クロスジヒトリ(学名:Creatonotos gangis)とは、異形の姿に定評がある蛾の仲間である。
概要
クロスジヒトリの生体の画像付きツイートがあります。 苦手な方は注意してください。 |
トモエガ科ヒトリガ亜科[1]に属するヒトリガの仲間で、前翅に黒い筋模様があるのが名前の由来。腹部は赤く、毒々しいものとなっている。翅の長さは4cmくらい。
幼虫は多食性で、落花生・米・サツマイモ・モロコシ属・シコクビエ・トウジンビエ・コーヒー・アルファルファ・ザクロなど多くの作物の害虫である。
しかし、この蛾の一番の特徴は腹部の先から生えた4本の触手のような器官である。おかげで気持ち悪い虫の1つとしてネット上でも度々話題になっている。
一体これは何?
これはコアマタもしくはコレマタ(coremata)という、オスがメスを誘うフェロモンを放出する器官である。故にオスのクロスジヒトリにしか存在しない。よく出回っている画像や動画はコアマタを膨らませた時の姿で、普段は邪魔なので腹部にある程度収納している模様。個体によっては自分の体長より長く伸ばすことができる。
コアマタのサイズや、発するフェロモンの量は幼虫時代に食べたものを反映しており、育った環境がいいほど(ピロリジジンアルカロイドという物質を取り込むほど)よくモテる蛾になれる。ピロリジジンアルカロイドは植物が蓄えている毒の1つで、クロスジヒトリもそれを利用し天敵に食べられないようにしており、フェロモンの原料としても使われるのである。クロスジヒトリにとってコアマタとは性の象徴なのだ。
ヘアペンシル(hair-pencil)じゃないの?という人もいるかもしれないが、ヘアペンシルでも間違いではない。ヘアペンシルは蛾や蝶に見られる腹部の先端のフェロモンを出すブラシ状の構造、コアマタはクロスジヒトリのようにヘアペンシルを支え体液や空気で膨らませる構造を指すらしく、ここではこの器官全体をコアマタとしている。
生息域
インドネシア東部やインド、タイ、中国、台湾などの東南アジアや東アジア、ニューギニア、オーストラリアの一部に生息している。
日本では与那国島、石垣島、西表島などで報告があるが、偶然他の地域から飛ばされてきたものらしい[2](与那国島では定着している可能性がある)。また、九州でも同じように飛ばされてきたものが見られる可能性がある。
ネット上では沖縄で見ることができると書かれているものが多いが、ほとんどは後述のハイイロヒトリではないかと思われる。
日本にもいる異形の蛾
日本にも生息している、ハイイロヒトリ(学名:Creatonotos transiens)やシロヒトリ(学名:Chionarctia nivea)のオスも立派なコアマタを持っている。
ハイイロヒトリはクロスジヒトリと同じ属だけあって似たようなコアマタで、シロヒトリは2本の触手といった感じ。
ハイイロヒトリは日本では屋久島、奄美大島、沖縄、久米島、宮古島、石垣島、西表島などにしか生息していないが、シロヒトリは日本全国で見られる。
最後に
散々気持ち悪い虫だと言われ、この記事でも異形の蛾扱いだったクロスジヒトリだが、よく見ると他の蛾と同様にモフモフとして可愛らしいとは思わないだろうか。白系のハイイロヒトリやシロヒトリはともかく、クロスジヒトリは翅や腹部も毒々しすぎるような気もするが。
関連静画
関連項目
脚注
- *以前はヒトリガ科に分類されていた。今でもヒトリガ科とする場合もある
- *壱岐辰ノ島,西表島におけるヒトリガ科の偶産種 2 種の記録 外村俊輔(九大・農) - 九州・沖縄昆虫研究会会報 Pulex No. 96 (2017)(pdf)
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