クロスベルマラソンとは、クロスベル警察特務支援課が定期的に行う体力強化、市民との交流、土地勘養成を兼ねた訓練プログラムである。
前知識
日本ファルコムより発売されている英雄伝説シリーズにはある伝統がある。
それは「NPC一人ひとり(本筋に一切関わらないキャラクターも含む)まで名前、性格、背景が設定されている」という点である。
一部の例外はあるものの、「町人A」が「武器や防具は装備しないと効果がないよ」と、ゲーム開始から最後まで壊れた機械のように繰り返す事がないのである。
NPCのセリフはゲームの進行にあわせて更新されていく。
英伝シリーズのあるキャラクターを例にとると、
「オフクロがそろそろ結婚しろとうるさいんだよ…」→
「オフクロが飛行船で知り合った女性を連れてきて、しばらくウチに泊めるって言ってる」→
「これはきっとオフクロの差し金にちがいない」→
「あのコ、けっこういいコだな…」
みたいな感じで推移していく。
ここからNPCの名前を覚える楽しみ、NPCと会話する楽しみ、用意されたマップを隅々まで歩き通す楽しみが生まれていった。
さらには重要な伏線を仕込まれたり、隠し要素と抱き合わせられたりもした結果、英伝シリーズは『足で楽しむRPG』となった。
その為、英伝シリーズのゲームをしゃぶり尽くすには、頻繁に街を巡回し、時には目的地とは真逆の方向に行ったり、あるいは緊急のミッション中に街に戻ったりする必要があったりもした。
零の軌跡において
上記のシステムは面倒くさいという人も確かにいるが、逆にそれが英伝シリーズの楽しみ方として、ファンの間に浸透しているのもまた事実である。が、『英雄伝説 零の軌跡』では、このシステムにある変化が起きたのである。
従来作の主人公達は、事情はそれぞれだが、全員旅をしている。それぞれの目的で世界の各地を旅してまわり、いろんな会話を行っていく。が、零の軌跡の主人公達は警察官だったのである。
警察官、すなわち国家公務員。つまりは地元密着型となり、作品の舞台であるクロスベル自治州の中心を拠点として、各地方の町やダンジョンを回るというパターンとなってしまった。
これにより、警察官として情報を収集する感覚、些細な出来事や会話に伏線を仕込み、また解決するカタルシスには十分な効果が発揮されたものの、「まったく新しい土地を旅して回る」という要素が激減してしまった為、旧作ファンであればあるほどこの点を惜しむ傾向が強い。
なぜ「マラソン」と呼ばれるのか
上記の通り各地を旅する事はない。
しかしNPCの会話変化、それに隠し要素と伏線を仕込む伝統、そしてケタ違いのテキストボリュームは健在である。
また各地を旅しないかわりなのか、拠点となるクロスベル市はとてつもなく広い。
前作『空の軌跡』と比較すると、空の軌跡の一番大きな街(王都グランセル)は東西南北の4街区であったのに対し、
零の軌跡は駅前通り、中央広場、西通り、東通り、行政区、港湾区、歓楽街、住宅街、旧市街、裏通りと街区だけで倍以上というとてつもない広さがある。各施設を含めるとさらに広い。
この為プレイヤーは頻繁に広大な街を巡回する必要があり、巡回を繰り返せば次第に巡回コースが出来上がっていき、結果として決まったコースを主人公達が頻繁に走りこむ事となる。その姿はさながら訓練の一環のマラソンにしか見えない、とそういう訳である。当然ながらいくら走りこんだところで体力は増えない。
なお続編「碧の軌跡」では別の街が登場することが2011年7月現在明らかにされている。
巡回にどれくらいの時間がかかるのか
この辺は各プレイヤーによりだいぶ異なってくるとは思うが、この記事初版の筆者の参考タイムを載せておく。
零の軌跡発売前インタビュー(こちらを参照)では「テンポよくプレイして60時間ぐらいでしょうか」とあるが、筆者の1週目クリアデータでは75時間オーバーであった。ちなみに筆者はなるべく街を巡回し、なるべく全部話を読み、道中の敵はなるべく全滅させていくプレイスタイルである。
関連項目
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