ゲーリー・スタンリー・ベッカーとは、アメリカの経済学者である。シカゴ学派。1992年ノーベル経済学賞。
ベッカーの経済論
ベッカーは、本来ならば社会や個人の分析をする経済学の手法をそれまで用いられなかった分野に応用し高い注目を集めた。例えば、学歴、恋愛・結婚、差別などを経済学の手法で説明した。
なぜ人は大学に行くのか?
ベッカーは教育は「ヒューマンキャピタル(人的資源)への投資」だと考えた。大学へ入る為には沢山の勉強とお金がかかる(コスト)がそれ以上の物が大学で得られるから皆大学に行くんだろう。
ここまでは普通のことである。
問題は学生を雇う側の企業が、学生を学歴によって選別(スクリーニング)している点にある。これは何故かというと、企業が学生の能力を正確に測るのは容易でないからだ。無能だがウソの上手い奴は有能なフリをするかもしれない。つまり能力診断にはコストがかかる。なので企業は不確定な学生の能力ではなく、既に明らかになっている学歴で学生を選別し始める(これは正確には大学に入るための努力、コストを評価している)。
結果として「大学で何を学ぶか」ではなく「大学に入った」ことに価値があるようになってしまう。
差別や犯罪の分析
差別
例えば、ある白人社長は黒人が嫌いであったとしよう。その社長は黒人を雇うことをせず、白人だけで会社を形成した。そうなると、優秀な黒人でも社員にできなくなってしまう。さらに仮に雇ったとしても、その社長は嫌な気分になる。つまり、差別がなかったときと比べて余分にコストがかかってしまうのだ。これをベッカーは差別係数と呼んだ。
そうなると、商品が同じ質でもライバル店より差別係数だけ高くなってしまう。そうなるとその会社は商品が売れなくなって潰れてしまう。こうして差別をした会社は市場から消えた。
犯罪
ベッカーは人間が犯罪を犯す時の行動も数式で表現した。それは以下の様になる。
「犯罪して得られる物≧捕まった時失う物×捕まる確率」これが成り立つとき人間は犯罪を犯すインセンティブを得る(犯罪をしてしまう可能性がある)。
例えば、もし貴方が人を殺して1000万円を貰えるとする。しかし日本の警察は優秀なので殺人は99%捕まってしまう。そしてもし捕まったら長い間刑務所にいなければならない。仮に10年刑務所に入れられたとしたらその間給料は貰えない。お金に換算したら5000万円くらい損するかもしれない。なので、
よって貴方は人を殺さないという選択をする。
もう一つ例を見てみよう。
もし人を殺せば1000万のお金が貰えるとする。その国の警察は適当なので殺人しても捕まる確率は10%に過ぎない。しかし捕まれば刑務所に入れられ5000万損するとする。この場合は、
この式は私たちに「どうすれば犯罪を減らすか?」を教えてくれる。つまりはこの式を成立させないようにすればいいのだ。すなわち、
という事になる。
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