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グルカゴン
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グルカゴン(Glucagon)とは、血糖値を上昇させるホルモンである。

概要

グルカゴンは、に膵臓のランゲルハンス島α細胞(A細胞)から分泌される、アミノ酸29個からなる分子量約3,500のペプチホルモン。血糖(血中のグルコース濃度)が低下すると分泌が促進される。ガストリンやコルチゾールなどによっても分泌は促進される。

生理作用として血糖上昇作用があり、肝臓細胞膜のアデニルクラーゼを活性化し、cAMP(環状アデノシン一リン)濃度の上昇を介して、グリコーゲンの分解を促進させ、血糖を上昇させる。また、cAMP濃度上昇を介してホルモン感受性パーゼを活性化し、トリアシルグリセロールの分解を促進させることで、血中遊離脂肪酸も上昇させる。

血糖が上昇すると、グルカゴンの分泌は抑制され、β細胞(B細胞)からインスリンが分泌される。インスリンもまた、グルカゴンの分泌を抑制する。δ細胞(D細胞)から分泌されるソマトスタチンは、グルカゴンとインスリン両方の分泌を抑制する。これらのホルモンは、血糖の維持・調節に重要な役割を担っている。

医薬品

グルカゴンのもつ様々な生理作用を反映して、複数の的の医療に利用されている。

糖尿病

血糖上昇作用を持つため、グルカゴン製剤は糖尿病患者が重度の低血糖に陥った際の救急措置として利用されることがある。

一般的には軽度の低血糖の際にはブドウ糖や砂糖の経口摂取が、重度の低血糖の際にはブドウ糖の静脈注射が行われる。だが重度の低血糖で意識がくなってきた場合は経口摂取が難しい。また静脈注射も手技に慣れている者以外が行うことは難しい。

一方、グルカゴン製剤は静脈注射だけでなく肩・太ももなどの筋肉内に注射することでも使用できる。そのため低血糖で意識を失う危険性が高い患者の家族に、使用法を教育した上で預けられることもある。ただし海外では使い方が簡単な緊急用キット製剤が存在しているが、2017年現在日本では注射前の準備がやや煩雑な製剤しか販売されていない。そのためか家族使用の緊急用グルカゴンは日本ではあまり普及していない。

インスリン製剤の大量過剰投与などでブドウ糖の静脈注射でも血糖補正効果が不足するような緊急事態に際しては、グルカゴン製剤がブドウ糖静脈注射と併用されることもある。

逆にグルカゴン分泌を抑制する作用のある剤(インクレチン関連。同時にインスリン分泌も促進する)は血糖を下降させる。そのため、インクレチン関連糖尿病の高血糖のコントロール的に投与される。

臨床検査

グルカゴンはいくつかのホルモンの分泌促進作用を持つため、成長ホルモンの分泌機インリノーマ(インスリンを分泌する腫瘍)の検など、臨床検にも応用されている(グルカゴン負荷試験)。

ただし褐色細胞腫(血圧を上昇させるホルモンカテコールアミン」を分泌する腫瘍)の患者にグルカゴンを投与すると、この分泌促進作用によって大量に放出されたカテコールアミンが急血圧の上昇を引き起こす可性がある。そのため褐色細胞腫の患者へのグルカゴン製剤の投与は禁忌とされている。

グルカゴンは消化管に対して、消化管の動きを抑制する作用や消化液の分泌を抑制する作用も持っている。こういった効果は消化管の検を行いやすくするので、消化管検の前処置として投与される。ただしグルカゴン製剤は同じ効果を持つ抗コリンよりも価が高いので、抗コリン剤を使用できない事情がある患者に限定して使用されることが多い。

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