を設置している点を明記し、犯行への抑止力とする。
- 電話を録音する(録音する旨を告げる)…次述。
- 相手の氏名・住所・連絡先などを聞く。
- 稀に自身の地位・立場などを笠に着ている場合もある。
- 相手の所属団体組織名などを調べる。
- 仮に実在の組織であっても、本物を騙っている場合もある。
- 特に悪質な場合は「お客様」として扱わない。通報を行う。
ただし企業側の対応や認識に問題がある場合はこの限りではない。(後述)
クレーマーに対抗する企業
対話不能な悪質なクレームに対して、企業は平謝りするのではなく
理性的に毅然とした対応を見せる企業もあり、多くの賞賛や反響がある。
(例)バス内に監視カメラを設置し、クレーム発生時に対応が問題なかった点を反論する。
- “架空クレーム”にも毅然とした態度見せる市営バスの対応に反響「対話不能な存在は想像以上に多い」 | ORICON NEWS
- 言いがかりクレームにバス会社がズバリ返答! 「素晴らしい」「見習いたい」の声 – grape [グレイプ] (grapee.jp)
その他、車両運航を行う事業者においてはドライブレコーダー等も有効な記録になりうる。
また、問題のあるアンケート(お客様の声等)や問題のあった(とされる)状況を公開し、一般の意見を広く取り入れ味方を増やすという手も面白い。万が一にその後にその悪質クレーマー側が下手に反論すれば、味方となった日本中からフルボッコ確定であるため盛大な自爆となる。
その他
- 社員や乗務員の個人が特定されないよう、名札を廃止したり下の名前だけにする。
- 電話の場合は会話を録音している旨を説明する。(近年は録音音声を流す場合も多い)
- 商品返品時など、購入記録(レシート)や身分証を提示させ、氏名等を控える。
その他、アイデア次第で悪質なクレーム側の反論の余地を無くしてしまう。
文化的な側面
当然、理不尽なクレームを受けた現場も上司に報告相談を行うのだが、一部では
- お客様第一主義
- お客様の意見には精一杯対応するのが当然
- お客様が怒っているのだから、こちらが悪いに決まっている
- お客様の「ご指摘」に反論、楯突くなどもってのほか
- お客様は神様です(完全に誤用)
- 相手を立てる
- 波風を立てない、穏便に済ませる
- 苦難に耐えて乗り切ることが美徳
- おもてなし
- こちらが折れても納得してもらう
- レシートや現物の確認なんて、疑っているようで火に油を注いでしまうかもしれない
- 警察を呼ぶのは申し訳ないし、騒ぎになれば店の評判が落ちるのでは
- お客様を業務妨害で訴えるなんてもってのほか
- 対応を間違えたら悪評を言いふらされるかも、殴られるかもしれない
- 怖そうな組織団体の人っぽいし、逆らったら報復、街宣車を呼ばれるかも
- 忙しいし、お客さんもいるし、お金を払えば/無料にすれば帰ってくれるのだから
- クレームを自分で処理できないようでは人事評価に関わる
- 理由はどうであれ、自分でクレームを処理できないような現場は無能
- 理由はどうであれ、上層部の自己保身のため問題を起こすなと強く釘を刺されている
といった日本特有の悪習・文化が後押しして悪質なクレーマーへの対応に尻込みしてしまう側面もある。もちろん明らかにこちらが悪い場合のクレーム、正当な意見や意味があってのクレームならそれでも問題はないのだが、悪質なクレーマー相手にまでこの理論を適用してしまうと相手のやりたい放題になってしまう。
「クレームの数=昇進や給与査定に響く」「自店で解決できないようでは店の責任者としての立場が問われる」と屈してしまう現場や支店の責任者や、「クレームの数=内容はどうあれ悪い事」と一緒くたに考える本社・本店の上層部の意識問題もあり、柔軟な対応や意識改革、それがすべての企業に定着するまでは時間がかかる。
消費者側も日本国内で幼少から清潔で高品質・高性能な製品、高い付加価値やサービスを囲まれて育っているため、「この程度の品質や対応、サービスを受けられて当然」という意識もある。…だから何してもよいという訳ではないが。
ちなみに海外だと、店員や担当者に理不尽な要求やクレームを言っても適当にいなされるか、ブチ切れらる。ただし、クレームを放置した結果、多額の懲罰的損害賠償をすることになった事例(→Wikipedia:マクドナルド・コーヒー事件)もあるため、企業側もまともなクレームに対しては対応するのが求められている。
忘れられがちだが、労働契約法においては
企業には労働者が安全・健康に労働できるよう配慮する義務・法律がある。(後述)
モンスターペアレントというクレーマー
→ モンスターペアレント の項目も参照。
近年では小学校中学校、高校に通う児童生徒の両親がクレーマーと化し、学校側にさまざまな(理不尽な)クレームをつけている。
ひどいものになると、「給食費を払っているのだから『いただきます』を言わせるな」というような常識とかけ離れたものになっている場合もある。一部には子供を不採用にした企業に詰めかける親もいるなど、もはや留まるところを知らない。
このようなクレーマーを指してモンスターペアレントと呼ばれるようになった。
モンスターペアレントの過剰な要求に耐えられず精神を病む教師も出てきており、社会問題として認識され始めている。
クレーマーがもたらした物
クレーマーがクレームをつけたことにより、問題のない商品が販売停止に追い込まれることもある。近年の例ではマンナンライフの蒟蒻畑がわかりやすい。(詳しくは蒟蒻畑の項目へ)
また、テレビ番組なども視聴者からのクレームが寄せられると、自主規制を強くせざるを得ない。そのため、かつては放送できた内容も放送できなくなった。(PTAの項目も参照)
その他、政治信条や社会問題に由来するようなクレームが発生し、表現の自由などとの間で衝突が発生することもある。結果的に、表現技法に制限がかかってしまうのは上記の視聴者からのクレームと同様である
例として互いに争っている状況下で一方だけを徹底追及・反対する、原因を不自然にスルーなど。
法律
特に悪質な事例に限っては、お客様の意見ではなく犯罪である。
以下は関連法律であり、一部は百科項目として詳しく記載されている。
- 目的を問わず、相手を脅し畏怖させる行為は脅迫罪
- 正当な理由・許可なく勝手に/強引に敷地内に入ると時点で住居侵入罪
- 店舗施設からの退去を命じても立ち退かない場合は不退去罪
- こちらが一度許可をして招き入れた場合においても、退去を命じることができる。
- 要求を呑むまで部屋・施設・空間から出さない場合は監禁罪
- 自店舗内であっても今自分のいる空間・位置から移動させない行為も含める。
- 騒音や罵声、嫌がらせ行為によって業務に支障が出ている場合、威力業務妨害罪
騒ぎにしたくないからと黙って従う、金を払えば次々に要求してくるため
通報はもちろん録音などの記録もお忘れなく。「お客様は神様です」ではない。
(記録の項目も参照)
犯罪行為を行っている時点で、それは既に「お客様」ではない。(重要)
「上層部が怒るから」ではなく、通報しよう。
もし明白な犯罪行為に晒されているにも関わらず、社員を守る気がない場合においては
その企業組織自体も疑う必要がある。(次述)
企業側の責任
もちろん悪質クレーマーは大きな問題であるが、企業姿勢にも注目する。
「全ての問題は現場が背負い、解決しなくてはならない」
「企業・上層部には黙って従うのが社会人として正しい」といった思い込みは危険。
- 悪質クレーマーに対して企業上層部の対応・認識が甘すぎる場合は企業組織自体を疑う。
- 自分の所属する組織が必ずしも味方とは限らない点にも留意する必要がある。
- 社員/労働者を守らない、現場を平気で疲弊させ使い捨てる企業には問題がある。(→ブラック企業)
- 黙って従っていても自殺・精神崩壊・過労死・重大事故の元になる。
"お客様に壊される..." | その他 | NHK生活情報ブログ:NHK
企業には労働者が安全・健康に労働できるよう配慮する義務があるため
上層部は涼しい部屋に居ながら、過剰な負担や問題を現場に全部押し付けて良いわけではない。
もし明白な犯罪行為に晒されているにも関わらず、社員を守る気がない場合においては
その企業組織自体も疑う必要がある。(大事なことなので2度言いました)
(労働者の安全への配慮)
転職も手ではあるが、録音等の証拠収集の後に訴訟を起こすのも手である。
関連動画
関連項目
脚注
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