サンデー四天王とは、1996年クラシック戦線の中心にいた4頭の*サンデーサイレンス産駒の総称である。別名「サンデーサイレンス(SS)四天王」「サンデーサイレンス(SS)産駒四天王」とも。
※以降、該当馬たちの活躍時期を鑑みて旧年齢表記(現表記+1歳)で馬齢を記載します。
概要
- バブルガムフェロー(主な勝鞍:朝日杯3歳ステークス、96年天皇賞(秋)(GI))
- ダンスインザダーク(主な勝鞍:菊花賞(GI))
- イシノサンデー(主な勝鞍:皐月賞(GI)、ダービーグランプリ(地方重賞))
- ロイヤルタッチ(主な勝鞍:ラジオたんぱ杯3歳ステークス、きさらぎ賞(GIII) 皐月賞2着・菊花賞2着)
前史 ~サンデーサイレンス1年目の旋風~
彼らはサンデーサイレンスの2年目の産駒に当たる。1994年に初年度産駒がデビューを迎えたサンデーサイレンスは(もはや語るまでもないだろうが)異常なペースで産駒が勝ち星を重ね、年末の朝日杯3歳ステークスをフジキセキが制覇。翌年のクラシック戦線もフジキセキが離脱したにもかかわらず産駒が皐月賞と日本ダービー、さらにオークスを制覇。まさに旋風を巻き起こしていた。
しかしながら1992年産駒デビューのトニービン、1993年産駒デビューのブライアンズタイムもまた初年度産駒がクラシックを席巻(前者がベガとウイニングチケット、後者がナリタブライアンとチョウカイキャロル)し、その翌年になると少々勢いを落としていた(マヤノトップガンを出したブライアンズタイムはともかく、トニービンはエアダブリンとクラシック期は脇役に過ぎなかったオフサイドトラップくらいしかいない)。
果たしてサンデーサイレンスはどうなったか…というと、前年同様にバカスカ勝ちまくった。その結果わずか2世代、5歳以上の産駒がいないにも関わらずリーディングサイアーの座を奪取するに至るわけだが、その中でも際立った実力を示したのが上記4頭である。
3歳
4頭の中で1番最初にデビューしたのはイシノサンデー。9月に四位洋文を鞍上に迎えてデビュー戦を勝利すると、オープン2着を挟んで出世レースとしても名高い黄菊賞を勝利する。
10月にバブルガムフェローがデビュー。ここは敗れるも折り返しの新馬戦、府中3歳ステークスと連勝をあげる。
全姉にオークス馬ダンスパートナーを持つダンスインザダークと半兄に日本ダービー馬ウイニングチケットを持つロイヤルタッチは、12月同じ阪神競馬場でデビュー。第4Rでダンスインザダークが強烈な末脚で勝つと、第5Rでロイヤルタッチが続けて勝利を挙げた。
そして牡馬の3歳チャンピオンを決める朝日杯3歳ステークスにバブルガムフェローが出走。クラシックに参戦できないマル外が多数参戦したものの、それらを抑えて1番人気。そして期待に応えて余裕たっぷりに勝利し早々とGI馬の称号を手にした。
続いてこちらもハイレベルになることで知られるラジオたんぱ杯3歳ステークスで残る3頭がいきなり相まみえることとなった。1番人気がイシノサンデー、2番人気がダンスインザダーク、4番人気がロイヤルタッチである。(3番人気はのちのNHKマイルカップ馬タイキフォーチュン)
レースはというと中団から早め抜け出して押し切りを図ったイシノサンデーをロイヤルタッチとダンスインザダークが強襲。最後はロイヤルタッチがアタマ差差し切って1着、イシノサンデーが2着。ダンスインザダークはちぎられたが3着を確保。
この年末の結果からクラシック戦線の中心をこの4頭が担うとみなされ、「サンデー四天王」と並び称されるようになった。
4歳春
イシノサンデーは1月のジュニアカップ(OP)より始動。当然芝のレース…のはずが降雪により突然ダートレースに変更。これでは勝てない…と思いきや全く追わずに5馬身差の圧勝。これがのちのレース選択のきっかけとなる。
ロイヤルタッチとダンスインザダークはまたしてもきさらぎ賞で激突し、ハナ差でロイヤルタッチが1着、ダンスインザダークが2着。期待に違わぬ強さを見せる。
そして3月のクラシック前哨戦、弥生賞はイシノサンデーとダンスインザダークの2強対決となりダンスインザダークが豪快に差し切って1着、イシノサンデーは1馬身差の3着。スプリングステークスはバブルガムフェローが1.5倍の1番人気に応えて快勝。ロイヤルタッチは若葉ステークス(OP)で不良馬場に苦しみ2着。
こうして皐月賞はバブルとダンスの対決になる…と思われたがバブルが右後脚の骨折により全治6か月の診断。当然春クラシックは回避となってしまった。こうなればダンスが主役になる…と思いきやダンスはダンスで熱発を起こし皐月賞を回避。
主役候補2頭が抜けてしまった皐月賞。しかし本番、サンデー四天王は他にもいるんだぞといわんばかりにイシノサンデーが3角から力強く進出を開始すると、その後を追うようにしてロイヤルタッチも進出。結果はイシノサンデー1着、ロイヤルタッチ2着。前年に引き続きサンデーサイレンス産駒による皐月賞ワンツーフィニッシュとなった。
一番外から5番の、イシノサンデー突っ込んできた!
その外からロイヤルタッチも、すごい脚で突っ込んでくる!
ロイヤルタッチが来た! ロイヤルタッチが来た!
先頭イシノサンデー! イシノサンデー! ロイヤルタッチ!やっぱりサンデー! やっぱりサンデーサイレンス!
勝ったのは、イシノサンデー!
そして2着にロイヤルタッチ!
続く日本ダービー。イシノサンデーとロイヤルタッチはもちろんのこと、ダンスインザダークも前哨戦のプリンシパルステークス(OP)を制して無事に参戦。そして弥生賞でイシノサンデーに完勝した実績から1番人気を背負った。
そしてレースでは直線で逃げるサクラスピードオーを捉えたダンスインザダークが堂々先頭に立ち、鞍上の武豊の悲願である日本ダービー制覇に向けてひた走る…が、わずかキャリア3戦の伏兵フサイチコンコルドが放った音速の末脚を前に差し切られて2着。ロイヤルタッチとイシノサンデーは見せ場なく馬券外に沈んだ。
4歳秋~ダービーグランプリまで~
夏を経た4頭(ちなみにロイヤルタッチは夏に古馬の壁に跳ね返されていた)。バブルガムフェローは骨折の治りが早く帰厩することができたが、気性の問題と検量有利である点を鑑みて前年のジェニュイン同様に天皇賞(秋)への参戦を表明。復帰戦の毎日王冠を3着にまとめて天皇賞(秋)に臨んだ。
残る3頭は菊花賞を目指す形となったが、イシノサンデーは前哨戦を4着、5着と勝ちきれない。この結果とジュニアカップでの圧勝劇を受け、陣営はこの年創設されたダート3冠路線への転向を表明。なんとクラシックホースが当時はまだまだ評価の低かったダートに参戦ということで注目を集めた。
ダンスインザダークは前哨戦の京都新聞杯をきっちり勝利。同レース3着のロイヤルタッチとともに菊花賞に臨んだ。
天皇賞(秋)
主戦の岡部騎手がアメリカ遠征に行ったためにテン乗りの蛯名騎手と共にバブルガムフェローが臨んだ天皇賞(秋)だが、ここには春にナリタブライアンを下し最強馬の座に就いたサクラローレル・前年の年度代表馬マヤノトップガン・骨折から復活し怒涛の6連勝で乗り込んできたマーベラスサンデー・前年2着のジェニュインといった強豪が勢ぞろいしていた(あとは常連のナイスネイチャとかカネツクロスとか)。
しかしその粒ぞろいの面子を相手取ったバブルガムフェローは、好位置から直線で堂々と抜け出し他馬の追撃をかわして見事1着でゴール板を駆け抜けた。4歳馬による制覇は実に59年ぶりの快挙であった。
外からマヤノトップガンだ!マヤノトップガン来た!
マーベラスサンデーも来た!マーベラスサンデーも来た!
さらに!さらに!マーベラスサンデーも外から来ている!サクラローレルは3番手までか!
サクラローレルも追い込んだ!
サクラローレルも追い込んだ!
菊花賞
バブルガムフェローが快挙を成し遂げた1週間後の菊花賞。ダンスインザダークは堂々の1番人気、一方のロイヤルタッチはきさらぎ賞以降勝てていないこともあり6番人気まで落としていた。
しかしレースはというと、超スローペースとなったこともありロイヤルタッチの先行策がジャストフィット。一方のダンスインザダークは後方待機策が祟って馬群に包まれてしまう。
最終直線で抜け出したフサイチコンコルドとサクラケイザンオーにじわじわと詰め寄っていくロイヤルタッチ。しかしその後ろから馬群を縫うようにして突き抜けてきたダンスインザダークが3ハロン33.8秒という豪脚で差し切り悲願の菊の冠を獲得。ロイヤルタッチもフサイチコンコルドとサクラケイザンオーを捉えて、皐月賞に続いての2着となった。
フサイチコンコルド!フサイチコンコルド!
そしてロイヤルタッチ来た!ロイヤルタッチ来た!ロイヤルタッチ!
サクラケイザンオー!サクラケイザンオー!
ダービーグランプリ
ダートに転向したイシノサンデーは、先ずは2冠目である大井開催のスーパーダートダービー(南関東GI)に参戦。1冠目の覇者であるシンコウウインディらを押しのけて1番人気に推されたが、進路をなくしたこともあって3着。それでも脚色は良かったので引き続き3冠目のダービーグランプリに参戦。前走で先着を許したシンコウウインディに1番人気を奪われたが、直線堂々と先頭に立つと後続を寄せ付けず1着。芝とダートのクラシック変則2冠を達成した。
内を突いてイシノサンデー先頭!イシノサンデー先頭!イシノサンデーが先頭で!
外からぐんぐんとユーコーマイケル!ユーコーマイケルが伸びてきた!
ユーコーマイケル!ユーコーマイケルが追いこんでくる!ユーコーマイケル!
先頭はイシノサンデー!イシノサンデー先頭!
ユーコーマイケル外から!ユーコーマイケル外から!ユーコーマイケル2番手!
かくしてそれぞれが輝きを見せた秋。翌年以降も輝きは続く…と思われたのだが。
その後の競走馬生活
菊花賞の翌日、ダンスインザダークは激走が祟って屈腱炎を発症し引退を余儀なくされる。
バブルガムフェローは天皇賞(秋)の次走としてジャパンカップに臨むが、直線で沈み13着大敗。この結果を受けて有馬記念は回避となった。
ロイヤルタッチは有馬記念に臨むも、サクラローレルとマーベラスサンデーの後塵を拝す4着に終わる。(マヤノトップガンには先着したが、何分むらっ気の多い馬なので…)
翌年、イシノサンデーは年初の京都金杯を制すも続く川崎記念、フェブラリーステークスと大敗。ドバイには招待されず、芝に再転向したものの長期休養を余儀なくされ、1年後に復帰したものの勝てずじまいで引退となった。
ロイヤルタッチは好走すれど勝ちきれず、天皇賞(春)では跛行するなどもあって同年のジャパンカップを最後に引退。
バブルガムフェローは第一線で活躍しGIの前哨戦を2勝する活躍を見せたものの、肝心のGIではというと宝塚記念ではマーベラスサンデー悲願のGI制覇を許し、連覇を狙った天皇賞(秋)では女帝エアグルーヴとの追い比べに敗れ、ジャパンカップではエアグルーヴに届かずピルサドスキーにも差し切られ、と主役には成れぬまま故障引退を余儀なくされた。
3歳までの勢いは古馬になるとしぼみ、どこか物寂しさのある結末であった。
彼らが古馬王道で伸びきらなかったこともあり、「サンデーサイレンス産駒はクラシックには強いけど古馬では成長力がないのでさほど活躍しないのでは?」という疑念を持たれることにもつながった(この時点でジェニュインやマーベラスサンデーが活躍していたし、その後もステイゴールドやサイレンススズカ、スペシャルウィークなどが活躍して払しょくされたが)
とはいえ彼らが早くから活躍したことが、その後のサンデーサイレンス系の発展に寄与した事実は疑いようないことであろう。
全対戦成績
年 | レース名 | 格付 | バブルガムフェロー | ダンスインザダーク | イシノサンデー | ロイヤルタッチ | 勝ち馬 |
1995 | ラジオたんぱ杯3歳ステークス | GIII | 3着 | 2着 | 1着 | ||
1996 | きさらぎ賞 | GIII | 2着 | 1着 | |||
弥生賞 | GII | 1着 | 3着 | ||||
皐月賞 | GI | 1着 | 2着 | ||||
日本ダービー | GI | 2着 | 7着 | 4着 | フサイチコンコルド | ||
京都新聞杯 | GII | 1着 | 5着 | 3着 | |||
菊花賞 | GI | 1着 | 2着 | ||||
1997 | 産経大阪杯 | GII | 6着 | 3着 | マーベラスサンデー | ||
天皇賞(秋) | GI | 2着 | 4着 | エアグルーヴ | |||
ジャパンカップ | GI | 3着 | 11着 | ピルサドスキー |
バブルガムフェロー | ダンスインザダーク | イシノサンデー | ロイヤルタッチ | |
バブルガムフェロー | 対戦なし | 対戦なし | 2-0 | |
ダンスインザダーク | 対戦なし | 3-1 | 3-2 | |
イシノサンデー | 対戦なし | 1-3 | 1-4 | |
ロイヤルタッチ | 0-2 | 2-3 | 4-1 |
意外にもバブルガムフェローはロイヤルタッチ以外との対戦はない。これは記事内にもあるがバブルが骨折で春クラシックを棒に振り、秋は天皇賞に歩を進めたこと、ジャパンカップ後は長期休養に入り復帰時にはダンスインザダークは引退&イシノサンデーは長期休養中だったことによる。
引退後
実績のある馬ということで4頭とも種牡馬入りを果たした。
その中でもダンスインザダークはサンデー孫世代初のGI馬であるザッツザプレンティを始めとして4頭のGI馬を出し、2004年にはサンデーサイレンスに次ぐ種牡馬リーディング2位になるなど、フジキセキと並んで初期のSS後継種牡馬として活躍を見せた。しかしながら代表産駒がステイヤーに偏ったこともあって直系は絶えてしまっている。
バブルガムフェローはダート中心に活躍馬を出し、ロイヤルタッチも2006年の牝馬クラシック戦線で好走したアサヒライジングを出したものの数多くのサンデーサイレンス後継の中で存在感を出すことはできず。イシノサンデーも馬産の中心地から外れての種牡馬生活となり、地方重賞馬を出すにとどまった。
バブルガムフェローは現役種牡馬であった2010年に体調を崩し17歳で死亡。ほか3頭は種牡馬を引退したのちにロイヤルタッチが26歳、ダンスインザダークが27歳で死亡。イシノサンデーは長く息災だったが、31歳で死亡した。
「ウマ娘 プリティーダービー」にて
この4頭についてはウマ娘としての登場を願う声も大きかった(特にエアグルーヴやサクラローレルとの因縁も深いバブルガムフェロー)が、2024年8月23日にバブルガムフェロー(ウマ娘)の登場が発表。そのなかで「父のクラブでは『四天王』の1人と称され」との文言があり、他の四天王3頭も実装されるのではないかとにわかに盛り上がった。
その後バブルガムフェロー(ウマ娘)の育成シナリオが10月11日に実装され、作中には変名ながら他3頭がモデルのウマ娘も登場し、要所要所でシナリオに深く関わっていた。
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