ゴビヒグマとは、クマの一種である。
その個体数の極端な少なさから「world's rarest bear」(世界で最も希少なクマ)と表現されることもあり、絶滅の危機に瀕している。
概要
その名の通りゴビ砂漠に住むことからこの様に呼ばれる。正式な和名が定まっておらず、ゴビヒグマ、ゴビ熊、マザーライ(モンゴル語の音写)等と表記されていることが多い。
学名Ursus arctos gobiensis。ヒグマの亜種であることが判明しているが、調査が進んでいないこともあり、アジアの他の地区に住む熊たちと、遺伝的に違うのか近いのか同じなのか、判明していないとも言われる。それら他の地区の熊と同一亜種であると考える立場から、Ursus arctos gobiensisではなくそれらの熊の方の学名で記載している文献もある。
ゴビ砂漠北側、具体的にはモンゴル南西部、ゴビ厳正保護区にのみ生息しており、2017年の調査で確認されたのは22頭。20世紀の間でも100頭を超えた時期は無いとされており、絶滅が危惧されている。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリスト表記では、「Critically endangered(CR)」。
元々ヒグマは雑食であるが、本亜種は特にその傾向が強く、食べられるものは何でも食べるという。砂漠という環境的要因から慢性的な餌不足に悩まされており、本亜種の絶滅を食い止めるにはまず砂漠化を防ぐところから始めなければならない。保護区の面積は日本の東北地方並の広さであるが、その中で水場のあるオアシスは16か所しかなく、当然ゴビヒグマの生息域もその周辺であることが多い。餌を求めて広範囲に移動することが知られており、300㎞先まで餌を探しに移動した事例も報告されている。
死因
最たるものは餓死であるが、まれに中国からの密猟者に殺されることもあるという。これは熊の胆(くまのい)が漢方薬として高く売れるため。
保護政策
モンゴル政府も絶滅危惧種であることは理解しており、モンゴル国内でクマを狩猟することは禁止されている。しかしながら積極的とは言い難く、実務レベルでの保護活動は、国外の組織に頼っているのが現状である。
特徴
ヒグマと言えば弾丸をも防ぐと言われる分厚い皮下脂肪が有名であるが、ことゴビヒグマに限って言えば、皮下脂肪はあまりない。これは慢性的な餌不足が理由とも、日中45度にもなるゴビ砂漠の暑さが理由とも言われる。いずれにせよ環境的要因が大きいということであろう。
おおよそ体重100㎏ほどの個体が多く、他のヒグマに比べるとかなりの小型種である。これも環境的要因が大きいと思われる。
冬眠用の巣穴がない。厳密には洞窟を見つけられれば巣穴はあるのだが、ゴビヒグマは自分で巣穴を掘ったりするのが苦手で、適当な巣穴が見つからない場合、草むらや岩の裂け目等で冬眠を行う。
関連項目
関連リンク
- Badamjav Lhagvasuren, Batmunkj Mijiddorj 「第12章 モンゴルのクマ類の現状」(※pdf注意) (日本クマネットワーク 2007年 『アジアのクマたち-その現状と未来-』の一部)
- Gobi Bear Project – Saving the world's rarest bear
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