グワジンとは、アニメ「機動戦士ガンダム」およびそのシリーズに登場する架空の宇宙艦船・艦級。
概要
運用はジオン公国。ムサイやチベとは違い、その後継国家であるジオン共和国では使用されていない。アクシズ(ネオ・ジオン)では後述するように、その建国に重要な役割を果たした艦だが地球圏帰還時には確認されていない。デラーズ・フリートでは、エギーユ・デラーズがその旗艦として使用・座乗した。
艦名と艦種
艦種は宇宙戦艦または大型戦艦。本級の竣工をもって「チベ」は戦艦から重巡洋艦に格下げされており、「ムサイ」と並んでジオン軍の艦種分類に大きな影響を与えている。
艦名の由来は不明。たぶんにスキャット的な命名である。なお、一番艦は「グレート・デギン」、二番艦は「グワメル」。ネームシップである「グワジン」は三番艦または四番艦とされている。これは一番艦としての栄誉をあえて国家元首の名前を持つ「グレート・デギン」に譲り、逆に「グワメル」は不名誉な事故で喪失してしまったため存在そのものが抹消されたからだとされる。また、「グレート・デギン」はデギン・ソド・ザビ公王直属のお召艦であるため、軍の命名分類からは外されたとする説がある。
建艦までの経緯
0058年の独立宣言と共に国防隊の発足を宣言したジオン共和国(のちのジオン公国)だが、将来的に軍備の中心となると予測された宇宙戦用の機材については思うより開発が進まなかった。
0069年、ようやく本格的な宇宙艦であるミサイル艦「パプア」が竣工。0070年には宇宙戦艦「チベ」がこれに続く。しかし、その0069年に電磁波かく乱効果を持つミノフスキー粒子が発見され、同じく0070年にはメガ粒子砲が開発されており、両艦は生まれながらの旧式艦と言う烙印を押されてしまう(チベはメガ粒子砲に換装することで何とか第一線にとどまった)。
0071年、ジオン軍はミノフスキー粒子散布下における戦闘を前提とした機動兵器の開発に着手。これがのちのモビルスーツ(MS)であり、0073年には試作型が完成、0074年にザクⅠ型としてロールアウトする。
0075年7月、初のミノフスキー粒子散布下戦闘・MS装備を前提とした「ムサイ」が竣工。これをもってMSの本格的な量産がスタートする。
一方、艦隊旗艦としての性能は「ムサイ」には求めることが難しく、旧式艦の「チベ」には不安があるため別設計の新型艦が求められた。これが「グワジン」である。
性能
全長・横幅・トン数については440メートル・320メートル・108,100t説と294メートル・214.6メートル・35,000t説があり、かなりの矛盾が生じている。前者は0083に登場したグワデンを元にしたものであり、この艦のみに適用すべきだとする意見もある。
ただ、いずれの説を取るにせよ従来まで戦艦に分類されていたチベの235メートル・113.2メートル・16,000tよりは大型化している。
一方、仮想敵である連邦のマゼランは全長こそ327メートルであるが、横幅は94.5メートルと細長の船型であるため対照的である。
武装は主砲が連装メガ粒子砲3基である。上部に同線軸上に配置されている。このうち前部の一基は艦橋直上に配置されており、砲塔の形もそれに合わせて涙滴型の独特な形状をしている。
副砲は主砲より小径のメガ粒子砲が下部に連装10基。チベの対空砲と取り付け位置や形状が似ているためか、ムックやファンサイトでは対空砲と解説されることもある。
ミサイルランチャーや小型機関砲も多数装備されているとされるが、詳しい取り付け位置と数については不明。いずれにせよ、大型艦であるためチベよりは充実していることは確実のようだ。
他にMS搭載能力も付与されている。本来の役割は艦隊旗艦であるため不要な装備とも考えられるが、一機でも多くMSを運用しなければならないジオンの懐事情や直掩による防空への期待からか、オミットされることはなかった(のちに建造された連邦の艦隊旗艦バーミンガムとは対照的であり、結果的に正しい判断であった)。ただし、船型の影響かカタパルトは装備できず、搭載コムサイもあくまで大気圏往来用であるためMSは自力発進が前提である。搭載機数は10機から24機説まであり、こちらも極端に分かれている。
エンジンは熱核ロケットが8基であり、非常に大馬力である。また、宇宙世紀の艦艇としては珍しく外部に燃料タンク(ヘリウム3か)を搭載し、長大な航続力を誇っている。
また、装備ではないが本級の特徴として、非常に高い居住性が挙げられる。これはザビ家のお召艦であることもさることながら、緊急時には政府機能や公王庁の機能を移すことも視野に入れられていたためである。前述の長大な航続力もあり、辺境への避難・亡命も考慮されていたのだろう。史実を見るとある意味、航続力とこの居住性が「もっとも役に立った」機能であると言える。
船型は、艦首が旧世紀の大型客船の上部構造物をほうふつとさせる流線型である。船体に組み込まれ前面に出ている艦橋もこの印象を後押しする。また、ウィングを装備しているが、これは大気圏突入を考慮していたことの名残である。
評価・実戦
高い攻撃力を期待されて竣工したが、実戦には後半まで恵まれなかった。序盤のブリティッシュ作戦やルウム戦役などでは数艘が参加したとされるものの、多くは艦隊予備であったらしい。
この理由として、実戦指揮官であるドズル・ザビ中将は艦隊と足並みをそろえることができる艦隊旗艦改造型ムサイ(ファルメル)を重用したこと(異説として、豪華客船並の居住性を持つ本級は華奢に過ぎ、前線の将兵と苦楽を共にしたいドズルの矜持が許さなかったとも)、大型かつ独特の意匠から集中攻撃を受ける危惧があったことなどが指摘されている。
中盤の目立った活動としてグワメルによる大気圏突入実験が挙げられる。しかし、これは強度不足やジオンの大気圏突入装備のノウハウ不足もあり失敗。高度30000メートルで空中分解すると言う大事故を起こしてしまう。
一方、キシリア・ザビ少将が積極的に導入を図った巡洋艦「ザンジバル」は難なく大気圏突入任務をこなし、面目を潰されたジオン軍上層部は事故と艦の存在そのものを隠ぺいした(余談だが、キシリア台頭の要因になった事件である)。
以後は温存され、前線に出ることもなく本国宙域の防空任務に当たっていた。再び前線に現れるのは12月のソロモン攻防戦からであり、ドズル・ザビ中将旗下のグワランがティアンム中将の連邦軍艦隊と交戦、撃沈されている。
グレート・デギンはデギン公王が単身で連邦への講和を求める際に座乗艦となり、連邦艦隊の総司令官であるレビル大将との接触に成功しているが、直後にギレンの指示を受けて発射されたソーラ・レイの攻撃を受け、連邦艦隊と共に消滅した。一年戦争の最大の戦果はこの作戦の「釣り餌」になったことである。
また、キシリア少将旗下の突撃機動軍には少なくとも3艘のグワジン級が確認されているが、このうち少なくとも2艘はア・バオア・クー周辺で撃沈されている。
一連のエピソードが物語る意外な脆弱性は、(ファンの考察の域を出ないが)一説によると元の設計が客船であったことに由来すると言う。当然、装甲は客船の頃とは比べものにならないものが用意されていたはずだが、艦橋が前面に出ており非常に被弾に対して脆弱であったりノウハウ不足による大気圏突入に要する強度への軽視が見られたりと、攻撃力に比して危険な印象のある船である。
戦後の事件であるが、デラーズ・フリート所属艦のグワデンも内訌の結果とは言え、艦橋を容易に潰されている。
建艦には当然、多大な工数を必要としたため量産艦としても優秀とは言えない。総数は10艘前後とされ、マゼランよりは確実に少なかったと思われる。ただ、艦隊旗艦としての数としては妥当とも思われ、MSにより大型艦はこの程度の生産数に節約できたとも言える。
姉妹艦
- グレート・デギン
- 一番艦。デギン公王直属の座乗艦である。前線に出ることはなく、12月の講和会談への出港が最初で最後の作戦であったらしい。ギレン・ザビの謀略によって、公王もろともソーラ・レイで消滅させられる。
- グワメル
- 二番艦。ギレンの座乗艦説があるが、これは公国内の序列順に与えられたとする説による。大気圏突入実験に失敗し、空中分解してしまう。以後、存在そのものが抹消された。
- グワジン
- 三番艦(四番艦?)。キシリア旗下の突撃機動軍所属。ア・バオア・クーで戦没か。機動戦士Zガンダムに登場した漂流艦はこの艦とされるが異説もある。また、三番艦説を取ると、前二艦とは同時竣工の真の意味での姉妹艦と言うことになる。
- グワラン
- 四番艦(三番艦?)。ドズルの座乗艦だが、ドズルは前述のようにムサイ級の「ファルメル」を好み、本艦に乗ることはあまりなかったようだ。ソロモンにおいて戦没したと言う説と、アクシズに脱出したと言う説がある。
- アサルム
- 五番艦。マ・クベ大佐の座乗艦。本来はガルマ・ザビの座乗艦になることが予定されていたが、彼が低い地位のまま戦死したためその機会は回らず、宇宙に帰還したマ・クベに一時的に譲られたとされる。
- ア・バオア・クーで戦没したと言う説とアクシズに逃亡したと言う説がある。仮にアクシズに逃亡した艦が本艦だとすると、ミネバ・ラオ・ザビたちザビ家の生き残りはこちらに座乗していた可能性が高い。漫画「機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像」ではミネバを逃がすための囮となっている。
- グワデン
- 六番艦。エギーユ・デラーズの座乗艦であり、デラーズフリートの旗艦。性能の項でも述べたように、本艦のみ大幅な改修がなされているとする説がある。裏切ったシーマ艦隊により制圧されたが、怒り狂うアナベル・ガトーにより艦橋を破壊され、最期は連邦が放ったソーラ・システムIIにより消滅した。
- グワリブ
- 突撃機動軍所属。キシリアの座乗艦と言う説と元はギレンの座乗艦であると言う説がある。いずれにせよ、末期ではグラナダに配属され、ア・バオア・クーへの援軍に赴いた。ア・バオア・クーで戦没したと言う説と逃亡したと言う説がある。
- ガンドワ
- 小説版のドズルの座乗艦。
- ズワメル
- 突撃機動軍所属。終戦時はグラナダにいたが、多数のMSと軍人を載せてアクシズへ逃亡した。
- ギドル
- ソーラ・レイ指揮艦。アサクラ大佐が乗艦していたが、彼の艦なのかは不明である。
- グワシュ
- ルウム戦役に参加?
- グワバン
- 詳細不明。本国艦隊所属?
- グワザン
- 愛国党党首マハラジャ・カーンの座乗艦。0077年にアクシズに向けて出港したらしい。一年戦争時には本国に召集されていたとする説がある。
後継艦
後継国家であるジオン共和国では継続使用されることはなかった。これはザビ家とのつながりがある人間に優先的に配備されていた関係上、ザビ家色を払しょくした共和国上層部にとって都合の悪い存在であったためと思われる。また、多くは戦没するかアクシズに逃亡するかしており、残存艦そのものが少なかったことも考えられる。
アクシズには少なくとも2艘以上の本級が存在していたと思われるが、0087年のアクシズの地球圏帰還時には見受けられない。多くは解体され、新造艦の部品に回されたものと思われる。また、デラーズ・フリートにはグワデンが参加。
長大な航続力を持つと言う利点はアクシズでは重要視され、本級の拡大強化型であるグワダン級・グワンバン級戦艦が竣工している。また、悲願であった(?)大気圏突入能力も次級のサダラーンで実現しており、エンドラ級と並んで地球制圧作戦に大活躍している。
ネオ・ジオンにとって特別な艦となるレウルーラも本級が元の設計であり、0096年の戦没まで現役であった。
後継艦にはムサイに次いで恵まれた艦であったと言え、しかも連邦軍ではなく本流であるジオン系組織に好まれた系譜となった。ただし、漫画「機動戦士ガンダム ムーンクライシス」では連邦軍が本級の設計をもとにベクトラ級機動空母を完成させており、連邦側から無視された訳ではない(ムーンクライシスは外伝であり、ガンダムUCの登場と共に宙に浮いた作品になってはいるが)。
その他よもやま
- ムサイと並んで早い段階で模型化された艦である。
- グワジン級→グワダン級→グワンバン級→サダラーン級→レウルーラ→ベクトラと、ミネバ・ラオ・ザビにとっては因縁の深い艦となっている。ただし、前述のようにガンダムUCとムーンクライシスを矛盾した作品と見る向きもある。
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関連項目
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