サンダウナーズ(Sundowners)とは、アメリカ合衆国海軍の仮想敵飛行隊である。
正式名称が『VF-111』である時代が長かった。現在の正式名称は『VFC-111』。
旭日旗を飛行機の垂直尾翼に描くことで有名である。ただし、あのマークは落日を模した落日旗であるという解釈をされることもある。詳しくは『旭日旗か、落日旗か』の項目を参照のこと。
略歴
創設 日本をやっつけろ
太平洋戦争の開戦から10ヶ月後の1942年10月10日に、カリフォルニア州サンディエゴのノースアイランド海軍航空基地にて『VF11 第11戦闘飛行隊』が結成された。当時は日本軍の勢いが非常に強く、それに対抗するための部隊として創設された。使用する戦闘機はグラマンF4Fワイルドキャットであった。
付けられたニックネームはサンダウナーズ(Sundowners)である。
これはいくつかの意味があり、まずは日本(sun)をやっつける(downさせる)という意味があった。また、sundownとは日没の意味を持つ言葉で、太陽が没していくのは西であるから、太陽が西に向かって日没するのと同じようにはるか西の日本に向かって進軍していく、という意味もある。
創設当時のワッペンはこういう絵であった。二機の米国戦闘機が、二機の日本戦闘機を撃墜する、と解釈できる図案である。
1943年のガダルカナル島の戦いに参加し戦果を挙げ、米国本土のサンディエゴに戻った。
そして今度はグラマンF6Fヘルキャットに乗り換え、1944年10月に空母ホーネット (CV-12)に乗り込み、太平洋の死闘に参加。いくらかの犠牲を払ったものの大きな戦果を挙げた。戦後はサンダウナーズ全体が表彰された。
太平洋戦争が終わった1946年11月15日に『VF-11A』という名前になり、1948年7月15日には『VF-111 第111戦闘飛行隊』という名前になった。
旭日旗を機体に描いて、朝鮮戦争に参加
1948年頃からサンダウナーズは、保有している戦闘機の尾翼に、旭日旗を描くようになった。
こちらは1971年のベトナム戦争時の写真。こちらは1991年の写真。画像検索しても旭日旗の入った機体の画像が数多くヒットする。
1950年から1953年まで続いた朝鮮戦争にも参戦した。
1959年1月19日に『VF-111 第111戦闘飛行隊』は解散したが、その翌日の1959年1月20日に『VA-156 第156攻撃隊』が『VF-111 第111戦闘飛行隊』と名前を変えた。
ちょっとややこしいのだが、要するに、サンダウナーズの異名を持つ『VF-111 第111戦闘飛行隊』は断絶せずに存続したのである。
ベトナム戦争の最前線で戦い続ける
1964年から1973年まで続いたベトナム戦争においても、サンダウナーズは獅子奮迅の活躍をした。チャンスヴォートF-8クルセイダーやマクドネル・ダグラスF-4ファントムIIに乗り込んで色んな空母から12,500回の出撃をして、北ベトナム軍と激しく交戦。北ベトナム軍のMigを多数撃墜している。
サンダウナーズはF-8を支給された部隊の中で最もF-8を損耗する割合が高かった。それだけ長期にわたって最前線で戦い続けたのである。
世界中の海で軍事演習~解散
ベトナム戦争終結後のサンダウナーズは大規模な戦闘に参加しなくなった。
米国の巨大空母に載って世界中の海域に出没し、様々な訓練に明け暮れることになった。ペルシャ湾、ベーリング海、日本海などに行って、そこで軍事演習をする。そうすることで、イランやソ連や北朝鮮へ軍事的な圧力をかける。そういう役割を担うことになった。
1978年10月にグラマンF-14トムキャットへの移行を達成した。
1995年3月31日にサンダウナーズは解散した。冷戦が終わって軍事予算が減らされたので、その一環としてサンダウナーズも半世紀近い歴史に幕を閉じることになった。
仮想敵飛行隊として復活
サンダウナーズの解散から11年後の2006年1月、ネヴァダ州ファロン海軍航空基地に所属するVFC-13の中の航空機と人員を分離させ、フロリダ州キーウェスト海軍航空基地に配備させた。
2006年11月に、VFC-13から分離した一団が、VFC-111という名で独立して発足した。サンダウナーズという通称を用いることも許された。
VFC-13やVFC-111は仮想敵飛行隊で、訓練において仮想敵になる部隊である。米国に敵対する国の戦闘機の特徴を掴んで飛行し、訓練の質を高める。どちらの部隊も、ノースロップF-5を使っている。
映画『トップガン』に出演
1985年にカリフォルニア州サンディエゴのミラマー海軍基地で映画『トップガン』の撮影が行われた。
このときサンダウナーズもたまたまミラマー基地にいたので、撮影に協力することになり、グラマンF-14トムキャットの機体を再塗装して飛ばすことになった。
『トップガン』にマーカス・ウィリアムズという黒人の戦闘機乗りが出てくる。
この人のコールサイン(戦闘機乗りへの呼び名)がサンダウンで、被っているヘルメットに旭日旗の模様がある。画像検索すると、旭日旗ヘルメットを被った黒人の画像が出てくる。これは、撮影に協力してくれたサンダウナーズに対するお礼の意味がある。
旭日旗か、落日旗か
サンダウナーズの機体に描かれるマークは夕日が地平線に没していく様子を表した“落日旗”である、という解釈をされることがある。
サンダウナーズは日本討滅を目的に創設された部隊なので、初心を忘れないため落日(日本国の沈没)の模様を垂直尾翼に描いたという説は説得力がある。
それに対する反論も存在する。旭日旗というのは朝日が昇っていく様を表した図なので、太陽が地平線から半分出たときの様子を図案化することもある。つまり、下半分が無い状態の図案も“旭日旗”と称することがある。ゆえにサンダウナーズの機体に描かれているマークも旭日旗と呼んで差し支えない、というものである。旭日旗の日本語版Wikipedia記事を見ても、「下半分が無い旭日旗」がいくつか掲載されている(画像1、画像2、画像3、画像4)
またもう1つの反論として、落日を模すのならオレンジ色や黄色を配色するはずだが、サンダウナーズの使用しているマークにはオレンジ色や黄色が使用されておらず、落日の模様を示しているとは言いがたい・・・という説もある。サンダウンとは落日のことで、落日といえば夕暮れで、夕暮れはオレンジ色や黄色の空になる。サンダウナーズの創設初期のマークはオレンジ色に近い黄色を使い、夕暮れを強調している。その一方で1948年以降に垂直尾翼に塗られるようになったマークにはオレンジ色や黄色が見当たらない。
サンダウナーズのマークを旭日旗とみるか、それとも落日旗とみるか、はいずれも説得力がある。あのマークを機体に描きはじめた時の部隊の雰囲気を知るものはことごとく鬼籍に入っただろうし、決定的な証言が出てくる可能性はあまり大きくない。
その他の雑記
サンダウナーズの伝統的なマスコットはOMAR(オマール)と言い、1961年に入隊した人が考案したデザインである。直線を3つ組み合わせた三角形の形をしている。この画像やこの画像のヘルメットの側面部にOMARが見える。
サンダウナーズのノーズアート(ノーズ、すなわち機首に描かれる塗装。士気高揚のため施される)というとシャークティースである。機首をサメ(シャーク shark)に見立てて、ギザギザの歯(ティース teeth)を描く。画像検索するとシャークティースの模様が目に入る。
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関連項目
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