銀河英雄伝説の事件 | |
---|---|
クロプシュトック事件 | |
基本情報 | |
時期 | 帝国暦486年 3月21日 |
地点 | 銀河帝国 ヴァルハラ星系 惑星オーディン ブラウンシュヴァイク公爵邸 |
概要 | クロプシュトック侯爵が怨恨から皇帝フリードリヒ4世の爆殺を企図した大逆未遂事件 |
詳細情報 | |
首謀者 | ウィルヘルム・フォン・クロプシュトック侯爵 |
原因 | かつて権力闘争に敗北し失脚したことへの怨恨 |
関係者 | オットー・フォン・ブラウンシュヴァイク公爵 フレーゲル男爵 ラインハルト・フォン・ミューゼル大将 アンスバッハ准将 エルネスト・メックリンガー准将 など |
結果 | フリードリヒ4世暗殺の失敗 クロプシュトックの侯爵位剥奪 クロプシュトック討伐の実施 |
前の事件 | 次の事件 |
---|---|
第三次ティアマト会戦 | グリューネワルト伯爵夫人暗殺未遂事件 |
クロプシュトック事件とは、「銀河英雄伝説」の事件・戦役の一つ、および『銀河英雄伝説』外伝「星を砕く者」第三章、OVA『銀河英雄伝説』第9話の題名である。
概要
帝国暦486年3月21日に発生した、ブラウンシュヴァイク公爵邸で開催されたパーティーでの爆弾を用いた皇帝フリードリヒ4世暗殺未遂事件と、その実行者である侯爵ウィルヘルム・フォン・クロプシュトックに対する討伐行の総称。
規模としては宮廷における大逆未遂事件とそれに付随する地域的な小乱という程度のものにすぎず、ひと月程度の戦闘のすえ、クロプシュトック侯爵の敗北と自殺をもって終結した。
経緯
ことの発端は、皇帝オトフリート5世時代に発生した帝位継承権争いである。これは皇太子である第一皇男子リヒャルトと第三皇男子クレメンツがそれぞれ宮廷内勢力に担がれる形で対立したものであるが、帝国暦452年にクレメンツ派がリヒャルトに弑逆の冤罪をかけて謀殺、455年にはそれが発覚してクレメンツが失脚ののち横死した結果、本来期待されていなかった第二皇男子フリードリヒが第36代皇帝フリードリヒ4世として立つこととなった。
この過程で、クレメンツ派に属していた門閥貴族クロプシュトック侯も失脚し、フリードリヒの廷臣たちに憎まれていたこともあって宮廷中央から脱落、以降30年間にわたり社交界を離れ敗者としての生活をおくることを余儀なくされる。クロプシュトック侯はそのあいだにフリードリヒ4世とその廷臣たちへの怨恨を募らせ、ついに大逆の挙に至った。
経過
ブラウンシュヴァイク公爵邸における爆発事件
帝国暦486年3月21日、帝国首都星オーディンのブラウンシュヴァイク公爵邸において、皇帝フリードリヒ4世を招いて高級士官とその夫人たちによる親睦パーティーが開催された。主催者は予備役上級大将オットー・フォン・ブラウンシュヴァイク公爵であり、そのほか現役、退役、予備役にかかわらず准将以上の軍人を参加資格者とし、大将ラインハルト・フォン・ミューゼル、予備役少将フレーゲル男爵などが参加。会場外部にはブラウンシュヴァイク公に仕えるアンスバッハ准将がおり、エルネスト・メックリンガー准将などの軍人も警護にあたっていた。
予備役大将であるクロプシュトック侯は事前の念入りな宮廷工作の結果としてブラウンシュヴァイク公より参加を認められており、最高級の大貴族のひとりとして礼遇された。彼は爆弾入りの黒いセラミック・ケースを持ち込むと、皇帝の賓席にほど近い自身の席の脚下に置きざりにしてブラウンシュヴァイク公爵邸を辞去している。いっぽう、主賓であるフリードリヒ4世は会場への移動中に腹痛を催したため、出席を中止して皇宮へと還御していた。これはクロプシュトック侯が去った後、あいさつに立ったブラウンシュヴァイク公より招待客へと発表された。
そのしばらく後、某男爵夫人が貧血をおこし倒れるという小さなトラブルが発生する。男爵夫人を休ませるために不在となっていたクロプシュトック侯の席が借用され、置き忘れられたものと思われた黒いセラミック・ケースを、保管のために若い貴族のひとりが広間から持ち出しかけたその時、ケース内の爆弾が爆発した。
この爆発による即死者は10名以上、さらに100名以上が負傷し、その三割以上が瀕死の重傷を受けた。パーティーの構成上、門閥貴族とその係累が死者・負傷者の多くを占めており、また皇帝フリードリヒ4世が出席予定であったこともあって宮廷における重大事件となった。パーティーの途中退席者は18人、特にケースを置いていったクロプシュトック侯は最大の容疑者であり、爆弾がこのケースに入っていたことは当夜のうちに明らかになった。このためクロプシュトック侯爵邸と宇宙港に人員が急派されたが、クロプシュトック侯はすでに爆発時刻にオーディンを出立しており、身柄を確保することはできなかった。
クロプシュトック侯領への討伐行
銀河英雄伝説の戦闘 | |
---|---|
クロプシュトック事件 | |
基本情報 | |
時期 : 帝国暦486年 3月21日~ | |
地点 : 銀河帝国 クロプシュトック侯領 | |
結果 : 銀河帝国軍(討伐軍)の勝利 | |
詳細情報 | |
交戦勢力 | |
ゴールデンバウム朝銀河帝国 | クロプシュトック侯爵家 |
指揮官 | |
討伐軍総司令官 公爵オットー・フォン・ブラウンシュヴァイク上級大将 |
元侯爵ウィルヘルム・フォン・クロプシュトック |
動員兵力 | |
クロプシュトック侯領討伐軍 | 傭兵隊 |
前の戦闘 | 次の戦闘 |
第三次ティアマト会戦 | グリューネワルト伯爵夫人暗殺未遂事件 |
翌22日朝までにクロプシュトック侯は大逆未遂犯として侯爵位を剥奪され、討伐軍の派遣が決定された。司令官にはブラウンシュヴァイク公が現役に復帰して任命され、討伐軍には正規軍にくわえ、フレーゲル男爵など親族係累や自身、あるいは友人の復讐を志す門閥貴族とその私兵が多く参加した。また、専門職の軍人が多数、戦闘技術顧問として同行している。なお、ミューゼル大将も討伐軍の指揮を任せてくれるよう奏請したが、先んじてブラウンシュヴァイク公が願い出ていたため却下されている。
いっぽう、暗殺に失敗したクロプシュトック侯側も費用に糸目をつけることなく傭兵隊をかき集め、討伐軍に対抗する態勢を整えた。
討伐軍は3月30日にオーディンを進発したが、上述の通りの編成のため統制を欠くうえ、迎え撃つ側に有利な地上戦であったこともありクロプシュトック侯の傭兵隊の前に苦戦を余儀なくされた。討伐軍では戦場経験を持たない青年貴族が戦闘技術顧問の指示に従わないことも多く、司令官ブラウンシュヴァイク公もその統制に苦心したようである。
しかし、最終的には叛乱は鎮圧され、クロプシュトック侯は服毒により自殺した。討伐軍のオーディン帰還は5月2日であり、地域的な小叛乱であったにもかかわらず、討伐軍の進発から帰着まで一ヶ月以上を要する結果となった。
事後
クロプシュトック侯の自殺により叛乱が終結したのち、クロプシュトック侯領は討伐軍による掠奪暴行に晒されることとなった。この種の貴族叛乱の討伐としてはめずらしく討伐軍側も門閥の青年貴族で構成されていたが、それもあってクロプシュトック侯領の一般市民、とくに老人、女性、幼児などが一方的な加虐の対象となった。
この蛮行に対し、戦闘技術顧問として参加していた軍人のうちオスカー・フォン・ロイエンタール少将は完全に対処を放棄したが、ウォルフガング・ミッターマイヤー少将は精力的に事態の阻止を試みた。その過程で、ミッターマイヤー少将は掠奪・暴行・虐殺のすべてを犯したある大尉を、帝国軍軍規にしたがい将官の権限として処刑した。しかし、この大尉はブラウンシュヴァイク公の従弟を父親とするコルプト子爵の弟であり、しかもそのことを明確にしていたことから、この処刑はブラウンシュヴァイク公の家名と体面を傷つける結果となる。
このためブラウンシュヴァイク公は職権を用いてミッターマイヤー少将を逮捕した。だがミッターマイヤー少将は審問の場で暴行掠奪を黙認したブラウンシュヴァイク公を弾劾したことで公を激怒させ、危うく処刑を免れたものの営倉での拘留を受けることとなった。友人であったロイエンタール少将は友を救うためミューゼル大将の支援を仰ぎ、これを受けたミューゼル大将は謀殺されかけたミッターマイヤー少将を救出すると問題を宮廷での交渉に持ち込んだ。最終的には、宮廷の要人数人の仲介と軍務尚書エーレンベルク元帥の裁定により、両者がある程度の譲歩と納得を余儀なくされる形で問題が処理されることとなった。
この事件の結果、ミューゼル大将はミッターマイヤー少将とロイエンタール少将を知己とし、のちにローエングラム伯爵として更に雄飛するための強力な盟友を獲得した。この両名は、のちにラインハルト・フォン・ローエングラムの麾下において”帝国軍の双璧”と並び称されることとなる。
OVA第9話「クロプシュトック事件」
銀河帝国の歴史は、血で血を洗う政治抗争の歴史であった。 いま、ラインハルトとキルヒアイスは、そのひとつのあらそいにまきこまれる。 次回、『銀河英雄伝説』第9話、「クロプシュトック事件」。 銀河の歴史が、また1ページ。 |
石黒監督版OVAでは、外伝ではなく本伝の一部としてクロプシュトック事件が描かれている。
ストーリー
即位する前のフリードリヒは、放蕩のかぎりをつくし、いわば勘当寸前の身であった……
若き日に放蕩の日々を過ごしたフリードリヒ4世が戴冠したのは、兄と弟が帝位をめぐり共倒れしたためであった。かつてこの争いによって失脚したクロプシュトック侯は、ある陰謀を秘めたままブラウンシュヴァイク公に社交界へ復帰させてくれるよう願い、当夜のパーティーへの参加を認められる。
ブラウンシュヴァイク公爵邸でのパーティーに参加することとなったラインハルトは、会場の入口でクロプシュトック侯と偶然顔を合わせた。会場でラインハルトがフレーゲル男爵と舌戦を交える中、会場外で待っていたキルヒアイスは、辞去するクロプシュトック侯の姿にとある違和感を覚える。そしてキルヒアイスが、入口に現れたアンスバッハに連絡を頼んだその時、会場内で大きな爆発が発生。キルヒアイスは会場に駆け込み、主君の無事を確かめる。
いっぽう、会場を去り私邸にもどっていたクロプシュトック侯のもとに、爆発で死ぬはずのフリードリヒ4世は会場に現れず、ブラウンシュヴァイク公も生き延びたという報が届く。自らの受けた30年に渡る恥辱と世継ぎの早逝、そしてそれに報いるはずの陰謀の失敗への無念を独白したクロプシュトック侯は、やがて屋敷に火を放って自殺した。
「フリードリヒやブラウンシュヴァイクらに、一矢むくいてやるつもりであったが……!」
この事件も、ゴールデンバウム朝の歴史に封じ込められた、血を血で洗う政治抗争のひとつの結果であった……。
原作におけるクロプシュトック事件との変更点
詳細は「ウィルヘルム・フォン・クロプシュトック」も参照。
OVAでは時系列が変更され、クロプシュトック事件は本伝初頭と同時間軸、帝国暦487年の出来事となった。なお、原作外伝「星を砕く者」はその冒頭がOVA外伝「第三次ティアマト会戦」、後半が映画「わが征くは星の大海」に分割されており、中盤は時系列を変更する形で本伝や映画「新たなる戦いの序曲」に編入されているため、ストーリーに大きな問題は生じていない。
パーティーは皇孫であるブラウンシュヴァイク公爵令嬢エリザベートの誕生パーティーとなり、ヴェストパーレ男爵夫人マグダレーナも参加。会場にはクロプシュトック侯からブラウンシュヴァイク公におくられた巨大なルドルフ大帝の肖像画が飾られている。また、ラインハルトを誰何する警備担当者もメックリンガー准将からアルツール・フォン・シュトライト准将に変更された。
爆弾はクロプシュトック侯の持つ杖に仕込まれたものとなり、大きな柱時計の下のベンチに置かれた。6時30分頃、フリードリヒ4世が新無憂宮を出たという知らせが入った直後にクロプシュトック侯がブラウンシュヴァイク公爵邸を出たが、このとき到着時に突いていた杖を持っていなかったことから、外の地上車で待っていたジークフリード・キルヒアイスの疑念を呼び起こす展開となっている。
その後、6時50分ごろにフリードリヒ4世の出席見合わせが会場に伝えられ、ラインハルトが昏倒した婦人を寝かせるために召使らしき人物に杖を運び出させた瞬間の7時ちょうどに爆発が発生した。クロプシュトック侯は私領に向かわず私邸に戻ったため、クロプシュトック侯爵邸に対して、ブラウンシュヴァイク公の率いるアントン・フェルナー大佐などの討伐部隊が展開したが、屋敷前にルドルフ大帝の像があったため砲撃は行われなかった。
なお、ミッターマイヤー、ロイエンタール両名は事件以前にラインハルトの麾下に入っているため、ラインハルトがブラウンシュヴァイク公の手からミッターマイヤーを救い出し両名との友誼に至る展開は、のちに本伝第87話においてクロプシュトック事件や救出後の交渉の部分を出さない形で語られている。
士官学校の式典に招かれたヤンは、そこでジェシカと再会する。 同盟軍の英雄となったヤンと、反戦活動に身を投じたジェシカ。 ふたりの距離は、遠くはなれてしまったのだろうか。 次回、『銀河英雄伝説』第10話、「ジェシカの戦い」。 銀河の歴史が、また1ページ。 |
関連動画
関連商品
関連項目
- 銀河英雄伝説
- ゴールデンバウム朝銀河帝国
- ウィルヘルム・フォン・クロプシュトック
- フリードリヒ4世
- オットー・フォン・ブラウンシュヴァイク
- オスカー・フォン・ロイエンタール
- ウォルフガング・ミッターマイヤー
- 3
- 0pt