サカバンバスピス(Sacabambaspis)とは、オルドビス紀に生きていた古代の絶滅魚である。
概要
サカバンバスピスはボリビアとオーストラリアで化石が発掘された、無顎類に属する古生代の魚である。
胸ビレや背ビレが無いおたまじゃくしのような姿であり、マグロのように泳ぎに特化した魚と比べて下手だが全く泳げなかったわけではないと考えられている。顎が無くものを噛み砕けないので海底に堆積した有機物を口ですくって食べていたと考えられている。
名前は最初に発見された付近にあるSacabambilla村とギリシャ語で「盾」を意味する「aspis」に由来する。盾の名の通りいわゆる甲冑魚の一種(翼甲類)であり、頭部から胴体真ん中にかけて固い甲殻で覆われていた。ハコフグのような質感だろうか。面白い形状の突起を持つ種の多い甲冑魚としてはシンプルで地味な形状だと言える。尾部を中心に、甲殻以外は化石として残りにくいため、甲殻を外骨格のように強調した復元図と、甲殻が皮膚に覆われ境目の目立たない復元図がある。
当記事にある復元模型のように尾びれが短く何もないも同然の復元図と、凧のように長いひれを持つ復元図がある。今後保存状態の良い化石が大量に見つかればこれらとも全く違う復元図になる可能性は十分にある。
サカバンバスピスが属する甲冑魚は古生代に繁栄し、魚類が顎を獲得した後にも頭部を甲殻で覆うトレンドが続いた(板皮類、ダンクレオステウスが有名)ものの、無顎類はやがて顎と硬い内骨格を獲得し捕食能力を進化させた顎口類との生存競争に敗れ、甲冑魚全体が大量絶滅期を境に急速に勢力を失った。現在甲冑魚は残らず絶滅し、無顎類はヤツメウナギ類とヌタウナギ類を残してほとんどが絶滅している。
ヘルシンキ自然史博物館の模型
本来かなりマイナーな古生物といえるだが、フィンランドのヘルシンキ自然史博物館に展示されているサカバンバスピスの模型が何とも言えない不思議な表情(◎▽◎)をしており、この画像がネットの一部で流行した。2023年3月ごろにTwitterで一度話題となり、その後6月に入ると広範囲で流行した。
地質学者・古生物学者のElga Mark-Kurik氏によって1994年に作成されたもの。
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https://twitter.com/uwemon/status/1636013028100706305
ちなみにこの模型、展示場所がデボン紀でそもそもサカバンバスピスが生きていた時代と違うというツッコミどころのある展示であることは添えておく。
実にゆるキャラ的な造形なので、いっそ開き直って博物館のマスコットみたいに扱われるようになるのだろうか。
模型の再現度について
ちなみにこの模型が実際の生物の姿と似ていたのかどうかについては、古生物学者・専門家の間でも統一した結論が出ていないと思われる。このサカバンバスピスの模型は先述した「甲殻が皮膚に覆われ境目の目立たない復元図」に近い再現となっており、「甲殻を外骨格のように強調した復元図」とは異なるものになっている。しかし、古生物学者の中島保寿氏は「ヘルシンキ自然史博物館の模型は鼻孔に相当する構造と口の下半分の細い鱗の再現などの点で正確」「骨の境界が外から見えるかどうかは未確定要素」としている。
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https://twitter.com/japanfossil/status/1668206817351008256
仮に真の姿と違っていたとしても、「当時の知見として作られたものとして正確だったが、後世の研究の進歩により違った姿が浮かび上がってきた」とも考えられる。作成者が適当に作ったわけではない可能性も十分に考えられる。
もっと言えば、先に述べたように「保存状態の良い化石が大量に見つかればこれらとも全く違う復元図になる可能性」もあるため、実際のサカバンバスピスが今ある復元図や模型のどれとも似ていない姿である可能性さえある。
権利関係について
なお、ヘルシンキ自然史博物館が複数人に対して返信したメールによると、「当博物館とそのコレクションについての一般的なガイドラインに沿って判断すると、模型を(商業)目的で利用する場合は、作成者のElga Mark-Kurik氏の名前を引用し、出典を明示することを希望する」と発表されている。おそらく写真撮影の規約(このページの「Valokuvaaminen」の項目参照)に沿ったものと思われる。そのうえで、「サカバンバスピスの冒険を今後も楽しく見守っていきたい」と好意的なメッセージを寄せている。
なお、Elga氏が所属していたタリン工科大学や、著作権を保持している可能性があるElga氏の子孫ともコンタクトが取れ始めており、商品化の許諾が下りたもの(→リンク)も出始めている。
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関連項目
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