ゲーミングPCとは、PCゲームを主な用途としたパソコンのことである。「ゲーミングパソコン」ということもあるが、「ゲーミングPC」の方がGoogle検索で引っかかる数は多い。
概要
世界的には「PC」は以前からゲームの主なプラットフォームの一つであり、「ゲームを目的としたPC」すなわちゲーミングPCは一大市場を形作ってきた。一方、日本ではファミリーコンピュータの普及以降、ゲームの主役をPCだと捉えている人はどちらかといえばマイノリティだった。PCプラットフォームの側から見て「家庭用ゲーム機」は「コンシューマーゲーム」と呼ばれているが、日本では「ゲーム」といえば「コンシューマーゲーム」であった(もっとも最近はソシャゲが一大勢力だが…)。そのため「ゲーミングPC」市場はニッチな市場であり、国内ではごく一部の人にしか関係のない世界だった。
しかし近年はコンシューマーゲームとPCとのプラットフォームを超えて同じゲームが提供される(クロスプラットフォーム展開)場合も多くなっており、FPS/TPS、MMORPGのような従来はPCでしか流行らなかったようなゲームもコンシューマーゲームの世界に入り込んできている。PCでゲームをプレイするハードルは以前よりは随分低くなっているのではないか…と思う。
どうやって手に入れるの?
購入するか、自作するかの2択だ。
国内でPCゲーム自体がコンシューマーゲーム市場に大きく押されていたこともあり、国内の大手PCメーカーはゲーム用PCの生産をほとんど行っていない。主にBTOメーカーや海外PCメーカーが生産しており、都内(秋葉原)はじめ主要都市に展開されるPCショップやWeb上で買うことができる。デスクトップ型もノート型(いわゆるゲーミングノート)もあり、ここは好みがわかれるところだが、値段が同じならデスクトップ型の方が高性能かつ排熱に優れる(この辺は後で詳しく説明している)。
もし希望に合う製品がない場合は、自分でパーツを買って望み通りのPCを組み立てることとなる(いわゆる「自作PC」)。というか、いまどきPCを自作する人の多くはゲーミングが目的である。
なお近年は「外付けGPU(eGPU)」といって、ゲームの画像出力に必須となるグラフィックボードをThunderbolt 3のような高速規格を使って外部接続できる機器も登場している。Thunderbolt 3端子と十分なCPU性能を備えたビジネス用PC(やMac)を持っている場合、これを繋ぐだけでもお手軽に「簡易ゲーミングPC化」(※Macは公式には「PC」とは呼ばない約束らしいが)することができる。凄い時代になったものだ。
どんなPCが「ゲーミングPC」なの?
特に決まりはない。持ち主が「これはゲームをやるためのPCだ」と言えば、それは「ゲーミングPC」である。
…とはいえ、ゲームの要求するPCスペックがどんどん上がる中、どんなPCでも快適に全てのゲームを楽しめるというわけではない。ゲームが要求するPCスペックは普通のビジネスソフトに比べてはるかに高く、ゲームに特化した性能が必要となる。
ここから先で、人々が「ゲーミングPC」に求めるものは何か、解説しよう。
高い3Dグラフィック性能
ゲーミングPCの最大の特徴はコレである。というかそもそもPCでゲームをやる最大の理由は「高画質な3D映像を得る」or「高いリフレッシュレート環境で対戦相手より早く行動する」ためである。
概要のところで言ったように、最近では主要なPCゲームタイトルはクロスプラットフォーム展開が多い。簡単に言えば、特にこだわりがなければPS4でもXbox One Xでも(モノによってはSwitchやスマホですら)同じゲームを遊べるので、ゲーム用PCがなくてもただ遊ぶだけなら数万円以内でコンシューマー機を買えば事足りるのだ。
そこであえて高いゲーミングPCにこだわる目的はコンシューマー用ハードで得られない体験があるからであり、その中心は高精細映像に他ならない。もちろん、「PCとマウスによる操作感がコンシューマー機のコントローラでは得られない」という理由も考えられるが、PS4やXboxなどはキーボード・マウスの操作にも対応し始めており、逆にタイトルによってはPCゲームでもコントローラ(PCゲームの世界では「パッド」と呼ぶ)での操作に最適化されており、絶対のものではない。
なお、ここまでの内容から「コンシューマー機並みの描画性能しかない低性能なゲーミングPC」はそもそも需要が少ないということがわかるだろう。そのようなPCは完成品としてあまり売っていないし、自作しようにも低性能のグラフィックボード自体の製品数が少なく、がんばって作っても大量生産でコストを抑えられるコンシューマー機に比べるとどうしても割高になってしまう。
一方であえて画質をコンシューマー機並みにまで落とし、出来た余裕で映像をなめらかにするという需要もある。こちらについてはディスプレイの段で後述するが、そのような状況であれば、たとえ画質が悪かろうと非常に高いグラフィック性能が要求される。
以上から、ゲーミングPCの基本的条件のひとつが「コンシューマー機以上の3D画質を有すること」あるいは「コンシューマー機以上の滑らかさを有すること」、言い換えれば「十分な性能のグラフィックボードを搭載していること」と言える。グラフィックボードの選択肢は非常に幅広く、2020年末期時点ではミドルレンジで3-5万円程度、ハイクラスで20万円台以上が相場だ。性能が高ければ高いほどどんなゲームでも快適に遊べるが、ハイエンド製品は普通の人が簡単に手が出せる値段ではない。予算と相談して、自分のPCに必要なグラフィックボードがどのクラスかよく調査したい。
不足のないCPU
グラフィックの出力元となるゲーム自体の内部処理はCPUが行っている。CPUがある程度の性能を持たないと、いくらグラフィックボードを良いものにしてもCPUがボトルネックになってしまい、グラフィックボードの性能は無駄になってしまう。グラフィックボードの性能に見合ったCPUを装備していることが最低条件となる。どのグラフィックボードにどのCPUが必要なのか、といった情報はネットで検索すると検証の例がたくさん出てくるため、ぜひ参考にしてほしい。
そのうえで、実際にゲーミングPCにどのCPUを選ぶべきなのかは意外と悩ましい。
で決まる(キャッシュメモリ容量、バススピードといった要素もあるが、これは必然的にコアや周波数の身の丈に合った装備になり、この違いだけを意識して製品を選ぶことはない)。
現代のCPUは複数コアが常識で、ミドルレンジでも6~8コア、ハイクラス~ハイエンドになると8~16コア以上のCPUが普通となっている。そのため「CPUとしての性能の高さ」を評価するとき、「複数コアで複数の同時処理をどれだけ素早くこなせるか」を意味する「マルチスレッド性能」の高さがよく話題になる。しかし、実はゲームに限ればそれ自体が複雑なマルチスレッド処理を多用することは少なく、どちらかといえば「一つのプログラムのひと固まりの処理をどれだけ素早くこなせるか」の指標となる「シングルスレッドあたりの性能の高さ」の方が重要なのだ。一言で言うなら、「コア数が多くマルチスレッド処理に特化したCPU」と「コア数はほどほどだがシングルスレッドあたりの処理能力が高いCPU」とが同じ値段だった場合、ゲーム用途だけに限れば基本的には後者の方が有利なのだ。
しかし、近年は自分のゲームプレイを動画配信するプレイヤーも多い。「ゲームプレイ動画のリアルタイム配信」「大容量動画の編集」などといった処理はまさにマルチスレッド処理であり、このような用途も考える場合はマルチスレッド性能の高さも無視できなくなる。
まとめると
- ゲームをプレイするだけなら周波数の高さを重視しコア数はほどほど(基本的に6コアでも十分、軽いゲームだけなら4コアでも行ける)
- 動画を扱うならコア数の多さを重視する(6コアは最低条件、できれば8コア以上あるべき)
のがよいだろう。
一応、CPUをそれなりにして、配信に関してもグラフィックボード側で処理させることもできるが、その場合はゲームのパフォーマンスが落ちるため一長一短だろう。
高速処理を支える冷却性能
高性能なグラフィックボードとCPUを使ううえで、避けられないのが「発熱」だ。
PCのパーツは半導体を中心とする精密機器であり、熱に非常に弱い。熱をうまく外に逃がせないとすぐ壊れてしまうため、どんなPCでも熱を外に逃がすファンなどの仕組みが備わっている。通常のビジネス用PCでは爆発的な熱を発生するわけでもないため最低限の装置で十分でありあまり問題にならないが、別次元の高速処理を行うゲーミングPCでは各パーツの電力消費は激しく、発熱も別次元に多いため、高い冷却性能の確保が課題となる。
しかし高い冷却性能の確保のためには風量の多いファンが必要となり、風量の多いファンでは騒音が問題になる。うるさくても構わないならファンをガンガン回せばよいが、それではゲームを快適にプレイする邪魔になってしまう。これを解決するには大型のヒートシンクやゴツい水冷装置を搭載する必要が出てくる(後述のように、そのゴツさこそゲーミングPCの魅力の一つだという声も多いだろうが)。これが、各パーツが小型化してもなおゲーミングPC自体が小型化しづらい大きな理由である。
ここまでのことをとても雑に表現すれば、
の3つはそれぞれ対立関係にあり、どれかを良くしようとすると他2つが悪くなり、すべてを同時に達成しようとすればするほどパーツが高価かつ大型になっていくということを意味する。このバランスをどう上手くとるかが、ゲーミングPC選び/自作の腕の見せ所といえるだろう。
応答速度とリフレッシュレートに優れたディスプレイ
一般的なPC用のディスプレイはリフレッシュレート60Hz、つまり1秒間に60枚の画面を高速で切り替えて動画を表示するのが基本だ。ゲームでもこれが基本なのは同じだが、近年は144Hz、240Hz、360Hzといった高速な画面表示に対応したディスプレイが普通に売られるようになった。120Hz以上の画面は非常になめらかである。初めてお店で見るとそのヌルヌルさに驚くだろう。またPCゲームの中で一大ジャンルであるFPS/TPSでは、この画面切り替えの速さの差が勝敗を分けるともいわれている(一般人に0.0~秒の差を認識できるかは不明だが)。 お金に余裕があるなら、高いリフレッシュレートのディスプレイを選びたい。
なおFPS/TPSの勝敗ということで言えば、画面切り替えの速さも(人によっては)重要ではあるものの、より重要なのは応答速度の方だ。これは「信号が入ってきて何秒で画面を描けるか」であり、こちらはゲーム用ディスプレイでは1ms(1000分の1秒)ときわめて高速になっている。通常の低価格ディスプレイだと20-50ms程度あるものもあり、こうなってくると一般人でも勝敗を分けかねない差になってくる。応答速度は速いものを選んでおきたい。
もっとも「ゲーミング用ディスプレイ」と謳った製品を選べば、多くの場合これらは達成できる。ただし液晶ディスプレイの存在にはいくつか種類がある。代表的なのは「IPS液晶」「TN液晶」であり、
- IPS液晶は高精彩で高い没入感が得られる、一方で応答速度に限界があり、かつ値段は高い
- TN液晶は安価、かつ応答速度が非常に速いため正確な操作が可能、一方で精彩はそこそこ(特に斜めから見ると色合いがかなり悪くなる)
とそれぞれ特徴がある。お財布と相談しながら、自分が主に遊びたいゲームのジャンルでどちらが最適なのか考えて決めよう。
ゲームに特化したキーボードとマウス
ゲーム用途のPCでキーボードやマウスに求められるのは「応答の素早さ」「入力成功したと瞬時に明確にわかる操作感」「マウスボタンの豊富さとユーザー設定の自由度」などである。これらは、オフィスでの仕事を快適に行うのに理想的な性能とは明らかに異なる。
たとえば、キーボードを打鍵するたびに毎回「カチャン!」というメカニカルな音が鳴ったり、キーを入力すると反動があったりするキーボードでは、ゲームでは「入力に成功した」ことを体で実感できるためプレイ感覚の向上に大きく貢献するが、仕事で文書を入力する場面ではタイピングの邪魔でしかない。「1/4000秒」といった高い応答速度はゲームにおける安定感につながるが、ビジネス文書作成の場面では全くの無意味であり、ここにお金をかけるのは無駄としか言えない。
マウスの場合はサイドボタンを大量に備え、キーボード操作の一部を代用することで余計な腕の動きをカットし効率を上げるものや、あるいは筐体の肉抜きを行い凄まじいまでの軽量化を図り疲労を貯めにくくするというものが存在する。しかし専用ソフトウェアで機能設定が必要なため、オフィス用途だと「業務に関係ないソフトを入れない」という社内運用ルールに反する恐れもある。
逆に、ゲームに特化したものを選べばゲームプレイは非常に快適になる。キーボードとマウスはぜひ自分に合ったものを選びたい。
ゲーマーの証、ヘッドセット
「ヘッドセットをつけた海外の若者が、パソコン画面に向かって饒舌にしゃべりながら軽快にキーボードを叩く」…というのはステレオタイプなPCゲーマーのイメージだが、実際にチャットしながらプレイするならヘッドセットは必須である。チャットはしないという人はヘッドホンやスピーカーでも良い。ヘッドセット・ヘッドホンには無線と有線があるが、無線は取り回しが楽で快適な一方、ある程度の音の遅延が避けられない(ロジクール製など一部に例外もあるが、総じて高額な傾向にある)。有線は逆に安価に遅延を最小限にできるが、ケーブルは煩わしい。サラウンドタイプのヘッドホンなら、より高い没入感を得、音の発生位置を把握しやすくできる。
FPS/TPSでいわゆる「サウンドプレイ」(足音や銃声などを聞き分けて、どこで何が起こっているか音でも把握するプレイスタイル)をしたり音ゲーをするなら、基本的には「有線サラウンドヘッドホン」一択になるだろう。
ゲーミングPCらしい見た目
ゲーミングPCの大きな特徴の一つが、その見た目である。
大きく主張するデザインのケース、冷却ファンの回転するLED、仰々しい水冷装置の配管、カラフルに点灯するキーボードとマウス…など。これらは外から見た「ゲーミングPC」のイメージそのものである。最近のケースは「透明な面が複数用意され中身をあえて見せる」ように設計されたものも多く、マザーボードによっては各パーツのLEDの変色パターンを統一して管理する端子を用意していたりする。ここ数年のケースは基本的に裏面配線に対応しており、いかに無駄なく美しい配線を実践できるかも腕の見せ所になっている。キーボードやマウスも鮮やかに発光するものがほとんどだ。
そんな「こだわり抜いた愛機の見た目」も、ゲーミングPCを構成する大きな要素なのである。
もともとは海外でのゲーム配信の際、配信者が顔出しする際に背後にゲーミングPCが映り込むため、そこを映えるようにすることで再生数アップに繋げるところから発光が当たり前になるほどの需要が出来たと言われている。
海外ではゲームをプレイして実況するストリーマーが大流行しており、そのストリーミングではゲーム画面のみならず、自身のPCを紹介するシーンもある。RGB LEDつきだと見栄えが良いから、テーマが統一できるからといった理由で歓迎されているのだ。 - ゲーミングの話題で終始した2018年のCOMPUTEX ~会場で気になったそのほかのモノ編 - PC Watch
つまり配信でもしない限りそんなの誰も見ない自己満だろとか言うな
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関連項目
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