『ゲド戦記』とは、アーシュラ・K・ル=グウィン作のファンタジー小説である。
概要
多数の島から成り立つ世界「アースシー」を舞台としたファンタジー小説。「ゲド戦記」というのは邦訳につけられたタイトルで、実際には戦記的要素はあんまりない。ついでに言うと明確なシリーズ名すらなく、海外ファンからは大まかに The Earthsea cycle (アースシー作品群)等と呼ばれている。
また、ゲドが実質的な主人公なのも一巻のみで各物語ごとに主人公は違う。第三巻と第四巻の間には長い中断があり、第四巻以降はそれ以前とかなり作風が違う。
日本国内では『指輪物語』『ナルニア国物語』と並べて「世界三大ファンタジー小説」とも称されるが、それはあくまで日本のみでの話である。確かに海外でも英米を中心にヤング・アダルト向けファンタジーとして高評価を受け、特に「帰還」は1990年のネビュラ賞長篇部門を獲得したが、日本ほどに深く浸透した存在というわけではないようだ。
とはいえイギリスではBBCが1996年にシェイクスピア劇の俳優を声優に採用して「影との戦い」をラジオドラマ化し、好評だったのか後にカセットテープ化されたらしい。アメリカでは2004年に「影の戦い」と「こわれた腕輪」をテレビドラマ化したが、こちらは原作の無意味な改変+オリジナル要素入れまくりで大コケ。原作者が公式サイトで「総合プロデューサーさんの想像力にはただ感心するばかりですが、私の作品にはどうか関わらないで頂きたかった・・・」と泣きを入れる始末であった。
既刊
- 「影との戦い」 A Wizard of Earthsea (原語版1968年、日本語版1976年)
- 「こわれた腕環」 The Tombs of Atuan (原語版1971年、日本語版1976年)
- 「さいはての島へ」 The Farthest Shore (原語版1972年、日本語版1977年)
- 「帰還」 Tehanu: The Last Book of Earthsea (原語版1990年、日本語版1993年)
- 「アースシーの風」 The Other Wind (原語版2001年、日本語版2003年)
- 「ゲド戦記外伝」 Tales from Earthsea (原語版2001年、日本語版2004年)
※ 1998-’99年発表の短篇2本に書き下ろし3本を加えたもの
この他に1964年に発表され未邦訳の作品集に収録された短篇が2つある。
登場人物
- 名前は、通り名/真の名
- ハイタカ(Sparrowhawk)/ゲド(Ged)
- 「影との戦い」における主人公。
- アースシー北方に位置するゴント島(Gont)の出身で、類い希な魔法の才能を持つ。
- 若い頃はその才能から傲慢な性格で、結果として「影」を呼び寄せてしまう(影との戦い)。
- アルハ(Arha)/テナー(Tenar)
- 「こわれた腕輪」における主人公。
- 東方に位置するカルガド帝国(Kargad Lands)のアチュアンの墓所に仕える巫女。墓所の事と自分に仕える女官と宦官しか知らない狭い世界で生きてきたが、ハイタカとの出会いによって外の世界に興味を持つ。
- アレン(Arren)/レバンネン(Lebannen)
- 「さいはての島へ」における主人公。
- エンラッド国(Enlad)の王子で、世界の異変に対処するためにハイタカとともに最果ての地へと旅立つ。
- テルー(Therru)/テハヌー(Tehanu)
- 「帰還」「アースシーの風」におけるキーパーソン。
- 両親の虐待によって顔の左半分がケロイドになっており、うまく話すこともできない。テナーによって育てられる。
- アイリアン(Irian)
- 「ゲド戦記外伝 トンボ(ドラゴンフライ)」における主人公。
- 女人禁制であるロークの学院(the School of Roke)を敢えて訪ね、自分の本来の姿を探求する。
スタジオジブリによる映画(2006)
宮崎駿の息子である宮崎吾朗を監督として製作された。2006年7月29日公開。
宮崎駿の絵物語「シュナの旅」を原案とするなど、原作からの改変が多く見られる。
関連項目
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