サーキットの狼とは、1975年から1979年にかけて池沢さとしが「少年ジャンプ」に連載した、街道レーサーとして走る少年が、サーキットでのレースに加わり、やがてF1ドライバーになるまでを描く漫画である。
概要
主人公風吹裕矢(ふぶきゆうや)は、ロータス・ヨーロッパを駆り「ロータスの狼」と呼ばれる一匹狼の街道レーサー。ある日、暴走族の男が強引にナンパしようとしていた少女を助けたことをきっかけに、街道レーサーとして活動する暴走族(当時はまだ走り屋という言葉はなく、いわゆる珍走団と十把一絡げにされていた)たちと勝負を繰り広げていく。そして、姉の恋人であるプロレーサー、飛鳥ミノルの誘いによってサーキットにデビューした裕矢は、隼人ピーターソン、早瀬左近らライバルとともに「公道グランプリ」に出場、レーサーへの道を歩み始めるのだった。
登場するクルマの多彩さと、実在するドライブテクニックを駆使した描画のリアリティは当時としては画期的である。大きく発達した自動車社会が成熟期に向かおうとしていた昭和50年代の日本において、実際にクルマが大好きな作者による実在するスポーツカー、スーパーカーの乱舞する姿を描いた本作は大いに話題を呼び、「スーパーカーブーム」という名の社会現象を引き起こした。
主な登場人物
- 風吹裕矢(ふぶき ゆうや)
- 主人公。跳ね上がった前髪と長髪、立てたジャケットの襟が目立つ容姿の若者。愛車の白に赤のストライプのロータス・ヨーロッパを駆る。街道レーサーとして数多くの暴走族を相手に勝利し、愛車に撃墜マークを書き込んで「ロータスの狼」と呼ばれている。暴走族三大勢力の一つ「極道連」との争いのさなか、早瀬や沖田といった後のライバルと出会う。やがて飛鳥の誘いによって富士スピードウェイでサーキットデビュー。そこで隼人ピーターソンとも邂逅。彼らと勝負するために「公道グランプリ」に出場することになる。名前のモチーフは実在したレーサー風戸裕(かざとひろし)。
- 早瀬左近(はやせ さこん)
- 暴走族三大勢力の一つ「ナチス軍」のリーダー。実は「早瀬電機」という電気機械メーカーの御曹司。愛車はポルシェ・911カレラRS。薄いサングラスを常に掛け、スカーフを首に巻いている。風吹にとって最大のライバルとなる男。彼も飛鳥の薫陶を受け、プロレーサーへの道を目指して「公道グランプリ」に出場する。
- 沖田(おきた)
- 警視庁のパトカー乗り。愛車はフェアレディZ240(パトカー)、フェラーリ・ディーノ246GT。風吹に目をつけ、物語の最初から挑戦状を叩きつけてくる。秋田出身のもと街道レーサー。走る楽しさを追求するためにパトカー乗りとなったが、谷田部の誘いによって警官をやめ、「公道グランプリ」に出場する。
- 飛鳥ミノル(あすか-)
- 風吹の姉でモデルのローザの恋人。愛車はランボルギーニ・ミウラ。F2000やGC(グランチャン)シリーズで名を挙げつつあるプロレーサー。彼も湘南の街道レーサー出身である。風吹にとって良き兄貴分となっていく。モデルは実在したレーサー川合稔(かわいみのる)。
- 早瀬ミキ(はやせ-)
- 「極道連」の男に無理やりナンパされそうになっていたところを風吹に助けられた少女。早瀬左近の妹で、レディースバイク暴走族「赤い流れ星」のリーダー。風吹と「公道グランプリ」で仲を深め、本作のヒロインとして登場し続けることになる。
- 山岸みのり(やまぎし-)
- 「早瀬電機」のライバル会社の令嬢。早瀬の幼馴染であり、彼への好意を伝えるために自ら「公道グランプリ」にマツダ・コスモスポーツで参戦しようとしたり、早瀬と同じポルシェ930ターボを手に入れたりする。しかし、しょせんレースの世界についていける訳もなく、ミキともども観戦と解説役に収まる。ポルシェ930ターボは風吹が事実上の愛車として利用することになる。
- 谷田部行雄(やたべ ゆきお)
- 謎の初老の紳士。沖田をバックアップする自称「年甲斐もないカーキチ」。実は数多くの不良少年を更生させており、「青少年の父」の異名を持つ。その関係で警察関係者にも顔が利く。ある事情で沖田を支援できなくなった後は、風吹の面倒を見るようになり、彼のプロレーサーデビューを支える。だが、新たな才能である椿健太郎を見つけるや風吹への支援を打ち切るなど、結構ドライな面もある。
- 隼人ピーターソン(はやと-)
- 外国人のハーフである街道レーサー。愛車はトヨタ2000GT。前回の「公道グランプリ」優勝者。女たらしでミキにもいきなりモーションを掛け、早瀬からパンチを食らうことになる。一人称は「ミー」。だが、レースとなれば卑劣な手段も辞さない悪辣な面を持つ。名前のモチーフは実在したレーサー、ロニー・ピーターソン
- 土方年男(ひじかた としお)
- かつて沖田の同僚であった警察官。沖田とともに交通機動隊の「新選組」を組んでいた。谷田部が沖田を選んだため警官を続けていたが、沖田の身に起こった事情により彼もレースへの道を進むことになる。愛車はランボルギーニ・ウラッコ。
- ハマの黒ヒョウ
- 横浜の走り屋。本名不明。愛車はランボルギーニ・カウンタックLP400。風吹たちに激しいライバル意識を持ち、何かにつけ野試合のように乱入しては戦いを挑んでくる場面が多い。その度にクラッシュしてカウンタックをお釈迦にしており、最初は「高い車に乗るより腕を磨くのが先か」と反省していたが、結局カウンタックを愛し続けることになる。
- 椿健太郎(つばき けんたろう)
- 谷田部が新たに見出した若者。愛車はランボルギーニ・シルエット。「ル・マン・イン・ジャパン」でヨーロッパへの遠征の権利をかけて、風吹たちと争うことになる。
- 京極さくら(きょうごく-)
- 京都の女暴走族「紅孔雀」のリーダー。愛車はポルシェ928。やはり「ル・マン・イン・ジャパン」で風吹たちとヨーロッパ行きをかけて争うことになる。
- ジョージ・プライス
- F3編での風吹や早瀬のライバルとなる。コンピューターと呼ばれる正確なドライビングが信条だが、極めて冷徹で卑劣な手段も辞さない。ある意味ピーターソン以上に危険な男。名前のモチーフは実在したレーサー、トム・プライス。
- セシル・ラピエール
- F3編で登場する女性ドライバー。フランスの貴族出身の淑女で、「バラのセシル」の二つ名を持つ。だが裕福な貴族としての立場に反してモータースポーツで名を上げようとしている。
- 神藤速人(しんどう はやと)
- F1編で登場する。サッカー界の国際的スーパースターで、谷田部のF1プロジェクトに密かに加わりテストドライバーとして活動してきた。チームのNo.2ドライバーとして風吹とともにF1デビューすることになる。
主な登場するクルマ
- ロータス・ヨーロッパ
- イギリスのロータス社が作った軽量を武器とするブリティッシュスポーツカー。最初の風吹の愛車として主人公車として活躍する。「公道グランプリ」で転倒するが、修繕してターボを取り付けてパワーアップし、「Aライ模擬レース」にも出場。
- ポルシェ911カレラRS
- ドイツのポルシェが911の軽量化スパルタンモデルとして開発した。劇中ではハーケンクロイツマークを付けている。早瀬の初期の愛車であり、「公道グランプリ」でも使用される。
- ポルシェ930ターボ
- ポルシェ911のターボによる強化バージョン。930というのはモデル番号でいわば日本で言うAE86(ハチロク)のような意味がある。早瀬の新たな愛車として活躍。のちに風吹もみのりから借りる形で半ば愛車として使うことになる。
- ランボルギーニ・ミウラ
- ランボルギーニが初めて売り出したミッドシップV12エンジンモデル。いわばスーパーカーの元祖というべきクルマ。飛鳥ミノルの愛車として、物語がフォーミュラレース編に入る直前まで活躍し続ける。
- フェラーリ・ディーノ246GT
- フェラーリがV8コンパクトミッドシップカーとして開発。正確にはフェラーリブランドのクルマではない。沖田の愛車として「公道グランプリ」に出場。ある事情によって、沖田から風吹の手に渡り、谷田部が独自のチューンを行ってディーノRS(レーシングスペシャル)に進化。「流石島(さすがとう)レース」で風吹のプロレースデビューのマシンとなる。
- トヨタ2000GT
- トヨタが総力を上げて作った初の本格GTカー。ピーターソンの愛車として「公道グランプリ」に出場、彼の手でまさに「悪役」として存分に暴れまわった。他にも「ル・マン・イン・ジャパン」で土方がシルエットフォーミュラマシンとして使用。これが静かな人気を呼んで、プラモデル化されたりしている。
- ランボルギーニ・カウンタック
- ご存知一度見たら忘れられないスーパーカーの代表的存在。LP400が「ハマの黒ヒョウ」の愛車として何度と無く活躍。モブの走り屋が乗るLP500S仕様も登場。
- ランチア・ストラトス
- イタリアのランチアが製作したラリーカーベースのスパルタンなクルマ。実はエンジンはディーノ246GTと同じ。「北海の龍」の愛車として「Aライ模擬レース」「流石島レース」などで活躍した。後に谷田部が風吹に新たな愛車として買い与え、シルエットフォーミュラのストラトス・ターボに改造されて「ル・マン・イン・ジャパン」での風吹のマシンとなる。
- ポルシェターボRSR
- ポルシェカレラRSRをターボで武装したレーシングカー。「流石島レース」での早瀬のマシンとなり、風吹のディーノRSと激闘を繰り広げる。
- ランボルギーニ・イオタ
- ランボルギーニがレースに挑戦すべく、ミウラをベースに作ったレーシングスペシャル。「流石島レース」で「潮来のオックス」が乗り込んで風吹たちと渡り合った。
- フェラーリ308GTB
- フェラーリのV8ミッドシップカー。「流石島レース」で「フェラーリの女豹」が乗り込んで、風吹と時に協力しながら上位を目指して戦った。
- BMW3.0CSL
- ドイツのBMWがETC(ヨーロッパツーリングカー選手権)を制するために作ったGTカー。「流石島レース」でピーターソンが使用した。他にもターボ仕様にしたもので京極さくらが「ル・マン・イン・ジャパン」に出場している。
- ポルシェ935-77
- ポルシェワークスが「メイクス世界選手権」(ヨーロッパのスポーツカーレース)を制するために作ったシルエットフォーミュラマシン。早瀬が「ル・マン・イン・ジャパン」に出場するために使用。
- ゼロ戦007(ダブルオーセブン)
- 谷田部がF1に挑戦するために開発した。コスワースDFVエンジンとギヤボックス以外は全て日本製である。風吹と神藤が挑戦し、高いポテンシャルを見せたがシャシー剛性に欠陥が発見されたためにレース途中で撤退することになった。
- ゼロ戦009(ダブルオーナイン)
- 007の撤退から翌年(1979年シーズン)、日本メーカーが垣根を超えて協力し開発した純日本製F1マシン。風吹と神藤の手で飛鳥のポルシェとトップ争いを繰り広げる。
- ポルシェフォーミュラターボ7
- 架空のポルシェ製F1マシン。ターボエンジンを搭載し、ポルシェワークスの手で飛鳥ミノルが駆る。いわばこの漫画のラスボスである。史実ではポルシェがF1に参戦するのは1983年のマクラーレン・ポルシェまで待たねばならない。
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