【ニコニコ大百科 : 医学記事】 ※ご自身の健康問題に関しては、専門の医療機関に相談してください。 |
サル痘(monkeypox)とは、ポックスウイルス科のサル痘ウイルス(エムポックスウイルス)に感染することによって起きる病気である。天然痘によく似た、アフリカにみられる風土病だった。
2022年11月にWHOから「サル痘」を「M痘(mpox)」に改名すると発表され、世界各国へも名称を変更するよう勧告が出された。日本では2023年5月26日に感染症法上の名称が「エムポックス」に変更されている。
概要
1958年にシンガポールから輸入された猿から検出され、デンマークで発見されたウイルスであるサル痘ウイルスによって起きる感染症である。
この経緯からサル痘と名付けられたが、基本的には宿主はげっ歯類、つまりネズミやリスであるとされている。しかしながら、猿にも人にも感染するため、サル痘ウイルスを保有した齧歯類や猿に噛まれたり、ウイルスを保有する獣の肉を食うことで感染し、人から人へは接触や飛沫によってもうつる。
症状
2週間程度の潜伏期間を経た後、水膨れがひどくなったような膿疱が体中にでき、(検索すると画像が出てきますがえげつないので閲覧注意)発熱、頭痛、筋肉痛など、後述するかつての天然痘を彷彿とさせる症状が現れる。致死率は株により差があり0%から10%程度で、顕性感染症(つまり感染すれば確実に発病する病気)である。発病期間は1か月以上。臨床的に天然痘と見分けることは困難である。
天然痘との類似点
みなさんは天然痘という病気を聞いたことがあるだろうか。日本史に於いては飛鳥時代に朝鮮半島から持ち込まれたとも言われる。奈良時代にも大流行し、大仏建立のきっかけにもなり、神道においては疱瘡神として神格化され、それにかかわる神事や疱瘡神を祀った神社もあるので聞いたことはある、という人も多いのではないだろうか。
この天然痘はかかると体中に膿疱(ぶつぶつ)ができ、感染後も跡が残るし、死亡率も高い恐ろしい病気である。
天然痘の主な感染経路は、膿疱やかさぶたに触れる、感染者の体液に触れる、せきなどの飛沫や呼気を吸い込む、感染者が身につけていた衣類や寝具などに触れる、など。ウイルスが皮膚を貫通することはないが、汚染された手でものを口に入れたり目や鼻の粘膜、傷口につくことで感染する危険性が高まる。
現在は根絶に成功しているものの、過去には広く恐れられた病気である。
「痘」という字を見てもらえばわかるとおり天然痘ウイルスもこのサル痘ウイルスと同じポックスウイルス科であり、このため、サル痘もまた天然痘ウイルスの再来になるのではないか、と懸念されている。
予防法
感染症予防の基本を守ること。手洗いを徹底する。汚染されたものに触れた手で物を食べない(触れるだけでは感染しない)。飛沫感染を抑えるためマスクをする。アルコール消毒が有効。
事前に天然痘ワクチンを接種する(類似のウイルスであるため効果がある可能性が高い)。
感染症法で第4類指定であり、感染の疑いがある場合は国や自治体、保健所や病院などに速やかに申告する義務がある。
治療法
基本的には対症療法で、自然治癒を待つ。
一部の抗ウイルス薬が効果があるとされる。感染のごく初期に天然痘ワクチンを接種すると重症化を抑える効果があるとされる。
2022年の感染拡大
サル痘は発症例が少なく、ヒトヒト感染はあまり見られなかったが、2022年5月ごろから欧米でヒトヒト感染を疑う感染例が多数見られ始めた。
2022年11月1日までに全世界で77000例以上の症例が報告が上がっている。2022年1月以降の死亡例は36件確認されている。
参考ページ:複数国で報告されているサル痘について(第4報) - 国立感染症研究所
関連動画
関連商品
関連リンク
関連項目
- 44
- 0pt