ケッペンの気候区分とは、ドイツの気象・気候学者であるケッペン(Wladimir Peter Köppen)が考案した気候区分。日本の高等学校地理においても採用されていることから有名である。
概要
ケッペンは世界各地の気候を植生(すなわち木や草の生え方)に注目して分類した。
植生は概ね、気温と降水量によって変化するため、公式に従った単純な数値計算のみで気候区分を判定できる。(もちろん、公式の算出にケッペンが費やした労力は凄まじい物だったと思われるが)
分類が明確であること、判定が容易であること、産業や農業の分布について有用な説明が可能であるなど、多くのメリットがある一方、「植生」「気温や降水量」という結果にしか注目しておらず、成因についての視点が欠落しているというデメリットもある。(成因に注目した気候区分としてはアリソフの気候区分等が存在している。)
また、アジアやアフリカの気候区分については一部正確性が疑問視されているほか、標高を考慮しないため、赤道直下にあるような高山が「温帯」や「冷帯」と判断されてしまう問題もある。標高についてはアメリカの学者トレワーサが「高山気候」を考案しており、ケッペンの気候区分に組み込まれて取り扱われることもある。
分類
ケッペンの気候区分に高山気候を追加したもの。高等学校で履修する区分は太字にしている。
気候の記号 | 気候名 | 備考 | |
A 熱帯 |
Af | 熱帯雨林気候 | |
Am | 熱帯モンスーン気候 | ||
Aw | (熱帯)サバナ気候 | ||
As | 熱帯夏季少雨気候 | 該当地域は少ない | |
B 乾燥帯 |
BW | 砂漠気候 | 気温によってBWh,BWkに分類される |
BS | ステップ気候 | 気温によってBSh,BSkに分類される | |
C 温帯 |
Cfa | 温暖湿潤気候 | |
Cfb,Cfc | 西岸海洋性気候 | ||
Cw | 温暖冬季少雨気候 | ||
Cs | 地中海性気候 | ||
D 冷帯 (亜寒帯) |
Df | 冷帯(亜寒帯)湿潤気候 | 最寒月・最暖月平均気温によってDfa,Dfb,Dfc,Dfdに分類される |
Dw | 冷帯(亜寒帯)冬季少雨気候 | 最寒月・最暖月平均気温によってDwa,Dwb,Dwc,Dwdに分類される | |
Ds | 高地地中海性気候 | 該当地域は少ない | |
E 寒帯 |
ET | ツンドラ気候 | |
EF | 氷雪気候 | ||
H 高山 |
高山気候 | 概ね標高2000m以上の地域が該当するが、明確な数値基準は存在しない |
これらの気候区分は樹木気候・無樹木気候に分けることが可能であり、熱帯・温帯・冷帯気候が樹木気候、乾燥帯・寒帯気候が無樹木気候に該当する。
で、その公式とやらは何?
まず寒帯かどうかの判定はすごい単純である。一番暖かい月の平均気温が10度を下回るならEである。ETとEFの判定は一番暖かい月の平均気温が0度以上か0度未満かで行う。
次が乾燥帯の判定である。これは少し複雑である。乾燥限界という概念があるが、これは年平均気温に定数を足して20をかけたものなのだが、定数は年中雨が降る(冬にほとんど降らないでも夏にほとんど降らないでもない)なら7、冬に雨がほとんど降らない(夏に一番多い降水量の月があって、一番降水量の少ない月の降水量は一番多い月の1/10未満)なら14、夏に雨がほとんど降らない(冬に一番多い降水量の月があって、一番降水量の少ない月の降水量は30mmに満たず、かつ一番多い月の降水量の1/3未満)なら0である。で、年の降水量が乾燥限界未満ならBである。BSとBWの判定は乾燥限界の半分以上の降水量があるかないかで行う。末尾のhとkは年平均気温が18度以上か18度未満かで行う。
最後に、熱帯・温帯・冷帯の判定を行うが、これは最も寒い月で判定する。もっとも寒い月が18度以上ならA、-3度以上18度未満ならC、-3度未満ならDである。そこから先は以下のような判定で進める。
2文字目 | 解説 | 3文字目(C・Dのみ) | 解説 |
---|---|---|---|
f | 年中雨が降る | a | 最も暖かい月が22度以上 |
m(Aのみ) | 最も降水量少ない月の降水量が60mm未満かつ(100-0.04×年降水量)mm以上 | b | 最も暖かい月が22度未満、かつ4か月以上10度以上 |
w | mでなく夏に雨がほとんど降らない(詳細はB説明参照) | c | 最も暖かい月が22度未満、かつ1から3か月10度以上、かつ最も寒い月が-38度以上 |
s | mでなく冬に雨がほとんど降らない(詳細はB説明参照) | d(Dのみ) | 最も暖かい月が22度未満、かつ1から3か月10度以上、かつ最も寒い月が-38度未満 |
公式を実際に適用してみる
東京の場合、最も暖かい月は8月で、その平均気温は26.4度、最も寒い月は1月で、その平均気温は5.2度、最も降水量の多い月は9月で、その降水量は209.9mm、最も降水量の少ない月は12月で、その降水量は51.0mm、年平均気温は15.4度、年降水量は1528.8mmである。この時、どう判定するかというと、
- 最も暖かい月の気温は10度未満? 26.4度なのでNo
- 年中雨が降る? 夏に一番降水量が多い月は夏で、51.0mmは209.9mmの1/10以上なのでYes
- 乾燥限界は? (15.4+7)×20=448mm
- 降水量は乾燥限界未満? No
- 最も寒い月の平均気温は? -3度以上18度未満、よってCf
- 最も暖かい月の平均気温は? 22度以上、よってCfa
このようなフローで判定する。
関連商品
関連項目
- 5
- 0pt