『私はイオン、アディトゥムの崇高なるカルキストにして、尋常ならざる力を帯びたもの。ある朝私の下へ無謀にもやって来た何者かによって、我が身は剣で切断され千々に引き裂かれた、これは調和の厳しさによるものだ。それから、剣により斬首され、彼の者に私の肉体と骨は叩き潰され、火によって焼き払われて、ついに我が身体は変容し、霊魂になる術を会得したのだろう。そして同様の尋常ならざる力を受け止めたのだ』
肉体を統べる者 - SCP財団より,2022/08/08閲覧
サーキック・カルトとは、シェアード・ワールド『SCP Foundation』に登場する要注意団体(GoI)である。
呼称について
彼らについて触れる前に、呼称について触れておきたい。というのも、本項の記事名たる『サーキック・カルト』というのはそもそも異称であり、正式な彼らの思想体系の名前ではない。サーキック・カルトは、一種の宗教、ないし思想集団であるのだが、彼ら自身は、自分たちの思想体系を『Nälkä』 (ナルカ、ナラカ、ナラッキャ。本項では以後最初の読みで表記する) と呼称している。
ではなぜ、記事名は『ナルカ』ではないのか?安直な回答をするならば「ニコニコ動画においてナルカよりもサーキック・カルトというタグのほうが使用されるから」というのもあるが、そもそもニコニコ動画においてのみならず、YouTubeにせよpixivにせよアニヲタWiki(仮)にせよ、日本におけるSCPコミュニティにおいて彼らはサーキック・カルト、あるいはサーキシズム、サーカイトなどと呼ばれている。これはシェアード・ワールド『SCP Foundation』の作中世界において、財団、および世界オカルト連合が彼らの呼称として、彼らと対立するメカーニズム (メカニト) の呼称を採用したからである (この呼称の由来は後述) 。
以下、彼らの呼称について軽くまとめておく。
概要
サーキック・カルトは、指導者である崇高なるカルキスト・イオン (Grand Karcist Ion)が創始した宗教、ないし哲学体系であり、またその思想体系『サーキシズム』を信奉する者たち (サーカイト) の総称である。彼ら自身は先述の通り「ナルカ」を名乗っているが、これは「飢え」を意味する単語であり、「人の身で神々を喰らう」ことで魔術的な能力を行使する彼らの自称としては相応しいものであろう。一方で、歴史上サーキック・カルトと常に対立してきたメカーニズムは、彼らをサーキック・カルトと名付けた。これは、メカーニズムにとって肉体は唾棄されるべきものであり、その唾棄される肉体にこだわり、そしてその肉体を変成させて異形と化す彼らを「にくのカルト (Fresh Cults) 」として忌み嫌い、Fresh (にく) のギリシャ語に相当する「σάρξ (sárx)」からとった名前である。つまりこれは異称とか渾名というよりは、むしろ蔑称にあたる呼称といえる。
彼らは通常、秘密主義的であり、自身の信仰を一般社会に隠している。
サーカイトたちは儀礼的にカニバリズム、人身御供を行い、肉体の増生や変成、魔術、次元操作、異世界存在との契約などを実践している。これらは、彼らサーカイトたちひとりひとりが持つ個人としての最終目標は「自身の神格化」であり、この目的のためにこの世に遍く存在する神々、神霊、精霊を『喰らう』ことでその力を取り込めると信じているため、それらを果たすための手段として上述のようなことをしているにすぎない。
また彼らにとって疾病とはそれすなわち弱者を淘汰し、大衆を浄化する聖別と捉えており、それゆえに積極的に病を蔓延させようとしばしば試みる。彼らにとっては黒死病もスペイン風邪もCOVID-19も福音でしか無いわけだ。膨張した腫瘍を捧げる、といえばその異常さがよりわかりやすく伝わろう。
彼らが常々モットーとする、イオンの教えに『欲望は万物の尺度である。道徳の鎖に縛られるなかれ。望む事を、望む相手に成すが良い。』というものがある。だから彼らは非サーカイトに対して容赦はしない。
最終目標
サーキック・カルトは宗教である以上、いくつかの宗派が存在するが、かねがね最終目標として理解されるのは、「世界征服」。彼らは疾病を広めて大衆を『聖別』し、生きながらえたもの達もまた自分たちの思想体系に取り込むことで、SK-クラス:支配シフトシナリオを引き起こさんとしている。
これゆえに財団が対峙する要注意団体のなかでも群を抜いて危険とみなされている。財団が交戦にまで至る要注意団体は他にもいくつか存在するが、メカーニズムや蛇の手は場合によって協力関係を構築することもあるほか、そもそも積極的に財団とことを荒立てようという意識はない。一方サーキック・カルトとはそもそも融和路線はほぼ絶望的と見做されている。
SCP-2217 (鎚と鑕) では、サーキック・カルトの侵攻に備え、財団・世界オカルト連合・境界線イニシアチブ・メカーニズム主要3宗派というとんでもない連合軍が結成されていたりする。逆説的に言えば、互いに対立し時には殺し合う各団体が一時休戦してでも対抗しないと敵わないような団体というコンセンサスが (少なくとも4団体には) 持たれているということになる。
3つの思想体系
サーキック・カルトはいくつもの思想集団、派閥によって構成されており、個々のグループ間には交流がないことも多いが、財団はこれらを教義の認識の違い、信仰の広まりの経緯などから3つの集団に区分できると考えている。
プロト・サーキシズム
イオンがこの世に存在していた頃からのサーキシズムを信奉するサーカイトたち。イオンがサーカイトを率い、ダエーバイト文明やメカーニズムと戦争をやっていたイケイケドンドンの頃のサーキシズムの思想そのままであるため、数多くの迷信やタブーに縛られている。メカーニズムやその主神MEKHANEに対する敵意からか、機械を拒絶・破壊し村単位のコミュニティで自然とともに暮らす。集落が非サーカイトから隠れていることを望む。
イオンはいまだ神格化の途上にあると考えるプロト・サーカイトたちは、彼の神格化の終了とともに死産の宇宙は破壊され、イクナーンという楽園に生まれ変わるという信仰を持つ。また、サーキシズムの教義として「犠牲」が挙げられるが、プロト・サーカイトたちにとっての犠牲とは自己が苦行をなし、傷つけ、痛めつけた上で耐え抜くことで他の大勢が恩恵を受けられる、『ワン・フォー・オール』の自己犠牲を意味する。
ネオ・サーキシズム
サーキシズムが一度歴史上から存在感を消し、その後中世に貴族社会を通じて広まったもの。プロト・サーキシズムとは逆に世界規模のコミュニティを作ることが多く、政治家や資産家、マフィアなどの人間たちが関わっているという。ただし総合的な人数はプロト・サーキシズムには劣る。迷信・タブーとは縁がなく、普通に機械を使用する。
ネオ・サーカイトにとっての犠牲は、自分のために自分以外の大勢の犠牲、すなわち『オール・フォー・ワン』の他者の犠牲を意味する。非サーカイトはおろか、同じサーカイトでさえ時に犠牲にし、喰らう。
イオンは既に神格化を果たしたというのがネオ・サーカイトの考えであり、自分たちもイオンのような力を得よう、というのが目的。その目的の達成のためならば指導者イオンでさえ喰らおうとする彼らは、サーキシズムの聖人たちの遺体を自分たちの目的のために使用することさえある。
原始サーキシズム
プロト・サーキシズムが成立するより前、存命のイオンが説いたであろうオリジナルの教え。現在では絶滅していると考えられていたが――?
位階
サーキック・カルトには6つの位階が存在する。ただし、上2つはイオン及び4人の聖人たちにしか使われておらず、現在彼らは死んだか、少なくとも人間ではなくなっているため、実質的には4つの位階が存在すると評したほうがいいのかもしれない。
- オジルモーク (Ozi̮rmok)
異称、崇高なるカルキスト (Grand Karcist) 。サーキック・カルト最高位階にして、イオンただ一人のための位階。 - クラヴィガル (Klavigar)
異称、上位カルキスト (High Karcist) 。4人のイオンの使徒、ナドックス、ロヴァタール、オロク、サアルンを指す。ネオ・サーカイトは自身のルーツをしばしばクラヴィガルの誰かとすることが一般的 (真偽にかかわらず) 。 - カルキスト (Karcist)
サーキシズムの指導者層。イオンやクラヴィガルが崇高なるカルキスト、上位カルキストと呼ばれるあたりからもわかろう。一般信者の最高位階とも言える。このカルキストになるような者たちは基本不死であり、異形にして異能を持つ。オジルモークとクラヴィガルが行方不明である今の実質的なトップでもある。
なお日本のSCPコミュニティでは当初サーキック・カルトがあまり有名でなかった頃、やたらカルキストカルキストと報告書に出ることから、サーキック・カルトの信者をカルキストと呼ぶと勘違いされていた時期がある。アニヲタWiki(仮)などの古い時代に記述されたサーキック・カルト解説ではいまだにそのような勘違いについての注意書きが書かれていることがあるが、現代ではサーキック・カルトの知名度は高まっており、故にこのような注意書きが見られることは減りつつある。 - ヴォルタール (Võlutaar)
カルキストの助言者に当たる序列4位。プロト・サーキシズムでは何故か女性ばかりがその地位につく。 - ゼンド (Zend)
序列5位。一般信者のうち、元がサーキック血統の者はここからステップアップを開始する。肉体変成はゼンド以上になると使えるようになる。 - オリン (Orin)
序列最下位。一般信者のうち、元がサーキック血統でない者はここからステップアップを開始する。秘密主義かつ血統主義的なサーキック・カルトにおいてオリンは少ない。特にネオ・サーキシズムではみな自分がクラヴィガルの血統であると自称するので、オリンになることはほぼなかろう。
正直覚えきれないだろうが、サーキック・カルト絡みのオブジェクトで出てくるのはだいたいクラヴィガルとカルキスト、時々オジルモーク (というかイオン)であるため、クラヴィガルとカルキストだけ覚えておけば問題ないだろう。
歴史概略
かつて、中央アジア一帯を統べる大きな文明、ダエーバイトが存在した。ダエーバイト文明の指導者「ダエーワ」たちは人間とは異なる存在であり、彼らは人間を従属させ、支配していた。そんなある日、ダエーバイトに叛乱せんとする集団が現れる。彼らこそはイオンに率いられた者たち、ナルカであった。紀元前1800年頃には決起した彼らは各地で逃亡奴隷を糾合し、彼らはダエーバイトを打ち破り、弱体化したダエーバイトは最後には11-14世紀頃にチンギス・ハン率いるモンゴル帝国に討ち滅ぼされることとなる。
一方、勝利したナルカたちは自分たちの国、アディウム帝国を建国する。彼らの建物は生きた有機体で覆われ、彼らはダエーバイトを滅ぼした後も他の古代文明を滅ぼしはじめた。この頃には自分たちこそが異形の侵略者に成り果てていた。ナルカをにくのカルト、サーキック・カルトと呼び蔑みはじめたメカーニズムは各古代文明と連合を結成してアディウム帝国に立ち向かったが、それでもなおアディウム帝国に苦戦を強いられ、犠牲が出てはそれらがアディウム帝国の蘇生術により軍勢になってしまうという悪循環に陥っていた。メカーニズムはやがて火炎放射と現実改変兵器を搭載した巨像 (SCP-2406) に乗って特攻を仕掛け、なんとかアディウム帝国を滅ぼすことに成功する (SCP-2095) 。イオンは異次元に逃亡したが、各文明もダメージを回復できず滅亡した (前1200年のカタストロフ) 。
この後歴史書からはサーキック・カルトの名前は消えたのだが、1560年頃に貴族の中に入っていったサーカイトがネオ・サーキシズムを成立させた。
そしてそこから現代に飛ぶ。サーキック・カルトはイオンの再臨のための準備を整え、それに対抗するためにメカーニズム主要3宗派は共同でMEKHANEの復活を試みる。これに伴い、財団、世界オカルト連合、境界線イニシアチブとも共同戦線をはることになる (SCP-2217) 。しかしこの戦いは、財団と世界オカルト連合に、安直な「FLESH対MEKHANE」という構図を齎してしまい、両団体のサーキシズム研究に負の影響を及ぼしてしまうのだが――。
信仰対象
崇高なるカルキスト・イオン (Grand Karcist Ion)
サーキック・カルトの最高位の指導者 (オジルモーク) 。「アディトゥムの魔術師王」とも。他にもいくつかの尊称、異称を持つ。元はダエーバイト文明の女族長の側室の父親のもとに産まれた。通例このような者は奴隷になるのがダエーバイト文明の文化であったが、イオンは聡明であったため、魔術師や司祭の召使としての地位を得た。無論、それでも苦役であることは間違いなかろうが。
ある日彼は神格『アルコーン』と接触し、その力を手に入れることで人でありながら神に匹敵する能力を手に入れた。ただしプロト・サーキシズムではそれでもなお神格化はいまだ途上である、とされている。
やがてダエーバイト文明に対する叛乱が始まると、イオンは彼らを指揮してダエーバイト文明を各所で打ち破り、やがて彼らとともに、アディウム帝国を建国する。この帝国の首都がアディトゥムであり、「アディトゥムの魔術師王」はここからくる異名である。
クラヴィガル・ナドックス (Klavigar Nadox)
舌のない語り手、神秘の主、イオンの到来を予期せし者。知性、叡智、神秘などを司る賢者であり、クラヴィガルの実質的なリーダー。
ダエーバイトの賢者であった彼は平和と平等を説いて周り、貧民たちからの支持を集めていたが、ダエーワの扇動によって捕らえられ拷問を受けた。そして、「こいつを見たらすぐに虐待せよ」という印を押され、各地で彼を支持していた貧民たちからも石に打たれ、ナイフで斬りつけられた。しかし彼はイオンの姿を幻視して彼を見つけようと旅を続けた。
クラヴィガル・ロヴァタール (Klavigar Lovataar)
イオンが最も望んだ者、高貴なる血の救い主、お母様。性愛と疾患を司る。イオンの妻でもある。
ダエーバイトの女族長の愛娘。生前はダエーバイト人の中でも優れて美少女であったとされる。自身も司祭になる身分であった彼女は、当初こそイオンの存在を自身の人生を脅かす者として嫌っていた。しかしイオンを憎むうちに頭からイオンのことが離れなくなり、今度はイオンにある種の執着を抱くようになり、最終的にはイオンを捕らえ自身の伴侶として束縛せんとした。
彼女はイオンを捕らえようと多くの部下を送り込んだが誰も帰還できなかった。ある日彼女が寝ようとした時、彼女が恋焦がれていたイオンその人は、彼女のベッドに腰掛けて待っていた。宮殿の見張りや護衛をすべて始末したイオンは、ロヴァタールには攻撃をすることなく、彼女に語りかける。彼女の異名からするに、イオンもまた、自身を狙うロヴァタールを求めたのかもしれない。ふたりはロヴァタールの宮殿で12日間和合を行い、その後2人揃って宮殿を後にした。
クラヴィガル・オロク (Klavigar Orok)
角持つ野獣、獣の主、青ざめし狩人。ダエーバイトの魔術師が行った魔術実験の被検体。彼はその来歴ゆえにサーカイトとして肉体を変成させる前から超人的な怪力を誇っていた。ジェルの都で女族長アスヴィゴーサに魅了され、彼女の護衛として、また剣闘士として戦い続けてきた。
しかしイオンがジェルの都に攻め込み、アスヴィゴーサに戦わず撤退することを勧めた際、アスヴィゴーサはイオンの要求を拒否し、オロクにイオンを殺害するように命じた。オロクはイオンを見て、仕えるべき者がどちらなのかを本能的に悟った。彼は、アスヴィゴーサを消し炭にし、イオンに忠誠を誓うこととなる。
クラヴィガル・サアルン (Klavigar Saarn)
囁くもの、渦を巻く影、顔のない者、イオンの審判。暗黒と秘密、詐欺、毒、暗殺、そして正義を司る。家付きの女召使であった彼女はダエーバイト人の虐待に耐えかね、家中の者をすべて毒、絞首、短剣で殺害すると、その罪によって投獄される。しかし処刑される前に、イオンが壁をすり抜けてくると、彼女を連れてその牢獄があった都市を陥落させる。
サアルンはやがてイオンのために、サーカイトのスパイと暗殺者を統べる存在となる。
ヤルダバオート (Yaldabaoth)
サーキシズムの主神たる存在で、Važjuma/古き神、神を喰らうもの、貪るもの、彼の波打つ砂漠、大いなる選別者など数々の異称を有する。獅子の頭を持つ蛆として表現される。
虚無より産まれいでたヤルダバオートは、この宇宙の根源とされ、世界を喰らうために作った盲目白痴の神とされており、最終的にはイオンがヤルダバオートを支配下においた、ないし喰らったと考えられているため、サーカイトたちからは信仰はあまりされていない。他方、財団やメカニトたちはヤルダバオートこそが世界最悪の厄災と見られている。
人間はヤルダバオートが喰らうために生み出した存在であり、本能のままに生き、ヤルダバオートに喰われるのみであったはずであった。しかし、MEKHANEによって人間は機械を扱えるだけの叡智を得た。ヤルダバオートはこれに怒り、MEKHANEと戦った。MEKHANEはこの戦いで「壊されて」しまうが、この時のパーツを持ってヤルダバオートを捕らえる檻となり、異界に閉じ込めたという。
一方で、メカニトによる文明であるはずの夏王朝では『母なる龍・女媧』として、『父たる蛇・伏義 (MEKHANE)』共々信仰対象となっている。
アルコーン (Archon)
ヤルダバオートに仕える顔のない顕現。イオンが接触した超常的な存在こそがこのアルコーンである。6体存在しており、盲目白痴たるヤルダバオートとことなり、邪悪な意思を持ち、強欲な天使でしてメカニトからは描写される。イオンは彼らの挑戦をクリアし、彼らを喰らい、あるいは支配下に置いたとされている。
彼らもまた虚無より産まれいでたものであり、並行宇宙、多元宇宙における巨大な癌として描写される。他方、夏王朝では渾沌 / 窮奇 / 檮杌 / 饕餮 / 龔工 / 祝融として女媧に従うバケモノとして捉えられている。
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