- chord: 音楽の和音のこと。
- code: 法則や慣例。暗号(ダ・ヴィンチ・コードなど)とか変換した符号(文字コードなど)とか、コンピュータプログラムのソースコードとか放送コード(放送禁止用語などの基準)とか。
- cord: 電線を揃えて束ねたもの。電源コード、マイクコードなど。
- ユーザー生放送の配信者→code(生放送主)
- ニコニコ大百科の編集者→code(ユーザ記事)
本記事では1.について記述する。
コード(chord、和音)とは
簡単に言えば「高さの違う2つ以上の音を同時に鳴らして綺麗に聞こえる組み合わせ」のこと。
西洋音楽の歴史においては、対位法(2つ以上のメロディーを同時に演奏して互いに響かせる手法)が発展したものである。それまではただ単に違う高さのメロディーが同時に歌われていただけだったのが、その音の組み合わせに法則性が見られるようになったのが和音の始まり。それ以降、異なるメロディー同士の偶然の響き合いではなく、和音の組み合わせを意識しながら音楽が作られていくようになる。
主な和音
西洋音楽では、基本的に「ド」レ「ミ」ファ「ソ」のように3度の積み重ねで成り立っている和音を考える。積み重ねの一番下は「根音」(ルート音)と呼ばれ、その上に第3音、第5音が積み重なっている。
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長三和音(ド・ミ・ソ) |
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短三和音(ド・ミ♭・ソ) |
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七の和音(ド・ミ・ソ・シ♭) |
長三和音は、根音(今回の場合はド)と、そこから全音3つ(長3度)の音と、さらにそこから全音1つ半音1つ(短3度)の音から構成される。
一方、短三和音は根音と、そこから全音1つ半音1つ(短3度)の音と、さらにそこから全音2つ(長3度)の音から構成される。
これら2つの和音は、根音と第5音が完全5度(全音3つ半音1つ)となり、よく響く。
長調のVII度音、短調のII度音を根音とする和音は、これら2つとは異なる、減3和音と呼ばれる形になる。わかりやすく言うと、根音と、そこから全音1つ半音1つ(短3度)の音と、さらにそこから全音1つ半音1つ(短3度)の音から構成される。この和音は、根音と第5音が減5度(全音3つ)になる。

なお、このほかにも増3和音というものがある。これは長3度・長3度で構成され、根音と第5音が増5度(全音4つ)になる。この和音は、固有和音として出てくることはなく、構成音の変異により作られる。

今回、七の和音と一括りにしているが、これには様々な種類がある。
- 今回例示したC7はヘ長調におけるV7である。これは長3和音の上にさらに短3度上の音を足したものである。根音と第7音の間は短7度(全音5つ)である。これを属7の和音と呼ぶ
- これがCM7になる(ト長調におけるIV7)と、長3和音の上にさらに長3度上の音を足したものになる。根音と第7音の間は長7度(全音5つ半音1つ)である。これを長7の和音と呼ぶ
- Cm7は、ト短調におけるIV7になる。これは短3和音の上にさらに短3度上の音を足したものである。根音と第7音の間は短7度である。これを短7の和音と呼ぶ
- Cm7-5は、変ロ短調におけるII7になる。これは減3和音の上にさらに長3度上の音を足したものになる。根音と第7音の間は短7度である。これを減5・7の和音と呼ぶ
- Cdim7は、嬰ハ短調におけるV9の根音省略形になる(平均律において、B♯=Cなので)。これは形の上では減3和音の上にさらに短3度上の音を足したものになる。第3音と第9音[1]の間は減7度(全音4つ半音1つ)である。これを減7の和音と呼ぶ。
また、今回出てこなかったが、9の和音というものもある。これは、属7の和音の上にさらに長3度、もしくは短3度上の音を足したものである(長調の場合は長3度、短調の場合は短3度)。前者を長9の和音、後者を短9の和音と呼ぶ。
注釈: 音程と度数
同じ音程(2音の差)であっても、どう見るかに応じて音程の差が変わってくる。
半音数 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1度・4度・7度 | 完全1度 | 増1度 | 重増1度 | 重減4度 | 減4度 | 完全4度 | 増4度 | 重増4度 | 重減7度 | 減7度 | 短7度 | 長7度 | 増7度 |
2度・5度・8度 | 減2度 | 短2度 | 長2度 | 増2度 | 重増2度 | 重減5度 | 減5度 | 完全5度 | 増5度 | 重増5度 | 重減8度 | 減8度 | 完全8度 |
3度 | 重減3度 | 減3度 | 短3度 | 長3度 | 増3度 | 重増3度 | |||||||
6度 | 重減6度 | 減6度 | 短6度 | 長6度 | 増6度 | 重増6度 |
例えば、CとE♭は短3度だが、CとD♯は増2度になる。
和音記号
ドレミファソラシドで表されるハ長調を例にとると、ドから順にⅠ、Ⅱ、、Ⅳ、Ⅴ、、とローマ数字で各音に数字を振っていき、根音が1度の三和音(ドミソ)は「Ⅰ」、根音が2度の三和音(レファラ)は「Ⅱ」、根音が5度の七の和音(ソシレファ)なら「Ⅴ7」のような記号で表される。
音の積み重ね方を変えても、構成音が同じなら同じ和音記号になる。例えば下から順に「ドミソ」「ドソミ」「ドソドミ」などは全て同じ「Ⅰ」として扱われる。ただし最低音が変わると和音の性格が変わるため、「ミソド」は「第1転回形 Ⅰ1」、「ソドミ」は「第2転回形 Ⅰ2」というように区別される。七の和音の場合は構成音が4つあるので第3転回形まで存在する[2]。
例えばこのピコカキコの和音進行は「Ⅰ→Ⅱ1→Ⅰ2→Ⅴ7→Ⅰ」のように書き表される。

記号 | 構成音 | 解説(この色が最低音) |
---|---|---|
Ⅰ | ドミソ | 長三和音 |
Ⅱ1 | レファラ | 短三和音、第1転回形(最低音から6度のレが鳴るので「六の和音」とも) |
Ⅰ2 | ドミソ | 長三和音、第2転回形(最低音から4度のドと6度のミが鳴るので「四六の和音」とも) |
Ⅴ7 | ソシファ | 七の和音。第5音のレは省略 |
Ⅰ | ドミ | 長三和音。第5音のソは省略 |
調が変わると同じ和音でも違う記号となる。例えばハ長調で「Ⅰ」と表記される和音は、ト長調では「Ⅳ」、ヘ長調では「Ⅴ」となる。西洋音楽では楽譜に書かれている音符が絶対であり、和音記号は曲の「分析のため」に書き入れるために使用されるため、調に関係なく和音の役割が分かるこの形式が便利なのである。
コードネーム
西洋音楽で発展した和音の理論はジャズをはじめとするポピュラー音楽にも大きな影響を与えた。しかし、格段に複雑化したため和音記号では表記しきれず、さらにアドリブやギターなど「演奏のため」に和音を表記する必要が生じた。ここで考え出されたのが、実際に鳴っている音の組み合わせを表記するコードネームである。
ポピュラー音楽でも「ド」レ「ミ」ファ「ソ」のように3度の積み重ねで成り立っている和音が基準になるが、そのバリエーションが多岐にわたるため、いろいろな記号がくっつくのが特徴。また根音はローマ数字ではなく音名(C、F♯、B♭など)を用いる。
例
ほんの一例のみ示す。根音が変わればCの部分がC♯とかDとかE♭とかに変わる(例えばC7ならC♯7、D7、E♭7などという具合)。
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C | 何も書かなければメジャー(長三和音) |
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Cm | マイナー(短三和音) |
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C7 | セブンス(七の和音) |
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CM7 | メジャーセブンス(長七の和音) |
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Cadd9 | アドナインス |
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Csus4 | サスフォー |
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Caug | オーギュメント(増三和音) |
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Cdim | ディミニッシュ(減三和音、減七の和音を指すこともある) |
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Cm7(♭5) | マイナーセブンスフラットファイブ(ハーフディミニッシュ) |
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C7sus4(♭9) | 複数のバリエーションの組み合わせ例(セブンスサスフォーフラットナインス) |
これ以外のコード、および細かい記述体系についてはコードネームの記事が詳しいのでそちらを参照のこと。
先述した通り、コードネームと和音記号の対応を書ける範囲で書くと、
- C - C durのI
- Cm - C mollのI
- C7 - F durのV7
- CM7 - G durのIV7
- Cdim - B mollのII
- Cdim7 - Cis mollのV9根音省略形
- Cm7(♭5) - B mollのII7
add9は9の和音では第7音の省略は不可(原則和音で省略可能なのは第5音だけ。例外的に属7の和音および9の和音では根音を省略することができる)なので和音構成音でないと解釈するしかない(つまり、Cadd9はC durのIの和音の根音転位と考える。このためDはCへ復元解決する)し、sus4は第3音が移動しており適切な表記ができない(古典和音でCsus4を用いる場合、C durのIの第3音転位と考える。このため、FはEへ復元解決する)。
CaugはF durのVの和音の第5音上方変位と解釈するのが通例。
上記から、古典的解釈に基づくと(他調からの借用と考えない限り)
- CM7のEの音は前の和音から保留されている必要がある。なぜならば、V以外の和音において、第7音は予備が必要なためである
- C7のEの音は次の和音ではFに解決する必要がある。なぜならば、Eの音は導音なので、主音に解決しなければならないためである。また、B♭の音はAに解決する必要がある。7の和音である以上、第7音は下行するためである。通常、C7からはFへ進むことが期待される(Dmへ進むこともありうる)
- CdimおよびCm7(♭5)はFないしF7に解決する必要がある。これはIIの和音なので、当然Vの和音に解決する必要がある(ツーファイブ)ためである。また、Cm7(♭5)ではB♭は保留されている必要がある
- Cdim7はC#mに解決する必要がある(CはC#に、F#はEに、AはG#に解決する)。9の和音はIにしか進めないので、後続の和音はV9根音省略形とみる限り選択の余地はない
- Cadd9とCsus4は同じ和声内で直ちにCに戻るのが原則(add9ではDをCに復元し、sus4ではFをEに復元する)
- CaugはFへ解決する必要がある(Cは保留し(音を変えない)、EはFに、G#はAに解決する)
なお、ここでは出てきてないが、
- C6 - G durのIV+6。なので、G音は予備されている必要があり、かつこのコードはGに解決する必要がある。また、A→Bに解決する必要がある(G durのII7と解釈することも可能。この場合も、G音は予備が必要。進行先はDやD7となり、G→F#に解決する)
- C(omit3) - 2声体のCと解釈する。基本的に第3音は3声体以上では省略不可だが、2声体では省略しうる。また、第3音部分が短めの休符となっており、直前または直後のE音を充填するというパターンもありうる
- CM7(omit3) - C durのVの第5音下方転位と解釈可能。Gに復元するのが基本(その際、C→Dへ復元する)
- Cadd9(omit3) - C durのIの第3音下方転位と解釈可能。Cに復元するのが基本(その際、D→Eへ復元する)
ディグリーネーム
「演奏のため」に考案されたコードネームにより、調にかかわらず実際に鳴る音を表記できるようになったが、和音記号と比べると「分析のため」には使いづらくなってしまった。そこで、豊富なバリエーションを持つコードネームと調に関係なく和音の役割を知ることができる和音記号のいいとこどりをしたのが「ディグリーネーム」である。
やってることは単純で、コードネームの音名をローマ数字に書き換えただけ(マイナーコードを「Ⅱm」→「ⅱ」、「♭Ⅶm」→「♭ⅶ」のように小文字で表記する流派もある)。和音記号で音楽理論をかじった人間がディグリーネームを見ると、ローマ数字にmやM7、さらにはaugや♭11などが併記される姿に「うげぇ、気持ち悪い」という感想を持ったものである(※個人差あり)。
またコードネームの場合は変化記号(シャープやフラットなど)をF♯やG♭mのようにアルファベットの右側につけるが、ディグリーネームの場合は♯Ⅳや♭Ⅴmのように左側につけるルールとなっている。
短調におけるディグリーネームは、平行調と区別せずに1度からⅥ~Ⅶ,Ⅰ~Ⅴとする表記法1と、長調と同じように1度から全全半全全全半の間隔でⅠ~Ⅶとする表記法2と、全半全全半全全の間隔でⅠ~Ⅶとする表記法3がある。平行調と区別せずに1度からⅥ~Ⅶ,Ⅰ~Ⅴとする表記法1では、平行調のどちらでも使われるコード進行を瞬時に同じものだと理解できるメリットがある(例えばCのF-G-CとAmのF-G-CはどちらもⅣ-Ⅴ-Ⅰと表記される)。一方でキーの音がⅠではなくⅥになってしまうことが難点として挙げられる。1度から全全半全全全半の間隔でⅠ~Ⅶとする表記法2では、キーの音をドとして考えた場合に白鍵がそのまま順番にⅠ~Ⅶとなり分かりやすく、また同主調からの借用和音を瞬時に判断できる。一方でスケール内(ナチュラルマイナースケール)の音であっても変化記号がついてしまうことが難点として挙げられる。クラシックやジャズ、アカデミックな場所で用いられることが多い。1度から全半全全半全全の間隔でⅠ~Ⅶとする表記法3では、前2つの難点であるⅥから始まってしまうこと、スケール内で変化記号がついてしまうことの2つを解消したものである。一方でメジャースケールとは別に覚え直さないといけないため、あまり見かけることは少ない。
コードネーム(key=Am) | Am | Bm(♭5) | C | Dm | Em | F | G |
---|---|---|---|---|---|---|---|
ディグリーネーム1 | Ⅵm | Ⅶm(♭5) | Ⅰ | Ⅱm | Ⅲm | Ⅳ | Ⅴ |
ディグリーネーム2 | Ⅰm | Ⅱm(♭5) | ♭Ⅲ | Ⅳm | Ⅴm | ♭Ⅵ | ♭Ⅶ |
ディグリーネーム3 | Ⅰm | Ⅱm(♭5) | Ⅲ | Ⅳm | Ⅴm | Ⅵ | Ⅶ |
和音記号、コードネーム、ディグリーネームを比較すると以下の通り。

和音記号 | Ⅰ | Ⅱ1 | Ⅰ2 | Ⅴ7 | Ⅰ | 調に関係なく同じ表記 |
---|---|---|---|---|---|---|
コードネーム | C | Dm/F | C/G | G7 | C | ハ長調(C major)の場合 |
ディグリーネーム | Ⅰ | Ⅱm/Ⅳ | Ⅰ/Ⅴ | Ⅴ7 | Ⅰ | 調に関係なく同じ表記 |
コード進行
2つ以上のコードをいい感じに並べたらコード進行の完成である。さっきから例示に使っている「Ⅰ→Ⅱm/Ⅳ→Ⅰ/Ⅴ→Ⅴ7→Ⅰ」もコード進行であるし、もっと単純な「Ⅰ→Ⅴ7→Ⅰ」(気を付け→礼→直れ)もコード進行である。
西洋音楽には厳格な和声理論が存在するが、ジャズに端を発するポピュラー音楽ではそれにとらわれない新たな定番が確立している。それでも飽き足りないのか、アニソンやボカロを含む近年のJ-POPでは奇抜なコード進行が多々生み出されている(→コードの魔術師、ベースラインの魔術師)。
J-POPで多用されているといわれているコード進行は以下の3つ。他にも解決進行とかツーファイブとかセカンダリードミナントとかいろいろあるので各記事とコード進行の記事を参照。
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カノンコード(Ⅰ→Ⅴ→Ⅵm→Ⅲm→Ⅳ→Ⅰ→Ⅳ→Ⅴ) |
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王道進行(Ⅳ△7→Ⅴ7→Ⅲm7→Ⅵm) |
小室進行(Ⅵm→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ) |
作曲する際には、メロディーを先に作ってからコード進行を当てはめる人や、コード進行をあらかじめ考えてからメロディーを作る人、その両方を同時に完成させる人もいる。コードの知識がないあなたも適当にメロディーを作ってみよう。後から誰かがその曲に合うコードを付けてくれるかもしれない。
関連動画
関連項目
脚注
- *9の和音から根音を省略しているので、第3音・第5音・第7音・第9音から構成される点に注意
- *大昔は数字付低音という形で表記していたが、理解が難しいため、島岡譲の「和声 理論と実習
」(全3巻)により、このような表記が定着した。なお、I巻の初版は1964年に出たが、いまだに現役である
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