ゴッドリーブ・フォン・インゴルシュタットとは、「銀河英雄伝説」の登場人物である。
CV.酒巻光宏(オーディオブック版)。
概要
銀河帝国軍人、中将。旗艦は<ゲッチンゲン>。
外伝「ダゴン星域会戦記」の帝国側メインキャラクターの一人である。
人物
帝国暦331年の銀河帝国による自由惑星同盟に対する最初の遠征に際し、帝国軍総司令部の幕僚として参加した将官のうちのひとり。軍人経験を一切持たない総司令官ヘルベルト大公とその「サロン仲間たち」に代わり、ダゴン星域会戦における作戦指導の事実上の責任者を担わされることとなった。
緒戦
戦艦ゲッチンゲンの第二艦橋を執務室として指揮を取った彼は、極めて複雑不安定なダゴン星域に頭を悩まされつつも、7月16日に行われた同盟軍オレウィンスキー艦隊との緒戦に無事勝利を収めた。当然、彼はこの勝利に油断すること無く慎重に事を進めるつもりであった。しかし勝利に高揚したヘルベルトは翌日、総司令官として全軍に軍事常識を無視した大攻勢を命じたのである。
インゴルシュタットは呆然としつつも、各艦隊が個別に各方向に進撃し敵を捕捉撃滅する、などという粗雑極まる指示を他の幕僚たちとともに実行せざるをえなかった。7月18日正午、帝国軍本隊は同盟軍と正面から激突し一時優勢を得たが、前進中に同盟軍アンドラーシュ艦隊の横撃を受けた。インゴルシュタットら幕僚はこれを同盟軍の壮大な包囲戦法の一環ではないかと判断しヘルベルトを説得して艦隊を後退させたが、これは同盟軍を過大評価しての誤りであり、帝国軍は勝利のチャンスを逃すこととなった。
中盤戦
その後もインゴルシュタットはこの状況で取りうる最善を模索した。彼は同盟軍の正面攻撃に対処しつつも数百のシャトルを動員して運行させ、各宙域を担当する各艦隊を総司令部から制御し必要に応じて集中させるという作戦を取った。しかし、この作戦を展開するにはダゴン星域は複雑すぎた。帝国軍各艦隊は自身の位置すらわからぬままにダゴン星域内を右往左往し、帝国軍52600隻の実に81%を遊兵としてしまったのである。
とはいえ、インゴルシュタットの作戦は決して誤りではなく、実際の所、同盟軍司令部は一様に「帝国軍が反転合撃し同盟軍を包囲殲滅する」恐怖を抱えていた。同盟軍は7月19日16時に至ってようやく自身の優勢を確信し、「爆発的攻勢」に打って出る。このため帝国軍の前線は崩壊の危機に瀕したが、ビューロー艦隊の牽制で危機を脱した。この時予備兵力を投入していれば同盟軍は崩壊していたというが、ヘルベルトの「気まぐれな命令」に備える必要性と同盟軍エルステッド艦隊の跳梁、それに地理情報の不足から決断できず、帝国軍は再び勝機を逸した。
そして7月20日朝、帝国軍は衝撃的な損失を被る。パッセンハイム中将が、帝国軍アルレンシュタイン艦隊を敵、同盟軍エルステッド艦隊を味方と見做す誤認の結果、帝国軍史上初めて戦死した提督となったのである。このことはヘルベルトを激怒させた。インゴルシュタットは衆人環視のなかでヘルベルトに無能者と罵られ、あまつさえ階級章を引きちぎられ踏みにじられたのである。これは結果として、まともな幕僚たち全員への侮辱でもあった。
敗北と刑死
こののち、ヘルベルトの性急な再集合命令をきっかけに、帝国軍は記録的な大敗北を喫することとなる。
インゴルシュタットは拳銃自殺を試みたが、衛兵によって阻止された。皇族であるヘルベルトの代わりに敗戦の責任を被る責任者が必要とされたからである。
秘密非公開の軍事法廷で、彼は作戦指導の責任のみならず、遠征全般の問題全ての責任を負わされた。補給の不足は彼の横流しが原因で、情報の混乱は彼の内通が原因であった。しかし、インゴルシュタットは法廷で一言も口にはしなかった。その理由は裁判の不公正さゆえとも、将兵の死に責任を感じたゆえとも言われる。
インゴルシュタットの沈黙に代わったのは、彼と十年来の不仲である弁護人、オスヴァルト・フォン・ミュンツァー中将である。ミュンツァーは指名者である判事の意に反し、全力を尽くしてインゴルシュタットを弁護し、極めて雄弁かつ格調高い弁論を展開した。だが、裁判の行方は最初から決まりきっていた。
判決は死刑。
銃殺が執行される当日、彼は立会人となったミュンツァーに、黙って深々と頭を下げたという。
関連動画
関連項目
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