クロワデュノール(Croix du Nord)とは、2022年生まれの日本の競走馬である。青鹿毛の牡馬。
主な勝ち鞍
2024年: ホープフルステークス(GⅠ)、東京スポーツ杯2歳ステークス(GⅡ)
2025年: 東京優駿(GⅠ)
概要
父:キタサンブラック、母:*ライジングクロス、母父:Cape Crossという血統。
父はGⅠ7勝の顕彰馬。産駒はその賢さを受け継ぐ馬が多く、クロワデュノールもそれに裏付けされた非常に高い操縦性を持ち味とする。種牡馬としても世界王者イクイノックスを出して既に大成功を収めているが、本馬はその活躍が世界に轟く前、最も種付料が落ちていた4世代目の産駒にあたる。
母はイギリス調教馬で、競走馬としてはG2一勝のほか2006年の英オークス2着、愛オークス3着の実績がある。5歳まで走ってから繁殖牝馬として輸入され、クロワデュノールが第10仔というベテランママ。
母父はアイルランド馬で、現役時代にもG1を勝利しているが、種牡馬としてOuija Board、Sea The Stars、Golden Hornなどを送り出した実績をピックアップされることが多い。
ノーザンファームが生産し、お膝元のサンデーレーシングが所有。1口125万円×40口(=5000万円)で募集され、クロノジェネシスやジェラルディーナを手がけた斉藤崇史厩舎に預託された。
馬名の由来はフランス語で「北十字星」。いわゆる「はくちょう座」のことである。父名の「キタ」と母名の「クロス」から連想したものと思われるが、はくちょう座には「はくちょう座X-1」という有名なブラックホールが存在するので、父の「ブラック」にもかすっているとも言えなくもない。調教師・騎手・馬主がクロノジェネシスと重なるため「クロノ…」と読み間違えられがち。
脚質は先行。総合的な能力の高さをキタサンブラック産駒らしい操縦性の良さで安定して発揮できる点が強み。どちらかというとド派手なキレッキレの末脚で戦うタイプではなく、長く良い脚を使って堅実に戦うタイプである。
戦歴: 北十字星に進路を採れ
2歳(2024年)
デビューは早く2歳6月。クロノジェネシスの主戦を務めるなど斉藤厩舎と関係の深い北村友一を鞍上に、東京芝1800mの新馬戦で初出走を迎える。ここは3番人気だったが、終始2番手を楽に追走し、逃げた1番人気アルレッキーノ(チェルヴィニアの半弟)を直線半ばで難なく抜き去って2馬身差の快勝。同コースの2歳新馬戦では史上最速となる1分46秒7で走破し、ネットでは早くもクラシックの主役との声も上がった。
その後は一旦休養し、出世レースである東京スポーツ杯2歳ステークス(GⅡ)に出走。約5ヶ月ぶりのレースで馬体重+24kgという大幅な増加だったが、2.2倍の1番人気に支持された。
このレースもスタートしてすぐ番手につけ、直線早めに抜け出す王道の競馬。逃げ粘るサトノシャイニングをなかなか振り切れなかったが、3/4馬身しのぎきって勝利。1分46秒8の好時計で2連勝、初重賞タイトルを獲得した。北村は「ハミに頼るところがありまだ100点満点ではない」と冷静に振り返りつつ、「その中で強い競馬で勝ちきってくれたのはポテンシャルを感じる」と潜在能力を高く評価した。
次走はホープフルステークス(GⅠ)を選択。札幌2歳S勝ち馬マジックサンズ、同じキタサンブラック産駒の有望株ピコチャンブラックなどが集まったが、実績、実力とも頭一つ抜けた存在と見られ1.8倍の断然人気を集めた。
いかにも緩かった前走から馬体重-8kgといくらか絞り、斉藤調教師も「動きが大きくなってきた」と太鼓判を押して迎えた本番。ゲートは上手く出て前2走よりやや後ろの7番手あたりを追走。前半のペースが61秒4とゆったり流れたので3角から徐々に促していき、3番手に押し上げて直線に入る。直線は1頭だけ別次元の脚で突き抜け、2着ジョバンニを悠々と2馬身封じ込める完全勝利。圧巻の3連勝で無傷のGⅠウイナーとなった。
鞍上の北村友一は本馬と同じ斉藤厩舎・サンデーRのクロノジェネシスで制した2020年有馬記念以来、丸4年ぶりのGⅠ勝利。この間落馬事故で全治1年の重傷を負うなど苦労も味わっただけに、インタビューでは「またGⅠを勝つことが出来ました」と感涙。「来年はまた大きいところで活躍したいと思いますので一緒に歩んでください」と両手を突き上げた。
キタサンブラック産駒としては存外久々のJRA・GⅠ勝利で、イクイノックスが前年ジャパンカップを勝利して以来1年1ヶ月ぶりの通算7勝目。2歳GⅠは産駒初勝利となった。ちなみに母父Cape Crossの馬によるJRA・GⅠ勝利は2009年のダービー馬ロジユニヴァース以来15年ぶりの2頭目である。
3歳(2025年)
明けて3歳はサンデーRの吉田代表が発表したとおり皐月賞へ直行。この4ヶ月の間にホープフルS11着のマスカレードボールが共同通信杯、東スポ杯2着のサトノシャイニングがきさらぎ賞、ホープフルS3着のファウストラーゼンが弥生賞ディープインパクト記念と2歳時に負かした馬が続々と重賞を勝利したことで不在の間にも評価が上がり続けており、皐月賞は単勝1.5倍の断然人気となった。
5枠10番からいつも通り好スタートを決め、すぐに外目の3~4番手を確保。1000m59秒3とまずまず速い流れにも至って落ち着いたまま順調に追走していく。しかし向こう正面で過去2戦同様の思い切った捲りを打ったファウストラーゼンに続いてきたアロヒアリイにドラゴンブースト共々圧迫される形になり、やや後方に押し込まれてしまう。
体勢を立て直したところで、北村はこれ以上の不利を避けるべく3コーナーから積極的に進出。先団に取り付くように直線を向いたが、もう一つギアが上がらず抜け出しに手こずる。それもそのはず、前半1000mのタイムが59秒3だったのに対し、複数の馬が向こう正面で早仕掛けをした影響で後半1000mのタイムは57秒7、かつそのラップは全て11秒台のハイラップという地獄の超ロングスパート戦と化していた。先行馬には過酷すぎる激流に乗ってしまっていたのである。
それでも沈むことはなく、残り100mで先頭に立ったが、そこへ中団待機策から外目を飛んできた3番人気ミュージアムマイルに一瞬でかわされてしまった。クロワデュノールも粘ったが前との差は広がり、最終的に1馬身半差をつけられ完敗。さらに後方から追い込んできたマスカレードボールからはクビ差しのいで2着を守ったが、大本番で痛い初黒星を喫してしまった。
北村は「向こう正面で窮屈になる場面がありもったいなかった」と悔やみながらも、「競馬なので仕方ない。不利があってもリカバリーして走ってくれた。すごい馬」と改めてその能力を讃えた。敗れこそしたものの、この地獄のペースに付き合わされた先行組がクロワデュノール以外尽く壊滅となる極端な後ろ有利の展開で2着に粘ったあたり、その能力が変わらず世代上位であることは確かに示した一戦でもあった。
雪辱を果たすべく日本ダービーへ。皐月賞組に加え毎日杯を勝利し3戦無敗のファンダム、京都新聞杯を制したショウヘイなどが集った。クロワデュノールは絶対能力への信頼と負けて強しの前走内容からミュージアムマイルを抑えて単勝2.1倍の1番人気に支持された。
雨上がりで良馬場に回復した東京競馬場。7枠13番から好スタートを決め、主張してきた馬は先に行かせてすんなり3、4番手を確保する。結果的に前はホウオウアートマンが単騎で逃げたが、捲りに出ると思われたファウストラーゼンが大きく出遅れて捲るに捲れない状態になってしまったこともあり、1000m60秒フラットと2番手以下はやや緩やかな流れになった。今度は外から圧を受けることもなく、クロワデュノールはスムーズに追走していく。
馬場の真ん中から3番手で直線を向き、ここで北村友一がゴーサイン。クロワデュノールはグングンと加速し、逃げたホウオウアートマンと2番手から抜け出そうとするサトノシャイニングをまとめてかわし、300mあまりを残して先頭に立つ。ゴール前でマスカレードボールに詰め寄られたが、クロワデュノールも60km/hを切らない脅威の粘り腰で追撃を封じ込め、3/4馬身差でゴール。皐月賞の雪辱を果たし、第92代日本ダービー馬の栄光に輝いた。父キタサンブラックに彼が獲れなかったダービーの栄冠をプレゼントし、同レースで4着以下だった馬の産駒としてはトサミドリ産駒のコマツヒカリ以来66年ぶりのダービー制覇という記録も叩き出している。
北村友一は騎手人生20年目、3度目の挑戦でのダービージョッキー戴冠。ホープフルS勝利時には涙を流したがこの日は笑顔がはじけ、ウイニングランでは馬上で何度も「こいつを讃えてくれ」と愛馬を指さしてガッツポーズ。インタビューでも「ここに至る全ての過程に意味があったと感じている。僕の思いは馬を信じ自分を信じることだけ。人馬一体になっていた気がして、余計なことをしなくても絶対に伸びると信じていた」と愛馬を讃え、「もっともっとクロワデュノールという名前が知れ渡ってほしい」とさらなる期待をかけた。
次なる目標は日本因縁のフランスG1、凱旋門賞。あちらのG3プランス・ドランジュ賞(パリロンシャン・芝2000m)で一叩きしたのち本番に臨むとのことで、両レースとも予定鞍上はもちろん北村友一。世代王者として、相棒と共に日本競馬の悲願成就を目指す。
血統表
キタサンブラック 2012 鹿毛 |
ブラックタイド 2001 黒鹿毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
Wishing Well | |||
*ウインドインハーヘア | Alzao | ||
Burghclere | |||
シュガーハート 2005 鹿毛 |
サクラバクシンオー | サクラユタカオー | |
サクラハゴロモ | |||
オトメゴコロ | *ジャッジアンジェルーチ | ||
*テイズリー | |||
*ライジングクロス 2003 黒鹿毛 FNo.20-c |
Cape Cross 1994 黒鹿毛 |
Green Desert | Danzig |
Navajo Princess | |||
Park Appeal | Ahonoora | ||
Balidaress | |||
Woodrising 1992 鹿毛 |
Nomination | Dominion | |
Rivers Maid | |||
Bodham | Bustino | ||
Cley |
インブリード:Busted 5×5(6.25%)、Lyphard 5×5(6.25%)
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