ゴーストハントとは、小野不由美による小説『悪霊シリーズ』およびそのリライト版、またそれを原作としたいなだ詩穂による漫画、および漫画版を原作としたアニメ作品。
概要
超美形の毒舌ナルシスト少年・渋谷一也(ナル)が所長を務める心霊現象調査事務所「SPR(渋谷サイキックリサーチ)」でアルバイトをしている普通(?)の女子高生・谷山麻衣が、ナルや個性豊かな協力者たちと様々な心霊現象に立ち向かうホラーミステリ。
基本はホラーだが、霊現象の存在を前提に、その原因を解明して事態の解決にあたる、今で言うところの特殊設定ミステリとしても読める。
小説は、1989年~1992年にかけて『悪霊シリーズ』として、講談社X文庫ティーンズハートにて刊行。全8巻。「普通の少女の一人称」「恋愛要素必須」という当時のティーンズハートに課せられていた縛りを色々な意味で逆手に取った作品になっており、小野不由美の少女小説家としての出世作となった。
完結後、『ゴースト・ハント』と改題して、X文庫ホワイトハートにて直接の続編である『悪夢の棲む家』(上下巻)が1994年に刊行された。こちらは対象年齢をやや高めに設定し、麻衣の一人称ではなく三人称で書かれた、より本格的なホラーになっている。
しかし結局、これ一作で小説『ゴースト・ハント』は中断。中断の理由は、作者いわく「ファンの望む物語は書けない」からとのこと(ネタバレになるので詳細は省くが、要するに読者から期待されている恋愛方面の展開に持っていくことはできないという理由。前作を最後まで読めばその意味は理解できるだろう)。
その後、1998年から『Amie』にていなだ詩穂による漫画版が連載開始。雑誌の休刊により『なかよし』へと移籍して連載が2000年(単行本5巻ぶん)まで続き、『なかよし』読者に大いにトラウマを与えた。以降は単行本書き下ろしという形式で続刊が発行された。全12巻(『悪霊シリーズ』全8巻ぶんのコミカライズ)+全3巻(『悪夢の棲む家』のコミカライズ)。
ちなみに作者のいなだ詩穂は元々小野作品の同人誌を発行しており、それを見た小野が直接指名したという経緯がある。
アニメは2006年10月~2007年3月にかけてテレビ東京系で放映、全25話。制作はJ.C.STAFF。「小説のアニメ化」ではなく、「小説の漫画版のアニメ化」という形でのアニメ化の先駆けとなった。
放送時点ではまだ漫画版が小説最終巻まで到達していなかったため、放送時点でコミカライズされていた原作6巻ぶんと漫画版オリジナル回(「公園の怪談!?」「サイレント・クリスマス」)がアニメ化された。
ちなみに後に同じく小野不由美が執筆した『屍鬼』についても、小説の漫画版をアニメ化している。
またアニメ化・コミカライズ以前の1997年にはラジオドラマ化されており、全4枚+サウンドトラックでCD化もされている。
2010年、メディアファクトリーから『悪霊シリーズ』のリライトを施した復刊が発表され各所を騒然とさせた。新装版はタイトルを『ゴーストハント』と改め、2010年11月より隔月で刊行された。全7巻。
2020年から2021年にかけて角川文庫で文庫化され、現在はこちらで入手可能。
なお、ティーンズハート版の『悪霊シリーズ』に関しては一度新装版の発売が告知されたが実現せず、小野不由美の出世作ながら、現在では入手困難となっている。そのため小野の他のティーンズハート作品とともに中古コミック専門店などでプレミア価格がつけられていることがある。
また、小野不由美ファンクラブの会報に発表された短編8作が同人誌『中庭同盟』にまとめられているが、これはネットオークションに出回ると6桁の値がつく超レア本。同じ本に収録された『十二国記』の短編は後に短編集に収録されたので普通に読めるのだが、『ゴーストハント』の短編は未だに商業出版の機会に恵まれていない。
さらに2000年に出た『Principia 自然哲学の数学的諸原理』という同人誌にも「匿名希望(京都府・自営業)」という名義で小野が短編2作を寄稿している。こちらはなんと2019年の冬コミで再版され、当然ながら現在は品切れだが、『中庭同盟』に比べればまだ入手しやすい。
主な登場人物
- 谷山麻衣 (CV:名塚佳織/宮村優子)
- 主人公。明朗快活で人なつっこい女子高生。旧校舎に設置されていたナルの機材を壊してしまい、さらに不慮の事故でリンを負傷させてしまったため、その賠償としてナルの調査の手伝いをすることになり、その後もSPRでアルバイトをすることになる。実は天涯孤独の身の上。霊能力などは特に持たない一般人と思われていたが……。
- 渋谷一也(ナル) (CV:泰勇気/岡野浩介)
- SPR(渋谷サイキックリサーチ)所長。超のつくイケメンだが、性格は傲岸不遜なナルシスト。麻衣からは「ナルシストのナルちゃん」と呼ばれることに。様々な観測機器を駆使して、霊現象を科学的に調査し原因を究明するゴーストバスター。17歳の若さで渋谷に事務所を構え、学校には通わず、依頼のないときは何かを探して日本各地を飛び回っている。
- 林興徐(リン) (CV:成田剣/小杉十郎太)
- ナルの助手を務める無口で無愛想な謎多き長身の青年。最初の事件では負傷のためほぼ出番なしだったが、2巻以降はレギュラーとして活躍する。
- 滝川法生(ぼーさん) (CV:浜田賢二/松本保典)
- 高野山の坊主で拝み屋。軽薄な見た目に飄々とした性格だが、霊現象に対する戦闘力ではチーム随一の法力を持つ頼れる兄貴分。本業はスタジオミュージシャン。
- 松崎綾子 (CV:鈴木真仁/新山志保)
- 巫女。およそ巫女らしからぬ派手な格好をした、何かと人騒がせなお姉さん。基本的に役立たずだが、条件が噛み合ったときは大活躍する。
- 原真砂子 (CV:釘宮理恵/かないみか)
- 霊媒師。霊能者タレントとしてテレビでも活躍している美少女。SPR関係者で唯一霊視ができる探査要員。ナルに片想いしており、麻衣とは恋のライバル関係。
- ジョン・ブラウン (CV:岡本信彦/山口勝平)
- オーストラリア人の神父。金髪碧眼で童顔、協力者たちの中でも最も穏和な性格をしており、我の強い面々の緩衝材をこなしている。関西で日本語を学んだせいで、怪しい関西弁を喋る。
- 安原修 (CV:岡野浩介/三木眞一郎)
- 緑陵高校の生徒会長、のち大学生。4巻で依頼人として初登場、以降最終巻までレギュラーとなる。非常に頭が切れる上に異様に要領がよく、情報収集や調査の段取りをつける裏方として活躍する。
シリーズ一覧
講談社X文庫ティーンズハート
- 悪霊がいっぱい!? (1989年8月)
- 悪霊がホントにいっぱい! (1989年11月)
- 悪霊がいっぱいで眠れない (1990年3月)
- 悪霊はひとりぼっち (1990年9月)
- 悪霊になりたくない! (1991年3月)
- 悪霊とよばないで (1991年10月)
- 悪霊だってヘイキ!<上> (1992年9月)
- 悪霊だってヘイキ!<下> (1992年10月)
講談社X文庫ホワイトハート
リライト版(幽BOOKS→角川文庫)
- ゴーストハント1 旧校舎怪談 (2010年11月→2020年6月)
- ゴーストハント2 人形の檻 (2011年1月→2020年6月)
- ゴーストハント3 乙女ノ祈リ (2011年3月→2020年9月)
- ゴーストハント4 死霊遊戯 (2011年5月→2020年12月)
- ゴーストハント5 鮮血の迷宮 (2011年7月→2021年3月)
- ゴーストハント6 海からくるもの (2011年9月→2021年6月)
- ゴーストハント7 扉を開けて (2011年11月→2021年6月)
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関連項目
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